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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
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468 精霊に学ぶ

 現在ウォルトは夢の中。


 久しぶりにバラモさんが会いに来てくれた。特に用はないらしいけど、その方が友人らしくて嬉しかったりする。


『最近どうだい?』

『おかげさまで平和で元気です』

『近々キャミィも遊びに来ると言ってたよ』

『そうですか』


 少々会話したあと、訊きたかったことを思い出す。


『バラモさんに訊きたいんですが』

『なんだい?』

『グラシャンを知っていますか?』

『知ってる。魔法を操る馬だろう?』


 やっぱり物知りだ。


『最近知り合ったんですが、世界にグラシャンはどのくらいいるんでしょうか?』

『当然だけど、ハッキリした数はわからない。ちょっと待っててくれ』


 バラモさんは姿を消した。しばし待つ。


 …………まずい。くなってきた…。もう眠っているはずなのに…。新たな魔法構築のイメージをしたり、魔道具作りの構想を練ってどうにか耐えているとバラモさんが戻ってきた。


『仲間に訊いてきたけど、少なくとも30頭はいそうだよ』

『ありがとうございます。皆が知ってるんですね』

『グラシャンは君と同じで私達の数少ない友人だったりするんだ』

『そうなんですか?』

『魔法に優れて会話もできる稀有な動物だ。人型に変化するから動物と言っていいのか疑問だけど』

『それはそうですね。教えてくれてありがとうございます』

『お安い御用さ』


 さすがは世界各地に散らばる精霊達。非常にタメになった。リリサイドに教えてあげよう。


『もう1つ訊いてもいいですか?』

『構わないよ』

『ボクの友人に『精霊の加護』という力を使う者がいるんですが、バラモさん達と関係ありますか?』


 ちょっと気になっていた。カネルラ王族でもリスティアだけが操るという不思議な力。なぜ精霊と名が付いているのか。


『もしかしてカネルラの王族かな?』

『そうです』

『であれば、源は私達の力とは違う。彼らは別の精霊から力を与えられた存在なんだ』

『別の精霊?』

『君達には、人間だとか獣人、エルフやドワーフのような種族があるだろう?私達にもある。わかりやすく言うなら私達は木の精霊だ』

『なるほど』

『カネルラ王族の力は地の精霊の加護だったと思う。この土地に古くから住む精霊の力だ。ちょっと記憶が曖昧で申し訳ないけど』

『いえ。勉強になります』

『簡単に表現するなら、『力を貸す。その代わり平和にこの土地を治めてくれ』といったところかな』

『わかりやすいです』

『ただの気まぐれだったりもするんだけどね。ただ、同じ精霊として言わせてもらえば気に入らない者に力は与えない』


 リスティアはこの地の精霊に選ばれた者だということ。納得しかない。


『バラモさん達は博識ですね』

『カネルラ王族については、王城の中に仲間が立ってるから知ってるだけだよ』


 本当にいろんなところに立っているんだな。


 ……あっ!コレも訊いていいかな…。


『バラモさん……。あと1つ訊いても…?』

『はははっ。友人なんだから気兼ねなく訊いてくれないか』

『私的なことなので。バラモさんは…フィガロという獣人を知っていますか?』

『もちろん。何度も聞いた名前だ。獣人にとっては英雄なんだろう?』

『やっぱり!どんな獣人でしたか!?』


 訊いてよかった!


『とんでもなく食い付くね…。直接会ったことはないけれど武勇伝はよく耳にしたよ。世界各地で大暴れしていたから』

『ふんふん!他にもなにか知ってますか!?』

『性格や人柄は噂に聞いただけだね』

『噂とは?』

『一貫してなかった。『無慈悲な殺戮者』とか『無駄な殺生は好まない』とか。事実なのは、各地の戦場で暴れていたことだけだね。現場近くにいた仲間からは凄まじい獣人だったと聞いたよ』


 フィガロは誰とも話さない無口な獣人だから、真意がわからないんだろう。


『直に見た仲間が言うには優しげな男だったらしいけど、人族は化け物だと表現していたと云われてる』


 男であることは確定かな?ブライトさんから聞いて女性説もなくはないと思っていたけど。


『容姿の特徴はわかりますか?』

『獣人にしては大柄ではないけれど、とにかく逞しくて黒っぽい斑の毛皮を纏っていた。無口でいつも背を丸めて歩いていた。私が知ってるのはこんなところかな』

『なるほどぉ~』


 背を丸めていたのは初の情報。また新たな1ページ。これだけで凄く嬉しい。


『ウォルトはフィガロに興味があるんだね』

『小さな頃から憧れの存在なんです』

『そうか。私よりフィガロに詳しい仲間を呼ぼうか?』

『いいんですか?!でも、夜遅くに申し訳ないです…』

『あはははっ!気にしなくていいよ。じゃあ、呼んでみる』


 またしばらく待つと、バラモさんと別の精霊が共に現れた。


『貴方がウォルトね!会ってみたかったのよぉ~!』


 中性的な容姿のバラモさんやウルシさんと違って、明らかに中年男性の容姿で妙にくねくねしてる。ひょうきんな精霊っぽい。


『初めまして。ウォルトと申します』

『あらぁ~!礼儀正しいわねぇ~!』


 バチーン!とウィンクを決められてしまった。


『ありがとうございます。貴方は?』

『アタシはオッコよん!オッちゃんって呼んでぇ~♪』

『私達の仲間で最もフィガロに詳しいのがオッコなんだ』


 オッコさんはどこに立ってる精霊なんだろう?


『オッコさんにお願いが…』

『ノンノン!オッちゃん!』

『では、オッちゃん。フィガロについて教えてもらえますか?』

『もちろんいいわよぉ~!たぁ~だぁ~しぃ~…』


 ボクに向けて手を翳したオッちゃんは、前触れもなく雷撃を放った。


「くっ…!」


 辛うじて躱す。


『ちょっとアタシと遊んでもらうわよぉ~』


 遊ぶ…。今のは…魔法なのか?


『さすがねぇ~。見事に躱されちゃったわ。それに…優しそうに見えていい顔するじゃな~い!怖いわぁ~』

『オッコ!いきなりなんのつもりだ!?』


 ボクの心中を代弁するようにバラモさんが問う。


『なにって、ちょっとした初対面の挨拶よ。初めて会う…獣人の魔法使いにね!』


 立て続けに放たれる雷撃を大きく跳んで躱す。いきなり攻撃されて一瞬で頭に血が昇ったけれど、今はこの力に対する興味で頭が一杯。怒りなど忘れてしまった。

 

『やるわねぇ~。さすがだわぁ~』

『ただ躱しているだけです』

『違うわ。力を見極めようとしてるわね。わかったのかしら?』

『ボクの知識にはないものです』

『正直者ねぇ~。どう対処するのかしらぁ~?』


 うふふ!と笑いながら、次々に魔法のようなものを繰り出す。炎も氷もなんでもござれ。素晴らしい力だ。見ているだけで楽しい。


『あ~ら。やっぱり躱すだけなのぉ~?期待外れねぇ~』

『オッコ!いい加減にしろ!』

『私はやめないわよぉ~。だってフィガロのことを知りたいんでしょ~?だったら好きにさせてもらうわ。うふっ』


 口に手を添えて女性的に笑うオッちゃん。


『貴方を倒せばフィガロのことを教えてくれるんですか?』

『どうかしらぁ~。でも、考えてもいいわ~。私は強い男が好きなのよねぇ~』


 考えてくれるだけで有り難い。やるだけやろう。ここまで観察して気付いたことがある。


『フゥゥ…』

『あら?なにかやる気ね?』


 じっくり観察して判明したことが2つ。1つは、放たれている魔法のようなモノは精霊力で構築されていること。もう1つは、躱しながら密かに試した結果、実体のないボクが今の状態で操れる力は3種類しかないこと。


 使えるのは、精霊魔力と『精霊の慈悲』。そして、もう1つが…。


『道化一式』


 ジョンの操る不思議な力を模倣した魔力。なぜ操れるのか理由はもちろん不明。手を翳し、道化師の小道具を空中に密集して出現させる。


『なにこれぇ~?!ドン引きぃ~!!』


 口調と同じで大袈裟な反応。…とはいえ精霊を相手に生半可な魔法は通用しない。怯まず全力でいくのが礼儀だ。

 精霊魔力の他、付与できる属性全てを複雑に付与した。この空間も謎だけど、放てばどうなるか自分でも予想できない。ただ、効果が相殺することはないように構築した。オッちゃんに向けて一斉に高速発射する。


『どわぁあぁあぁっ!む、むちゃくちゃするわねっ!』


 爆発したり、雷撃が起こったり、暴風が吹き荒れたりとお祭り状態。それでも障壁のような力で軽々防ぐオッちゃん。精霊力の新たな用途をじっくり観察させてもらおう。


『ちょ…ちょっと…バラモっ!やめさせなさいよっ!』

『断る』

『ア、アンタ!私を見捨てる気?!このままじゃ消えるってばぁ~!仲間でしょ!?』

『私の友人に向かっていきなり精霊魔法を放つような失礼な仲間は、一度痛い目を見て悔い改めるべきだ』


 やっぱり魔法だったのか。そして、オッちゃんは愉快な精霊っぽい。表情がころころ変化する。本当に悪気なくボクに魔法を放ったんだろう。


『くおぉぉぉっ…!もう…だめよっ!だめだめぇ~~…っ!』


 堪えきれず障壁が崩壊しオッちゃんは被弾した。着弾した瞬間に荒れ狂う魔力。放った自分が言うのもなんだけど混沌としてる。でも、この程度の魔法では精霊には通用しないだろう。


 精霊魔力が霧散したときオッちゃんの姿はなかった。


『バラモさん。オッちゃんはどこへ?』

『地元に帰ったよ』

『えぇっ!?いきなりですか?!』


 黙って姿を消さなくても、嫌なら断ってくれてよかったのに…。精霊の地元ってどこだろう?立ってるところかな?

 フィガロのことを訊けなかったのは残念だけど、精霊魔法を見せてもらえて感謝だ。また会えたらお礼を言いたい。


『自業自得のお調子者を必ずもう一度連れてくる。いきなり攻撃したことを謝罪させないと私の気が済まない』

『もう気にしてませんが』

『ケジメだよ。精霊だからってなにをしても許されるワケじゃない。君が1番よくわかってるだろう?少し時間はかかるけど、もう一度連れてくるから待っていてほしい』

『わかりました』


 バラモさんが珍しく怒っている。逆にボクは冷静。誰かが自分以上に怒ってくれると、怒りにくくなくなるのはボクだけだろうか?


『しかし…本当に消し飛ぶとは…。復活するのに期間はどれほどかかるのか…』

『なにか言いましたか?』

『こっちの話さ』

『そうですか。今度はオッちゃんの遊びに付き合えるよう精霊魔法を修練しておきます』

『…ほどほどにね』


 グラシャンのこともそうだけど、『精霊の加護』やフィガロについて知れてよかった。


 ふわぁ~~。そろそろ限界だ…。おやすみなさい…。

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