501 気が済むまで殴るといい
「お前、とんでもねぇとこに住んでんな」
「そうですか?」
ウォルトの住み家を訪ねてきたのは、獅子の獣人リオンさんの娘であるクーガー。
もう会うことはないと思っていたのに、彼女は拳闘団体を脱退してカネルラに残ることに決めたらしい。その理由は…。
「ウォルトさんと再戦したいらしいです!」
「リオンさんに文句を言いたいのもあるみたいで」
住み家に連れて来てくれたのはウイカとアニカ。昨夜は3人の家に泊まったみたいだ。
「つうワケで、やるぞこの野郎!」
なにが『つうワケ』なのか。
「手合わせならいいですよ」
「なんだそりゃ?」
「殺し合いはやらないってことです」
「つまんねぇこと言ってんじゃねぇよ!ケンカっつうのは命懸けだから面白いんだろ!遊びじゃねぇんだ!」
「だったらお断りします」
「んだよ!ビビってんのか!?」
「ビビってはいないです」
「男のくせに……この玉なしが!」
「挑発されてもやりません」
恩人であるリオンさんの娘だし、命の奪い合いをする理由がない。そもそも誰とも闘いたくないんだ。予期せずそうなってしまったのはエッゾさんくらいで、この人と性格が似てるかもしれない。
「用がないなら帰ってもらえますか?こう見えて忙しいんです」
「テメェ…。嫌でもやらせてやらぁ!……すぅ…」
殴りかかってきたので無詠唱の『睡眠』で眠ってもらう。倒れる前に身体をそっと受け止めた。血気盛んなところは獣人らしいけど、殺し合いならクーガーさんの命は既にない。満足だろう。
「わざわざ連れて来てくれてありがとう。この人はこれからどうするつもりなんだろう?」
「フクーベで仕事を探すみたいです。とにかくウォルトさんに負けたのが悔しいみたいで、言ってもきかなくて」
「勝ってはいないけどね」
「1日で2回も負けたのが悔しかったらしくて、どうしても再戦したいらしいです!サマラさんともやるって言い張ってます!」
「手合わせならやってもいいけど、とりあえずやることをやろうか」
「「はい!」」
問題は一旦先延ばししておこう。クーガーさんにはちょっと深めに『睡眠』をかけ直して、起きるまでの間に畑仕事をこなしたりウイカ達と修練した。正午に差し掛かった頃、目を覚ましたクーガーさんは大騒ぎ。
「お前ぇぇ~!アタシが寝てる間に変なことしたろっ!?」
とんだ言いがかりだ。
「してません。貴女に興味がないので」
「テメェ…。なめたことほざきやがる!」
「そんなことより、昼ご飯を食べますか?食べないならクーガーさんの分は作りませんが」
「ちっ…。食う…」
獣人は食欲に抗えない。寝ながらいびきと共にお腹も派手に鳴っていた。今日の昼食は採れたて野菜と魔物肉のソテーだ。
「くっそ…!美味ぇ…!もっとよこせ!」
「美味しいですよね」
「いつだって絶品なんです!」
笑顔で食べ進める姉妹はクーガーさんよりペースが速い。
「テメェらに負けねぇからな!」
「食事は勝ち負けじゃないですよ」
「美味しく、それでいて沢山頂くことが肝要ですね!」
まぁ、クーガーさんがいくら意気込んだとしても…。
「…く、くるしい…」
「もうですか?私はお代わり下さい」
「私は大盛りでお願いします!」
「なんだとっ…!?」
勝てない猛者というのは存在する。同量をペロリと平らげ、さらに大盛りを追加する猛者が存在するのだ。アニカ達の食事量には逆立ちしてもボクは勝てない。
クーガーさんがとにかく負けず嫌いなのはわかる。ボクが会ったことのある獣人で最も負けず嫌いを前面に押し出しているから。でも勢いだけじゃウイカとアニカには勝てない。
「おい。なんで殺し合いはやらねぇんだ?」
「殺し合いというより闘いたくないです。静かに暮らしたいので」
「やらねぇなら今からコイツらをぶっ殺す…っつったら?」
親指で姉妹を指差した。言うまでもなく答えは決まっている。
「ボクと闘うタメに彼女達を殺すと言うなら、その前に貴女を殺す」
笑えない冗談だ。できないとは思わない。さっきもボクの魔法は通用した。そうなれば躊躇うことなく抹殺するだけ。大切な人の命を奪おうとする者は許さない。
クーガーさんはなにも言わずに豹の目でボクを見つめてくる。
「お前みたいな奴は見たことがねぇ…。クソ弱そうなのに…」
一言多いな……と、突然玄関から声が聞こえた。
「ウォルト!いるか!?」
この声は…。
「ちょっと出迎えてくる」
玄関に向かうと久しぶりに会う獣人の姿。恩人である獅子の獣人リオンさんだ。全く変わりない。
「久しぶりだな!グワハハ!」
「お久しぶりです、リオンさん。突然ですね」
「ときにウォルト。俺の娘が来てないか?」
「来てますが……なぜココにいるとわかったんですか?」
「不思議な『直感』ってヤツだ」
直感…?勘だけで来たのか。
「入らせてもらっていいか?」
「どうぞ」
リオンさんはドスドスと居間に向かう。
「ほぅ…。いい女が3人もいるじゃないか。どんどん子を作れと言った約束を守ってるようだな!」
「約束してません」
「グワハハ!冗談だ。とりあえず……お前がクーガーだな?」
「なんだお前?」
「お前の親父だ。リオンという」
「なんだとっ…?!テメェがっ?!」
「娘の成長した姿を一目見たくてな」
「…ふっざけんじゃねぇ!」
跳びかかって拳を繰り出す。リオンさんは掌で軽々受け止めた。
「いい拳だが俺には届かん」
「…クソがぁぁぁぁ!」
親子ゲンカが始まった。家の中で暴れるのはやめてほしい。とりあえず…。
「……ガァッ!?なんだっ?!急に身体が重くっ…!動けねぇっ!」
「…ふっ。見事だ」
無詠唱で2人に『鈍化』を付与させてもらった。
「ケンカするなら外でお願いします。やるなとは言わないので」
積もる話もあるだろうけど、この親子は静かに会話しそうにない。拳で語り合うにも家の中は御免だ。
「またテメェがなにかやったのか!?この手品猫っ…!」
「外に行くぞ。言いたいことがあるなら獣人らしく拳で語れ」
「…この野郎~!上等だよっ!」
流れ上、ボクらは親子ゲンカを観戦することになった。
「いくぞ!おらぁぁっ!」
更地で親子ゲンカが始まった。リオンさんは避けもせず拳を顔面に受ける。
「ふむ…。気合いの入った拳だ」
「うるせぇ!死ねやっ!」
猛攻を仕掛けるクーガーさん。リオンさんは、殴られても蹴られても仁王立ちで受け止めている。相当痛いはずなのに相変わらず凄い耐久力。しばらくして攻め疲れたのかクーガーさんが距離をとる。
「はぁっ…はぁ…。なんで攻撃してこねぇ!」
「お前が言いたいことを肌で感じようと思ってな。どうやら親に我が儘を言いたいだけか」
「んだとぉ!?」
「俺も返そう」
リオンさんは一息で間合いに跳び込んで、大きな拳を迷わず振り抜いた。
「フン!」
「ぐあぁっ…!」
両腕でガードしたクーガーさんは吹き飛ばされる。それでも素早く立ち上がった。
「お前も感じたか?」
「…ぺっ!なにをだよ!」
「親父の強さを」
「ざけんじゃねぇ!いきなり現れて親父ぶるんじゃねぇよ!お袋も…アタシも捨てたくせしやがって!」
「捨ててない。どちらかというと、捨てられたのは俺だ」
「なに言ってやがる!生まれたときからいなかったろうが!」
「本当だぞ。お前の母ヴィクセンとは番になるつもりだった。だが「番にはならない」と言われた」
「お袋がそんなこと言うワケねぇだろ!」
「嘘を言ってどうなる?俺は惚れてた。だが、俺より強い男に出会うかもしれんという理由で、番になるつもりはないと言われた。アイツらしい」
強さを求める男が多い獣人。女性でも我が子を強くしたいという獣人がいてもおかしくない。
「それが本当でも、なんで一度も会いに来なかった!お前の子だぞ!」
「行ってるぞ。何度もな。赤ん坊のときに会ってる。お前には弟がいるだろう?俺の息子だ」
「はぁっ!?んなワケねぇだろ!テメェはいもしねぇのに!」
「ちょっと前にも会いに行った。弟か妹が生まれるかもしれんぞ。グワハハ!」
「意味わかんねぇ!」
「わからんのか?年を取ってもヴィクセンはいい女だ。今でも会えばやることをやる。何人生んでも番になるとは言わないがな」
堂々と言い切るところが獣人らしすぎる。自分なら言えないと思うボクはやっぱり獣人らしくないのかもしれない。
「下らねぇ嘘ばっか並べやがって…!」
「嘘などつかん。お前達の成長は見守れないが、元気にしていればいい。腹違いの兄弟も結構いるぞ!グワハハ!」
「いけしゃあしゃあと……こんの…エロ獅子野郎~…!」
「獣人の男は皆こんなもんだ。今後のタメに覚えておけ」
「知るかっ!殺すっ!」
またリオンさんは殴られ始めた。今度は高らかに笑いながら殴られてる。
「ちょっといい話っぽかったのに、オチで台なしですね!」
「獣人って本当に皆がそうなんですか?」
「少なくともボクは違う」
殴られ続けているリオンさんは、顔も身体も腫れてきた。ボクの拳と違ってクーガーさんに殴られるのは相当痛いはず。やせ我慢してるに違いない。
あくまで予想だけど、構ってやれなかった娘に対する贖罪だろうか。『気が済むまで殴れ』という不器用な愛情表現。
獣人は相手が誰であれ黙って殴られたりしない。やり返すのが本能だから。ボクが母さんに殴られても、やっぱり殴り返したくなる。相手が父さんでも同じだ。堪えきれるかどうかだけ。
「はぁっ…!はぁぁっ…!」
「どうした?もう満足か?」
「…くっそがぁぁっ!死ねやぁ!」
全身全霊を込めた拳を放つも、横に躱したリオンさんはクーガーさんの腕を掴んで軽々持ち上げ、背中から地面に叩きつけた。
「がはぁっ…!」
「お前の実力で「死ね」や「殺す」と軽々しく口にするな。強者に挑発や戯れ言は通用しない。お前に俺は殺せん。殺したければもっと鍛えてから来い。逃げも隠れもしない……聞こえてないか」
衝撃で気を失ってる。倒れた娘を見つめたまま動かないリオンさんに近寄る。
「彼女は昨日も闘っていて、かなりダメージが残っていたと思います」
「言い訳にならん。今がケンカを売るときかそうでないかも判断できないようでは、子供も子供。誰に似たのか」
「リオンさんです。闘う様が瓜二つです」
「むぅ…。ウォルト、すまんが…」
「はい。アニカ、ウイカ。クーガーさんの治療をお願いしていいかな?」
「「はい!」」
「ボクはリオンさんを。派手にやられましたね」
「すまんな」
手を翳して『治癒』していく。
「贔屓目もあるだろうが強く育った。今後の成長に期待できる」
「もっと強くなる獣人だと思います」
「殴られて腹が減ったんだが、飯を食わせてもらっていいか?」
「もちろんです」
治療を終えたクーガーさんを住み家に運ぶために抱えようとしたら、「俺にやらせてくれ」とリオンさんが抱えた。
「軽いな…」と呟いた表情はボクの知る優しい父親の顔だ。
「…っらぁ!クソ親父はまだいるかっ!?」
クーガーさんは目を覚ますなり騒がしい。
「いるぞ。飯を食ってるとこだ。お前も食うか?一緒に食うのは初めてだな」
「誰が食うかっ!…っつうか、お前らまた食ってんのかよ!?」
「観戦してて……もぐもぐ…」
「お腹が空いたので!…もぐもぐ…」
「クーガーさんは無理しない方がいいですよ」
「…食ってやらぁ!よこせっ!」
どこまでも気が強い。クーガーさんには軽めの量を出そう。
「テメェらには負けねぇ!」
「クーガー。騒いでもいいが、飯は味わって食え。作ってくれた者に感謝を忘れるな」
「うっせぇよ!」
「なぜそんなに騒がしいんだ?吠える獣人には弱い奴しかいない。そんなことも知らないのか?」
「…けっ!」
「ところで、お前はウォルトにもケンカを売ったのか?」
「テメェには関係ねぇだろ!」
「まだならさっさと売れ。そして、お前が負けたらウォルトの子を生め。グワハハ!」
「「ぶっ!」」
アニカ達は同時に吹き出した。突拍子のない台詞にツッコミたいけど、まずは布巾を取りに行こう。
「…テメェ、いきなりなにほざいてんだ…?」
「強い男は嫌いか?アイツは俺を負かした男だ」
「んだと…?」
「お前達はウォルトの弟子だろう?前に訓練場で会ったな」
「アニカです。覚えててくれたんですね」
「私は姉のウイカです」
「姉妹だったか。いい男の周りにはいい女が集まる。獣人の未来のタメに頼んだぞ」
「ありがとうございます。任せて下さい」
「頑張りまっす!」
「グワハハ!…というワケだ」
「なにが獣人の未来だ。ワケわかんねぇ。テメェらも頭イってんのか?」
布巾を探して戻ってくるとウイカとアニカは笑顔。でも、クーガーさんは妙な表情でボクを見てくる。
「おい」
「なんですか?」
「お前、マジでコイツより強いのか?」
親指でリオンさんを指す。
「違います」
「違わん。負けたろうが」
「勝ったとか負けたじゃないです。ボクはがむしゃらにやっただっただけで」
「事実をねじ曲げるな。おかしなことになる」
「曲げてないんですけど…」
放った魔法でリオンさんは気を失ったけれど、残されたダメージが大きかったのはボクの方だ。賭けが成功しただけ。
「手合わせってヤツならいつでも受けんだな?」
「構いませんよ」
「今からやろうじゃねぇか!最後までいかなきゃいいんだろ?!」
「今日はやめた方がいいと思います」
「知るかっ!外行くぞっ!」
「はぁ…」
闘い続けないと死んでしまう獣人なのか。まさしくエッゾさんの女性版。どちらにしても死んでしまいそうだけど。
更地に出て閃いた。いい機会だと思い、手合わせを見学するというリオンさんにこっそり告げる。
「ボクは獣人にしか操れない力を使いこなせるよう修練してます」
「初めて聞くが、そんなモノが存在するのか?」
「確実にあります。操れるのはまだ微量なんですが今から見せたいと思います。リオンさんの意見を聞きたいです」
「途轍もなく気になる。楽しみすぎるぞ」
「なにくっちゃべってんだ!さっさと来い!」
せっかちだなぁ。サマラの比じゃない。
「昨日のは油断だ、コラ…。今日は叩き潰してやる!」
「潰されるワケにはいかないです」
「やかましい!いくぞ!」
クーガーさんは両拳を高く構えた。昨日と違って隙がない。警戒してくれてる。
「待つのは性に合わねぇ。オラァァァ!」
畳みかけてきた猛攻を見切って、捌きながら隙を狙う。クーガーさんは速さと力強さを兼ね備えるサマラのようなタイプの獣人。
魔法を使わないと防御するのが精一杯。力では明らかに劣るので、こっちの攻撃を躱されると一気にピンチに陥ってしまう。
狙うは一撃必殺のカウンター。獣人の力を操るのは上達していても、まだ絶対量は多くない。でも、1つ閃いたので挑戦してみよう。
「逃げるだけのは一丁前かっ!イライラするぜ!オラオラァッ!」
荒い動きで微かに体勢を崩した。隙あり。
「…なんてな!テメェの狙いはバレてんだよ!くらえっ!」
わざと間合いに誘い込んだのか。拳闘での実戦経験が豊富なだけある。意外な策に少し驚いたけど関係ない。踏み込める『間』が欲しかっただけだ。この一撃で決める。
「口ほどにもねぇ!」
高速の拳を左の掌で受け止め、掴むと同時に右の掌をお腹の前に添える。
「なんだそりゃ!痛くも痒くもねぇ!コレで…終いだ!」
意外にもボクの顔面に蹴りを繰り出そうとしてきた瞬間、右掌から獣人の力を発動する。
「ぐふぅぁっ…!」
クーガーさんは大きく後ろに吹き飛んだ。上手くいったと思う。想像した以上の威力だった。要因はクーガーさんの獣人の力を技能に利用できたこと。
受けた掌から吸収して利用した。魔力と同様に他人の力は拒絶反応があったけど、そのまま放出してしまえばなんてことはない。大の字になったまま動かないクーガーさんに近寄る。
「大丈夫ですか?」
「……ちくしょう!ひっく…。見るんじゃねぇ!あっちいけ!」
顔を隠して泣いてる。大丈夫そうでよかった。
「ウォルトさん」
「私達に任せてください!」
「ありがとう。頼むね」
ボクが魔法を見せてないから、アニカとウイカが寄り添って治療してくれる。今の内にリオンさんに意見をもらおう。
「今のが獣人の力です。一撃分ですが」
「手も添えず、魔法も使わずに吹き飛ばすとは驚いた。説明してくれ」
「はい」
獣人の力について知る限り説明する。
「獣人なら誰もが備える力…か。当然俺もだな?」
「かなりの量を纏っています。ボクが見た限りですが、マードックの次に多くて正直羨ましいです」
「俺でも操れるのか?」
「おそらく。マードックにも教えました」
「アイツはできるようになったか?」
「コツを掴んだくらいです。修練を続けていけばいずれ操れると思います」
「グワハハ!負けてられん!教えてくれ!」
「マードックでも相当辛そうでした。それでもいいですか?」
「愚問だ。強くなる余地があるならやらない選択はない。俺は衰える一方だ。クーガーの拳を受けてやれるのも今が最後かもしれん。まだ強い親父でいたいんでな!」
やっぱり格好いい。獣人らしく死ぬまで強さを追い求めるんだろう。
「時間がかかりますし、今日はやめておきましょうか?」
「明日また来る。今日はクーガーに酒を奢ってやろうと思ってな。苦い酒だろうがそれも糧になる」
「ココでよければ肴も作りますし、酒も用意できますが」
「俺は頼みたいがアイツは嫌だろう。ちょっと聞いてみるか」
リオンさんは姉妹に見守られて倒れたままのクーガーさんに話しかけた。
「いつまで寝てるんだお前は。負けて悔しいのはわかるが次勝てばいい。スパッと忘れて引きずるな。酒飲むか?ウォルトが肴を作ってくれるぞ」
「……うるせぇ」
「そうか。だったら気が済むまでそうしてろ。いくらでも待っててやる」
「待つだと…?」
「酒を奢ってやる。それとも酒弱いのか?下戸だったらやめるが」
「…誰に言ってんだ!弱いワケねぇだろ!ぶっ潰してやるよ!クソジジィが!」
リオンさんは「ふぅ…」とため息を吐く。
「お前、モテないだろ。余りにうるさすぎる。獣人の女はいくら強くとも黙ってだな…」
「るっせぇ!お前が女を語るんじゃねぇよ!」
本当に騒々しい。けれど確実に元気を取り戻してる。きっとこの親子にとっては普通の会話なんだ。親子の形はそれぞれ。




