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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
42/688

42 カネルラ王国

暇なら読んでみて下さい。


( ^-^)_旦~

 ウォルト達の住む土地は、【カネルラ王国】が統治している。


 建国から約1500年以上経過しているが、世界の国の中では新興国であり未来永劫の平和と自然との共存を信念とする。


 過去、幾度か侵略戦争に巻き込まれた歴史があるものの、代々国王が穏健派で国民第一主義であるが故に、他国へ侵略を仕掛けたことは皆無。

 建国当初から変わらず、平和を愛する自然豊かな国である。あえて云うなら国民性も朗らかで大らか。


 国民は、いつの時代も庶民派な国王一族、いわゆる王族のことを好意的に捉えており、謀反や一揆などを企てた歴史もなく、世界的に見ても珍しい国と云える。


 そんなカネルラの現国王ナイデルは、第29代国王。前国王である父と前王妃である母は病に倒れ既に亡くなっており、ナイデルは若くからカネルラを背負っている。

 そんなナイデルは、王妃であり妻であるルイーナとの間に3人の子を為した。側室は持たない。

 男児が2人と女児1人。王子達は既に成人して国政に携わっているが、年の離れた王女はまだ10歳を迎えたばかり。

 そんなカネルラの王女リスティアは、国王達を悩ませる『お転婆王女』だった。



 ★



「お父様、遊びに行っていい?」


 公務の合間、自室での休憩中に愛娘リスティアが無邪気に聞いてきたので、国王ナイデルは確認する。


「どこに行く気だ?城の中庭か?」

「『動物の森』に行きたいの」


『動物の森』は国が管轄する巨大な森。その面積は国土の4分の1以上を占める。そんな森は、王都からは少々遠い地にあるのだが。


「あの森には魔物や獣が跋扈してる。残念ながら無理だ」

「えぇ~!『動物の森』なんだから大丈夫だよ!」


 駄々をこねるリスティアに嘆息した。


「名前の問題じゃない。生息してるのは動物というより獣だ。魔物に襲われたら命を落とすかもしれないのだぞ」

「大丈夫!ボバンと一緒に行くから!」


 ボバンはカネルラの騎士団長。王族と民を守護する精鋭部隊を纏めあげる男。周囲からは堅物だと評されるが、よく話し相手になってもらうリスティアは融通の効く柔軟な男だと知っている。その考えに俺も異論はない。


「ボバンはダメだ。いや、そもそもダメだ」

「むぅ~!お父様には頼まない!」


 リスティアは、頬を膨らませて部屋から出て行ってしまった。国王に頼まなければ、誰に頼むと言うのか。


「ナイデル様。あまり厳しくしすぎると、あの娘はなにをしでかすかわかりませんわ」


 隣で椅子に腰掛けたまま静かに見ていた王妃でありリスティアの母であるルイーナが警告する。我らは婚姻当初から仲睦まじく、国民から愛される国王夫婦であると自負している。


「わかっている。だが、理由もなく魔物の住む森に行かせるワケにはいかん」

「我が娘ながら我が儘で困ったものです」

「あの娘のお転婆は今に始まった話ではないがな」


 顔を見合わせて苦笑する。


 俺達は、幼いリスティアに随分と手を焼いてきた。王女でありながら活動的でお転婆なリスティアは、まだ10歳にして己の欲望に忠実。

 以前、「城下町に行ってみたい!」と言われ、「その内にな」と誤魔化し半分で答えたときは、いかなる手段を使ったのか不明だが城から脱走し、戻ったあと自分の部屋で流行のお菓子を頬張っていた。


 またある時は、「お兄様に相応しい女性を探してくる!」と告げ、これまた城を脱走してどこからか若い娘を連れて帰ってきた。そして、本当に第二王子の妻となった。本人達は幸せそうなので結果としてはよかったのだが、一歩間違えれば人攫いである。しかも王族が…。


 天真爛漫で生まれながらに人に愛される才に恵まれたリスティアには、城下町のみならず城内にも協力者が存在しており、毎度数名が脱走の手引きをしている模様。

 首謀者は間違いなくリスティアであり、我らも基本的に娘に甘いので関わった者について詮索や処罰する気はない。


「それにしても、今回は『動物の森』ときたか。1人で向かうことはないと思うが」

「私もそう申し上げたいところですが、あの娘ならなんとかしてしまいそうで…」

「しばらくリスティアには監視をつける。『動物の森』にはいずれ視察で連れて行く」

「では、そのようにボバンに伝えましょう」


 ルイーナはベルを鳴らし、メイドにボバンを呼ぶよう伝える。しばらくしてボバンが現れた。軽く一礼して顔を上げる。


 この国には王族に対する形式的な礼は存在しない。初代国王から続く伝統で、『限定された者しかできない礼など必要ない』という方針ゆえ。


「お呼びでしょうか」

「忙しいところ呼び出してすまん。実は、リスティアが『動物の森』に行きたいと駄々をこねている。近く視察を兼ねて連れて行こうと思うが、それまで大人しくしておかせるよう騎士の誰かを監視に付けてくれぬか?」


 すると、ボバンは眉間に皺を寄せ1つ唸った。


「リスティア様は、先程「探さないでね♪」と仰って走り去られました。正直、私には意味がわからなかったのですが…」

「「へ?」」


 鳩が豆鉄砲を食らったような顔で間抜けな返答をしてしまう。


「ボバン。共に来てくれ」

「かしこまりました」


 俺とボバンは急いでリスティアの部屋に向かう。ルイーナはゆっくりと後を追った。


「…リスティア。入るぞ」


 呼びかけた後、部屋のドアを勢いよく開けると、目に飛び込んで来たのは綺麗に片付けられた部屋と机の上の書き置き。


 手に取って目を通すと、『お父様、お母様。先に『動物の森』へ行く不幸をお許しください』と理解不能な文章が書かれていた。


 ただ、冗句であることは理解できる。


「「はぁぁぁ…」」


 追いついたルイーナと共に深く溜息をつく。


 なんという行動力。さっきの「頼まない!」は『じゃあ、勝手にする!』という意思表示だったのだと今さら気づいた。


「ボバン…。手間をかけるがリスティアを捜索してくれぬか?城内だけで構わない」

「仰せのままに」


 おそらくもう城内にはいまい。城内で働く者達に指示して探させつつ情報を集めてみると、どんな手を使ったか不明だが、騎士団ではボバンに次ぐ実力者のアイリスと共に城を出たようだ。


 リスティアは聡明な娘だ。正直、若干の親馬鹿であることを差し引いても、リスティアの優秀さは誰もが認めるところ。王族として学ぶべき素養は一度学べばほぼ完璧に修得し、勉学の成績も優秀。

 母親譲りで容姿も優れており、麗しい金髪と碧と緑のオッドアイが印象的な瞳は神秘的ですらある。友好国の王族からは「是非、将来王子の嫁に」と引く手数多なのだが、それらを全て相殺するほどのお転婆であり、制御不能の爆弾娘である。なまじ聡明なだけに手が付けられない。

 ゆえに、現状では国交のタメに嫁がせるのは絶対無理だと考えている。それ以外にも理由はあるが。


 とりあえず、アイリスが一緒なら心配はいらないであろう。アイリスの実力は知っている。女性騎士でありながら年に一度開かれる武闘会でも、参加すれば必ず上位に食い込む実力の持ち主であり、勇敢さと技量は折り紙付き。

 治安のいいカネルラでは誘拐などないと思いたいが、彼女が付いていれば余程でない限り問題はない。


 それに、王族であっても国民の1人。病にせよ事故にせよ死は平等に訪れる。リスティアが街や森で命を落としても仕方ないとも思う。ルイーナには悪いが王族だからといって命の重さは変わりはしない。


 …とはいえ、親としては娘が無事に帰ってくるに越したことはない。いつものように元気に帰ってくることを祈りながら政務を続行することにした。

読んで頂きありがとうございます。

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