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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
403/710

403 長女に訊いてみよう

「「「「かんぱ~い!」」」」


 白猫同盟の面々は、アニカ達の住居に集まって飲み会を開催していた。オーレンはミーリャとデートに出掛けていて、夜遅くまで帰ってこない予定。


 夕食を皆で作り、仲良く食卓を囲む。皆は調理技術を磨き続けていて、充実した料理が出来上がった。


 酒を持ち寄り料理を肴に楽しむ。口にしたサマラは驚いた。


「美味しい!ウイカが作ったの?」

「そうです」

「こっちはチャチャかな?また腕を上げたね!」

「嬉しいです」


 会話が弾んでお酒も進む。いつものように、近況報告やウォルトの新情報を存分に語り合い時間は過ぎていく。


 皆がほろ酔いになった頃、アニカが切り出した。


「サマラさん!」

「なに?」

「実は…今日の同盟はサマラさんが主役です!」


 ウイカとチャチャも頷いてる。


「急にどうしたの?」


 私がなにかしたかな?皆、真剣な顔してるけど…。実は…同盟を脱退したい…とか?


「サマラさんに確認したいことがあります!」

「正直に答えて下さいね」

「噓はダメですよ」

「噓なんかつかないよ。どしたの?」

「白猫同盟は、ウォルトさんの隣……人間でいう妻、獣人でいう番を目指して情報を共有してます!」

「そうだね」

「そして、最後に自分が勝つために頑張ってます!」

「うん。そうだよ」

「サマラさんは……勝つ気がありますか?」


 どういう意味だろう?


「勝つ気満々だよ。皆が相手でも負ける気なんて毛頭ないからね」

「い~や!そんなことはないと私達は思ってます!ねっ!お姉ちゃん、チャチャ」


 ウイカとチャチャは頷いた。


「なんでそうなるの?言ってる意味が理解できないんだけど」

「とりあえず、代表して私が説明します!」

「ほい。ウイカじゃなくていいの?」

「今回は私に任せて下さい!サマラさんはウォルトさんの幼馴染みですよね?」

「そうだよ」

「そうじゃない私達も、ウォルトさんのことがかなりわかってきました!皆の協力あってのことです!」

「うん。私も教えてもらってるよ」

「…ちょいと余裕がありすぎませんか?」

「余裕?私が?」

「そうです!いくら幼馴染みで1番理解してるとはいえ、ちょっと余裕すぎないかと思ってるんです!」

「余裕ぶってはいないけど、なんでそう思うの?」

「幾つか理由があります!例えば、私達は週1くらいで会いに行ってます!サマラさんは月1で行くか行かないくらいですよね?」

「もう1ヶ月は会ってないかな」

「その間に私達は縁を深めてますよ!沢山ハグもしてますから!」

「知ってるよ。嬉しいよね~」

「そうなんです!…って、そうじゃなくて!サマラさんは、わざと私達に花を持たせてるんじゃないですか!」


 な~るほど。余裕かまして「お先にどうぞどうぞ!」ってことか!私はそのくらいじゃ動じません、的な。違うけど。


「本当は毎日でも行きたいよ。ただ、昔と違ってウォルトの交友範囲も広がってる。私とばかり遊んでられないだろうし邪魔したくない。逆に私もそう。仕事もマードックの世話もあるからね」

「なるほどぉ~。それはそうですね!」

「毎日会うのは番になってからでいい。そうなってから他の人と知り合えばいいし。本音の本音を言えばフクーベに住んでほしいと思ってるけど」

「ですよねぇ~!私もです!」

「とても言えないけどね。とにかく、今でも思い立ったらいつでも会いに行く。余裕で皆を静観してるワケじゃない」

「わかりました!その他にもあります!」

「どんとこい!なんでも答えるよ!」


 皆に噓はつきたくない。次はウイカが質問してきた。


「サマラさんは、私達の服を選んでくれたりヒゲのこともそうですけど、凄くアドバイスをくれます。助かってますけど、言わなくていいこともあると思うんです。「自分で考えなさい」って言ってもいいような。それは、私達がどんなに頑張っても勝てる自信があるからですか?」


 それも違うんだなぁ。


「勝つ気はある!勝てる自信もある!でも、アドバイスしてるのはそういう理由じゃないよ」

「完全に厚意ですか?」

「よくわかんない。ただ、皆が頑張るのを応援したい。前も言ったと思うけど、皆には負けても納得できる!でも、ポッと出の美人とかに負けるのは納得いかない!そうなったらウォルトを殴るよ、私は!」

「ふふっ。理不尽ですね」


 だって、皆がいい娘で凄くウォルトを好きなのを知ってるから。アニカ達の話によると、王女や女性騎士も知り合いらしい。私達の他にも仲間がいていいけど、とりあえず今は知らない。


「皆は私にとって強敵だよ。でも、かけがえのない仲間でもある。一緒になって、ウォルトというボスがいるダンジョンの攻略を目指してる!最高の装備を整えて、情報を集めて、皆で共闘して、最後は私がボスにトドメを刺したいだけ!」

「ふふっ。サマラさんらしいです」

「もし皆に先を越されたら、修行が足りなかったってことかな!」


 チャチャも訊いてくる。


「多分ですけど、兄ちゃんはサマラさんのことが好きだと思うんです。だから、サマラさんが本気を出せば勝負は終わるかもしれません。なんでそうしないんですか?私達といるのを楽しいと思ってくれてるからですか?」


 なるほどぉ~。そう思ってたんだね。ウイカとアニカも頷いてるなぁ。またまた違うけど。


「完全にチャチャの勘違いだよ」

「なんでそう思うんですか?」

「フクーベに住んでた頃までは、ウォルトは私のことが好きだったと思う。コレは自意識過剰じゃなくて自信がある。でも今は違う。私を好きだとしても、恋人になりたいとかそういうのじゃない。昔から一緒にいる家族愛みたいな感じ。もちろん家族じゃないから照れたりはするけど」

「そうでしょうか?」


 コレはあんまり口に出したくなかったんだけどなぁ。でも、皆には言っておこう。


「私にはわかるの。今は私が一番恋人から遠いかもしれない」


 3人とも驚いた顔してるね。でもそうなんだな。


「ウォルトは認めないかもしれないけど、私のせいで虐げられてた部分も大きい。だから、私とは絶対に一緒になれないって思ってる。皆の方が恋人の対象として見られてると思うよ」


 ずっと一緒にはいられないって勘違いしてる。ヨーキーと住み家に遊びに行ったときの反応で確信した。皆が厳しい顔つきになる。


「変な気分にさせちゃったかな。でも事実だからね。言いたくなかったけど」

「…兄ちゃんに猫パンチを食らわせましょう!目を覚ますように!」

「3人で羽交い締めにして…」

「トドメにミーナさんの跳び猫パンチだね!」

「ふふっ。ダメだよ」


 私が止めるなんて珍しいよ。3人とも優しいなぁ。私が落ち込んで見えたからだよね。…よし!気を取り直そう!私らしくない!

 

「私は幼馴染みだから皆より優位に立ってる部分もあるけど不利な面もある!差し引きゼロくらいじゃないかな」

「私達と出会わなければ、サマラさんは直ぐ恋人になれてましたよね?」

「どうかなぁ?予想し辛いけど、最後の一押しがかなり難しかったと思う。ただ、言えるのは…」

「言えるのは?」

「皆に会えてよかった。私の気持ちを言えるのも、皆が話を聞いてくれるから。私は…ウォルトの魅力がわかってなんでも話せる友達が欲しかった!だから皆が大好きなんだよ!」


 今まで私の気持ちを話せたのはバッハくらいだった。バッハは理解があるけど、やっぱりマードックのように強い獣人が好きでちょっと違う。

 チャチャ達は本当に同志。好きになった理由も同じで最高のライバル。本当に3人のことを妹だと思ってる。この感覚は一般的にはおかしいらしいけど私は気にしない!


「困りましたね。そう言われると同意しにくいじゃないですか」

「なんで?」

「先に言われると照れます」

「可愛いなぁ、チャチャは!」


 アニカとウイカもニンマリする。


「サマラさん。幼馴染みで長女だからって遠慮しちゃダメですよ」

「そうです。私達はすぐ追いつきますからね!」

「遠慮はしてないけど、どういう意味?」

「私とアニカは背中にブラシもかけてます。今では裸も躊躇なく見せてくれますし、着々と本丸に進んでます」

「癖もほぼ見抜けるようになりましたから!塩を送るだけじゃ勝てませんよ!」

「兄ちゃんの絵にも少しずつ耐性ができてます。まだ、笑っちゃいますけど」


 私の遠慮というより…ただの自慢じゃん!強敵の妹達めぇ~!気合いが入った!


「燃えてきたよ~!積極的にいくからね!」

「「「その意気です!」」」


 もしかして……心配してくれてたのかな…?言うほどウォルトに踏み込もうとしない私に事情があると思って。そうだとしたらやっぱり最高だ!ウォルト!首洗って待ってなさいよ!



 一通り話し終えてまた楽しく飲んでいると、ウイカから疑問が。


「結局、私達の中で誰がリードしてるのかな?サマラさんだと思ってたけど」


 ウイカの疑問に私がお答えしよう!


「アニカじゃない」

「えっ!?なんでですか?!」

「胸が大きいから」


 大っきいのが好きなのは私も知らなかった。めっちゃ照れてた。現状でもアニカが一番大きい。


「まだ成長してないんですけど…。コレに関してはウォルトさんの魔法をちょっと疑ってます!」

「私もあんなに背が伸びるのか疑問です」

「大丈夫。だってウォルトだから♪」

「「「確かに」」」


 信じないという選択肢がない魔法使い。


「兄ちゃんって凄く初心ですよね?獣人にモテなかったのは理解できますけど、基本的に優しいから人間にはモテそうです。なんであんななんでしょう?」

「元々女性が苦手だからだよ。ウォルトは、強くなりたいって気持ちは強かったけど、モテたいって思ったことはないと思う」

「不思議ですね。獣人は女好きって云われてるのに」

「小さい頃はホントに力が弱かったから。同じ年頃の女の獣人にも負けるくらい。バカにされるのが嫌で話したくもなさそうだった」


 アニカとチャチャが黒い目に変化する。


「そんな女共は…」

「成敗しましょう…」

「恐いって!昔のことだよ。直ぐに恐い顔するんだから、まったく。まぁ、私も同じこと考えたし過去にやっちゃったこともあるんだけど」

「そうはいっても…」

「許せないですよね…」


 なにかブツブツ言ってる…。しばらく黒アニカと黒チャチャのままだね。4姉妹では下の妹2人が隠れ過激派だ。冷静な次女ウイカが訊いてくる。


「それでどうなったんですか?」

「結局、私が知らないところでバカにされるのが激しくなったの。「女に守られるクソ獣人」みたいに言われてるのをたまたま聞いてさ。ウォルトも嫌そうで…どうしていいかわかんなかったなぁ。結局「今後はやめてくれ」ってウォルトから頼まれた」

「巻き込みたくないのと…男のプライドがあったんでしょうね…」

「多分そうだね」

「でも、サマラさんも力は強いですよね」

「昔も今も力じゃ負ける気はしないけど、私は絶対バカにしなかった。それだけはやっちゃ駄目って直感でわかったから。だから今があるんだよ」

「昔から強い獣人は好きじゃないんですか?」

「全っ然!強いからなに?って思うよ。ほとんどの獣人の女は強さを見て痺れるみたいに惚れるらしいけど、信じらんない」


 だから獣人にはマードックみたいなのがモテる。私には意味不明すぎる。


「私達はウォルトさんが弱くても好きです。たとえ魔法を使えなくても」


 ウイカはふわっと笑う。癒し系の美人だよねぇ。強敵すぎる!


「ふふっ。皆が強敵すぎて楽しすぎる」

「切磋琢磨して自分を磨かなきゃいけないので、長女はしっかりして下さいね」

「参ったなぁ」


 いつの間にか、アニカとチャチャは通常通りに戻っていた。


「サマラさんに訊きたいんですけど!」

「ほい。なんでもござれ」

「私達はいつかウォルトさんに気持ちを伝えることになりますよね?」

「なるね。間違いなく」

「正直どんなタイミングになると思いますか?1人の時は抜け駆けするみたいで嫌なんです!」

「わかる!しかも、ダメだったら気まずいよね」

「そうなんですよ!戦線離脱することになったら寂しくて…」


 三女の悩みにお答えしましょう!


「全員集合してるときだね!そこで、恨みっこなしで選んでもらうことになると思うよ。勝っても負けても皆で分かち合えるから!」

「ありそうです!でも、困らせませんかね?」

「それぞれ告白したとしても、ウォルトは困るから同じだよ!それに、幸せ者なんだから文句は言わせない!」

「確かに……そうですね!」


 これで解決かな!


「サマラさん、アニカさん。大事なことを忘れてませんか?」


 うん?四女は、気になること言うね。


「大事なことってなに?」

「なにを忘れてるの?」

「兄ちゃんが4姉妹の誰かに告白する。それでこそ勝ったと言えませんか?抜け駆けとかもありませんし」

「あっ!」

「確かに!」


 チャチャはジト目で私とアニカを見てくる。


「選ばれてこそ勝者のような気がします…。私はそのつもりだったんですけど…。まさか…幼馴染みとか巨乳をアピールして…無理やりにでも兄ちゃんに選んでもらうつもりだったんじゃ…」

「ち、違うよ!」

「そ、そんなつもりじゃなかったし!もちろん、告白してもらうつもりだったし!」

「もしかして…選ばれる自信がないんじゃ…?」

「あ、あるし!」

「ありまくりだし!それはもう、すっごいある!」

「ホントかなぁ…。怪しいなぁ…」

「あはは…」

「あはっ…」


 次女が助け船を出してくれる。


「私はどっちでもいいと思うよ。ウォルトさんから告白されたらもちろん嬉しいけど、ずっと選ばないかもしれない。ときに強引さが必要な時もあるのが私達の好きな人だから。状況に応じて、ねっ?」


 いいこと言うなぁ!さすが4姉妹の良心!


「ウイカの言う通り!」

「さすがお姉ちゃん!」

「そうですね。今はそれでよしとします」


 今日も今日とて、4姉妹は楽しくお酒を酌み交わして次会う時を楽しみにそれぞれ帰っていく。

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