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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
447/715

447 サマラの帰省

「久しぶりなんだよね!」


 ご機嫌に歩く4姉妹の先頭を歩くサマラ。


「そうですよね」

「ランさんも、「たまには帰ってこい」って言ってました!」

「私もストレイさんに会いたいです」


 今日は4人で朝からのんびりトゥミエに向かってる。私の久しぶりの里帰りに皆が付き合ってくれる形。

 チャチャはストレイさんに会ったことがないし、久しぶりにミーナさんに会いたいということで、皆で行くことになった。


「実は、フクーベに出てから初めての帰省だったりするんだな!」

「そうなんですか?…ということは、何年ぶりですか?」


 ウイカの驚きもごもっとも。


「6年?いや、7年ぶり?」

「寂しくなかったんですか?」

「親よりウォルトと一緒にいたかったからね」


 両親のことは好きだけど、それとこれとは話が別。


「格好いいです!そして、今や白猫同盟を率いる立派な軍団長になって!」

「軍団じゃないですけど」


 チャチャの言う通りだけど、そこら辺の輩では私達には勝てないだろうね。楽しく会話しているとトゥミエに着いた。外観は変わってないなぁ。


「まずはどこ行こうか?」

「実家じゃなくていいんですか?」

「実家は最後がいいかな!長くなりそうだし!」


 お父さんの話が長いから。


「じゃあ、まずはミーナさんに会いに行きますか?」

「いいね!随分会ってないから会いたいな!」

 

 とりあえずウォルトの家を目指す。道中も変わってない。トゥミエって感じ。


「久しぶりに来た!懐かし~!」

「私は初めて来ました。ココが兄ちゃんの実家なんですね」

「よし!行こう!」


 ドアをノックすると、パタパタと人が駆けてくる気配。


「はぁい~」


 間延びした声で顔を出したのはミーナさん。変わってないなぁ。


「ミーナさん!久しぶり!」

「…さ、さーちゃんじゃない!大きくなったね~!久しぶりぃ~…って、皆もいる!」

「「「お久しぶりです」」」

「皆で会いに来たの!」

「嬉しいよ!とりあえず入って入って!」

「お邪魔しまっす!」


 居間に通されてテーブルを囲む。家の匂い懐かしっ!


「ミーナさん。私がお茶淹れます」

「チャチャ、ありがと!」


 チャチャは気が利くなぁ。3人の弟がいるしっかり者。ミーナさんは料理とか苦手だからね。


「兄ちゃんのお茶には負けますけど」

「誰も勝てないって!天才料理猫だから!」


 チャチャが淹れてくれたお茶を皆で頂く。喉が渇いてるから、アニカとウイカに魔法で冷やしてもらった。


「いやぁ!白猫同盟が勢揃いで来てくれるなんて嬉しすぎる!」

「私の帰省に皆が付き合ってくれたの」

「ミーナさんに会いたかったんです!」

「へへっ!嬉しいこと言ってくれるね!」

「私とチャチャは、この間アイヤさんにも会ったの。相撲とったよ」

「マジで!?ヒドいことされなかった?!」

「気に入ってもらえたっぽい。ねっ、チャチャ」

「めっちゃ強いおばあちゃんでした。格好よかったです」

「格好よくないよ!熊の怪力ババアでしょ!いずれウイカとアニカも会うだろうけど、気を付けて!乱暴者だから!」

「そんなことないと思うけどなぁ」

「私もそう思います」

「2人は甘い!騙されちゃダメ!ところで…最近ウォルトとはどうなの…?」

「少しずつ前進してるよ!ねっ!」


 全員頷いてくれる。最近の出来事について各々がミーナさんに教える。聞いててすっごく鼻息が荒い。相変わらず恋バナ好きなんだなぁ。


「皆と寝れなくて寂しがってたのかぁ~!だったら触るとかやってみろっつうのよ!むしろ「寝たい」って自分から言え!バカ息子がっ!」


 ぷんすか怒る姿に爆笑しちゃう。その通りだよね。


「我が息子ながらホントに腹立つ!文句を言わないと気が済まない!」

「じゃあ言ってみる?」

「どうやって?今日は来てないんでしょ?」


 魔伝送器をバッグから取り出して、白の魔石に触れる。ミーナさんは『?』が浮かんでるね。しばらく会話しながら待とう。今日の動きはウォルトに教えてない。


『サマラ?どうしたんだ?』

「どわぁぁっ?!なにコレ?!声が聞こえたけど!?」

「ウォルトが作った魔道具だよ。離れてても会話できるの」

「すっごぉぉぉ~!」


 すごくいい反応するね。


『その声は……母さん?』

「はっ!ウォルト~!アンタはいい加減にしなさいよ!」

『いきなり意味不明なんだけど』

「やかましい!アタシは腹が立ってるんだよ!寂しがり屋の白猫がっ!」

『母さんも三毛猫だろ。意味がわからないって。別に寂しがってないよ』

「とにかく今度帰ってこい!説教してやるから!」

『だったら帰りたくない』

「なにを~!そのつもりなら、4姉妹に昔の恥ずかしいことを全部バラすぞっ!」

『わかった!その内行くから黙っててくれ!』


 聞いたらさほど恥ずかしいことでもないだろうに。ウォルトなりに恥ずかしいのかな。皆でトゥミエに来てることをウォルトに説明して、状況はわかってもらえた。


「急に呼び出してゴメンね」

『いつでも呼んでくれていいよ。ゆっくり帰省を楽しんで』

「ウォルト!今度来るときにアタシ用の通話できる魔道具を作って持ってきて!」

『………』

「こらぁ!無視するなっ!こらっ!ウォルト~!お~い!」


 通話はそっと切られてしまった。


「ったく!困った息子だ!反抗期だね!」

「なんだかんだウォルトさんは作ってくれると思います」

「私もそう思います!ウォルトさんは、ミーナさんが大好きですから!」

「間違いないです」

「そうかなぁ~!よっし!今日は全員集合だし、いい機会だから皆に教えておこうかな!」

「なにを?」

「さーちゃんは知ってるよね。我が家に伝わる…秘伝のスープだよ!」

「秘伝!」

「凄そうです!」

「知りたいです!」


 ウイカ達は知りたいよね。私は完璧にマスターしてる。


「でもさ、急で材料あるかな?」

「そこなのよ!結構シビアだからね~。でも、作りたいから皆で買い出しに行こう!」


 5人で材料を買いに出掛ける。楽しく会話しながら歩いていると…。


「ふんふ~ん!アタシはすっごい嬉しい!」


 超絶笑顔のミーナさん。


「どうして?」

「娘と一緒に買い物とか行けるの楽しい!ウォルトは優しいけど息子だし!」

「私達も楽しいよね」


 うんうん!と皆が同意。


「ありがと!…そうだ!買い物する前にミシャのところに寄ろう!」

「後で挨拶に行きたいと思ってました」

「また腕相撲しよっかなぁ!」

「チャチャは初めてだよね!ウォルトが昔からお世話になってる姉さん的な獣人なの!紹介するからね!」

「是非会ってみたいです」

「ミシャさんには私もお世話になったなぁ」


 よく治療してもらってた。私が殴った相手をね。


「会ったらさーちゃんも驚くかもね!」

「なにか変わってるの?」

「見てのお楽しみ♪さぁ、着くよ!」


 診療所の外観は変わってない。昔より少し古ぼけてるけど。


「ハルケ~!ミシャ~!いる~?」


 入口でミーナさんが呼びかけると、ハルケ先生が奥から顔を出した。


「ん…?ミーナか。…と、誰だ?」

「先生、久しぶり!」

「……お前、サマラか?!大きくなったなぁ!」

「先生は老けたね!」

「ははは!変わってないな…うわっ!」

「サマラが来たの!?…ホントだ!」


 ミシャさんが先生を押し退けるように後ろから出てきた。


「ミシャさん、久しぶり!」

「久しぶりだねぇ!美人になっちゃって!」

「ありがと!…って、お腹大きいじゃん!妊娠してるの!?」


 ゆったりした貫頭衣みたいな服を着てるけど、明らかにお腹が膨らんでる。


「そうなのよ!ウォルトのおかげでね♪」

「ウォルトの?どゆこと?」


 ミシャさんとミーナさんが説明してくれる。ウォルトの治癒魔法で内臓の古傷が癒えたら直ぐに妊娠したらしい。


「治療のことはウイカ達から聞いてたけどよかったね!」

「今度ウォルトが来たら赤ちゃんと一緒にお礼しまくろうと思ってる!」

「お礼はいらないと思うけど、きっと喜ぶよ。すっごい子供好きだし」

「サマラ。後ろの皆は友達か?」

「私の妹なの!」

「そしてアタシの娘なんだな!」


 並んでエヘン!と胸を張る。


「なに言ってるか全然わからん…。患者もいなくて落ち着いてるから話を聞かせてくれ。お茶くらい出す」


 ミシャさんがチャチャの前に立つ。


「貴女がチャチャね!聞いてたとおり可愛い!」

「よろしくお願いします」

「ウイカとアニカも久しぶり!」

「お久しぶりです」

「あれからも鍛えてますよぉ~!」

「おっ!出産したらまた勝負しよう!」

「随分親しいな。どういう関係だ?」


 軽くお茶しながら私達の関係についてハルケ先生にも教える。ベラベラ喋るような人じゃないのは知ってるから。


「皆がウォルトのことを好いてるんだな」

「だからアタシの娘であり!」

「私の妹なんだな!」


 私やミーナさんとは対照的に、ハルケ先生は少し渋い顔。


「俺は感覚が違うかもしれないが、それでいいのか?」

「どういう意味?」

「ウォルトはお前達の好意に耐えられないんじゃないか?繊細だろう?」


 私達は無神経にグイグイいくように見えるだろうけど、違うんだな。


「私達はウォルトの傍で選ばれるのを待つ。何年でもね。私達で無理ならウォルトに恋人はできないと思ってるよ」


 実際はそんなことない。でも、私達はそのくらいの気持ちでいるんだ。


「そうか。アイツが羨ましいな」

「えっ!?子供ができたばかりなのに浮気する気なのっ!?こんの…スケベ医者っ!」


 いきなりミシャさん激怒。


「はぁ…。なんでそうなる」

「ウォルトが羨ましいって言ったでしょうが!若い女の子に囲まれたいんでしょ?!」

「違う。言葉の綾ってヤツだ」

「いっつも小難しいこと言って誤魔化そうとする!」

「してないだろ」


 ミシャさんの言う通りだ。人間の男はしょっちゅう意味不明なことを言うし、今のは私もそう思った。


「結局先生も女好きなのか~」

「サマラ!お前っ…!」

「ほらぁ!やっぱりそうでしょ!」

「ミシャさん、違います。ハルケさんは『ウォルトがそんなに愛されていて嬉しく思う』って言ってるんです」

「『それだけ好いてくれる人がいて幸せ者だ』っていう意味ですね!」


 姉妹が言うなら信じられるけど。


「だったらそう言えばよくない?」

「言葉の綾っていうのは、他にも意味があるような凝った表現なんです。だから誤解を生むことがあります」

「『ウォルトの状況を端から見ると、羨ましく見えるかもな』って言いたかったんですよ!」

「ミシャさんがいるのに浮気なんてしないと思います」

「そんな人をウォルトさんは尊敬しません!私も幻滅します!」

「…そっか。そうだよね!2人ともありがと!」


 2人の手助けで先生は助かったね。普通ならケンカになってる。人間同志だから理解しやすいのかも。


「ウォルトは幸せ者だ。アイツはガレオさんの影響を受けてるから、人間みたいなことを言う。それでも理解してもらえるな」

「それはあるね。でも、ウォルトが言いたいことは全員わかるよ」

「私もストレイが言いたいことは全部わかる!」

「ミーナはわかってないぞ。ストレイが言わないだけだ」

「なんでアンタがそんなこと言えるのよ!」

「ストレイとは結構話すからな。けど、全く気にしてない。お前は愛されてる」

「なに恥ずかしいこと言ってんのよ!」


 そんなこと言いながら、顔はヘニャッ!とふやけてる。ミーナさんの見た目はウォルトと全然似てないけど、笑った顔は似てる気がする不思議。


「しかし、あのサマラが大人になったもんだ。手に負えないお転婆娘が成長したな」


 こういう台詞も人間はよく吐くよね。コレもアヤってヤツ?言葉の節々で地味にバカにしてくるんだよなぁ。捻くれてるっていうかさ。そっちがその気なら獣人流にやってやろう。


「性格は変わってないよ。ところでさ、先生は私達の中だったら誰が1番好み?」

「いきなりなんだ…?」

「いいから答えて」

「そうだな………ウイカか」


 ダメだこりゃ。


「どう考えてもミシャさんでしょうが。だから先生はダメなんだよ。ウォルトを見習った方がいい」

「選ばれても嬉しくないです」 

「私達の中で…ですからね!」

「聞いてたら兄ちゃんもビックリしたかもしれませんね」


 さすが妹達!浮気性には厳しいよ~!


「今のはサマラの訊き方が悪いだろう!ウイカを選んだのに深い意味は…」

「ハルケ~…!アンタって男は~!」


 ミシャさんに後ろから首を絞められてる。まぁよくあることだし気が済んだよ。


 ちょっと意地悪してしまうのも古い付き合いだからね!その後も親交を深めて診療所を後にした。

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