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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
31/706

31 ウォルトに聞いてみた

暇なら読んでみて下さい。


( ^-^)_旦~

 夕食の後にお茶を飲みながらまったりしていたら、オーレンが思い立ったように口を開く。


 俺が前々から思ってたことを訊いてみたくなった。


「ウォルトさん自身のことを詳しく訊いたことなかったんですけど、教えてもらっていいですか?」

「面白くないと思うけど、いいの?」

「もちろんです」


『オーレンにしては珍しくいいこと言う!』ってアニカの顔に書いてる。失礼な奴だ。


「ウォルトさんは何歳ですか?」

「あれ?言ってなかったっけ?」

「そういえば聞いたことないかも!」


 年齢を訊くタイミングが無かった。多分若いと思っていただけ。


「てっきり言ったと思ってた。ボクは21歳だよ」

「若っ!…ってすいません。決して老けてるとかじゃなくて」

「気にしなくていいよ。人間は獣人の年齢を見分けられないって云われてるからね」


 確かに。俺には獣人が同じような年齢に見える。簡単に言うと皆が若く見える。皺やシミ、白髪のように年齢を感じさせる特徴が表に出てないから。さらに言えば、人間に近い顔の者を除くと同じ種族は顔も大体同じに見える。


「兄弟はいるんですか?」

「いないよ」

「両親は息災ですか?」

「うん。この間も会ってきた。2人は?」

「どっちも健在です。それと、俺には弟が、アニカには姉ちゃんがいます」

「兄弟ってどんな感じなんだい?」

「うちのお姉ちゃんは優しいから大好きです!近くにいないと寂しいです!」

「うちは喧嘩しかしないから、俺が出て行って清々してるだろうな」

「兄弟でも色々あるんだね」


 次はなにを訊こうか考えていると、アニカが思いきって尋ねる。


「ウォルトさんって…恋人とかいるんですか?!」

「いないよ」


 よし!と小さく拳を握るアニカ。とりあえず望み有りでよかったな。いつ来ても1人なのと、森に住んでるのにいないだろうと思ってた。


「逆に訊くけど、オーレンとアニカは恋人同士だよね?」


 ウォルトさんの質問に腰が砕けそうになった。アニカは砕けてる…。同じ田舎の村で育って、仲はいいけど昔から恋愛感情はない。本当に妹みたいな存在。

 

「違いますよ。こんな食いしん坊は恋人になんかできないです」


 笑い飛ばすとアニカの眉間に皺が寄る。


「はぁっ?!こっちの台詞なんですけど!アンタみたいなガサツ王は絶対お断りだし!そもそも、オーレンは私のお姉ちゃんのことが好きだったんですよ!見事にフラれたけど!」

「お前ぇぇっ!人の古傷をほじくり返しやがって!いくらウォルトさんに惚れて…」

「あぁぁぁああ~っ!!」

「ぐはぁっ…!!」


 アニカが繰り出した右ストレートが顔面に炸裂して、椅子から転げ落ちる。


「なに言おうとしてんのよ!アホオーレン!」

「いってぇな!!殴らなくてもいいだろっ!」

「ふ、2人とも落ち着いて…」


 突然始まったケンカに、ワケもわからずおろおろするウォルトさん。悪いと思った俺達は大人しくして話を続ける。


「オーレン、大丈夫かい…?『治癒』かけようか?」

「いえ。お構いなく」


 頰が腫れ上がって口も数字の3みたいになってる。じんじんしてめっちゃ痛い。そんな状況でも構わず口を開いた。


「ウォルトさんは、マードックさんのことを知ってるみたいですけどなんでですか?」

「マードックは幼馴染みだよ。同郷で同い年なんだ。この間、住み家にも来た」

「「えぇぇ~!」」


 俺達は盛大に驚く。


「そんなに驚く?まぁ、アイツは筋骨隆々で若く見えるからね」


 ウォルトさんはお茶をすすりながら微笑むけど、俺達が驚いたのはそこじゃない。

 あの、ギルドでも威圧感丸出しで、目を合わせようものなら噛みついてきそうな狂戦士(バーサーカー)みたいなAランクの獣人戦士と、優しさSランクのお茶好き獣人が友達とは思いもよらなかった。


 まてよ…。最近フクーベで噂になってる『あること』を思い出す。それは、マードックさんが獣人とタイマンを張って負けたらしい…というもの。

 けど、フクーベには1対1でマードックさんに勝てるような獣人はいないと云われてる。だから、単なる悪い噂だとされてるけど…。


「ウォルトさん…。最近マードックさんとなにかありましたか?」

「なにかって?」

「揉めるようなことです」

「揉めてはいないけど、ちょっとした賭けみたいなことはしたよ」

「賭けですか?ウォルトさんが勝ったんですか?」

「引き分けかな。マードックがどう思ったかはわからないけど」


 なるほど。賭けか…。ウォルトさんが嘘を吐くとは思えない。賭けで引き分けた事実がいつの間にか負けたことになって、回り回って面白がった誰かがタイマンでってことにしたんだな。


「友人のウォルトさんに訊くのもどうかと思うんですけど、マードックさんを殴って倒せる獣人っているんでしょうか?」

「世界は広いし、いるにはいると思うけどボクは知らないなぁ。昔、もの凄く強い獣人がフクーベにいたけど旅に出たらしいし」

「じゃあ、ウォルトさんが知ってる獣人ではマードックさんが一番強いんですか?」

「それはどうかな?」

「「え?」」

「殴り合いならマードックかもしれないけど、強い獣人は他にも知ってるよ」

「そうなんですか?!あの人に勝てるかもって人が…」

「それぞれ違う強さがあって面白い。冒険者を続けてたらその内出会うと思う」

「楽しみです」

「あっ!ウォルトさんって、なんでモノクル付けてるんですか!?目が悪いとか?!」

「目は悪くないよ。元々ボクの持ち物じゃないんだけど、憧れてる人が付けてたから真似してるんだ。ちなみに、レンズじゃなくてガラスだよ」

「へぇ~。もしかして、たまに聞くウォルトさんの魔法の師匠ですか?」

「そう。この家の持ち主でもある」


 ウォルトさんに魔法の師匠がいるのは知ってる。もの凄い魔法使いらしい。詳しく聞かなくてもわかるけど。


「その…お師匠さんは?」


 少し躊躇いがちに尋ねてみた。もし亡くなったりしてたら口にしたくないはず。


「ある日突然いなくなったんだ。多分死んだりはしてない。いつ帰って来るんだろう?」


 ウォルトさんは首を傾げる。心配してる風じゃないから、訊いてもいいことだったかな。


「他にも聞きたいことがある?」

「大丈夫です!いろいろ教えてもらってスッキリしました。今後も教えて下さい」

「いいよ。じゃあ、ボクからも訊いていいかな?」

「なんでしょうか?」

「2人は昔から冒険者になりたかったことは知ってるけど、そこから先…最終的にこうなりたいとか目標がある?」

「「それは…」」


 俺達は言葉に詰まる。


 小さな頃から冒険者になりたかったのは間違いない。実際に村を飛び出して今は冒険者になった。


 でも、冒険者になってなにをしたいのか?どうしたいのか?そこに確かな意思がない。

 今の生活は凄く楽しい。冒険もクエストも楽しくて充実してる。けど、最後はどうしたい?どうなりたい?自分達でもわからなかった。


「大事なことだと思ったから訊いたんだ。急がなくていいけど、考えておいたほうがいい。きっと迷ったときの拠り所になるんじゃないかな」

「そうですね」

「私達はどんな冒険者になりたいのか…」


 真剣な顔でずっと考え込む俺達に、ウォルトさんはずっと微笑みかけてくれていた。

読んで頂きありがとうございます。

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