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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
378/707

378 仲間っていいな

「お待たせしました!」


 裏庭で待つボクらの元に、装備を整えたテラさんが姿を現して凜とした声を轟かせる。この台詞を聞くと修練が始まる合図。


「直ぐに動いて大丈夫ですか?」

「はい!日頃から食事は5分で終わらせて、直ぐに訓練しているので!」

「身体に悪いのでやめましょう」


 消化に悪すぎる。


「やめません!では…お願いします!」


 テラさんは流れるような動作で槍を構えた。見る度に様になっていて隙もない。日々真摯に訓練してダナンさんの教えが生かされているのだろう。見る度に雰囲気が似てきている。


「ボクはいつでも構いません」

「では…いきます!ハァッ!」


 鋭い刺突と薙ぎや打ち下ろしを組み合わせて、自在に槍を操る。重いだろうに見事な槍捌き。

 遠い間合いからの連続攻撃に、懐に入ることができない。底抜けの明るさに誤魔化されてしまいそうだけど、かなりの努力家なのは一目瞭然。


『螺旋』


 技能の威力も範囲も向上している。魔法闘気で防ぎきった。


「まだまだぁ!」

「こちらからもいきます」

「なんのっ…!ハァッ!」


 テラさんもは身に纏う闘気で防いで反撃してくる。攻防一体でスムーズに闘気を操る技量に成長を感じる。



 ★



 手合わせを眺めながら、シオーネが口を開いた。


「凄いです…。テラは本当に新兵なのですか…?闘気も上手く使いこなしています」

「今年騎士になったばかりだ。それまでは騎士とは無縁な接客の仕事をしていた」

「信じられません。新兵とは思えない槍捌きです。今代の騎士団の精強さを感じます」


 私達の時代の男性の同期でも、テラのように槍を操る騎士はいなかった。


「まだまだだが、あの子は休むことなく鍛練している。あの頃のお前達と比べても遜色ないくらいに」

「それに…ウォルトさんも闘気を操っているように見えますが、錯覚ですか?」

「錯覚ではない。ウォルト殿は誰に教えられることもなく見ただけで闘気を操るようになったのだ。当然騎士ではない」

「そんなことができるのですか?!」


 見ただけで闘気を操るなんてあり得ない…。


「あの御仁は並の獣人ではない。正しい表現だという自信はないが、一言で表すなら化け物だ」

「化け物…」


 私は再び手合わせに視線を移した。


「くぅっ…!」

「まだいきます。『空波』」


 ウォルトさんは掌から闘気を放つ。テラは防戦一方。


「魔法のように闘気を飛ばしているのですか…?そんなことが可能だなんて」

「闘気術は我々の時代より進化している。剣術も然り。カネルラ騎士は、戦後も弛まぬ修練により技能を発展させ時代を繋いできたのだ。素晴らしいと思わんか」

「…はい!」


 押されながらも、テラは闘気を纏いながら前に出て槍を振るう。


「ふぅぅぅっ…!せぇぇぇい!」


 連続刺突を掻い潜り、ウォルトさんは槍を軽く掴んだ。


「…痛ぁっ!あたたっ!」


 テラは槍から手を離してしまい、ウォルトさんがそっと奪い取る。今のは…軽く『雷撃』のような魔法を流したように見えたけど…。


「しまったぁ~!」

「気を抜いて闘気が途切れましたね」

「くうぅ~!やられましたぁ!」

「ほんの一瞬でした。闘気操作の技量は確実に上達してます。素晴らしいです」

「ありがとうございます!」


 取り上げた槍を手渡して、気付いたところを助言している。


「今の場合、闘気をほんの少しでも槍に流しておくと隙がなくなります。なぜかというと…」

「ふんふん!こうですか?」

「そうです。無理だと判断したら、こうすれば…」

「なるほどぉ~!そっちから攻めるのもありですね!」


 真剣に意見を交換する様子を見ながら、ダナンさんに疑問をぶつける。


「今のは魔法ですよね?でも、ウォルトさんは詠唱していましたか?」


 無詠唱だったと思う。


「シオーネ。私が今から言うことは、たとえ国王陛下が相手であっても口外しないと約束してくれるか?」

「ダナンさんが仰るのであれば」


 私は頷いた。


「ウォルト殿はカネルラ最高の魔導師だ。本人は断じて認めないが間違いない。闘いの中で流れるように魔法を操る」

「信じ難いお話です。獣人であるのに…」

「紛れもない事実だ。だだし、御仁は目立つことを極端に嫌う。僅かな魔力すら漏らさず、魔導師であることを誰にも気付かせない。私は、ウォルト殿以上の技量を持つ魔導師を見たことがないのだ」

「それほどなのですか…」

「存在が公になれば周りは放っておかない。だが、周囲が騒がしくなれば御仁は静かに姿を消すだろう。私はそれを避けたい。子孫に出会い、王都で暮らせているのはウォルト殿のおかげ。多大な恩がある」

「理解しました。決して口外しないと誓います」


 冗談だとすれば意味不明すぎる。ただの魔法使いでないことだけは理解した。

 

「関係ないがコレも教えておく。我々は、兜が外れるとしばらく意識を失ってしまう。ルビーにやられないよう気をつけろ。カリーが教えているかもしれん」

「カリーらしいですね」


 昔からダナンさんを揶揄うような賢い騎馬だった。そんな2人の関係を羨ましく思っていたんだ。



 ★



 ウォルトは続けてテラの魔法の成果を確認することに。


「むぅ~…!はぁぁっ!」


 気合と同時に槍の穂先に『炎』が灯る。


「魔力操作もスムーズで、『炎』の威力も増大してます。修練の成果ですね」

「ありがとうございます!このまま魔法騎士になりますよぉ!」

「ゆっくりでいいと思います」

「そうはいきません!早く魔法騎士になって、約束を守ってもらいますからね!」

「…忘れたりしませんかね?」

「はぁ!?約束を破るなら、今すぐ強制しますよぉ…?いいんですかぁ…?」

「すみませんでした!」

「ふふっ。修行の楽しみなんですから、今さらなしにはできませんよ♪」


 前回の修練における不用意な口約束のあと、少し考えてみた。言い出したのはボクだけど、結局のところ『魔法騎士』に明確な基準は存在しない。つまり、達成したかどうかはテラさんのさじ加減。

 口には出さないけど、現時点で『炎』を操っているのだから既にボバンさんと同じ魔法騎士であるとボクは思ってる。


 でも、テラさんの着替えを覗くワケにはいかない!刺激が強すぎるしそもそも意味不明過ぎる!軽口を叩いたボクが悪いんだけど…。

 だから…「まだまだ魔法騎士になったとはいえない!」と、テラさんが高みを目指すことを期待してる。もう切実に!


「ウォルトさん。「コレができたら魔法騎士」というラインを教えて下さい!」


 そんな望みは短命だった。なんてことだ…。ボクが決めるのか…。もう既に……いや、待てよ…。逆にチャンスかもしれない。テラさんは魔法を覚えたばかり。今はまだボクの方が技量が上だと思う。


「この魔法を使えたら魔法騎士だと思います。見ていてください」

「はい」


 槍を借りてそれっぽく構え、『螺旋』と同じく刺突を繰り出しながら魔法を放つ。


「どわぁぁぁ~っ!」


 穂先から『氷結』の上位魔法『氷塊』を繰り出してみた。テラさんの家を軽く包み込む程度の氷塊が発現して前方を一面凍りつかせる。


「こんな感じです」

「無理ですって!」

「テラさんなら直ぐにできるようになります。頑張って下さい」

「できませんって!無茶なこと言うなんて酷いです!」

「無茶じゃないです」


 多少の時間稼ぎにはなるはず。その間に謝罪して許してもらう方法を考えよう。テラさんが魔法に熟練するまでが勝負だ。「もうっ!」とポカポカ背中を叩かれて、今日もコリが取れそうな気持ちよさ。



 暢気なウォルトと対照的に、魔法が霧散した後も『氷塊』を目にしたシオーネは凍りついていた。


「とんでもない魔法です…」

「この魔法が、ウォルト殿にとってほんの一部なのだ」

「常識破りすぎます…」


 

 ★



 次の日。


 シオーネは国王ナイデルに謁見した。ダナンと同様に国王ナイデルから希望され、ダナンとボバン同席の元謁見し、第29代国王としての謝意を伝えられる。

 笑顔で「また話を聞かせてほしい」と告げられたシオーネは、クライン国王が彫った銀のプレートを手渡され謁見の間を後にした。


 ボバンさん、ダナンさんと並んで立派な王城の廊下を歩く。


「ナイデル陛下は…クライン様に瓜二つでした。神の思し召しではないでしょうか…」

「私も初めてお目にかかったとき動けなくなるほど驚いた。ナイデル様は、歴代の国王様と同じく素晴らしい御方だ」

「はい。ひしと感じました」


 衝撃で動けずにいた私に、「俺はクラインではないが、忌憚なく心情を吐露して構わぬ。子孫ゆえ似ているのだろう?」と優しく微笑まれた。器の大きな方に違いない。


「シオーネ殿。当代の騎士達の訓練を見学してはいかがでしょう」

「是非お願いします!…ボバン団長。よろしければ、私は新兵と思って普通に話して頂けませんか?」

「貴女がそう望まれるのなら……シオーネと呼ばせてもらう」

「はい!ありがとうございます!」

「シオーネには、当代の女性騎士と対話してもらいたい」


 騎士団の訓練場に到着して、ホバン団長が声をかける。


「集合せよ!」


 さっと訓練を中断して皆が整列する。あの頃とは違っても、懐かしさを感じざるを得ない光景。カネルラ騎士は…400年経っても変わっていない。

 

「お疲れ」

「「「「お疲れ様です!」」」」

「話は聞いていると思うが、皆に紹介したい者がいる。シオーネ、挨拶を」

「はい!ダナンさんの後輩でシオーネと申します!今日は訓練を見学させて頂きます!よろしくお願いします!」

「「「「よろしくお願いします!」」」」

「では訓練に戻ってくれ。テラ。頼んでいいな?」

「お任せ下さい!シオーネ、一緒に来て!皆を紹介するから!」

「うん」


 テラは女性騎士達の元へ案内してくれた。私の生きた時代の騎士は男性ばかりだった。性別に関係なく門戸は開かれていたけれど、当時のカネルラには『男が国を守り、女は家を守る』という風潮があった。今は変化しているのかな?


「アイリスさん!お連れしました!」

「ありがとう。シオーネ……と呼んでいいのよね。テラから新兵として接してほしいと聞いたけれど」

「はい!お願いします!」

「私はアイリス。この中では一番古い女性騎士よ。皆は同僚の女性騎士」

「「「「よろしくね!」」」」

「今日は女性だけで一緒に訓練するつもりだけど、いい?」

「構いません!」


 是非、今代の女性騎士を知りたい。



 ★



 ボバンはダナンと並んで再開した訓練を見つめる。


「ボバン殿。シオーネのタメに尽力して頂いて感謝しております」

「なにを仰います。カネルラ騎士として当然です」


 敬意を欠くことはできない。戦争で多くの仲間を失いながら、現代まで続くカネルラ騎士団の礎となった偉大な先人の1人。性別も若さも関係ない。貴重な交流の機会であり、我々が繋いできた歴史を感じてもらわねばならない。

 現にダナン殿の尽力により騎士団はより精強化した。今代の騎士達に数え切れないほど大切なことを伝えて頂いている。


「いずれウォルト殿との再戦の願いも叶いますぞ」

「なぜそう思われるのですか?」

「ウォルト殿は恨みと恩を忘れないと云われる獣人。今回の件にしても、少なからずボバン殿に感謝しておられるはずです。積み重なれば断ることができないでしょう」


 面通しに助力しただけだが、ウォルトが些細なことにも恩を感じる性格だということは知っている。直ぐにお礼を言いたがるのは悪い癖だと思うが、ウォルトは人を見ているらしい。


「本意ではありませんが、思わぬ副産物です。一段と気合を入れねばなりません」

「はっはっは!ボバン殿は……やはりウォルト殿と競いたいのですな」

「先の武闘会を目にして…心に火が着いたのです。私は、カネルラ騎士団長としてではなく、1人の闘士として稀代の魔導師に勝ちたい」


 今年の武闘会を観戦し、俺との仕合で見せた魔法はかなり加減していたのだと実感した。剣技を駆使して入念に策を練れば勝負には勝てるかもしれないが、アイツの本気の魔法を打ち破って勝ちたい。


「凄まじい魔法戦であったと耳にしましたが」

「間違いなく武闘会の歴史に残るかと。手練れのエルフ相手の魔法戦ですら全力ではありませんでした。ウォルトと同じ時代に生き、巡り会えたことが嬉しくて仕方ないのです」

「我々がしっかり捕まえておかねばなりませんな」

「その通りです」


 猫は気まぐれと云われている。ゆえに取扱い注意。断じてカネルラから出すワケにはいかん。


 

 ★



 今日の訓練を終えたアイリスと後輩女性騎士達。更衣室で着替えているとテラが提案してくれる。


「アイリスさん!今からウチで食事しませんか?皆も食べに来て!」

「構わないけど、今から料理を作るのは大変でしょう」

「私達も行くのはいいけど、大丈夫?」

「無理してない?」


 時間はもう夕方を過ぎている。今から買い物をして、大勢のために料理を作るのは一苦労。万年元気なテラに誘われても気が引ける。


「大丈夫です!もう準備してもらってるので!」

「準備して…?まさか…」


 事の流れから気付いた。


「答えを聞くまでもなく正解です!お願いしてます!シオーネも来て!」

「うん。ありがとう」


 全員予定はないようでテラの家に向かう。


「シオーネは強いよね」

「私も思った!同期と思えない!」

「そんなことないよ。皆とほとんど変わらないと思う。闘気もまだ上手く操れないし」

「400年前の騎士団は厳しかった?やっぱり色々と違う?」

「訓練の厳しさは変わらないと思った。でも、男性騎士は昔より優しいかな。履修科目が変わってる。あと、更衣室があるのが凄くいい」

「昔はなかったの?!」

「男性と一緒に着替えてた。慣れたら気にならなかったけど。アイリスさんもじゃないですか?」

「そうね。皆の入団が決まってから進言させてもらったわ」

「「「へぇ~!」」」


 私達とシオーネは直ぐに打ち解けた。時代は違っても女性騎士あるあるが理解できたりして、帰り道での会話も弾む。

 騎士としての技量はシオーネ自身が言うように皆と大差なく感じる。私が思うシオーネと皆の違いは1つだけ。先の戦争を…未曾有の戦火を経験していること。



 テラの家に到着して中に入ると、知らない騎馬が出迎えてくれた。


「ヒヒン!」

「可愛い~!」

「私の騎馬で名前はルビーっていうの」

「へぇ~!ルビー、よろしくね~」

「ヒン♪」


 居間へ向かうと、予想した通りテーブルに料理を並べているウォルトさんがいた。


「「「「誰…?」」」」

「私とアイリスさんの友人でウォルトさんだよ!ただいま戻りました!」

「おかえりなさい。準備が終わったところです」


 料理好きなのは相変わらずでいつ見ても楽しそう。


「ウォルトさん。お久しぶりです」

「ご無沙汰しています」

「ご飯を頂こう!お腹ペコペコです!さぁさぁ、みんな座って!」


 テラに急かされながら席について料理を頂く。ウォルトさんは台所に向かった。


「もの凄く美味しい!なにこれ!?」

「見たことない料理なのに、めっちゃ美味しい!」

「一流料理だ!美味しすぎる!」


 同僚達は予想通りの反応を見せて笑顔で食べ進める。訓練の後で食欲旺盛になるのは男も女も関係ない。


「全部ウォルトさんが作ってくれたんだよ!」

「ホントに?!」

「すごっ!」

「めちゃくちゃ美味しい」

「ですよね。アイリスさん」

「本当よ。ウォルトさんは凄い料理人だから」


 凄い魔導師でもある。内心苦笑したところでウォルトさんが戻ってきた。


「シオーネさん。こちらをどうぞ」


 手渡されたコップには温かいお茶。


「アプリコットのお茶です。シオーネさんが好きだとダナンさんから聞いたので、淹れてみました」

「心遣いありがとうございます。頂きます」


 甲冑の口の部分から器用に飲む。ダナンさんに教わったのね。


「味はしないのに…気分がよくなります。ダナンさんの言う通りです」

「よかったです。あと、お酒も準備してますが」

「ありがとうございます!お金は後で払いますね!」

「今日はボクに出させて下さい。いつもお世話になってばかりなので」

「じゃあ甘えます!飲み物ならシオーネも飲めるね!」

「今日は団結会だぁ!」

「飲み過ぎは注意よ」


 女子会は2時間ほど続いたけど、悪酔いする様子もなく平然と会話してる。お酒に強くて頼もしい。この様子だと帰り道も心配いらない。

 食事も男勝りの量を食べるから、ウォルトさんはひたすら肴作りを楽しんでいるように見えた。


「そろそろ解散する時間よ」

「えぇ~!まだいいじゃないですか!」

「これ以上は明日の訓練が辛くなるわ」

「まだウォルトさんの肴を食べたいです!」

「「「「賛成!」」」」


 気持ちはわかるけれど…と、盛り上がる同期達にテラが告げる。


「あんまりアイリスさんを困らせると…必殺の『乱心』の技能が炸裂しちゃうかも…いだっ!」

「余計なことを言わないの!」

「「「「あははははっ!」」」」


 軽く拳骨を繰り出したところでお開きになり、ウォルトさんは「家まで送ります」と提案してくれたけど、「さほど酔ってないし心配無用です」と断った。


 そこまでお願いするのは騎士としてだらしなさ過ぎる。



 ★



 後片付けを終えたウォルトは、テラに酔い覚ましのお茶を、シオーネにはアプリコットのお茶を淹れる。


「はぁ~!生き返ります!」

「ふぅ…。私は生き返りはしないなぁ」

「上手いこと言うね!」

「そう?」

「ボクから見ても楽しそうでなによりでした」


 たった1日でこんなに仲良くなれるのかと感心した。騎士同士は通じるものがあるんだろう。


「今日の料理、凄く美味しかったです!ありがとうございました!」

「お粗末さまでした」

「ねぇ、シオーネ。皆に会ってどうだった?」

「楽しかった。同じ女性騎士がいるって心強いし凄く嬉しいことだね」

「そっか!じゃあさ、ココに住んで一緒に騎士の修行しようよ!ルビーもね!」

「えっ!?」

「嫌だった?」

「全然嫌じゃないよ…。嬉しいけど私は死者なんだよ?」

「なにか問題ある?だって、ダナンさんも死んでるし!いや、死んでない?一度は亡くなってるんだろうけど…」


 テラさんは「む~ん…」と首を捻る。


「私はね、ダナンさんに出会って『死』の定義が曖昧になった。昔は息を引き取って冷たくなってしまったら『死』だと思ってたけど」

「私もそう思うよ」

「でも、ダナンさんやシオーネとは普通に話せるし闘えもする。…ということは、騎士としてカネルラを守れる!死んでると言っていいのかな?」

「う~ん…。そう言われると…」

「ヒヒ~ン…?」


 テラさんはいつもの調子で笑う。


「よくわからないから生とか死とか気にせず仲良くしたい!ただそれだけ!」

「テラ…。私も…そうしたい!」

「決まりだね!これからよろしくね!ルビーも!」

「うん。こちらこそ」

「ヒヒン!」

「あとね、もしこの世から離れたくなったら、ウォルトさんにお願いすればいつでも『昇天』させてもらえるから心配いらないよ!」

「そうなのですか?」

「ボクが生きていて、シオーネさんとルビーが望まれるのであれば、いつでも」


 望まれたなら力になりたい。全力で送らせてもらう。こうしてカネルラ騎士団に新たな仲間が加わった。

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