619 カレー祭り
「申請が通って、屋台を出店できることになったよ。推薦人は僕でも大丈夫だったみたいだ」
「ありがとうございます」
ナバロが商業ギルドで発行された出店許可証をわざわざ渡しに来た。ウォルトは堂々と素人テムズとして参加することに。
「カレー作りは捗ってる?」
「色々と研究してます」
「ニャ~」
「可愛い相棒だね。懐いてくれて嬉しいなぁ」
シャノはナバロさんにも直ぐに懐いて、気持ちよさそうに顎や背中を撫でられている。 気になるので、後でボリスさんにだけ敵意を剥き出しにする理由を訊いてみよう。答えてくれるかな?
「よければカレーを試食して下さい」
「いいのかい?」
「もちろんです。お願いしたいこともあって」
ナバロさんに研究の成果を味わってもらう。
「お世辞じゃなく美味いよ」
「ありがとうございます。カネルラ料理の味付けを取り入れてみました。このカレーに値段を付けてもらえませんか?幾らで売ればいいのかピンとこなくて」
「商品じゃないから難しいね。ウォルト君の希望金額は?」
「1皿10トーブです」
「あり得ない。僕が基準を決めよう」
ナバロさんは真剣な顔で計算を始めた。
「1杯作るのに材料の原価がこのくらい……。利益は見込まず……他の料理人の原価予想は……このくらいか…」
黙って待つこと数分。
「幾つか質問させてほしい」
「どうぞ」
ボクがどんな感じで商売するつもりなのか…とか、現時点で考えている売り方なんかを聞かれる。
「そうなると…キリよく50トーブが適正かな」
「わかりました。それでいきます」
「売れ行きや状況に応じて臨機応変に値段を変えるのもありだよ」
「裏目に出る気しかしません。でも、勘が働いたらやってみます」
「それでいいと思う」
基準を示してもらうだけで助かる。ボクの金銭感覚はおかしいみたいだから、失敗してもナバロさんのせいじゃない。食材調達の他に、調理器具も貸すと言ってくれた。お世話になりっぱなしだ。
「タマノーラの住民全員で応援に行きたいけど、人間に変装するんじゃ無理だね」
「気持ちだけで充分です」
あとは、こつこつカレー作りに励むだけ。帰る前に、更に仕入れたという香辛料を幾つも置いていってくれた。織物や薬で対価を払ったけれど本当に有り難い。
迎えた催し当日。
祭りが開催される会場はフクーベの広場。開始時間より早めに着いたけど、既に大勢の料理人達がいる。武闘会の予選に似た緊張感があるなぁ。
会場を見渡すと既にナバロさんがいた。商業ギルドから貸し出された屋台も伝手を使って運んでくれて。
「ナバロさん。ウォルトです」
「驚いた…。まるっきり別人だね…」
「今日はありがとうございます。助かります」
「このくらいしかできないけど、手伝わせてほしい」
「充分すぎます」
2人で屋台を組みながら周囲を観察すると、店の看板を掲げていたり派手で目を引く屋台があったりして面白い。
「推薦での参加者は区画が決められていて、ちょっと場所が悪いみたいだ」
「出せるだけで嬉しいです」
ぽつんと離れた場所だけど、広いし整地されていてなんの問題もない。
「お前の考えは甘いぜ」
「そうよ。かなり厳しい戦いになるわ」
両隣で屋台を組んでいる人達に話しかけられた。
「甘い…ですか?」
「有名な店に客は集まる。腹が膨れたら、離れた場所の屋台は見向きもされねぇよ」
「かなり並ぶのが予想されるから、待ちきれない物好きが来るくらいかもね」
「なるほど」
「けど、チャンスには変わりねぇ。なんとかして売らねぇとな」
「えぇ。お互いに」
凄いやる気を感じる。既に勝負は始まっているのか。
「お2人は料理人ですか?」
「あぁ。俺はドナルドだ。そろそろ自分の店を持ちたいと思って、力試しで無理言って店とは別に屋台を出すんだよ」
「私はシャオ。目的はドナルドさんと同じ。貴方もそうでしょ?」
「テムズといいます。料理人じゃなくて素人です」
「マジかよ!?」
「よく推薦してもらえたわね!?」
「なんとかなりました。高い目標はないんですけど、カレーは精一杯作ります」
ナバロさんと協力して組み上げたあと、両隣の屋台の組み立ても手伝う。工作しているようで楽しい。料理する前から楽しんで申し訳ないくらいだ。
「手伝ってもらって悪いな。けど、勝負は負けねぇぞ」
「私もよ。料理人でも素人でも関係ないからね!」
「よろしくお願いします」
お互いに仕込みを始める。ナバロさんは仕事があるからとタマノーラに帰った。「終わる頃に撤収の手伝いに来るよ」と言ってくれて有り難い。どの屋台も準備が始まって、香辛料の匂いが辺りに漂う。会場が外でよかった。室内だと鼻が利かなくなりそう。
「あっ…!なんでっ?!」
シャオさんが焦ってる。
「どうしました?」
「コンロ用の魔石が魔力切れかも…。昨日頼んだばかりなのに…」
「料理人が一斉に頼んで、魔導師も忙しかったんじゃねぇか?付与が手抜きされてるかもな」
「ありえる…。素人にはわからないからって最悪っ!なんで今なのよぉ~!今から頼んでも間に合わない!」
事実なら可哀想だ。
「魔石を借りてもいいですか?」
「いいけど…なにするの?」
手に取ると確かに魔力が残されてない。よくて魔石に含有できる2割程度だ。魔力を付与しておこう。
「どうぞ。使ってみて下さい」
「え?」
コンロはちゃんと温まってる。大丈夫かな。
「まさから魔力を込めてくれたの…?」
「はい。しばらく保つと思います」
「お前…すげぇな…。魔導師なのかよ…」
「違います。ちょっと魔法を使えるだけで」
「ありがと。お金払うよ」
「いりません。その代わり、あとでシャオさんのカレーを食べさせてもらえませんか?」
「いいけど」
仕込みを続けていると、ドナルドさんの魔石も魔力が切れたので同じように魔力を補充する。
「テムズのおかげで助かったぜ。俺のカレーも食っていいぞ。悪徳魔導師には文句言いに行くけどな!」
「本当よね。しっかしテムズって相当料理上手いね。手際がよすぎる。素人なんて嘘でしょ?」
「料理が趣味なんです。でも真剣に作ってます」
「世話になったけど勝負は別だぜ」
「私も手は抜かない。っていうか、抜けない」
隣がこの2人でよかった。なんというか気持ちのいい料理人。チラッと見たけど調理技術も見事。
そろそろカレーも完成といったところで、会場に人が集まってきた。続々と屋台に列ができていく。その中でも断トツで人が多いのは、ビスコさんの屋台。リゾットさんやグルテンさんが手伝っていて大忙し。
「ほれ。暑いだろ」
ドナルドさんから水を差し出される。
「頂きます」
「やっぱビスコさんの店はすげぇな。納得だけどよ」
「あの人は凄い料理人だもん。悔しいけどフクーベでは断トツだよ。美味しいに決まってる」
「けど負けたくねぇ」
「同じく」
ビスコさんは誰もが認める凄腕料理人だけど、負けたくない気持ちはわかる。いつもビスコさんより美味しい料理を作りたいと刺激されてるから。
どんどん人が増えて会場は盛況。でも、ボクらの屋台には誰も来ない。
「はぁ…。予想通りっちゃ予想通りだ」
「そうね」
「場所のせいなんでしょうか?」
「広場の入口近くに有名店があるでしょ。並ぶ人が多いって予想できるから広い場所にっていう理由だけど、お腹いっぱいになったら他を見て回らないよ。こっちは無名だし」
2人とも椅子に座って肩を落としてる。
「もしよければ、カレーを試食させてもらえませんか?」
「別にいいぜ」
「私もいいよ」
小さな皿によそってカレーをそれぞれ頂くと、特徴があって美味しい。ボクのカレーとは違う素晴らしい仕上がりだ例えるならスパイシーとまろやか。色が違ってどちらもいいな。
「凄く美味しいです」
「そうか」
「味に自信はあるからね」
「テムズのカレーも食わせてくれよ」
「私も食べてみたい」
「どうぞ」
2人に食べてもらう。
「こりゃあ美味いな…」
「ホント…。美味しい…」
「ありがとうございます」
プロの料理人の嬉しい評価。
「ねぇ、お兄ちゃん」
小さな女の子に話しかけられる。
「どうしたの?」
「カレーをたべたらずっとからいの。おみずちょうだい」
「ちょっと待ってて」
こんなこともあろうかと、準備していた甘いジュースを飲ませてあげる。カレーの辛味を緩和できる味。
「どうだい?」
「もうからくない!ありがと!カレー、きらい!」
「ボクのカレーは辛くないけど、ちょっと食べてみるかい?」
「そうなの?」
ほぼ辛味なしの子供用に作った果物入りカレーを少しだけ手渡す。
「おいし~い!このカレー、からくない!」
「よかった」
少ないけど笑顔で食べてくれて嬉しい。元気に走り去った。
「子供用とは気が利くぜ」
「考えもしなかったわ」
「美味しい料理なのに、大人しか食べられないのは悲しいので」
しばらくして女の子が戻ってきた。今度は家族も一緒に。
「ここのカレー、ものすごくおいしいの!」
「はいはい。カレーをもらっていいかしら?」
「大人用と子供用がありますが」
「大人用を2つと、子供用を1つ頂戴」
「わかりました。……どうぞ」
「あら。パンが付いてるの?」
「パンじゃなくて焼いた小麦の生地なんですが、カレーを付けて食べて下さい。カレーにこちらの香辛料を振りかけると、辛味の調整もできます。足りなければ加えて下さい」
「へ~。親切ね。頂くわ」
会場には無数のテーブルやベンチが設置されていて、ボクのカレーを食べてる家族連れは笑顔だ。口に合ったかな。
「…負けてられねぇ!」
「まずは切っ掛けね!宣伝しに行こう!」
ドナルドさんとシャオさんは、会場を訪れた人達に食べてもらえるよう声をかけている。いかに美味しくても、食べてもらえないと味のよさがわかってもらえないから立派な戦略。注目を浴びると恥ずかしいボクにはできない。
「美味かったなぁ」
「一緒に来た家族にも宣伝しておくわね」
「おにいちゃんのカレーはおいしい!すきっ!」
「ありがとう」
家族連れが伝えてくれたのか、少しずつ客が来てくれるようになった。口コミの効果ってあるんだな。
「美味い。コクがある」
「好みの辛さにできるのもいいな」
「この生地も美味い!カレーに合う!」
「安いよね!カレーだけじゃないのにこの値段は満足すぎ!」
「有名店じゃなくても美味いんだなぁ。他のも食べてみよう」
生地を焼いたりカレーの追加で忙しくなってきた。並んでまで食べてくれるのは嬉しすぎる。宣伝の効果があったのかドナルドさん達も忙しそうだ。
食器は商業ギルドから貸し出されていて、催し終了後に回収した後にまとめて洗われるらしく、洗い物をしなくていいのは楽。どんどん作るだけ。
「テムズのおかげで人が増えて、脇のこっちも忙しいぜ!」
「やりがいある~!」
「お2人のカレーが美味しいからですよ」
忙しく料理していると、ボクの列が少しざわつく。見ると、後ろにビスコさんが並んでいた。
「マジか…。なんでココにビスコさんが…?」
「他の店に興味なんかないでしょうに…」
そんな人じゃない。料理への情熱と研究熱心さは人一倍。いつだって美味な料理を作りたいだけの尊敬する料理人は、他人の料理を下に見ることなんてない。順番がきたビスコさんにも説明してカレーを手渡す。
「カレーに合う生地を作るのは予想外だった。簡単な辛さの調節も見事だよ」
「友人から意見をもらえたので、活かしてみようと思って」
「ゆっくり食べさせてもらうよ」
「ボクも食べに行きたいんですが、なくなる前に行けそうにありません」
「1杯分だけ残しておく」
さっと列からはけるビスコさん。気遣いの人でもある。
「おい、テムズ。ビスコさんと知り合いなのか?」
「友人です」
「羨ましい。道理で調理が上手いはずだわ」
「いろいろ教わってます」
とりあえず今は作ることに集中。余計なことは考えずに、並んでくれるお客さんに美味しいと思うカレーを提供するだけ。
「んぁ~っ!やっと終わったぜぇ~!」
「んん~っ!つっかれたぁ~!」
「お疲れさまでした」
遂にカレー祭りが終了。予想以上の来客だったのか、制限時間を迎えるより先に全ての屋台の食材がなくなってしまった。もしくは、コンロ用魔石の魔力切れかもしれない。既に店じまいを終えて帰ってしまった屋台もある。取り扱ってるのはカレーのみなのに、どの店も売れ行きは凄まじかった。商業ギルドの思惑通り香辛料は売れるに違いない。
集計の結果、売り上げ1位だったのはビスコさんの屋台。2位に大差を付けての優勝も当然の結果といえる。ちなみにボクは10位にも入れなかった。
気付かなかったけど、不正を防ぐために各出店の売り上げを計算してる商人が紛れていたらしい。商業ギルドは抜け目がないな。
「シャオさんよ。目標額売り上げたか?」
「なんとかね。損はしてないくらい。ドナルドさんは?」
「ギリギリ儲けた。けど、これ以上高かったら危なかったぜ。売れ残ったら損だった」
「売価の設定は重要だよね。テムズは儲かったの?」
「ちょうど材料費と同じだと思います」
ナバロさんの予測はいつだって秀逸。ボクの性格も読み切ってほぼ利益なしのはず。売り上げた額をそのままナバロさんに渡すだけでいい。
「あのよ、料理人じゃないにしても設定が安すぎる。もっと自信もっていいぜ」
「そうよ。あと20トーブは高くても売れたわ。間違いない」
「ボクは正直高いと思ってます。でも、商売するならそうなんでしょうね」
「どこぞの金持ちみたいなこと言うな」
「貧乏ですけど、美味しそうに食べたもらえたら満足なので」
「信じられねぇお人好しだ。本職はなんなんだよ?」
「一応冒険者です」
「マジか!?」
肩書きがあるとこういうとき楽だな。
「テムズ。私が店を開いたらウチで働かない?」
「あっ!俺も誘おうと思ったのに!」
「残念でしたぁ~!早い者勝ちだからね~!」
「お誘いありがとうございます。でも、雇われるなら決めてる店があるので」
「そっか~。残念」
料理人になれるならビスコさんの『注文の多い料理店』にお世話になりたい。森に住む素人を最初に誘ってくれて、コック帽や手袋まで準備してくれた気持ちに応えたいんだ。
ナバロさんが来るまで少し時間があるので、会話しながら2人の撤収を手伝うと、別れ際に勤めている店の名前を教えてくれて、「また会おうぜ」「食べに来てね」と笑顔で別れた。
いい出会いだった。気持ちいい料理人と交流できて、学べたことが今日の収穫。
「う~む…」
ナバロさんを待つ間にビスコさんを訪ねて残っていたカレーを頂くと、とんでもなく美味しくて唸ってしまう。ボクのように色々な手段を講じなくても美味しい王者の料理。
「凄く美味しかったです。勉強させてもらいました」
「こちらこそ。競えてよかったし新たに学んだ。君のカレーはかなり長い時間煮込んでいるんだな」
「とろみを付けて1日置いたら味がまとまることに気付いたんです」
がっちり握手を交わして屋台の撤収を手伝うと、リゾットさんとグルテンさんに『誰だコイツ…』という顔で見られた。この2人にバレてなければ、今回は見破られずに済みそう。
それから直ぐにナバロさんが来てくれて、一緒に屋台を撤収する。
「お疲れさま。どうだった?」
「無事に終わってなんとか売り切れました」
「さすがだね。楽しめたかい?」
「はい、とても。カレーを容器に残してあるので後で食べてもらえませんか?家族分くらいはあります」
「頂くよ。楽しみだ」
撤収した屋台骨はフクーベの商業ギルドに運び、タマノーラまでナバロさんを運んで自前の容器に詰めたカレーやナン、今日の売り上げを渡す。
「材料費や諸々の経費に足りますか?」
「ちょっと多いくらいだね」
「手伝ってもらった分のお礼ということで受け取ってください」
「わかった。またなにかあればいつでも相談してくれないか」
「はい。今日は本当にありがとうございました」
ナバロさんと別れ、またフクーベに向かう。
「一足遅かった~!」
「冒険を早めに切り上げたのに間に合いませんでした」
「でも、こうして食べれたのでよしとします!めっちゃ美味しい~!」
「予想以上に売れたんだね」
マードックがいないということで、サマラの家でカレーを作って振る舞う。助言してくれて「手伝う」とまで言ってくれた4姉妹へのお礼に。
本当は夕方過ぎまで開催される計画だったから、皆は仕事を終わらせてから来てくれる予定だった。早めに終了してしまったので、4人のタメだけに作って食べてもらうことに。
「負けちゃったのは残念だったね~」
「全力で作ったから悔いはないし、素人なのに売り切れただけ上出来だね。料理人の技術が見れたのもよかった」
遠目で沢山の料理人の手捌きを見た。面白い技法もあったから、自分の調理に活かしたい。
「今度は休んで手伝いにいきますね」
「私達が手伝って1位を目指そう!ウォルトさんならできるはず!」
「兄ちゃんはもっとやれるよ」
あるかもわからないのに、次回の戦略を練り始めた4姉妹。酒も飲み始めて盛り上がってきたところで、少しだけ席を外してもう1カ所行こう。
やってきたのは、推薦してくれたランパードさんの屋敷。
「わざわざすまないな」
「アンタは律儀だねぇ」
「推薦してもらったおかげで充実した時間を過ごせました。お礼に作ってきたので、食べてくれると嬉しいです。『保存』してるから長持ちします」
お世話になったランパードさんと姉さんにせめてものお裾分け。
「アタイは直ぐに食べる。旦那さんは普段いいモノばかり食ってるからいらないだろ?」
「バカ言え。俺も食うに決まってる」
「ランパードさんに1つお願いがあります」
「なんだ?」
「今日の開催に関して、商業ギルドはあらゆる手を打ってくれていました。さすがだと感じましたが、次があるなら魔石コンロに使う魔石の準備をしてもらえると助かります」
ドナルドさん達の事情を説明する。
「なるほど。それは平等じゃない。次があれば掛け合ってみる」
「付与した魔導師の問題で、お願いするのは筋違いだと思いますが」
「いや。せっかく主催したのに、料理人が存分に力を発揮できなければ意味がない。当人にとっては最初で最後の挑戦という可能性もある。教えてもらって有り難い」
「ありがとうございます。お礼と言ってはなんですが…」
ソファに横になってもらい、ランパードさんの身体を治癒魔法で癒やす。常に肩を回したり、背中を伸ばしたりしていて気になってた。
「君は凄いな。若返ったように身体が軽くなった」
「このくらいしかできませんが。あと、姉さんに」
「アタイはなにもやってないだろ」
「日頃のお礼さ」
「…ったく。なんだいコレ…?」
「星輝石を魔法で加工して作った知恵の輪だよ。夜や暗い場所で使うと淡く輝いて綺麗なんだ。もう1個あるのでランパードさんにも」
「見たこともない技術だ…。どうやればこんなことが…」
お礼は伝えられた。ナバロさんにもお礼したいけど、お金を渡したから今日は受け取ってくれないはず。後日なにか渡したい。
思い出作りに協力してもらった皆には感謝しかない。楽しかったけど、知らない人と触れ合うのが苦手なボクにフクーベは規模が大きすぎて、タマノーラやクローセ、ダイホウくらいの規模が丁度いい。
「ちゃんと戻ってきなさい」と言われてるから、4姉妹の元へ帰ろう。言われなくてもそのつもりで、まだお礼したりないんだ。




