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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
325/706

325 撃つだけが魔法じゃない

 戦闘開始の合図とともに、マードックとエッゾは駆け出す。


「どっちが速く倒すか勝負してやるよ」

「いいだろう。負ける気がしない」


 ウォルトはまず冷静に観察することに決めていた。


 相手チームには、まだ力の底が知れないエルフの魔導師がいる。なにか仕掛けられるとボクが対処しなければならない。

 一直線に相手に突進する血気盛んな2人。を堂々と待ち受けるのは、リザードマンと熊の獣人。エルフの魔導師は一歩後ろに控えている。


「おい、ラクエ。コイツらは迷いとかねぇな」

「痛快な戦闘狂の香り。バーヴと同類。やはり獣人」

「けど、コイツらは俺よりバカっぽいぜ」

「ます防げるか。もし阿呆なら一瞬」


 並んでいたラクエとバーヴが、間を空けるように横に移動すると、姿を現したエルフの魔導師は手を翳していた。駆けているマードックとエッゾさんの身体が微かに浮く。


『鷲の風切』


「うおっ…!」

「ぬぅっ…?!」


 エルフ魔法でマードックとエッゾさんが後方へ吹き飛ばされる。凄い勢いで場外へ一直線。すっ…と横に向かって手を翳す。

 ボクの横を通過する直前に、見えない壁にぶつかったかのように空中で静止して観客達がざわついた。


「うおぉぉっ!」

「今のはなんだっ!?魔法か?!」

「吹き飛んで…なんで止まったんだ?」


 ラクエとバーヴも驚いた表情。


「マジかよ…。簡単に止めるんか…」

「フレイの言葉…少しだけ理解。見事な魔法」


『無効化』で着地した2人に確認する。


「大丈夫か?」

「問題ない」

「助かったぜ。今のはなんだ…?」

「複合魔法だ。正確には、重力魔法を使った直後に間髪入れずに風魔法で吹き飛ばした」


 エルフ魔法だから『無重力』ではなく似たような重力魔法だろう。重量をなくせば簡単に吹き飛ばせるから詠唱時間も限りなく短縮できる。

 厄介なマードック達をまとめて仕留める素晴らしい魔法。どうにか反応して『風流』で柔らかく受け止められた。


「あのエルフはスゲぇのか?」

「かなり詠唱が速い。誘い込む間に準備してたのもあるけど」

「お前、わかってたのかよ?」

「このくらいなら誰でもわかる」

「ククッ。頼もしい限りだな」


 説明を終えてエルフに視線を向けた。


「ラクエ!バーヴ!構えろっ!」


 即座に声を上げたのはさすがだ。ボクがなにをやろうとしてるか予測されている。


「あん?」

「なんだ?」


 右手を翳して『無重力』と『鷲の風切』を一瞬の時間差で詠唱する。


「くっ…!『不朽の防壁』!」


 躱す間もなく吹き飛んだラクエとバーヴは、エルフが展開した障壁に勢いよく激突して止まる。一気に観客が沸いた。


「がはぁっ…!」

「グハッ!」

「おいっ!大丈夫か!?」


 エルフはすかさず『精霊の慈悲』で倒れた2人を回復する。ボクらへの警戒は解かずに。


「今のは…なにをやった…?」

「似た魔法でやり返しました。効果は数秒ですけど」


 エッゾさんの問いに軽く答える。効果が数秒なら限りなく詠唱を短くすることが可能だ。


「はっ!俺らもあぁだったのか」

「意外だな。お前がそんなことをするとは」

「ボクらは獣人のチーム。やられたらやり返す。獣人らしいでしょう」

「ガハハハ!だな!こっから仕切り直しだぜ!」

「ククッ!奴らが完全に回復したら…行くぞ」



 ★



「参ったな」


 スザクは引き続き通路脇で観戦していた。そして、サバトの魔法を実際に目にして驚いている。


 長年冒険者をやっていれば、魔法も多少は知ってる。魔法に秀でるエルフを相手にすんなり防いでお返しまで付けるときたもんだ。顔では判別できなかったが、サバトもエルフっぽいな。魔法もそうだが、技量や声の若さからしてほぼ間違いないだろう。

 ウチの魔導師にも見せたかった。随分驚いたろうに。あんな速さの詠唱を防げるなんて、相手も相当な魔導師だ。


 今の魔法は初めて見たけど、普通ならマードック達は場外で一発退場だった。簡単に受け止めて同じ魔法で反撃かぁ。いつなにを詠唱したのかすらわからない。そんな魔導師がいるとはね。


 観客は派手な魔法だと思ってるだけだろう。今どれだけの者が気付いてるのか。舞台に立っている猫の魔導師が…化け物だってことに。



 ★



 スザクと同じく闘いを見守る王族護衛騎士の2人。 

 

 アイリスの隣でボバンが小さく呟いた。


「アイリス…。さては知っていたな?」

「なんのことでしょう?」

「あの猫面の正体はウォルトだろ」

「はい。よく気付きましたね」

「祝宴の時に見た面に似ていると思っていた。雰囲気や佇まいもな。だが、魔法を見て確信した」

「参加すれば魔法武闘会で他の魔導師の魔法を観れる…とマードックさんに誘われたそうです」

「なるほど。いい案だ。性格を知っているんだろう。俺との再戦も魔法を餌にするか。それにしても…お前の想い人は相変わらずだ」


 毎回おかしな方向へ話を持っていこうとする…。


「わかりました。ポーラさ…」

「冗談だ。アイツはそんなんじゃないよな」

「…次は脅しじゃないです」

「肝に銘じよう」

「エルフの魔法を簡単に返したようですが、どんな魔法なのか私には想像もつきません」


 護衛中だということを忘れ闘いを見つめる。


「今すぐにでも乱入したくなる」

「とても騎士団長の発言じゃないですね」

「お前は思わないのか」

「……」

「ふっ。だろうな」



 ★



 観覧席に並んで観戦する王族達。


 国王ナイデルと2人の王子は、意外な展開に驚きを隠せない。


「まさか魔法戦から開始とは。意外だった」

「今のはエルフの魔法でしょうか?あんな大男が軽々と吹き飛びました」

「猫面も同じ魔法を見せたようでしたが、中身はエルフということですか?」

「どうであろうな。ジグル、どう思う?」


 背後に控え、高貴なローブに身を包んだ宮廷魔導師ジグルが答える。

 

「先程の魔法は、風属性と重力操作の見事な高速詠唱でエルフ魔法でありました。意趣返しの仮面の者もエルフの可能性が高いかと」

「そうか。中々エルフの魔法は見れぬから、貴重な機会となるやもしれんな」

「はい。年甲斐もなく胸が躍っております」


 ジグルは現役魔導師ではなく、宮廷魔導師の最高指導者。ライアンよりも少し後の世代を担った優秀な魔導師。そんなジグルであっても、エルフの魔法は滅多にお目にかかれぬということか。


 奔放かつ国属意識の低いエルフは、高い魔法の技量を備えるにも関わらず、表舞台に立つことはほぼない。冒険者になる者が稀に存在する程度。

 交流は可能だが「人間とは魔法の形態が違う。ゆえに意味はない」と詳しい研究や意見交換はさせてもらえぬと聞く。

 知識はあっても目にすることは希少。エルフが武闘会に参加すること自体、過去に数回しかなかったのだ。



 ★



 男性陣から少し離れた席に座っているルイーナ以下王族女性陣は反応が違う。


「なんだか凄そうね」

「魔法のことはわかりかねます」

「派手です」


 私とウィリナ、レイの3人は魔法を見ても今いちピンとこない。というより、元々魔法にさほど興味がない。

 リスティアの親友であるウォルトが披露してくれた魔法は綺麗で美しかった。涙が出るほどに。不思議で人を楽しませるから興味が湧く。戦闘魔法に心躍らない私達は、言い方は悪いけれど少々退屈。


 そんな中…。

 

「むっふぅ~!むふぅ~!」

「リスティアはなぜそんなに興奮しているの?それにナイデル様が寂しがるわよ」


 ナイデル様の隣に座っていたはずのリスティアは、いつの間にか私達の横並び端っこの席に移動して興奮しながら観戦している。


「こっちでゆっくり見たいの。ダメ?」

「構わないわ。よほどこの仕合が楽しみなのね」


 これほど興奮した姿を見るのは初めてかもしれない。


「親友の活躍を邪魔なしで見たいの」

「「「えっ!?」」」


 私達は舞台上に目をやる。たった今魔法を放った猫面を被った男に。リスティアが親友と呼ぶのは、獣人の魔導師であるウォルトしかいない。可能性があるのは…あの猫面の魔導師だけ。


「まさか…あの猫のお面の魔導師が…?」

「大きな声では言えないけど、あのお面は私があげたの。ちょっと改造してるけど」

「言われてみれば、ストリアル様がエクセルをあやすときの面と作りが似ています…」

「変装しているんですね。でも、変装ですか…?」

「皆が気付かなかったから成功なんじゃないかな♪」


 リスティアは満面の笑み。舞台上の親友に顔を向け、心の中で声援を贈っているのだろう。


 まさか…彼の魔法を表舞台で観る機会が訪れるなんて…。



 ★



 魔法で回復したラクエとバーヴは全快。エルフ魔導師は胸をなで下ろした。


「今のは効いたぜ。クソが」

「まさかの報復。我らの油断」

「同じ魔法で反撃してくると思わなくて、指示が遅れた。悪かったな」


 あまりの詠唱の速さにハッキリ認識できなかったが、おそらく人間の重力魔法と『鷲の風切』の高速詠唱。俺の感覚では不可能だが…。見間違いか?


「で、どう出る?真っ向勝負か」

「付与魔法は無効化される可能性が高い。予選でもアイツはそうしていた」

「向こうが先に魔力切れになるんじゃねぇのか」

「やってみないとわからない」

「そうかよ。なら決まりだな!グルハハ!」

「力で勝負…。シュルル…」

「俺もできる限りの援護はする」

 

 バーヴとラクエが前に出る。


「俺がゴリラの獣人だな」

「獣人の剣士は稀有。是非仕合いたい」

「じゃあ、いくぜ!」

「承知」


 向こうの獣人マードックとエッゾも駆け出した。


「こっからが本番だぜ!」

「最後だ…。目一杯斬る!」


 石畳中央で激突した。いきなり顔面を殴り合うバーヴとゴリラの獣人。会場に鈍い音が鳴り響く。身体の大きさも似たり寄ったりの2人。


「ぐっ…!やるじゃねぇか!ゴリポン!」

「誰がゴリポンだっ!テメェはぶっ殺す!」


 互いに首を掴んで、近距離で殴り合う野蛮な獣人2人。躱しも逃げもせず観客の獣人の野太い歓声が上がる。


 そんな殴り合いをよそに、ラクエと狐の獣人は間合いに入るなり高速で切り結んだ。


「シッ!」

「グルァ!」


 ギリギリと顔の前で刃を合わせたまま口を開く。


「狐の剣士。非力だが見事な剣筋」

「ククッ…。その澄まし顔を…歪めたくなる!」


 拳と剣がぶつかり合う音が響く中で、俺と猫仮面は見つめ合って動かない。


 俺は魔法で仲間を援護したいが、なにもできずにいた。冷や汗だけが流れる。この猫仮面は…一体何者なんだ…?


 …コレならどうだ。……くっ!ダメかっ!


 警戒しながら何度も魔法を詠唱しようと試みているが、発動する魔力を完璧に感知されている。発動の直前に、猫仮面は相殺する魔力を一瞬で纏う。闘いの邪魔はさせないとばかりに。

 詠唱したとしても相殺されるのが目に見えている。さらに、相殺するだけでなく同時に反撃する高度な魔力操作。打ち込まれると防ぐ手立てがない。


 魔力を完璧に読まれている上に、相手の魔力は微塵も感じない。完全に手詰まり。ただただ眼前で繰り広げられる闘いを傍観するしかない。向こうから仕掛けてこないのがせめてもの救い。


 想像以上の化け物だ…。並の魔導師じゃないことは予選で見て理解していた。だが、対峙して初めてわかる。信じられない技量の魔導師だと。

 中身はエルフだと思う。奴は『鷲の風切』を詠唱していた。人間にこんな技量を備える魔導師がいるとは思えない。だが、俺には思い当たるエルフがいない。


 その後も何度か突破を試みるが、援護できない間に闘いはさらに激しさを増す。


「ガハハハ!どうした熊公!こんなもんか?鍛え方が足りねぇぞ!オラァ!」

「グル…!クソゴリラがぁっ…!!」

「ゴリラじゃねぇっつってんだろうが!」

「桜花繚乱」

「くっ…!なんという手数!」

「いい表情だぞ…蜥蜴人…!最初の余裕はどこへ行った?クククッ…!」


 最初互角に見えた闘いも、時間が経つにつれ少しずつ実力の差が浮き彫りになる。


 なんとか…援護してやる。

 


 ★



 徐々にマードックとエッゾが押し込む中、王族観覧席では疑問が生まれていた。ジグルはナイデルから質問される。


「ジグルよ。なぜ後ろに立つ2人の魔導師は動かないのだ?ずっと立っているだけだが」


 国王様の素朴な疑問はごもっとも。そう見えるのも致し方なし。お答えさせて頂く。


「一見動きがないように感じますが、あの者達は非常に高度な魔法戦を行っております」

「なに?そうなのか」

「エルフの魔導師は幾度も魔法を詠唱しようと試み、猫の魔導師が全て未然に防いでおります」

「そんなことまでわかるとは、さすがだな」

「有り難きお言葉。ですが、私は心底驚いております。あの者達は我ら宮廷魔導師に全くひけをとりませぬ。それどころか猫の魔導師は……」

「なんだ?」

「カネルラ最高の魔導師で間違いありませぬ」

「なんだと?!それは本当か?!」


 国王様が驚かれるのも無理はない。儂もまさかこのような余興で現れるなど夢にも思わなかった。


「私も初めて目に致しますが、あの男の魔法を操る技量は桁違いで御座います。私の知る限りですが、エルフや宮廷魔導師も含め勝る者はおりません」

「まるでその様には見えんな。変装などして、少々お調子者の魔法使いに感じられた。よもやそれほどとは」

「風体は愉快で御座いますが、魔導師としての所作全てが雄弁に語っております。宮廷魔導師の皆をこの場に連れてこなかったことを猛省しているところで御座います」


 儂も初めは気付かなかった。だが、観るほどに驚きは増して遂に確信に至る。猫の魔導師が見せたのは、たった2つの魔法と魔法を放たぬ異色の魔法戦。


「猫の魔導師はどこが優れているのだ?」

「高度な魔力制御に加えて、操る魔力の多彩さ、桁外れの詠唱技術など数え上げればきりがありませぬ。現時点での判断でありますが」

「なるほど。まだ実力を隠しているやもしれんな」


 70年近く生きてきたが、見ただけで絶対に敵わないと思わせる魔導師に初めて出会った。カネルラが生んだ大魔導師ライアンも、現在の宮廷魔導師の頂点に君臨する男ですら軽く凌駕する技量の持ち主。


 噂にすら聞いたことがなかった。一体どこに隠れていたのか。



 ★



 ウォルトはエルフの魔導師と対峙しながら冷静に2組の闘いを観戦していた。闘いは終わりを迎えようとしている。


「おい、熊公。テメェはよくやった。だが、まだ俺にゃ勝てねぇよ。久々に楽しい殴り合いだったぜ!オラァッ!」

「ぐはぁっ…!クソ…ゴリラ……がはぁっ…」


 マードックの拳がバーヴの腹に突き刺さり、膝から崩れ落ちる。ほぼ同時にもう1つの闘いも終焉を迎えようとしていた。


「蜥蜴よ…。お前の剣は鍛えられて素晴らしかった。久々に興奮したぞ。だが、お前に俺は殺せん。フンッ!」

「カハッ…!無念…!」


 エッゾさん渾身の居合を受けて、ラクエは仰向けに倒れた。歓声も一際高まる。仲間が倒れても、エルフの魔導師は動揺することなく集中を高めている。


「ラクエ。バーヴ。すまない。最後まで援護できなかった。だが、俺は3対1でも勝ってみせる」


 エルフの魔導師の呟きとほぼ同時にマードックが声を上げた。


「おい、エッゾ」

「ククッ。おそらく同じことを考えている」


 2人は自分が倒した相手を肩に担ぐ。そして、ゆっくり石畳から降りると待機していた医療班に2人を引き渡した。困惑する審判から、4人に対して場外への移動による失格が宣告される。突然の理解できない行動に観客達が呆気にとられる中、マードックが口を開いた。


「おい、サバト。俺らはお前のおかげで腹一杯だ。ガハハハ!」

「お前が負けたら…わかるな?ククッ!」

「…参ったなぁ」


 2人の行動はちょっとだけ予想外だった。苦笑しながらも最後を任されたことに嫌な気持ちはない。

 どうやら2人は満足したようだし、存分に獣人の力を見せつけてくれた。魔法で邪魔されないよう援護できてホッとする。


 さっきまでエルフの魔導師と『魔法先読(プリフェッチ)』を続けていたけど、師匠との修練が生きた。相手が詠唱する魔法を、反する魔法で防ぐだけの単純な修練。師匠には一度も勝てなかったけどエルフの魔法は抑えきれた。修練は無駄じゃなかったんだと思える。


 2人に最後を任されたのは責任重大だけど、実は少し嬉しい。眼前に立つ凄いエルフ魔導師の魔法を間近で見るチャンスをもらえたから。誰にも邪魔されることなく。


「サバト…」

「なんでしょう?」

「俺は……ウーク出身のフレイという」


 え…?ウークのフレイ…?もしかして…。


「ルイスさんの息子の?」


 以前フォルランさんとキャミィには里を出た兄弟がいると言ってた。確かフレイという名前だったはず。

 立ち位置が離れている上に、周囲の人が多すぎて匂いが嗅ぎ取れないから自信はない。顔は似てる…ような気もするけど、エルフの容姿はボクには判別できない。


「父さんを知ってるのか。やはりエルフなんだな。どこの里の出身なんだ?」


 なぜかエルフだと勘違いされている。どういうことだ?エルフだとしたら、耳が長いからこの面に入らないと思うけど。いや、変装では削いでいたな。


 なんと答えるべきか…。


「内緒です」

「それはそうか。変装してるくらいだ。それにしても、獣人の考えることは理解できない」

「石畳から降りた理由ですか?」

「そうだ。俺には有利な状況を自ら捨てるなんて考えられない」


 ボクには簡単な問題だけど、もしかして獣人特有の思考なのか。


「理由は、『俺達は存分に暴れた。お前も好きにやれ。ただし負けたら許さん』。以上です」

「はっ…。自由だな」

「獣人は単純で、だからこそ強い」

「バーヴもそうだ。わかるような気がする。サバト、貴方は人間の魔法も操る凄い魔導師だ。だが、俺が勝たせてもらう」

「負けるつもりはありません」


 フレイさんの魔力が高まり、ボクも静かに魔力を練る。耳に鳴り響いていた雪崩のような歓声は、ボクらの集中とともに徐々に小さくなりやがて静まり返った。

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