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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
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552 一気に顔見知り

 ウォルトはウイカ、アニカと住み家で魔法の修練中。


 オーレンは剣の修練で忙しいらしく、スザクさんも含めた沢山の剣士と交流して、腕を磨いてるみたいだ。


「「ありがとうございました!」」

「お疲れさま」


 3回も魔力切れを起こすまで修練して、昼ご飯にすることにした。住み家に戻って姉妹と仲良く調理していると、ドアがノックされる。


「私が出ます!」

「いや。ボクが行くよ」


 2人に調理をお願いして玄関へ向かう。ノックの仕方で誰が来たのかわかった。


「久しぶりね」


 ドアを開けると予想通りキャミィが立っていた。


「久しぶりだね。いらっしゃい」

「…料理の匂いがするけど、誰か来てるの?」

「ウイカとアニカだよ。もしよければ、紹介したいから会ってみないか?無理にとは言わないけど」


 アニカとウイカのことはキャミィに伝えているし、姉妹もキャミィの存在を知ってる。特にアニカ達は会いたがっていた。

 キャミィは外の世界を知りたがっていて、姉妹はエルフと交流したことがない。互いに刺激になると思う。同性の魔法使いとしても。


「もちろん会うわ」

「そっか。入って」


 キャミィと共に台所へ向かう。


「ウォルトさん!いい感じに料理できてますよ~!……って、か、かわいいエルフ!」

「ホントだ!もしかしてキャミィさん?」

「えぇ。そうよ」

  

 キャミィの存在に気付くなり2人は素早く移動してきた。


「初めまして。ウイカです」

「初めまして!アニカです!」

「私はキャミィ。堅苦しい人間の挨拶は必要ないわ。言葉遣いも普通に話してほしい」

「じゃあそうするね」

「私もそうする!」

 

 予想以上にウイカ達のテンションが高いような気がする。


「3人でゆっくり話してていいよ。キャミィも一緒に昼ご飯を食べないか?ボクが作るから」

「頂くわ」

「水くさいですよ!皆で作りましょう!」

「キャミィの好きな料理を知りたいね」

「皆で作ると相当狭いけど」

「いい案があります!」


 キャミィと姉妹はこそこそと会議を始めた。早くも仲良くなれそうな雰囲気。そして、直ぐに会議の結果は出た。


「ボクはいいけど、キャミィはキツくない?」

「大丈夫よ」


 なぜかボクがキャミィをおんぶしながら調理することに。誰かを背負って調理するのはララちゃん以来。両手が使えないから『捕縛』の網で背負うと、嬉しそうな匂いをさせながら後ろから頬擦りしてくる。

 目的がモフることなら、こそこそ話すことでもないのに。よほどのことがない限りキャミィや4姉妹にモフられるのを断ったりしない。


「話し合いの結果、キャミィには久しぶりのモフモフを堪能してもらおうかと!」

「料理を作る時間の有効活用です。その方がゆっくり話もできますし」

「ウイカ、アニカ。感謝するわ」


 とりあえず、3人が親しくなれそうな気がしてホッとする。






「とても美味しいわ。ウイカもアニカも料理が上手いのね」

「ありがとう」

「ウォルトさんの弟子だからね!」

「2人の努力の賜物だよ」


 料理について特別なことを教えたことはない。魔法以上に自己流過ぎる自覚があるから。


「キャミィにお願いがあるんだけど!」

「なにかしら?」

「私が1口ご飯を食べさせてもいい?!」

「意味がわからないわ」

「あ~んとかしたい!」

「…さすがに恥ずかしいのだけれど」


 アニカの気持ちはわかるけど、少女と間違えてはいけない。こう見えてキャミィはかなり年上のお姉さん。


「アニカ。頬擦りするくらいにしておこうよ」

「それもいいね!」


 2人はキャミィを挟んで、左右からぐりぐりと頬擦りする。


「肌がもっちもち」

「気持ちいい~!」


 姉妹に左右から挟まれたキャミィは、口がとんがって見たこともない顔になってる。ちょっと面白い。


「ウォルト…。なんとかしてほしいのだけれど…」


 無表情なのに困っているのがわかる不思議。


「キャミィは可愛いね~」

「家に連れて帰りたい~!オーレンを追い出そう!」


 妹を可愛がっている感覚なのか、もの凄くテンションが高い。アニカだけじゃなくウイカもなのは珍しい。ただ、このままだとキャミィは押し潰されてしまいそう。


「2人とも。キャミィが困ってるよ」

「そんなことないよね~」

「ウォルトさんは大袈裟です!」


 話を聞いてくれない。


「ウイカ、アニカ。食事はゆっくりしたいの。私はウォルトの料理が好きだから」

「はっ…。ゴメンね」

「ゆっくり食べよう!」


 結果キャミィは自力で抜け出した。食後にお茶を飲みながら会話する3人は、ゆっくり打ち解けているように見える。


「皆を見てると、初めて会ったって感じがしないなぁ」

「そうですか?」

「会う前から仲良くなれると思ってたので!」

「そうね。私もよ」


 そんな人には中々出会えない気がする。会う前から仲良くなれそうなんて思ったこともない。


「ウォルトさんのおかげです」

「なんで?」

「貴方が繋ぐ縁はいい思えるからよ」

「だよね!ウォルトさんは変な人を紹介しない!」


 ボクの手柄じゃないとしても、そう思ってもらえるのは地味に嬉しいな。紹介できないような人と付き合いはない。


「ねぇ、キャミィ。私達にエルフの魔法を見せてもらったりできる?」

「いいわ。私も人間の魔法を見てみたい」

「やったぁ!楽しみ!」

「じゃあ、外に行こうか」


 更地に出ると、まずボクとキャミィの魔法戦を見たいと希望された。


「キャミィ。いいかい?」

「もちろん。こちらからお願いするつもりだったから」

「じゃあ、お手柔らかに」

「必要ない」

「「あはははっ!」」


 いつものごとく魔法戦を繰り広げる。キャミィは、会う度に放つ魔法の強度を上げてくれてる。ボクも多少は成長できてるってことかな。長く闘えたらその分アニカとウイカに本物のエルフ魔法を見せてあげられるから頑張ろう。


「魔力切れよ」

「お疲れさま」


 キャミィの魔力切れ宣言がボクらの魔法戦終了の合図。限られた時間の中で、エルフ魔法の基本から応用まで試してくるから、とてもタメになる。今日も学ばせてもらった。


「どうだったかしら?」

「凄かった」

「さすが大魔導師!ウォルトさんは、女性魔導師ではキャミィが一番凄いって言ってるのがわかりすぎる!」

「そうなのね。嬉しいわ。貴女達の魔法も見せてもらっていいかしら?」

「もちろん」

「ウォルトさん!お願いします!」


 次は姉妹と魔法戦を繰り広げる。成長が著しく、戦闘魔法から障壁までスムーズに操り魔力の限界量も右肩上がり。この勢いで成長すると、師匠を超える大魔導師になれる可能性を秘めてる。

 今はまだ教えられることがあるけど、教えることがなくなり次第、晴れて弟子を卒業してもらおうと思ってる。その時は高みを目指す2人の力になれるように最大限できる補助をやっていきたい。


 そして、2人が大魔導師になった暁には、逆に教えてもらうのを期待してたりする。


「「ありがとうございました!」」

「お疲れさま」

「ウイカもアニカも、まだ若いのに大したものね。もっと幼い魔法だと思っていたけれど洗練されている」

「まだまだ幼いよ」

「キャミィやウォルトさんに比べたら赤ちゃん魔法だよ!でも、これから成長していくからね!伸び代に期待!」


 ウイカとアニカの要望で、キャミィと姉妹も魔法戦をやってみることになった。ボクは魔力の補充係。


「くうぅぅ…っ!」

「手加減されてるのにっ…凄い威力っ…!」


 キャミィの魔法は2人の力量に合わせた威力で、かなり余裕がある。逆に放たれた全ての魔法を軽々と受け止める。端から見ると、いつもと違って勉強になるなぁ。


「とても面白いわ。力を合わせたら魔法の幅が広がるなんて」


 ウイカ達は効果的に2人で魔法を繰り出してくる。冒険で連携を磨いてるんだろうけど学ぶことは多い。


「褒められても…まったく効いてないよねっ…。このぉぉ…」

「見た目と違って…キャミィの魔法は妹じゃないっ!」


 粘り強く健闘したけど、魔法戦はキャミィの圧勝に終わった。


「圧倒的に負けた~」

「悔しいぃ~!でも、また目標ができたよね!」


 無表情のキャミィに頬擦りしながら2人は悔しがる。


「ウォルト…。モフられてる時の貴方は、こんな気持ちなのね…」

「実感してもらえてよかったよ。嫌じゃないだろう?」

「そうね。私に子供がいたらこんな感じかしら」


 そうかもしれない。でも、キャミィの方が子供に見えるんだけ……ど…。


 住み家に近づいてくるこの匂いは…。風上に目を向けると、森から友達が勢いよく飛び出してきた。姿を見せてから全速力で駆けてくる。


「「ウォルト~!」」


 全開の『筋力強化』で2人を受け止める。


「残念!倒せなかったな!」

「ウォルトは強くなってるぞ!」

「跳び付いちゃダメだってチャチャに言われてるだろう?久しぶりだね。ペニー、シーダ」

 

 また逞しく成長してる。頭を撫でると尻尾を振ってくれた。


「…ん?」

「そこにいるのは、ウォルトの友達か?」


 キャミィ達に気付いた様子。


「そうだよ」

「ウォルトさん…」

「誰ですか…?」

「あれ?教えてなかったっけ」


 チャチャも言ってないのか。


「俺はペニー!ウォルトの友達だ!狼じゃないからな!」

「銀狼だぞ!俺はシーダだ!」

「銀狼…。森の伝説ですね」

「聞いたことあります!本当にいたんですね!」

「2人は、ボクとチャチャの友達なんだ」

「「よろしくな!」」


 それぞれについて紹介しようと思っていたら…。


「ウォルト。いきなり抱きつかれたけどなんでだ?」


 キャミィがペニーに跳び付いて、背に乗ったままモフっている。毛皮に顔を埋めて見えないけど、鼻息が荒い。きっとだらしない顔をしてるんだろう。あえてなにも言うまい。


「彼女はキャミィ。ボクの友達でエルフなんだ。毛皮が大好きだからしばらくそのままでもいいかい?」

「重くないし別にいいけど、エルフは変わってるな!初めて会う!」

「まだ小さいぞ!ルリと同じだ!」

「子供ではないけどね」


 とりあえず興奮しているキャミィは無視して、ウイカとアニカが簡単に自己紹介してくれた。


「そうか!アニカとウイカはウォルトの番なんだな!」

「チャチャだけじゃなかったのか!知らなかったぞ!」

「いや。どっちも違うよ」

「そんなことは置いときましょう」

「私達も友達になりたいの!」

「「いいぞ!」」


 姉妹は否定してくれない。毛皮を撫でまわして誤魔化されている。…と、キャミィが急にペニーから飛び降りた。顔はいつも通り無表情。


「私はエルフのキャミィ。ペニーとシーダと友人になりたいのだけど」

「エルフの友達は初めてだ!」

「もちろんいいぞ!」

「ありがとう。嬉しいわ」


 ちょっと言っておこうかな。


「ペニー。シーダ」

「「なんだ?」」

「ボクの友達は優しくていい人ばかりだ。でも、他の人に軽々しく友人になろうって言われたら疑わなきゃダメだよ」


 普通に話したり狼吼を使える銀狼を見世物にしようとする輩がいるかもしれない。ボクも魔法を操る獣人だから似たような立場だけど。


「ウォルトの友達だからなるに決まってるだろ」

「そうだぞ。俺達は誰でも仲良くなるワケじゃない」

「それならいいんだ」


 首を傾げる仕草が可愛かったのか、キャミィが過去最高の素早さでシーダに抱きついた…。


「そんなことより、俺達の狼吼を見せたい!」

「かなり上手くなったんだぞ!」

「「「狼吼?」」」

「銀狼が操る魔法に近いモノだよ。凄く格好いいんだ」

「見たいです」

「私も!」

「私もよ」

「じゃあ、手合わせするかい?それとも、先に肉を焼こうか?」

「先に手合わせしよう!」

「そのあとに肉を食うぞ!」

「わかった」


 久しぶりに手合わせする。進化した狼吼を見せてもらおう。




「ガアァァッ!」

「ガルルルッ!」


 ペニーもシーダも狼吼がかなり上達してる。素早く動きながらの正確な照準と見事な威力。身体に纏う狼吼での攻撃にも目を見張る。


「シーダ!」

「任せろ!行くぞ!」


 驚いたのは連携した攻撃も繰り出してきたこと。まるでアニカとウイカのように補い合って攻撃してくる。最強の銀狼を目指して修練を重ねているんだな。


「フゥゥ…。降参だ!」

「ハァァ…。まだまだ鍛え方が足りなかったぞ!」


 ボクが凌ぎきって手合わせは終了。健闘を称えて互いにモフり合う。


「ペニーもシーダも凄いね」

「格好よかったよ!」

「そうか!」

「もっと褒めていいぞ!」


 アニカとウイカに撫でまわされて嬉しそうな笑顔。こうやって交流の輪が広がるのはいいことだ。


「今日、俺とシーダは泊まるんだ!アニカ達はどうするんだ?」

「私とお姉ちゃんも泊まるよ!」

「そうか!楽しくなるな!チャチャも呼ぼう!」


 ペニーがキャミィの前に立つ。


「キャミィは帰るのか?」

「私は……」


 ちらっとボクを見た。


「キャミィがよければ全然構わないよ。1人では寝れないけど、ベッドはあるし気にしなくていい」

「泊まらせてもらおうかしら」

「やった!キャミィも一緒に寝よう!」

「それは……最高ね」


 ペニーを見る目が怪しい気がするけど…まぁいいか。とりあえず、チャチャやサマラも呼んで夕食は焼き肉にしようかな。

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