532 初めての花街
「遠いとこまで来てやったぞ」
「一切頼んでません」
「んだとコラァ!」
「ウォルト。いきなり騒がしくてごめん」
「お久しぶりです」
ウォルトの住み家を訪ねてきたのは、リオンの娘クーガーとサマラの友人でフクーベの夜鷹である狐の獣人リタ。住み家に招き入れる。
「おい!お前の愛人共はいねぇのか!?」
「誰のことを言ってるんですか?」
番もいないのに愛人がいるワケない。
「ちっ…!大食いでぶっ倒してやろうと思ったのによ!」
アニカとウイカのことを言ってるんだな。サマラがボクの番で、大食いで勝てると思ってることもそうだけど、大きな勘違いだ。
「なにか飲まれますか?」
「私はカフィが飲みたい」
「クーガーさんは?」
「水を寄越せ!」
「クーガーはカフィが苦くて飲めないんだよ。舌がお子ちゃまなんだ」
「なんだとコラァ!舐めんなよ!」
相変わらず騒がしいな。とりあえず淹れてこよう。
「う~ん!美味い!」
「リタさん。病気は再発してないですか?」
「おかげさまで絶好調。もう罹りたくないけど狙って防げないからな。ところで、治療のお礼でサービスしようと思って首を長くして待ってるぞ。いつ来るんだ?」
「今のところお世話になる予定はないです」
「森の中で過ごしてると発散したくなるだろう?いつでも来てくれ」
冗句だろうけど、本当に気遣ってくれてる可能性も……ないか。
「行くことがあればその時はお願いします」
「あははっ!私を指名してくれるのか!」
「花街に行くなら知ってる人に相手してもらいたいので」
「そうか。気合い入れとこう!」
「けっ…!正直にヤリたいって言いやがれ、ムッツリスケベが!…痛っ!なにしやがる!」
「クーガー、下の事情は人それぞれだ。決めつけちゃいけない。皆に言われてるだろ」
「うっせぇ!」
リタさんは仕事に真面目だと知ってるから正直に言ったんだけどな。
「ところで、今日はなにか用があって来たんですか?」
「クーガーを夜鷹にするにはどうしたらいいか相談に来たんだよ」
「無理ですね。根本的に向いてません。ボクが客なら即行で帰ります」
「んだとコラァ!なんでお前にそんなこと言われなきゃいけねぇんだ!テメェなんぞこっちから願い下げだ!」
「はははっ!ハッキリ言うね。アタシはできないとは思わない。それは冗談として、また病気について訊きにきたんだ」
「どんな病気ですか?」
罹患者の症状について詳しく聞く。
「似た症状の病気を知ってます」
「知ったかぶってんじゃねぇだろうな!遊びで来てんじゃねぇんだぞ!」
「ボクは真面目に答えてる。気に入らないなら今すぐ帰れ」
「んだとぉ…!」
「ボクは患者を診てない。医者でもない。想像で話されるのが嫌なら最初から来なければいい。付き合ってられない」
「テメェ…!」
いちいち絡んでくるから落ち着いて話ができない。この人と話すのはやっぱり5分が限界だ。
「ウォルト、ごめんよ。クーガー、ちょっと黙ってな」
「ちっ…!」
「リタさんはなぜボクに訊きに来たんですか?フクーベの医者を呼んだ方がいいです」
「もちろん呼んださ。けど、ちゃんと診てるのか怪しい」
「医者なのにですか?」
「花街には外国の奴らも集まる。いろんな病気が持ち込まれるから医者には厄介だと思われてんのさ。去年ずっと世話になってた爺ちゃん先生が亡くなったもんで苦労してる」
「大変ですね。ボクの知る病気だとすれば薬を作れます。使うかは自己責任になりますが渡しましょうか?」
話を聞く限り嘔吐と下痢が持続するクリープ症の症状だ。致死率はさほど高くないと云われているけど、衰弱して長い期間仕事にならないだろう。さらに簡単に伝染る怖い病。
「お願いしたい。罹ってるのが子供だから早く楽にしてあげたくてさ」
「子供?花街には子供がいるんですか?」
「結構いる。仲間が生んだ子だったり、身寄りがなくて来た子なんかもね。皆で育ててるんだ」
「そうでしたか。であればボクも花街に行っていいですか」
「なんで?」
「子供に対する処方は量や飲み合わせに気を付けないと危険な場合があります」
「お願いしていいのか?」
「はい」
「けっ…!ホントにわかってんのかよ!偉そうなこと言って治らなかったらぶっ殺すぞ!」
本っ当にうるさいな…。リタさんの護衛として一緒に来たんだろうけど、なんとか静かにしてもらえないだろうか。今からずっとこの調子だとさすがに我慢できない自信がある。
……そうだ。
「クーガーさん。今から手合わせして、もしボクが倒したら今日1日だけ言うことを聞いてくれませんか」
コレしか手段が思いつかない。ボクから手合わせを提案するのは初めてだけど、なんて言うかな?
「…上等だコラァ!テメェが負けたらクソほど罵ってやるから覚悟しとけ!」
話が早くて助かる。よく言えばわかりやすい性格で付き合いやすい獣人なんだよなぁ。ただ、あまりに口が悪すぎて一緒にいたくない。
さて、やろうか。
薬を調合してから住み家を出発して、無事にフクーベに到着した。3人並んで歩きながら花街を目指す。
「ウォルト。クーガーに勝つなんてすごいな。怒るかもだけど正直驚いた」
「たまたまです。わかりやすい人なので」
クーガーさんとの手合わせでは、完全に動きを読み切って軽く獣人の力を込めた腹への一撃で沈めた。生身の拳では倒せないからそこは仕方ない。
闘っている姿を何度も見てるので、嫌でも癖や得意な攻撃を覚えてる。動きに変化がない内は魔法を使わなくても倒すのは難しくない。クーガーさんにだけは絶対に魔法を使えることを知られたくない。もの凄く面倒くさいことになりそうな予感がする。
「こんなに黙ってるクーガーは初めてで気持ち悪いな」
倒したのでしばらく黙ってもらうようお願いした。『勝ったら』ではなく『倒したら』という約束。もの凄く不満そうだったけど。
「明日はうるさいと思うので心配いりません」
「ははっ。ハッキリ言うなぁ」
不貞腐れて外方を向いてるけど、約束なんて反故にしそうなのにちゃんと守る律儀さは素晴らしい。嘘はつかない人だ。路地を抜けて花街の区画に入ると匂いが一変する。
「お香の匂い…ですか」
「そう。キツい?」
「クラッときます」
かなりキツいな。口呼吸だけにしよう。
「やっぱり客の気分を盛り上げなきゃならないから、そういう効果があるんだよ」
「なるほど」
「ウォルトにも効いてる?」
「もう匂わないのでわかりません」
「着いた。あの家だよ。一応隔離ってヤツをやってんだ」
家に入り2階に上がると部屋で3人並んで寝てる。獣人と人間の女の子。
「アンタ達。ちょっとだけ起きな」
「…リタねえさん?」
「クーガーと…だれ…?おきゃくさん…?」
「違うよ。猫のお医者さんだ」
「しろねこのおいしゃさん…。かわいい…」
「可愛いのは君達だよ。ボクはウォルト。少しだけ話を聞かせて」
症状について幾つか質問させてもらうと、やっぱりクリープ症で間違いないと思われる。
「うぉると…。わたしたち……なおる…?」
「治るよ。大丈夫だ」
「よかったぁ…」
3人の体格に合わせて最後の調合をする。
「この薬を飲んで。少し苦いよ」
「ん…。にがいぃ…」
「頑張って飲むんだ」
1人ずつ薬を飲ませながら、小さな身体に治癒魔法を巡らせる。体力が弱ってると病と闘えない。コレだけで違う。
「あったかくなった…」
「ふしぎ…」
「きもちいい…」
「あとはゆっくり寝ていれば治るよ」
軽く『睡眠』も付与する。
「リタさん。皆はクリープ症だと思います。残念ですが特効薬はありません」
「じゃあ、さっきの薬はなんだ?」
「滋養と体力を回復させる薬です。下痢で脱水症状が激しいので水を沢山飲ませてください。ほんの少し塩を混ぜるといいです。たとえ飲むのを嫌がっても水だけは必須です」
「わかった」
「早ければ明日、明後日くらいから回復するはずです」
診た医者もおそらく同じ診断を下したと思うけど、一応言っておこう。
「花街で他に罹っている人は?」
「今のところいない。この子達だけだ」
「回復したんですか?」
「違う。大人は誰も罹ってない」
それは…気になるな。
「感染源は客じゃないかもしれませんね」
「なんだって?」
「水場はどこですか?この子達だけが使うような井戸とかありませんか?」
「この子達だけが………ある。私らの衣裳の洗い場だ」
「案内してもらえますか」
子供達が衣裳を洗っているという場所に来た。確かに井戸がある。
「衣装なんかの洗い場だ。気になることがあるのか?」
「客が感染源なら大人が先に罹患しているはず。現状発症してないとしても、潜伏期間からみて先に子供達が感染しているのは間違いないです」
「もっとわかりやすく言ってくれ」
「病気はほぼ罹った順に症状が出ます。つまり、子供が先に感染してます」
「なんだって…?他に原因があるって言うのか?」
井戸の底を覗いてみる。かなり暗いけれど、『夜目』を使うとハッキリ水面が見えた。…なにか底に沈んでるな。
近くに置いてあった物干し竿を手に取って、井戸の底から拾い上げる。竿先から闘気で作った鈎を作り出せば容易い。
「汚れたハンカチ…。なんでこんなモノが井戸に落ちてるんだ…?」
一部は変色して微量の汚物が付着していた痕がくっきり残っている。
「クリープ症は伝染病ですが、元々は地下水に混入した汚水や動物、獣の糞尿などから罹患すると云われています。今回はこのハンカチの持ち主が故意に水を汚した可能性が高い。子供達は井戸水に触れて感染したのかもしれません」
「飲み水には使わないよう言ってあるぞ」
「水に触れた後、なにかの拍子に口に入るだけで感染する可能性はあります」
「もし本当ならとんでもない話だ。ちょっと情報を集めてみる」
汚いハンカチを手にリタさん達と花街を駆け回る。客とは限らないけど、持っていた人物がわかれば…という望み薄な調査だったのに…。
「私、見たことあるよ」
「本当か?」
意外に早く情報を掴めた。
「生地も上等で珍しい柄じゃん。よく覚えてる」
「誰のだ?」
「ポポだよ」
「なんだとぉ~!?」
「ポポとは常連ですか?」
「…世話になってた爺ちゃん先生の孫で、花街の常連の医者だ…」
「医者が…?」
なぜなんだ?井戸にハンカチが落ちる理由が思いつかない。普段は蓋が閉まってるらしいから、風に飛ばされた可能性は低い。誤って落ちたとしても人間が上がってこれる高さじゃない。やっぱり故意に落とした可能性が高い。
「あんの豚野郎っ…!狙いはガキ共じゃねぇなっ!ぶっ殺してやる!」
ずっと黙っていたクーガーさんが急に駆け出した。
「クーガー!ちょっと待てっ!遅かった…」
「どこに行ったんでしょう?」
「きっとポポの所だ」
「なぜですか?それに、狙いは子供達じゃないっていうのは?」
「もしかすると、狙われたのはクーガーかもしれない。ポポは、クーガーに「金ならある。ヤラせろ」ってボコボコにされたことがある。花街の用心棒の他に子供達と遊んだり一緒に雑用もしてくれるのをポポが知ってたら…」
仮に正しいとすれば子供達は逆恨みの巻き添えを食らった…ということか。確証はないけど、一歩間違えば命に関わる病を医者が故意に発症させたとすれば…。
「診療所はどこですか?」
「聞いてどうするんだ?」
「クーガーさんを追いかけます」
教えてもらったポポの診療所に到着して、中に入ると怒号が聞こえてきた。
「このクソがぁぁっ!ゴルァァッ!テメェの汚ぇ股に付いてるモンを捩じ切ってやる!」
「げはぁっ!も、もう…し、死ぬ…。やめ…てくれ…」
「テメェを殺しに来たんだよ!」
「ひぃぃぃ…!」
声のする部屋に入ると、怒り狂ったクーガーさんと倒れている白衣を着たぽっちゃり男、そして部屋の隅でガタガタ震えている看護師らしき女性がいた。
「ドラァァッ!」
「く、苦しい…!」
顔が腫れ上がった白衣の男の胸ぐらを掴み、片手で軽々と持ち上げ血走った目を向ける。コイツがポポで間違いない。
「クーガーさん。少しだけ待ってくれませんか」
「…んだ、コラァ!なにしにきやがった!?」
「少しの時間で構いません。ボクの言うことを聞いてほしいんです」
「うるせぇ!コイツを殺したら聞いてやるよ!」
やっぱりダメか。
「おいっ…!猫のお前っ…!このバカ女を止めろっ!」
ポポはボクを見てくる。
「無理です。諦めて死んでください」
「じょ、冗談言うなっ!助けろぉぉ!」
「ハハハッ!初めて気の利いたこと言ったな、この野郎!」
「ただ、質問に正直に答えるなら止めても構いません」
「なに勝手なこと言ってんだコラァ!」
「少しだけ質問させてもらえませんか?お願いします」
激しく立腹してるのは百も承知。今回はクーガーさんが当事者でボクの要望はただの我が儘。それでも、なんとか聞き入れてもらいたい。
「…ちっ!さっさと訊けやっ!」
「ありがとうございます。では、ポポさんに質問です」
「答えたら助けろよ!なんだ?!」
宙に浮いたままのポポに歩み寄る。
「花街の井戸に汚物が付いたハンカチをわざと投げ込んだのはお前か?」
「やってない!なんで俺がそんなことしなくちゃならないんだ!」
「お前の持ち物だという証言がある。違うのか?」
「同じモノは幾らでもあるだろうが!俺のだという証拠はあるのか!?濡れ衣もいいとこだ!」
「病気をクリープ症を発症する可能性があるのを知っていながらやったんだろう?」
「俺は医者だぞ!天に唾吐く真似するか!」
「次で最後だ。お前は…逆恨みでクーガーさんを狙ったな?子供が巻き込まれるのも承知で」
「違うっ!知らんっ!人を罪人みたいに…!ちゃんと答えたぞ!コイツを止めろ!」
「正直に答えたら止めてもいいと言ったはずだ」
匂いの変化による確証は得た。この状況で1つも正直に答えないとは。呆れてしまう。ローブのポケットから小さなガラス瓶を取り出し、栓を抜いて無理やり開けたポポの口に中身を流し込んだ。
「ぶふぅっ…!な、なにを飲ませたっ!?」
「地下で汲んできたばかりの吹き溜まりの下水だ。お前はどんな病に罹るんだろうな」
「な、なんだとぉっ!?ぺっ!ぺっ!貴っ様ぁ…なんということをっ!」
「ハッハッ!面白ぇぞ!この野郎!」
もちろん大嘘。子供達に飲ませた薬の空き瓶に、ただの水を入れて飲ませただけ。曲がりなりにも医者みたいだからな。罪のない患者に感染させるワケにはいかない。コイツと同類になるのは御免だ。ただ、幾何かの恐怖を味あわせないと気が済まない。
「一応約束も守ってやる。クーガーさん…。本当にすみません」
「なんだぁ?……すぅ」
クーガーさんを無詠唱の『睡眠』で眠らせた。ポポを放して倒れ込む身体をそっと受け止める。
「お、お前らは絶対許さんからなっ!衛兵を呼んで今すぐブタ箱にぶち込ん…」
「黙れ」
「ぶべぇっ!」
脂ぎった顔面を軽く蹴り飛ばすと、壁まで吹き飛んで倒れた。ガタガタ震えて縮こまる助手に近づき、念のため匂いを嗅ぎながら尋ねる。
「貴女はこの一件に関係ないですよね?ボク達がなぜ来たのかわかりますか?」
「わ、わかりません!なにも知らないです!」
「そうですか。驚かせてすみませんでした」
この人はどうやら無関係みたいだ。魔法で眠らせ気絶しているポポとまとめて『混濁』を付与する。今日の記憶は残らないだろう。
なぜ殴られたように傷だらけなのか。誰の仕業なのか。そして、水を飲まされたことすら忘れているはず。
「忘れ物だ」
魔法で包んできた汚いハンカチを床に落とし、クーガーさんを肩に担いで診療所をあとにした。
「猫野郎…!テメェ、ふかしやがったな!表出ろ!テメェから先に殺ってやるっ!そのあと、あのクソ野郎だ!」
花街で目覚めたクーガーさんは状況を把握するなり大激怒。あと少しでポポを殺せるところだったのに、気付けば花街に戻っていて暢気に寝ていたのだから意味不明だろう。ボクに魔法をかけられたとは微塵も思ってなさそう。
「クーガー。ウォルトはアンタが人殺しにならないように…」
「関係あるかっ!知ったような口きくんじゃねぇ!テメェも獣人だろうが!逆恨みでガキを殺そうとした奴を殺してなにが悪い!?」
リタさんは擁護してくれるけど、今回はクーガーさんの言い分が正しいと思う。ボクは余計なことをした。
「知ったような口をきいてんのはアンタだよ。じゃあ、あの子達に言ってこい。「お前らのタメに医者を殺してやる。喜べ」って」
え…?
「ざけんな!なんでそんなこと言わなきゃいけねぇんだコラァ!」
「はっ。いい人ぶりやがって。自分達のせいでアンタが捕まれば、子供達は悲しくて泣く。「私のことは忘れろ」って伝えてやれ。最低限のけじめだ。勝手なことして勝手にいなくなるなら最初から子供に情かけんな。我が儘すぎるボケ豹が」
「…んだとクソ狐がぁぁ!テメェも殺してやろうかっ!」
そんな考え方もあるのか…。
「リタねえさん…。クーガー…。ケンカはだめ…」
家の前で騒いだから寝ていた子供達が出てきた。
「アンタ達は寝てな。騒いで悪かった」
「クーガー……いなくなっちゃうの…?」
「いやだよ…」
「もっと……いっしょにあそぼうよ…」
クーガーさんは子供達と見つめあって動かない。少しずつ呼吸が落ち着いてきた。
「…ちっ!どこにも行かねぇから黙って寝ろっ!」
「やくそくだよ…?」
「うそついたら…はりせんぼんのます…」
「わかったから寝ろっ!部屋行くぞっ!」
クーガーさんは3人を腕に抱いて家の中へ消えた。
「ウォルト。アイツを止めてくれて助かった」
「もしポポの元に舞い戻るようなら止める気はなかったです。礼を言われるようなことはしてません」
彼女は子供が好きで許せない行為だったんだ。心境がわかりすぎる。
「私もクーガーと同じだ」
「え?」
「ポポのやったことは許せない。ただ、殺す理由をあの子達のせいにするのは違う。クーガーが病気になったのなら八つ裂きでもなんでも好きにすればいいけど、あの子達は復讐してもらうより一緒にいることを望む。昔からあの子達を見てきたから言い切れるんだよ。いくら獣人でも大人ならそのくらい考える余裕がなきゃな」
「…そうかもしれませんね」
「ところで、今日のお礼に軽く遊んでいかないか?アンタには世話になりっぱなしだ。タダでサービスするよぉ~」
「そんな気分じゃないです。遊びたくなったらちゃんとお金を持ってお願いしに来ます」
「はっはっは!待ってるよ!サマラには内緒で来なよ!」
今回は考えさせられた。勝手な行動をする中でも大事なことを忘れないように…か。
かなり難しいけど、心の片隅に少しの余裕を置いておくように心掛けてみよう。せめて自分の大切な人達を悲しませないようにできたら。
……無理っぽいな。




