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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
55/732

55 最高の威力

暇なら読んでみてください。


( ^-^)_旦~

「魔法って、どの属性が一番威力が高いんでしょうか?」


 ウォルトの住み家で絶賛修練中のアニカが尋ねた。今日はオーレンと別行動で住み家を訪れている。



「どうかなぁ?ボクは師匠と違って魔法の知識は全然なんだ」


 ウォルトさんはこう言うけど、私が知る魔導師の中で最も魔法に詳しい。


「ちなみに、ウォルトさんは何個属性使えますか?」

「数えたことないなぁ…。火、風、水、氷、光、闇…」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」


 指折り数えていたウォルトさんを手で制する。


「どうしたの?」

「火とか氷は知ってるんですけど、光とか闇ってなんですか…?」

「光魔法とか闇魔法って呼ばれる魔法があるんだ。正式な属性なのかは知らないけどね」

「見せてもらうことってできたりしますか?」

「使うのに条件があるから今は無理だね。機会があったら見せるよ。光とか闇って名が付いても、ボクが使えるのはそんな凄い魔法じゃないけど」

「是非お願いします。楽しみです!」


 多分凄い魔法だよね!


「それにしても、魔法の扱いが上達したね。出会った頃と比べると大違いだ」

「師匠がいいですから!」

「師匠じゃないけど持ち上げ過ぎだよ…」


「照れるニャ…」とか言いそうな表情をしている。めっちゃ可愛い。


 魔法の扱いは出会った頃に比べると雲泥の差だと自分でも思う。詠唱は格段に速くなったし、魔力量も増えて使用できる魔法も回数も増えてる。

 出会った頃は『火炎』と生活魔法しか使えなかったけど、今では『治癒』や『氷結』も使えるようになった。すべてウォルトさんのおかげだ。


「あの…ウォルトさんにお願いがあるんですけど」

「なんだい?」

「ウォルトさんの使える魔法で、威力が最高の魔法を見せてもらえませんか?」

「別にいいけど、ココでは無理だね」

「ココじゃなければいいんですか?」

「森に被害が出るからね。ボクの修練場なら大丈夫だと思うから一緒に行ってみる?」

「修練場?!行ってみたいです!」

「わかった。行ってみよう」


 善は急げとばかりにひと通りの準備を終えると、修練場に向けて出発した。




 会話しながら森を歩くこと1時間ちょっと。修練場の入口に辿り着いた。


「ボクの魔法の修練場だよ」

「ほへぇ~。立派な洞窟ですね…って、あれ…?」


 なにやら近くでガサガサ音がすることに気付く。見渡すと少し離れた森の中でスケルトンが徘徊しているのを発見した。


「あれは…スケルトン?!ウォルトさんは待ってて下さい。ちょっと行ってきます!」

「アニカ!ちょっと待って…!」


 ウォルトさんの制止も聞かず、一目散にスケルトンに向かって駆け出す。接近する私に気付いて剣を片手に威嚇してきた。武器を持ってるなんて珍しいスケルトンだ。


「なんでスケルトンがこんなとこにいるのか知らないけど…見つけたからには放っておけない!」

『なんだ?お前、冒険者か?』

「スケルトンが喋った?!……あっ!!まさか!」


 コイツは噂の…。スケルトンはいやらしい口調で続けた。


『若くて可愛い姉ちゃんだな~。ぐぬふふ♪楽しくなってきた!オレと…遊ぼうか!』

「お前は絶対に倒す!」


 こんの…エロスケルトンめ!互いに臨戦態勢に入る。ウォルトさんは少し離れた場所で様子を見守ってくれてる。いざというときのために待機してくれてるのかもしれない。


 先に動くことに決め素早く詠唱する。


『氷結』


 スケルトンに向かって凍気を放つ。…が、ひらりと躱された。


『お前は魔導師か?若いのにやるじゃねぇか。だが、1対1じゃ分が悪いぞ?どうするよ?後輩』

「魔物に褒められても嬉しくない!それに後輩ってなによ!?」

『気の強い姉ちゃんだな…。嫌いじゃないぜ!』


 絶対に成仏させてやる!


『次はこっちから行くぞ!オラァ!』


 勢いよく突っ込んでくる。ただ、威勢のよさとは裏腹にスケルトンは基本動きが遅い。ちょっとコミカルですらある。それでも普通の人間より速い。カタカタと顎を鳴らしながらブンッ!と剣を振り下ろすも見切って躱した。


 今の私の力をウォルトさんに見てもらう!


『身体強化』


 ギルド内外問わず知り合った魔導師と積極的に交流して、ウォルトさんを驚かそうと密かに修得していた『身体強化』を身に纏う。


「うりゃぁぁ!」


 剣撃を躱した直後、拳を握り締めてスケルトンの右側頭部を殴りつけると衝撃で体勢を崩してうつ伏せに倒れた。


『カカカッ!魔導師が殴ってくるとはな!予想外だぜ!やるじゃねぇか!』

「あっそ!あらよっと!」


 起きあがろうとしたので背中に馬乗りになってボコボコと頭を殴りつける。


『あいだだだだっ!!やめろ!こらっ!』

「成仏させてやる!食らえ!皆の恨みの一撃!ていっ!ていっ!」


 魔導師なのにひたすら拳で殴りつけていると、背後からウォルトさんの声がした。


「アニカ。そのくらいにしてあげて」

「止めないで下さい!コイツは女性の敵なんです!死んでますけど息の根を止めないと!」

「女性の敵?とりあえず後で詳しく聞くからね」


 馬乗りになって殴り続けている私の脇をウォルトさんが掴むと、ヒョイっと持ち上げられて立たされた。


 なんで?


「スケ三郎さん。もう起きて大丈夫ですよ」

『あだだ…』

「えっ!?ウォルトさん、このスケルトンと知り合いなんですか!?」

「うん。アニカの成長が見たかったから直ぐに教えなかったんだ。ゴメンね」


 カタカタとスケ三郎さんが起き上がる。


『痛ってぇ~。姉ちゃん強いな!…って、ウォルトじゃねぇか!』

「お久しぶりです。彼女はアニカといってボクの友人です」

『そうか!お前も隅におけないな。カラカラッ!』


 ど、どういう関係なんだろう?


「アニカはスケ三郎さんを『女の敵』って言ってたけど、なぜだい?」

「女性冒険者の間で話題になってるんですけど、動物の森に人語を話すスケルトンがいて、その…胸やお尻を触られたりする被害が多発してまして…。何人かが倒したはずなのにいつの間にかまたいると…」


 ウォルトさんの表情が険しくなる。


「スケ三郎さん…。本当ですか?」

『おうよ!女がいたら触れあいたくなるだろ?触るだけだし減るもんじゃなし!まぁ、ウォルトはスケベなくせに変に紳士ぶってるから無理かもな!』


 スケ三郎さんは反省の色なしでカラカラ笑う。対照的に、スケベ呼ばわりされて珍しくムッとした様子のウォルトさんはスケ三郎に向かって手を翳した。


『氷結』

「な、なんだぁ?!」


 スケ三郎さんの頭以外に『氷結』をかけて動けないよう固定した。


「アニカ。反省してないみたいだから、もうちょっと殴っても大丈夫だよ。他の皆さんの分もね」

『こら!ウォルト!お前だって男なんだから触りたいだろうが!格好付けやがって……このエロ猫が!』


 なんてこと言うんだ、この骨は。喚くスケ三郎をウォルトさんは無視する。私は青筋を立ててスケ三郎の眼前で仁王立ち。


「最初は女性の敵だと思ってました…。けど、師匠を馬鹿にされると弟子は敵とみなすものですよ?スケ三郎さん?」


 黒い笑顔で指をポキポキ鳴らす。


『…ふっ!お嬢さん…。無抵抗の骨を殴るのはオジサンどうかと思うな…。そもそも君達の身体が発育しすぎているのが悪いん…ホネェェェ!』


 それからしばらく森に骨の軋む音が響き渡った。




 骨なのに気絶するまで殴ったスケ三郎さんを森に放置して、私達は洞窟の奥にある修練場に辿り着いた。

 ウォルトさんの友人を殴ってしまったことに申し訳ない気持ちは……特にない。許可をもらったし、女の敵だから!


「ココは?」

「ボクの魔法修練場なんだ。どれだけ魔法を詠唱しても壁や天井が崩れないようになってる」

「そんなこと出来るんですか?!」


 どういう理屈なんだろう?


「ボクの師匠が修練用にってね」

「ウォルトさんの師匠って…とんでもない人ですね…」

「そうだね。それはさておき、ココなら高威力の魔法でも問題なく使えるから見せることができるんだけど…ちょっと待ってて。お~い。みなさ~ん!」


 ウォルトさんが声を上げると、スケルトンが地面から湧いてきた。


「ひえぇ~!?」


 ドン引きしていると、その中でも一際大きなスケルトンがウォルトさんに話しかける。


『今日は1人ではないんだな?珍しいこともあるもんだ』

「お久しぶりです、スケさん。彼女はアニカといってボクの友人の冒険者です。アニカ。この人達はボクの友人で君にとっては元冒険者の先輩達だよ」


 スケルトンの正体が元冒険者の先輩だったなんて…。だから後輩って言われたんだ。気を取り直してペコリと頭を下げる。


「初めまして!新人冒険者のアニカと言います!よろしくお願いします!」

『礼儀正しい娘だな。ゆっくりしていくといい。ときにウォルト。スケ三郎を知らないか?』


 スケさんは大きいのに凄く紳士そう。スケ三郎さんとは全然違う。


「スケ三郎さんは外にいましたよ」

『遊び回って困ったもんだ。ところで、今日はどうしたんだ?』

「アニカに、ボクの使える最高威力の魔法を見せたいと思って。ココなら大丈夫かと」

『ならば、俺達はしばし待避するか』

「ありがとうございます。すぐ終わります」


 スケさんは私に顔を寄せて『よく見ておくといい。滅多にお目にかかれぬ魔法が見れるぞ』と告げた。スケさん達は、そそくさとウォルトさんの背後に回る。


「じゃあ、今から見せるよ。ボクも1発しか撃てない魔法だからよく見ておいて」

「わかりました!」


 ウォルトさんは目を瞑って精神集中を始める。直ぐに身体がうっすら輝きだした。相当集中した状態。どんな派手な魔法が飛び出すのか緊張して見ていると…。


圧縮爆弾(ボメスト)


 上に向けた掌から人の頭くらい魔力の球体が現れ、ウォルトさんは修練場奥の壁に向かって放った。


 次の瞬間、中央の土がボコッと盛り上がって地中から勢いよくスケ三郎さんが飛び出してきた。どうやって移動してきたの!?


『ウォルトォォ~…!!てんめぇ…よくも新種の拷問にかけてくれたな!身動き取れなくされた挙げ句、女に殴られ続けるなんぞ、危うく新しい嗜好の扉が開くとこだった………ぜ?』


 出現した場所が悪い。放たれた魔法の軌道上に出現してしまってる。絶体絶命のスケベスケルトン。


「スケ三郎さん!避けて下さい!」

『スケ三郎!避けろ!!』

『『『『『スケ三郎、死ねぇ~!!』』』』』


 三者三様に声を掛けられたスケ三郎さんは、迫り来る魔法の球体を間一髪で躱した。ウォルトさんが胸を撫で下ろしてる。


『ふぅ…。驚かしやがって…。ウォルトめ!もう許さんからな!あとさっき死ねって言った奴も許さん!』


 再びウォルトさんが叫ぶ。


「スケ三郎さん!危ないです!後ろ!」

『あん!?騙されねぇぞ!なにもいるワケねぇだろ……?!』


『圧縮爆弾』は勢いを保ったまま壁に到達した。壁に接触した瞬間、眩い閃光とともに大爆発が起こる。


「きゃあぁぁっ!!」


 凄まじい衝撃と爆音。崩れないはずの洞窟がゴゴゴゴ…と悲鳴を上げて巻き起こった爆風に立っていられない。とんでもない威力を肌で感じる。

 舞い上がった砂塵も落ち着いて視界が戻ると…スケ三郎さんの姿は跡形もなかった。


「スケ三郎さん……」


 ウォルトさんはスケ三郎さんが居た場所を見つめてる。『ニャんで…』とか言いそうな表情で。スケさんが後ろから肩をポンと叩いた。


『お前が気に病むことはない。いきなり飛び出したアイツが悪い』

『そうだよ!危ないっつってんのに、ボ~っとして。なに考えてんだ、あのバカ!』

『目に見えなくても少しでも残ってれば復活するぞ!心配いらないって!』

『心配するだけ無駄骨を折る!骨だけにな!カラカラ!』

「そうだといいんですが……」


 スケさん達は、ウォルトさんに優しい言葉をかけてる。優しい人達……いや骨達だ。


「大丈夫かい?」


 ウォルトさんはペタンと座り込んでいる私に手を差し出してくれた。そっと掴むと、優しく引っ張って起こしてくれる。


「今のボクが使える最高威力の魔法だよ」

「はい!凄かったです!」

「大袈裟だよ。大したことないからね」


 薄々気付いてはいたけど確信した。きっとこの国にいる魔導師でウォルトさんより優れた人はいない。もしかすると世界中探してもいないんじゃ?

 弟子を名乗るなら、もっともっと魔法を磨いて少しでも近づけるように努力しよう!そうじゃなきゃ失礼だ!


 静かな決意を胸に宿し、先輩達としばらく会話して修練場をあとにした。



 ★



 その後、スケ三郎は辛うじて粉状で空気中に存在していたようで、1ヶ月ほどかけてゆっくり復活し、「次にウォルトに会ったときはギッタギタにしてやる!」と意気込んで猛特訓を開始した。


 アニカはというと、ギルドでスケ三郎と遭遇した情報を他の女性冒険者たちと共有したことがきっかけで、近々『被害者の会』有志による討伐隊が組まれることが正式に決定した。


 ウォルトとの再戦までスケ三郎は生き残ることができるだろうか。

読んで頂きありがとうございます。

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