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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
395/706

395 耳が痛い

 カネルラ宮廷魔導師の最高指導者であるジグルは頭を悩ませていた。


 執務室で熱々のお茶を啜る。いかに外気が暑かろうとお茶は熱いものに限る。中々理解者は現れないが。


「ちと苦いな…」


 思いのほか茶葉を浸けすぎた。苦いお茶をすすりながら宮廷魔導師に想いを馳せる。



 数ヶ月前、カネルラに突如現れた魔導師サバトの影響により、宮廷魔導師の修練は一層激しさを増し全体の技量が底上げされた。そのこと自体は大変喜ばしい……のだが、魔導師間において大きな溝が生まれもした。

 サバトの魔法を『見た者』と『見ていない者』に区分され、実際に目にした者の中には一心不乱と言っていいほどに修練に打ち込む者がいる。だが、知らぬ者の中には他人事のような空気を纏い、なんら変わらぬ者もいる。

 

 それも致し方ない。宮廷魔導師は、カネルラにおけるエリート魔導師集団。各地から才能豊かな魔導師が集い日々研究や修練に明け暮れる。間違いなく国内では最高峰の魔導師達。

 …が、それゆえプライドも人一倍高く、意見の相違などで衝突することもしばしば。騎士や暗部と違い一丸となって成し遂げる任務が少ない宮廷魔導師は、個の力を磨くことが優先される傾向にある。

 そして、多くの者が『自分こそがカネルラ最高の魔導師』というプライドを持つ。そうして切磋琢磨しなければ大成できない世界でもあるのだが。


 サバトやフレイを目にした者には、上には上がいることを認識して更なる修練に励む者、嫉妬と対抗心を燃やす者、技量の差を実感して宮廷魔導師を辞める者まで現れた。

 一方、噂にしか聞かぬ者は『大袈裟だ』『あり得ない』『陥れようとする愚策』と穿った思考を持ち、「民衆に躍らされている」と嘲笑する者までいる始末。


 普段一枚岩でない宮廷魔導師は、サバトの出現により大きな分岐点に立たされている。派閥争いが存在する組織であるのに、さらなる分裂の危機。些細な諍いを治めることに注力する日々を送っている。


 喉まで伸びる白髭を撫でながら、長く息を吐いた。宮廷魔導師は、元来カネルラ及び王族を守護するタメに誕生した組織。魔法による侵略を防ぎきる選りすぐりの魔導師による戦闘部隊として産声を上げた。


 だが、クライン王政を最後に戦争は生起しておらず、時代を追うにつれ魔法を発展させることに尽力するよう変化した。実力と名声にこだわる魔導師の気質は、いつの時代も変わりなく必然といえる。現代では有事の対処に使用する戦術や大規模魔法を除き、特別な共闘戦術を学ぶ必要はない。


 だが、サバトは本人の意志とは関係なくカネルラにおける『驚異』と認識された。だからこそ魔導師達は焦り、腕を上げようと躍起になって修練に励んでいる側面もある。

 自分達の技量で対処できない怪物が存在しているという事実は、過去の悲劇を何万回語るよりも顕著に魔導師達の意識に変化をもたらした。

 現に数名と『サバトと戦闘になった場合の対処』について真剣に意見を交わした。そんな議論をすること自体、ほんの少し前までは想像すらしなかった。たった1人の魔導師の出現が、これほどの影響を及ぼすなどとは。


 今やカネルラ中の魔導師に認知され、目標や標的とされるサバト。弟子入りを目指す者が多い中、名を上げようと打倒を目指す者や囲い込もうと画策する貴族紛いまでいる。

 だが、大魔導師ライアンが邂逅した際の『積極的な交流を好まない』という情報が流布したことにより、サバトを刺激する行動はカネルラ魔法の発展を妨げる危険を孕むと有識者会議により決断され厳に慎むよう通達された。

 他ならぬ儂も進言した。仮にそうなった場合、カネルラにとってあまりに愚かな行為。信じ難い損失を生む。あの男の魔法は目にするだけで価値がある。


「会えたライアンさんが羨ましいわい…」


 溜息と共に本音が漏れる。魔法に関しては自他共に認める自尊心の塊であったライアンさんは、サバトと交流して人が変わったように柔らかな雰囲気を纏っていた。

 問い詰めても、どういった伝手で出会ったのか終ぞ白状しないままに天に召された。「残念だったのぅ」と笑う顔が思い出されて腹立たしい。

 けれど…亡くなる時までいい表情をしていた。清々しさを感じさせる好々爺といった表情は、過去にライアンさんが一瞬たりとも見せたことのない顔だった。



 ★



 亡くなる数日前に見舞ったときのこと。


 ベッドから起き上がることもなく、顔だけ向けるライアンさんと言葉を交わした。


「御加減はいかがですかな?」

「もってあと数日といったところか」

「なにを仰います。まだまだ」

「事実だ。儂とお前の間に慰めなどいらん」

「そうですな。では、悔いは?」

「30年遅く生まれておれば、大魔導師と呼ばれるより遙かに価値のある人生を送れた。儂も、お前もな」

「ほっほっほ!それは、サバトと魔法を競うことができたという意味ですか?『たられば』の話は嫌いなのでは?」


 ライアンさんは仮定の話題を嫌う。弟子を「言い訳するな!」といつも怒鳴りつけていた。


「人生に仮定など存在せん。日々常に選択し続けて今に至る。たらればなど、現実を直視せず逃げようとする者の言い訳よ。だが…初めて痛感する。もっと早く出会えていれば…とな」

「それは…よい出会いでしたな…」

「ジグル。お前に言っておきたいことがある。宮廷魔導師に今の何倍もの修練を課せ。生きている内にサバトに届きたいのなら、死ぬほど修練しろと伝えろ。そして、頂点を目指さぬなら宮廷魔導師を辞めろと」

「相変わらず無茶を仰る」

「宮廷魔導師はカネルラ魔導師の頂点だ。カネルラ最高の魔導師は、冒険者でもエルフでもなく宮廷魔導師こそが相応しい。だが、最近では体裁を気にして魔法武闘会にも出ない。気概のない魔導師ばかりよ。どうなっている」

「むぅ…」


 耳が痛い。ライアンさんの言う通り、宮廷魔導師達は近年の魔法武闘会には1人も出場していない。


 理由は敗北することを恐れているから。負ければ泥を塗ったと叱責され嘲笑されるだろう。地位や名誉、その全てを失うかもしれない。ゆえに恐れている。出場しなければ名声が地に落ちることもなく、宮廷魔導師というエリート集団の一員で在り続け羨望の眼差しを浴び続ける。

 出場を打診しても、あれこれ最もらしい理由を付けて断る魔導師ばかり。優勝して名を挙げようという気概を持つ魔導師もおらぬ有様。実に嘆かわしい現状。


 今年の記念大会を見て感じた。各地の冒険者の中には、宮廷魔導師を上回る実力を持つ者が存在する。むしろ、魔法戦となれば冒険者が優勢であろう。

 彼らは魔物を相手に実戦で魔法を磨いている。宮廷魔導師がいかに強大な魔法を操れたとしても、闘いとなれば経験不足は大きな不安要素。

 格付けされてしまうがゆえに公に魔法戦も行わない宮廷魔導師が、魔法武闘会で優勝できると断言できない。


「なぜ無理やりにでも挑戦させない?40にも満たない若造どもが負けを恐れてどうする。何度敗れようと最後に頂点に立つタメの通過点だろう。一度でも負けたら脱退という規則でもできたのか?」

「そうではありません…が、多くの柵があるのです」


 若かりし頃のライアンさんは魔法戦を好んだ。相手が何者であろうと場数をこなし、油断したり格下に負けたら死ぬほど怒られたが、新たな挑戦であったり格上に全力を尽くして負けたときは決して怒らなかった。


 だが、今代の宮廷魔導師は叱責と屈辱に耐えられない。時代ゆえか精神力が脆弱で、強く指導すると落ち込んでしまい修練どころではなくなる。儂が指導者に就任してまだ数年だが、甘やかしてきた前任者への不満が口をつきそうになるときもある。前任者も同様だった可能性が大だが。いわゆる負の連鎖。


「もはや宮廷魔導師とはただの看板。最強魔導師集団など幻想。既に地に落ちている」


 好き放題言ってくれるわい…。


「厳格な指導が必要なのは理解していますが、貴方が最高指導者であったときは私の他数名しか残りませんでした。今よりも崩壊寸前でしたぞ」


 ライアンさんは40代で最高指導者に就任した。儂とは10も離れていないが、それでも新人と同等に扱い一切容赦しなかった。

 就任されていたのは数年だったが、あの頃は地獄のような毎日だった。何人もの才能ある同士が魔法の道を捨てた。それほどに厳しく辛い修練を課された。あの者達が残っていれば、今頃どんな魔導師になっていたのか…。…それこそたらればか。


「ふざけるな。人が減ったら崩壊か?頭数の話などしていない。儂は量より質を求めた。そしてお前の他に数名が残った。儂は正しかったのだ」

「随分と他力本願でいらっしゃる。それはあくまで結果論でしょう」


 意地と根性で生き残った者ばかり。ライアンさんを慕っていたのでも、指導が素晴らしかったワケでもない。仮に戦争が起きていたら、王族や民を守ることなどできないほど少数であった。いかに精鋭であろうと戦争は数の原理。


「残る、残らないを選択するのは儂ではない。納得していない魔導師が黙って従うはずもなく、己が正しいと信じることを続けただけ。そして、お前達が残る選択をし大魔導師になり証明した。何人もの魔導師を相手にできる実力を手に入れ、多くの優秀な弟子を育てた」


 有り難い評価だが…。


「誰も残らなければ、どうするつもりだったのですか?」

「次の魔導師を育てるだけのこと。無論育つまでだ。つまらん仮定の話をするな」


 ふっ…。やはり儂らを育てたという認識なのだな。この傲慢さが…羨ましいと思うときもある。


「この忠告もお前は聞かないだろう。だが忘れるな。サバトに届きたいと望む者がいるのなら死に物狂いで修練させろ。見込みがある、ないに関わらずだ。そうでない魔導師しかいないのなら宮廷魔導師は今代で終わる。サバトの魔法を継ぐ者がカネルラの次代を担う」

「間違いないでしょうな」

「そうなることをよしとするか。単純な話よ」

「貴方は引退しても厳しい指導者ですな」

「口出しするつもりなどなかった。彼奴に会うまではな。だが、少々お節介が必要だと感じたまで」


 む…?宮廷魔導師の育成についての苦言は、儂が最高指導者に就任してから初めて…か?


「私の方針を尊重してくださったのですか?」

「お前は助言が必要なヘボ魔導師か?違うだろう。今は最期の我が儘を言わせてもらっている」


 今になって…。困った大魔導師だ…。


「そんなことより、サバトの詳しい情報を教えてもらえると嬉しいのですが」

「それはできん。彼奴と約束したのでな。それが魔法を見せてもらう条件よ。儂が反故にすれば、それこそカネルラ魔法の損失に直結する。口が裂けても言えんな」

「残念です。貴方でも勝てない魔導師に会ってみたいですな」

「闘っておらんだろうが!仮定の話を…」

「私はサバトの魔法を見た。仮定の話ではなく紛れもない事実ですな。ほっほっ!」

「くっ…!減らず口を叩きおる!去ねっ!」


 あの時、ライアンさんは素直に負けを認めた。だが、やはり上機嫌だった。傲慢不遜で自信家の大魔導師に清々しく負けを認めさせる魔導師と会って話してみたい。

 ライアンさんは稀代の大魔導師だった。100年に1人と評価された逸材。カネルラ魔法の発展に大きく寄与した偉大な男。

 

 そんな男がサバトについて少しだけ語った。



「サバトは儂らのような甘っちょろい魔導師ではない。話を思い出すだけで愉快だ」

「ほほう。気になりますな」

「彼奴は……儂の理想を体現したような魔導師よ」

「どういう意味ですかな?」

「お前も会えば理解する。そして話せばな。会えたらの話だが。はははっ」

「酷い方ですな。いい加減もったいぶり過ぎですぞ」

「最も大事なことは伝えた。何度も言わせるな。逆にお前に訊こう。儂はなぜサバトに会えたと思う?」


 なぜ会えたのか…?


「知り合いがいたのでは?」

「そんなことは訊いてない。さっきも言ったが選択だ」

「仰っている意味がわかりかねます」

「病に冒されているからこそ焦り、とにかく動く選択をした。思いつく限り打てる手を打った。そして、残された時間の中で会うことに成功した。運がよかったのではない。必然だ」

「なるほど」

「ジグル。何度目の最後か自分でもわからんが、言っておく」

「貴方らしい。なんですかな?」

「間違えることを恐れるな。選択に後悔を残すな。そして立ち止まるな」

「金言ですな」

「ふはははっ!当然よ!」



 ★



 結局、最も大事なこととはなんだったのか?今でも考える。


 まさに意地悪じいさんの難問。発した言葉のどれもが最重要に思える不思議。そして、全てが冗句にも思える。

 だが、自虐的なことを述べたのは大いなる驚き。現代の魔導師には想像できないような過酷な修練で研鑚を積んだ魔導師。人格は尊敬できないが、魔導師としての姿勢と力量は未だ尊敬してやまない。

 全盛期は世界でも最高クラスの魔導師であったはず。カネルラでも歴代で3本の指に入るであろう。

 

 …と、ドアがノックされる。


「ジグル様。お願いがあって参りました」

「入れ」

「失礼します」


 部屋に入ってきたのは宮廷魔導師の頂に立つ男。名をラウトールという。


「何事か?」

「マギと数名が揉めております。仲裁の助力をお願いに参った次第です」

「またか…。血気盛んじゃのう。直ぐに行こう」

「はい」


 廊下を並び歩く。頭1つ背の高いラウトールを見ることなく話しかける。


「のぅ、ラウトール」

「なんでしょうか」

「お前だけでも諍いは止められるのではないか?」

「可能です。が、私は上手く加減ができません。ジグル様の方が適任かと」


 ふっ…。本音は面倒くさいだけじゃろう。だが、知らせに来るだけマシか。


「お前は最近の宮廷魔導師達をどう思っとる?」

「なにも変わりありません」

「そうか?争いが増えたじゃろう?」

「確かに周囲は騒がしくなりました。ですが、私にとってはなにも変わりないのです」

「ほっほっ!お前に絡む者はおらぬか」


 ラウトールは宮廷魔導師の中でもずば抜けた技量を持つ。他の魔導師からも数多く手合わせを望まれその全てを退ける。現在の宮廷魔導師で、最も魔法戦をこなしているのはラウトールで間違いない。

 宮廷魔導師達はプライドが高いが、この男に敗れることは恥ではないことを認識している。だから遠慮なく挑んでくる。少なからず下克上の意味もあり、理解した上で堂々と頂点に君臨し続けている男。40を越えて全盛期を迎え、ほぼ完成された魔導師。才能も申し分ない。


「よい傾向ではありませんか」

「なにがじゃ?」

「打倒サバトを掲げる魔導師が増え、修練に活気があります。現に技量の向上も目覚ましい。私が指導者ならば喜ばしい限りです」

「なるほどのぅ。お前はそうではないのか?」

「私は己がサバトに劣っていると思いません。技量は私が上でしょう」


 此奴もまた武闘会でのサバトの魔法を知らぬ。見ていたとしても同じ反応かもしれんが。


 ただただぬるい。


「そうか」

「ジグル様は、私よりサバトの技量が上だと…そう思われているのですか?」

「そうは言わん。魔法戦をやってみなければわからんな」


 不満そうな顔をしとるが事実を述べたまで。魔法戦は単純に技量が高い方が勝つワケではない。戦術や魔法の相性も重要な要素。

 口には出さんが、現時点で此奴がサバトと魔法戦を行えば100回闘って100回負けると断言できる。


「私はサバトに出会う時を待っています。そして、堂々とサバトを倒し宮廷魔導師がカネルラ最強であると証明してみせます」

「それでいい。じゃが、まずは争いを止めるのを手伝え」

「お任せ下さい」


 …考えが甘過ぎる。へそで茶を沸かすわ。ラウトールは才能豊かな魔導師だが、サバトは元より、フレイの技量にすら届いていないのは火を見るより明らか。

 あの2人は、カネルラの歴史上でも最高クラスの魔導師達。同じ時代に生を受けたことがどれほど幸運であるのか切々と語りたくなる。己が井の中の蛙であることを痛感する機会を与えられ、そして追うことを許される若さである幸せを。

 少々の挫折はあれど、最強と呼ばれる集団の頂点に立ち、甘い蜜の味を知っているがゆえの傲慢を矯正してやりたいが、残念ながら今の儂では敗北の味を教えてやることはできん。


 この男の実力は本物。この男をどこまで育て上げられるか。それが宮廷魔導師の未来を左右する可能性が高い。

 しかし、道は険しい。魔法に対する意識が低すぎる。謙虚に見えてその実は自信家で傲慢。一見ライアンさんのようだが裏付けがない。努力を惜しまず、修練にも真面目に打ち込んではいるが、やはり宮廷魔導師という看板の元に威光を放とうとしている。


 さらに言えば、癇癪を起こすタチの魔導師であり厳しい指導に耐えられるか…。魔導師であることを諦めてしまったら…。

 不安要素は尽きない。ほんの少し前まではそれでも構わなかった。あの…化け物が現れるまでは。


『つまらん仮定の話をするな』


 ライアンさんの声が聞こえた気がした。……その通りだ。儂の思考には仮定が多すぎる。守りの思考が過ぎる。修練で音を上げるのはラウトールではなく儂かもしれん。


 もっと優れた才能がどこかに隠れているかもしれん。案外サバトは弱いかもしれん。考え出せばきりがない。やってダメなら次の一手を繰り出す。行き当たりばったりのようで、実に魔導師らしい思考。大魔導師ライアンの弟子に対する最後の指導と受け取らせてもらおう。


 それにしても…いつからこんなに縮こまってしまったのか。儂は儂のやり方で魔導師を育てればよい。そんな当たり前のことに気付かなかった。

 地位を手放したくないのは宮廷魔導師だけではなく…誰より自分自身であった。今が決断のとき。儂に残された時間は短い。


 誰のせいにもできぬが、誰にもできないことをやり遂げてみせよう。ライアンさんにただ1つ手放しで同意して。


 カネルラ最高の魔導師は宮廷魔導師でなければならん。



「ジグル様。なにか気にかかることでも?」


 ふっ。よく見ておるわ。


「お前のおかげで決意できた。今日で別れとなるやもしれんな」

「…どういう意味です?」

「つまらぬ冗談よ」


 後ほど儂の意志を国王様にお伝えに上がろう。サバトを超える魔導師を育てたいと。宮廷魔導師は崩壊するかもしれぬと。

 国王様の御意向に添うことができず、たとえ解任されようと止まるまい。そうなれば王城を離れカネルラ各地を回るとしよう。


 そして、次に王都へ来るとき不甲斐ない宮廷魔導師であれば一掃する。儂が育て上げた魔導師と共に。

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