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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
399/706

399 若さは甘さなのかな?

「初めまして。ミーリャといいます」

「初めまして。ウォルトです」


 ウォルトとミーリャは互いに微笑む。


 オーレンが住み家に恋人のミーリャさんを連れてきてくれた。魔導師のロックさんは留守番らしい。実際は初めましてじゃないけど、修練場ではボクが姿を消していたし丁寧に挨拶を交わす。挨拶もそこそこに、まず気になったことを確認する。


「オーレンの顔の傷はどうしたんだい?」


 所々腫れたように赤みを帯びている。


「昨日ミーリャのお母さんに挨拶に行ったら、組手で手合わせすることになって殴られました。めちゃくちゃ強くて…」


 苦笑するオーレン。行動が早いなぁ。真剣に交際すると伝えてネネさんを安心させたかったんだろうけど。予想通り真面目だ。


「ロックの師匠のダーシーさんにお願いして『治癒』をかけてもらったんですけど、完全に治りきってないんです」

「そうなんだね。ウイカ達には?」


 2人に頼めば綺麗に治ると思うけど。

 

「「彼女の親と決闘した傷は男の勲章だ!」って放置されてます。爆笑されました」

「ネネさんは強かったろう?」

「えっ?!ネネさんを知ってるんですか?!」

「シュケルさんの奧さんだからね。一度だけ会ったことがあるんだ」

「あの…母がウォルトさんにコレを…」


 手紙を渡される。


「読んでみていいですか?」

「はい」


 封筒から取り出して便箋を開くと、『かなり暗部の頃の勘を取り戻しているから首を洗って待っていろ』というニュアンスの文章が簡潔に書かれていた。宣戦布告…だな。


 苦笑していると申し訳なさげにミーリャさんが口を開く。


「「ウォルトさんのことを知らない」って言ったんですけど、「その内会うだろ。会ったら渡せ」って言われて。「森に住んでる白猫の獣人だから直ぐにわかる」って。こんなに早く会えると思ってなかったです」

「わざわざありがとうございます」


 届くかもわからないのに渡して、結果ちゃんと届いてる。ある意味予言者だ。


「母は変なことを書いてませんか?」

「えっと…首を洗って待ってろと」

「意味不明ですね」


 ボクみたいな獣人が、まさかネネさんと手合わせしてるとは思わないだろうな。


「…ウォルトさんは、もしかしてネネさんに手合わせで勝ったんですか…?」


 オーレンは勘がいい。


「えっ!?なんでウォルトさんが?!」

「手合わせはしたけど、負けなかっただけだね」


 ボクは『影分身』を使ってネネさんの動きを止めただけ。


「なるほど…。わかりました。ミーリャ…」

「なんですか?」

「言ってなかったけど…ウォルトさんは俺達『森の白猫』の師匠なんだ」

「えっ!?そうなんですか?!」

「詳しいことは家の中で話そう。お茶を頂いていいですか?」

「もちろん」


 住み家に招いて花茶を差し出す。


「すっごく美味しいです!店で飲むのより断然美味しいです!」

「ありがとう」


 気を使わなくていいと言われたので、ミーリャとは砕けて話すことにした。きっとオーレンが言っておいてくれたんだな。


「あの…ウォルトさんは、オーレンさん達の師匠なんですよね?」

「皆はそう言ってくれる」

「なにを教えてるんですか?」


 なんて言ったらいいのか思案していると、オーレンが代わりに説明してくれる。


「いろいろだよ。剣も薬学も……魔法もだ」

「…えっ?」

「ウォルトさん。俺の顔を治療してもらっていいですか?」

「いいよ」


 オーレンの顔に手を翳して魔法で治療すると、ミーリャは隣で驚いた表情。


「なっ?噓じゃないだろ?」

「はい…。驚きました…」

「前にシュケルさんに会ったとき、人の姿に変身したろ?あれもウォルトさんの魔法だ。俺達の魔法の師匠なんだ」

「凄いです…」


 オーレンが、ボクらの出会いからの経緯を簡単に説明してくれる。ミーリャは黙って耳を傾けてくれた。


「…というワケなんだけど、ミーリャにお願いがある」

「はい」

「ウォルトさんはこの場所で静かに暮らしてる。だから…」

「他言無用ですね」


 オーレンはコクリと頷いた。


「任せて下さい!誰にも言いません!」

「ありがとう。ちゃんと話してよかった」

「ロックも連れてくればよかったですね」

「アイツはモテ男だから仕方ない。今日も女の子のとこだろ?」

「ふふっ。羨ましいんですか?」

「いや!俺はミーリャにだけモテればいい!」


 なんというか…甘いなぁ…。


「ミーリャ、ありがとう。これからよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします!」

「シュケルさんには会いに行ったの?」

「いえ。今日行こうと思ってます」


 …と、オーレンから提案が。


「よかったらウォルトさんも一緒に行ってもらえませんか?」

「全然構わないけど、いいの?2人でゆっくり行きたいんじゃ?」

「そうなんですけど、ネネさんのことがあってからミーリャが心配してくれて」

「父がなにを言い出すかわからないので、知人のウォルトさんに同行してもらえると安心できます。御迷惑ですか?」


 スケさんは好戦的じゃないから大丈夫だと思うけど、ネネさんはよっぽど容赦しなかったんだろうな。魔導師の『治癒』で完治しなかったくらいだ。


「そういうことなら一緒に行こう。ボクも最近顔を出してないからね。食事してから行くかい?」

「お願いします!」

「私もご馳走になっていいんですか?」

「もちろん。直ぐに準備するから待ってて」


 調理を終えて2人に差し出す。今日は、タマノーラの名物キーナグの味付けを変えた料理にしてみた。


「ん~!もの凄く美味しいです!」

「ありがとう。口に合ってよかったよ」

「ウォルトさんは料理の師匠でもあるんだ。お代わりもあるから遠慮せず沢山食べよう」

「はい!いただきます!」


 ミーリャは3回もお代わりしてくれた。遠慮しないでくれて嬉しい。


「ご馳走さまでした…。オーレンさん…。動けません…」


 椅子の背もたれに寄りかかって、お腹を抱えてる。嬉しいな。


「ははっ!ウォルトさんの料理を初めて食べると皆そうなるんだ。お腹が落ち着いてから行こう」

「ふぁい…」

「食後の飲み物はなにがいい?」

「俺はカフィがいいです」

「私は花茶をお願いします…」

「わかった」


 後片付けをしている間、2人には甘い時間を過ごしてもらおう。





 久しぶりにのんびり森を歩いて修練場に辿り着いた。


「緊張してきたな…」

「大丈夫だと思います!父は常識人なので!いや、常識骨?」


 どっちでもいいと思うし、ボクもミーリャの言う通りだと思う。師匠の装置で明かりを灯して奥へと進む。スケさんに会いに来ることがあると思うので、ミーリャにもやり方を教えたいけど魔法は使えないと聞いた。そうなると難しい。


 ただ、魔力は保持しているから適性を調べれば魔法を操れる可能性はある。あとは本人次第だし、ボクから伝えることはしない。今度オーレンに教えておこう。修練場に着いて呼びかける。


「スケさ~ん!皆さ~ん!」


 ボコボコと地面が盛り上がって、地中から骨の友人達が現れる。


「うわぁぁ!」

「えぇぇっ!?」


 あれ…?2人は皆に…会ってないか。あのとき会ったのはスケさんだけだ。勘違いしてた。


「皆はボクとシュケルさんの友人だから心配いらないよ。君達の先輩で全員元冒険者なんだ」

「そうなんですね」

「正直ビビりました」


 スケさんの後に皆が続いて歩いてくる。


『久しいな、ウォルト。それにミーリャも』

「お久しぶりです」

「お父さん。また会いに来たよ」

『うむ。今日はなにかあったのか?お前達が揃って来るとは。いつの間に知り合いに?』

「今日です」

「あのね、お父さんに紹介したい人がいるの」

『む…?誰だ…?』


 オーレンが前に出てスケさんに頭を下げた。


「初めまして!オーレンと言います!フクーベの冒険者です!ミーリャさんと交際させて頂いてます!ご挨拶に伺いました!」


 後ろに控える骨の皆がざわざわしてる。オーレンが顔を上げてからも、スケさんはしばらく黙っていた。表情がないから考えは読めない。


『そうか…。ミーリャもそんな年齢になったんだな…。そうか、恋人か…』

「うん」


 スケさんはしんみり告げた。


『………認めん』

「えっ…?」

『ミーリャに…恋人はまだ早い!』


 まさかの拒否。認める流れだと思ったけど。骨仲間達もザワつく。


『スケさん。予想通りだったけどちょっと大人げないよ。わざわざ挨拶に来るなんて相当真面目だよ。しかも、私達は死んでるのに』

『図体はでかいくせに、器がちっちぇな!』

『スケの字よ。それだけ娘っ子はデカくなったってことだ。成長を素直に喜べや』


 スケ美さん、スケ三郎さん、スケ蔵さんがそれぞれ意見する。


『お前達の言ってることはわかる……が、そうはいかない!オーレンと言ったな…?』

「はい」

『お前が冒険者というなら…実力を見せてもらおうか…。ミーリャを守れる男かどうか…』

「お父さん!なんでそうなるの?!意味わかんない!」

『お前達のタメだ。俺が力を見定めてやろう』

「だからなんでそうなるのよ!」


 もしかして…。


「スケさんは、ネネさんのことを心配してるんじゃないですか?」

『…………』


 やっぱり。オーレンがネネさんに会っても大丈夫か確認したいというスケさんなりの優しさなんだ。


「オーレンはもうネネさんに会ってますよ」

『なに?!それで無事だったのか…』


 オーレンが苦笑いで答える。


「本気で向かって行ったんですけど、ボコボコにされました。でも根性だけ認めてもらえました」

『そうか…』

「だからお父さんが心配しなくても大丈夫だよ」


 ミーリャが微笑む。


『そうか……………認めん!』

「「「ええっ!?」」」


 スケさん、意外に頑固オヤジ説が急浮上。


『ネネのことはさておき、俺にも力を見せてもらおう。それともやめるか?』

「…いえ。お願いします!」


 ミーリャがオーレンに寄り添う。


「オーレンさん…。ごめんなさい…。分からず屋の父で…」

「気にするな…。俺が力を見せて認めてもらいたいんだ」


 オーレンはミーリャの頭を優しく撫でて、互いに目を細める。


『ぐうぅぅっ…!甘いっ…!骨がっ…溶けそうだっ…!』

『甘いねぇ~!砂糖かぶったみたいに♪』

『ふっ…。甘ぇな…。クソほど甘ぇ…』

『甘ったるくて仕方ねぇや!』


 やっぱりそうなんだな。ボクも思った。


「シュケルさん…。俺の…全力でいきます!」

『かかってこい…!』


 オーレンは剣を抜きながらスケさんに向かって駆け出した。



「くっ!おらぁっ!」

『甘い』


 スケさんに挑むオーレンは、動きも鈍くて本調子にほど遠い。まだ、ネネさんに殴られたダメージが残っているのかもしれない。

 ボクが気付くのが遅すぎた。今さら体力を回復したいと言える雰囲気じゃない。オーレンに申し訳ない気持ちで一杯。


『お前の実力はこんなモノか?拍子抜けだ』

「まだです…!おらぁっ!」


 いつの間にか近くに移動してきたスケ美さん達が話し掛けてくる。


『ミーリャちゃん。オーレン君、頑張ってるね』

「はい」

『スケさんは強いよ。痛みも感じないし、ガタイが違うからね。オーレン君はまだ若いのによくやってる。しかも本調子じゃないよね』

『若いのに根性ありそうじゃねぇか。ああいう奴は嫌いじゃねぇな』

『けど、分が悪いぞ。いつまで保つか』


 スケ美さんやスケ三郎さんの言う通りで、オーレンは分が悪い。ただ、スケさんは力を確かめると言ったけど、なにを求めているのかボクにはわからない。


「ぐあっ…!」

「オーレンさん!」


 スケさんの拳がオーレンを捉えて、後ろに吹き飛ばされた。ミーリャが駆け寄ろうとして…。


「来るな!まだ終わってない!」

「でも!」

「でもじゃない!心配だからって毎回冒険に付いてくるのか?そんなことできないだろ?俺を信じてくれ。絶対に…認めてもらう!」


 オーレンが微笑むと、ミーリャも気合いを入れた顔で笑った。


「頑張って!負けないで!」

「おう!…おらぁぁっ!」


 再度スケさんに立ち向かうオーレン。


『…もういい』

「えっ?」


 剣を振り下ろす寸前にスケさんがポツリと呟いて、オーレンはゆっくり剣を下ろす。


『忠告しておく。お前達は…互いに冒険者だ。これから先、辛いことが起こるかもしれない』

「はい」

『俺のように突然死ぬこともあり得る。お前もミーリャもだ』

「はい」

『信じ合って…助け合っていけ。お前達はまだ若い。理解できないかもしれないが、頭の片隅に残しておいてくれ。言いたいのはそれだけだ』

「はい。肝に銘じます」


 2人が信じ合えるのかを試したのか?納得いく言葉を聞きたかったのか?なんにせよ、スケさんは認めてくれたんだろう。


『オーレン。お前は冒険者になってどのくらいだ?』

「もう少しで2年になります」

『その短期間でこの強さは大したモノだ。Cランクといったところか?』

「はい!俺はウォルトさんの弟子なんで、いつも恥ずかしくない闘いをしたいです!」

『なるほどな。俺が気に入らないことがあれば、師匠に責任をとってもらおう』

「えぇっ!?ボクですか?」


 思いがけない角度から矢が飛んできた。スケさんは顎を鳴らしてカラカラ笑う。


「お父さん。ありがとう」

『お前達に会えてよかった。あまり目の前で仲良くされると複雑だが』

「そう?お父さんだってお母さんとやることやったんでしょ?凄く喜んでたよ」

『アイツは……娘になにを教えてるんだ。まったく…』

「ふふっ。だってお母さんだよ?いつだって真っ直ぐで私達にはなにも隠さない。ずっと私の憧れなんだ」

『そうか…。ネネのような強い女になれるといいな』

「うん!」

『ただし変人扱いされるのは覚悟しておけよ』

「そうだね」


 とりあえず丸く収まったのかな。オーレンとミーリャは骨の皆に労われてる。聞こえてくる会話の内容からすると、元冒険者の集団だから若い2人を応援したいみたいだ。


 スケさんが、のそりとボクの前に来る。


『ウォルト。こんなことを頼むのは筋違いだと思うが、これからもミーリャのことを頼む』

「頼むならボクじゃなくてオーレンだと思いますよ」

『恋人のオーレンは頼むまでもなく当然だ。ウォルトには、冒険者としてのミーリャの力になってもらいたい。できる限りで構わないからお願いできないか?』

「わかりました。そういうことなら」

『すまない。恩に着る』


 スケさんは大きな身体で頭を下げた。


「頭を下げる必要なんてないです。スケさんはボクの師匠ですから」


 スケさんの親心が伝わってくる。本当は、ボクに頼むんじゃなくて自分で助けてあげたいはず。それができないから頼むしかない。

 代役として少しでも助力できるなら嬉しい。骨の皆はボクの恩人。魔法を覚えたての無知な獣人に、実践で根気強く闘い方を教えてくれた師匠達で多大な恩がある。

 

『よろしく頼む』

「期待に添えるかわかりませんが」

『心配してない』

「ウォルトさん。これからよろしくお願いします!」


 いつの間にかミーリャが近くにいて、ペコリと頭を下げた。そんな大層な獣人じゃないってその内わかってもらえるかな。


「よろしくね」

『ミーリャ。聞いてると思うが、ウォルトの魔法のことは誰にも言うな』

「わかってるよ。大丈夫」

『大事な友人がいなくなると俺達が成仏できなくなる』

「えっ!?ウォルトさんが成仏させてくれるの?!」

『そうだ。俺達が逝くときはウォルトに頼むことに決めてる。別に今すぐってワケじゃない』

「そうなんだね…」


 ボクもそのつもりだけど、「頼む」と言われて躊躇なく直ぐ実行に移せるか。ダナンさんとカリーにも同じことが云えるけど、思い出を共有する友人を迷いなく天に還すことができるか。

 土壇場で怖じ気づく可能性はある。ただ、他の誰にも任せたくない。その時は精一杯の想いを込めて最期の魔法を贈らせてもらいたい。


『ウォルトはせっかく来たんだ。修練していくか?』

「そうですね。皆さんもいいんですか?」

『おう!コテンパンにやってやるぜ!』

『負けないわよ!』

『てやんでい!』

「ちょっと時間がかかるから、オーレンとミーリャは先に帰るかい?」

「いえ!俺は是非見たいです!」

「私もです!」

「わかった。後で一緒に帰ろう。少し待ってて」



 ★



 オーレンとミーリャは、寄り添ってウォルト達の手合わせを見守る。


「ミーリャ。どうだ?」

「凄いです…。こんな魔導師がいるなんて…。凄い魔法です」

「そう思うよな。俺もそうだったよ」


 きっと想像もしなかっただろう。獣人が魔法を操ることもそうだし、こんなに凄い魔導師が存在することも。元冒険者の皆さんが、骨として元気に過ごしていることだってそうなんだけど。

 ミーリャは、多彩な魔法で戦闘を繰り広げるウォルトさんから目を離せないでいる。魔導師でなくても、ウォルトさんの魔法が凄いことだけは理解できるんだ。


 この魔法はほんの一部なんだよ…と言って信じてくれるかな。その内、嫌でも実感するだろうからあえて教えるつもりはないけど。


 少しずつ知って、そして驚いてほしい。


『ウォルトォ~!やるじゃねぇか!けど、今日こそお前をぶっ倒してやるぜ!』

「負けたくないので頑張ります」

『スケさんは、ミーリャちゃんにいいとこ見せないとダメよ!気合い入れて!』

『あぁ。グラァァッ…!』

「お父さん!頑張って!」

「シュケルさんもウォルトさんも頑張って下さい!」

 

 失礼かもしれないけど、こうして先輩冒険者のシュケルさん達を見ていると、死ぬのも悪くないと思える。だって生き生きしてる。ただ骨の姿をしているというだけだ。

 ほんの少しだけど、冒険者として『いつ死が訪れるかわからない』という恐怖感が薄れた。いいことなのか俺にはわからない。


 なんて考えを巡らせていると…。


『『『グラァァァ…!』』』


「すげぇっ!皆が合体した!」

「強そう!」


 自分の数倍巨大なスケルトンの攻撃を冷静に捌きながら、ウォルトさんが詠唱する。


融合(フィジョン)


 両手を前に伸ばし球体を掴むような構えから放たれたのは、小さな魔力弾のような魔法。俺が放てる魔力弾より小さい。初めて見る。


『グルァッ…?』


 合体スケルトンの身体に触れた瞬間、眩い閃光と共に爆発を起こして爆風が巻き起こった。


「きゃあぁっ!」

「ミーリャ!危ない!……あれっ?」


 庇うようにミーリャに覆い被さったけど、そよ風すら感じない。ゆっくり瞼を開けると、ドーム状の『強化盾』が張られていた。いつの間に…。


「大丈夫だったか?」

「はい♪」


 ミーリャの肩を抱きかかえていると、衝撃で合体が解けたのかシュケルさんがこっちに向かって突進してきた。


『グラァァッ!オーレン!親の目の前でなにをしてる!?』

「わぁぁっ!すいません!」

『ちょっとスケさん!やめなって!』

『スケ!このバカ野郎が!いい年こいてやめろ!』

「お父さん!恥ずかしいからやめてよ!」


 この日の修練は、オーレンが怒り狂うシュケルさんから逃亡して終わった。

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