289 勇者と魔王の物語
人形劇に使うマリオネット作りのためにウォルトは材料を集める。
動きをスムーズに見せるタメに関節を付けたい。身体は木で作った部位を組み合わせることに決めた。木材は木の枝を『疾風』で切り落として必要な分だけ拝借する。切り口に『成長促進』をかけることも忘れずに。
その後、人形の衣装作りのため布を買いに行く。いつもお世話になっているナバロさんの商会を訪ねることに決めて、作りたての茶葉を持参してタマノーラに向かう。ナバロさんに会って事情を説明すると、店の在庫まで全部見せてくれた。
「茶葉は本当に助かるよ。好きなモノを持って帰っていいよ。お代はいらないから」
「ありがとうございます」
正座説教の刑を回避したいので、今は従っておこう。今度なにかしらお礼をすることに決めた。
ついでに、余裕のあるときに絹を仕入れてほしいことを伝えると、笑顔で快諾してくれた。頼まれた4姉妹の貫頭衣を作りたいから。
必要なモノを仕入れた後は真っ直ぐ住み家に帰る。満足の品揃えで不足はない。家に帰ると、食事も摂らず一心不乱に人形作りに精を出す。
『細斬』で細かく均等に分けた木材を、彫ったり削ったりしてパーツを1つずつ作り上げる。関節部は楔や糸で繋げて細かい可動を微調節した。
身体を作り終えると、衣装作りにとりかかる。絵本で見た登場人物の格好は記憶にあるから問題ない。『圧縮』した小さな針を使って縫製していく。細かく加工した色硝子や鉄を使って剣や盾の小物も作る。
ありがとう、オーレン。こんな楽しいことを任せてくれて。
人形作りを任せてくれた友達に感謝しつつ寝食を忘れて製作を続けた。
★
数日後。
森の白猫は揃ってウォルトの住み家を訪ねた。
修練はもちろんのこと、努力の甲斐あって上達した人形繰りを見てもらおうと意気込んで訪ねたら、既に本番用の人形が出来上がっていた。
依頼したオーレンは驚きを隠せない。
「コレ…劇に使う人形ですか…?」
「そうだよ。気に入ってもらえるといいけど」
完成品を見せたウォルトさんは、俺の問いに平然と答える。
「気に入るとか以前に…」
「作り込みが凄すぎるんですけど!衣装とか小物も凄い出来です!」
「結構上手くできたと思う」
テーブルに並べられた人形は精巧な作り。細かいところまで作り込まれていてリアルだ。
「顔の表情もしっかりしてますね」
顔は表情が判別できるくらい精密に彫られてる。…って、なんでアニカとウイカは複雑そうな顔してんだ?
「顔は…こうやって付け替えができるんだ」
顔のパーツは首の部分に楊枝のよう細い棒が付いていて着脱が可能になってる。いろんな表情のパーツを作っててバリエーションも豊富。
「場面に応じて表情を変えられる方がいいんじゃないかと思って」
「凄く時間がかかったんじゃ…」
「全部で丸1日くらいだよ。休み休み作ったからね」
緻密な造りもそうだけど、どちらかというと製作期間が短すぎることに驚く。
「大丈夫そうかな?ダメなら作り直すけど」
「充分過ぎます。ありがとうございます」
その後、俺達は練習した成果を見せる。まだ完璧とは言えないけどかなりスムーズに操れるようになった。一通りやり終えると、ウォルトさんが拍手してくれた。
「みんな上手いなぁ。話すのも流暢だし凄い。子供達も喜んでくれると思う」
「嬉しいです」
「自信つきました!」
「ウォルトさんに褒められると嬉しいな」
「お世辞じゃないよ。本当に上手い」
その後もアイデアを出し合って練習を続けた。製作者であるウォルトのアドバイスもあって、人形繰りがさらに上達した。
★
それからしばらくして「人形劇を披露する日取りが決まったので、是非観に来て下さい!」と言われたウォルトは、久しぶりにフクーベに足を踏み入れる。
住んでいた頃と変わりないと聞いたので孤児院の場所は知ってる。街外れにあるので、寄り道せずに向かうと15分ほど歩いて孤児院が見えてきた。このまま行けば、時間には少し余裕がある。少し早めに着いて子供達と遊んだりできないかな?獣人を恐れないでくれると嬉しいけど。
そんなことを考えながら孤児院に辿り着くとなにやら騒がしい。子供達の泣き声が聞こえる。開かれた門を潜って中に入ると、表で泣いている何人かの子供と、それを宥める若いシスターらしき女性の姿。
シスターは、孤児院や教会で子供達や神父の世話をする女性。一般的には慈愛の象徴でもある。
「やだぁ~!見たい~!」
「うわぁ~ん!」
「兄ちゃん達のうそつき~!」
「みんな泣かないで。仕方ないことなのよ」
そっと近づいてシスターに話しかけてみる。
「シスター、初めまして。ボクは人形劇を披露する冒険者の友人でウォルトと言います」
「初めまして。マリアと申します」
「今日、披露されると聞いて観に来たんですが」
「その予定だったのですが、冒険者の皆さんが急用で来れなくなってしまったのです」
事情を訊いたところ、クエスト中に大怪我を負ったパーティーを救助するために、治癒魔法を使える冒険者やギルドに居合わせた冒険者は現地に向かったとのこと。今日、人形劇を披露してくれる予定だった者達もギルドにいたので全員で向かったらしい。
「場所が遠いのでいつ戻ってくるかわからない」と、ギルドから丁寧な連絡が来たが、楽しみにしていた子供達は説明を聞いてもぐずっているのだと。
「仕方ないことですね」
「子供達は楽しみにしていたのですが、冒険者の皆さんは人助けに向かったのです。優先されるべきは人命です」
シスターの言う通りだ。それでも、オーレン達は後ろ髪を引かれる思いだったはず。
「シスターマリア。もしよければボクに少しだけ時間を頂けませんか?」
「どういうことでしょう?」
「人形劇の準備はまだでしょうか?」
「昨日の内に運び込んで頂いています。あとは披露して頂くだけですが」
「それなら、なんとかなるかもしれません」
「え?」
「ボクに人形劇をやらせてもらえませんか?」
「貴方が?1人でできるのですか?」
「できると思います。信じてもらえるならですが」
シスターマリアはボクを見つめてくる。
「大変かと思いますが、こちらこそお願いします」
「ありがとうございます」
泣いている子供達にしゃがんで微笑みかけた。
「ボクは猫の獣人のウォルト。実はボクも人形劇ができるんだ。冒険者の兄ちゃん達ほど上手くないけど、よかったら見てくれないかな?」
「…ほんとに?」
「…見たい」
「『勇者と囚われの姫』だよ…?」
「楽しんでもらえるように頑張るから見てほしい」
子供達はコクリと頷いてくれた。優しく頭を撫でると目を細める。人間もいれば獣人もいる。みんな小さくて可愛い盛り。そんな子供達とともに会場へと向かうと、マリアさんの言う通り準備は出来ていた。操る人の姿が見えないように板でセットが組まれている。
10人の子供達とマリアさんは膝を抱えて大きな箱のようなセットの前に座った。そんなマリアさんと子供達に向かって、こっそり『可視化』を詠唱する。
「じゃあ今から人形劇を始めるよ。その前に、ボクからお願いがあるんだ」
「「「なぁに~?」」」
「なんでしょう?」
「ボクの人形劇の内容は他の人には内緒にしてくれる?恥ずかしいから」
「いいよ~!」
「わかった!」
「ないしょにする!」
「シスターマリアもよろしいですか?」
「そういった御希望であればその通りに」
皆はオーレン達が来たときも黙っていてくれるはず。一生懸命やるけど、下手な劇で恥ずかしいから。
「ありがとうございます。じゃあ、これから『勇者と囚われの姫』を始めるよ」
人形劇のセットの中に入ると、先ずは『隠蔽』で自分の姿を消した。あくまでこの舞台での主役は人形達。ボクの姿はチラリとも見えない方が話に入り込めるはず。
来ることが出来なかったオーレン達の代わりに少しでも子供達を楽しませてあげたい。使える魔法を駆使すれば1人でもできると思う。
心を落ち着けて、ゆっくり語り出す。
★
子供達と並んで座り、シスターマリアは思う。
初対面ですが、ウォルトさんは不思議な方です。失礼だけれど、獣人特有の傲慢な雰囲気が皆無で、1人でも子供達に人形劇を見せてあげたいと優しい提案をして頂きました。
でも、どんな劇になるのか想像できません。私の知る獣人は不器用で有名です。それに、人形劇は大人数でないと難しいはずなのですが。
ただ、心遣いを有難く享受したいのです。ウォルトさんの優しさは子供達にも伝わるはずですので。
「むかしむかし、あるところに美しいお姫様がいました」
静かな語りで劇は始まりました。大きな覗き窓のようなステージの中央に姫の人形が独りでに歩いてきます…。操る糸も棒も見えません…。
「すご~い!」
「にんぎょうが、ひとりであるいてる!」
「いきてるみたい!」
どうやって動かしてるのでしょう…?それに、ウォルトさんの姿はどこに…?
「王様や王妃様とお城で平和に暮らしていましたが、それをよく思わない者達がいたのです」
ウォルトさんの語りで物語は進行していきます。人形とは思えない滑らかな動きに子供達の視線は釘付けになっています。
声色を器用に変化させながら、ときに激しくときに静かに語り、話を盛り上げて人形達を器用に操りながら子供達を魅了しています。
スポットライトを当てるような演出をしたり、なぜかひとりでに背景が変化したりして壮大な物語が紡がれていきます。
こんな劇を…1人でできるモノなのでしょうか…。そんな疑問は直ぐに忘れて、私も劇に没頭していました。
物語序盤の山場の1つである、勇者と狼の魔物の対決が始まります。ステージ上で勇者と魔物は対峙しています。
「まもの、つよそう!」
「ゆうしゃ!まけるな!」
「やっつけろ!」
子供達は大興奮。いつの世も正義は応援されるもの。
「狼の魔物は魔法を唱えながら勇者に向かってきました」
魔物の人形は口から炎を吐きました。
「わぁぁっ!」
「あぶない!」
「ほのおだっ!」
「ですが、勇者も負けてはいません。恐怖に負けず勇気を持って魔物に立ち向かいます」
軽やかに躱して剣で反撃する勇者と、炎や雷の魔法を操る魔物の攻防に子供達は大熱狂です。とても人形とは思えない動きをしています。
「ゆうしゃ!はんげきだ!」
「そこだっ!いけ~っ!」
「まもの、つよい!」
一進一退の攻防の末、最終的に勇者が辛うじて勝利を収めました。
「見事だ…。我を倒すとはな…」
「俺は…姫を助けるまで負けられない!」
その後も冒険を続ける勇者は、心を通わせる仲間たちとの出会いと別れ、そして幾多の激闘を経て成長し、遂に魔物のボスである魔王が居る場所に辿り着きました。
「ふはははっ!勇者よ…。我の元まで辿り着いたことは褒めてやろう」
「魔王!姫を返してもらう!」
「返さん…と言ったらどうするつもりだ?」
「お前を倒して…必ず連れて帰る!」
「小賢しい人間ごときが…我に勝てると思っているのか!」
「勝てる…。いや…勝つ!」
「ほざけ!人間が!」
「お前には負けない!」
駆け出した2人は、ステージの中央で激突しました。
最終決戦は熾烈を極めます。数々の闘いで成長した勇者でしたが、既に満身創痍の上に、魔王の圧倒的な魔法と力に押し込まれついに傷付き倒れてしまいます。
「力が……入らない…。もう…ダメなのか…」
「勇者!」
姫の必死の呼びかけにも立ち上がることができません。
「ふははははっ!少しはやるようだが…つまらんな。消えろ」
絶体絶命のピンチに、息を飲んで見守っていた子供達が立ち上がり声を上げました。
「まけるなぁ~!たって!」
「ゆうしゃ!まけないでっ!」
「もうすこしでたおせるはず!がんばれ!」
声援を受けて勇者は立ち上がり、不思議な淡い光が勇者の身体を包んでいます。
「なんだと!?傷が回復した?!バカな!」
「俺を…呼ぶ声が聞こえる…。力が…漲ってくる!みんな…ありがとう!ここまでこれたのはみんなのおかげだ。俺は…1人じゃない!」
「だまれぇ!この、死に損ないがぁぁっ!」
「うぉぉぉぉっ!俺に力をっ!」
「「「ゆうしゃ!いっけぇ~!」」」
すれ違いざまに斬り合った勇者と魔王。一瞬の静寂のあと…。
「がはぁっ…!」
魔王は倒れ、勇者は立っていました。堪えきれず膝をついた勇者に姫が駆け寄ります。
「勇者…。ありがとう…」
「姫様…。御無事でなによりです」
「国に帰りましょう。2人で…」
「はい。お供致します」
そっと抱き合う二人。
「その後、無事に国へ戻った勇者と姫は王の許しを得て結婚し、末永く幸せに暮らしました」
物語は幕を閉じました。ウォルトさんが語り終えて、ステージが暗転すると子供達から拍手が。
「すっご~い!」
「めちゃくちゃおもしろかった!」
「にんぎょうがいきてるみたいだった!」
「すごかったよ~!」
ウォルトさんがセットから出て姿を見せると、子供達は笑顔で駆け寄っています。
「楽しんでもらえた?」
「「「たのしかった!すごい!」」」
「よかった。あと、皆にお願いがあるんだ」
「だれにもいわないよ?」
「ありがとう。もう1つあるんだ」
「なぁに?」
「劇を見せてくれるはずだった冒険者の皆は、勇者みたいに困ってる誰かを助けてる。だから嘘つきじゃない。きっと劇を見せてくれるから待っててくれる?」
「うん!まってる!」
「みんな、すごい!」
「ひとをたすけるのはえらい!」
「ありがとう。面白い劇を見せてくれるはずだから楽しみに待ってて」
「「「うん!」」」
皆の頭を優しく撫でたウォルトさんと目が合う。
「シスター。ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございます。素晴らしい人形劇でした」
目にしたこともない素晴らしい劇でした。まるで魔法のような…。色々と理解できないけれど、素人の私であっても凄いということだけはわかりました。
「そう言ってもらえると嬉しいです。この後、子供達と遊びたいんですがよろしいですか?」
「構いませんが、こちらこそよろしいのですか?」
「はい。外でボクと遊ばない?」
「「「あそぶぅ!」」」
ウォルトさんは子供達が疲れ果てるまで遊んでくださって、丁寧な挨拶を交わしたあと帰路につかれました。
★
「子供達、怒ってるかなぁ」
「仕方ないよ!急に来なくなったら怒るよ!だって子供だから!」
「けど、救出が上手くいってよかったな」
オーレン達は孤児院に向かっていた。
今日は俺達【森の白猫】と、賛同してくれた親交の深い【南瓜の馬車】の皆さんを合わせた7人で劇を披露する予定だった。
無事に救出を終えて戻ってきたけど、時間はもう夕方過ぎ。空も暗くなろうかというところ。
午前中に披露する予定だった人形劇。待たせてしまった子供達のタメに、疲れた体でもやりたいと思いながら向かってるけど…。
「泣いちゃったかもね」
「嘘つきって言われても仕方ないよ!子供達に謝ろう!」
「そうだな」
やがて見えてきた孤児院の門には、シスターマリアの姿があった。駆け寄って話しかける。
「マリアさん。遅くなってすみません」
「いえ。ギルドの方から事情は伺っております。お疲れ様でした」
「今からでも劇をやりたいんですが」
「ありがとうございます。皆さんの気持ちは嬉しいのですが…」
「なにか問題が…?」
コクリと頷いて、マリアさんは苦笑い。
「実は、子供達は皆さんのご友人のウォルトさんと遊んで、疲れてぐっすり寝てしまっているのです。今日はもう起きそうにありません」
「そうだった!ウォルトさんにも声をかけてたんだ!」
「「そうだ!」」
「ウォルトさん?」
【南瓜の馬車】のリーダーであるマックさんが首を傾げる。
「人形を作ってくれた俺達の友人です。観に来て下さいって頼んでたんです」
「あぁ。凄い人形職人さんか」
ウォルトさんが作った人形の出来が凄すぎて、マックさんは職人だと勘違いしてるけど俺達もあえて否定はしない。
救出に意識が向いて完全に忘れてた。腹を立てるような人じゃないけど、わざわざフクーベまで来てくれたのに…。
きっと、急に来れなくなった俺達の代わりに遊んでくれたに違いない。優しくて子供好きの師匠。
「本日は御自愛下さい。子供達から皆さんへ、こちらを…」
丸めた模造紙を受け取る。紙を広げると、人形劇中のような絵と一緒に『みんなやさしい!』『ひとだすけ、おつかれさま!』『かっこいい!』『こんど、げきをみせてね!』と沢山の言葉が書かれていた。
「「皆の気持ちを描いて渡したら喜んでくれるはずだよ」とウォルトさんが。子供達が心を込めて皆さんに宛てて描いたものです。私が代わりにお渡しします」
「嬉しいな…」
「そうだね」
「疲れも吹き飛んだよ!」
笑顔のマックさんが提案する。
「今日のところは帰って、また明日にしないか?とりあえず、この絵を肴に皆で1杯やるっていうのはどうだ?」
「「「賛成!」」」
マリアさんにまた来る旨を告げて身を翻す。
「オーレンさん。ちょっとよろしいですか?」
歩き出そうとして呼び止められた。
「なんでしょう?」
「ウォルトさんは…曲芸師の方なのですか?」
「えっ?」
マリアさんの言葉でピンときた。ウォルトさんは子供達に人形劇を見せたんだ。だから子供達はあの絵を描いた。想像もできないけど、おそらく誰もが驚くような人形劇を。
「違います。ウォルトさんは俺達の友人で、ただの子供好きな獣人です」
「そうなのですか。よろしくお伝え下さい。また遊びに来て頂けると子供達が喜びますと」
「伝えておきます。きっと本人も喜びます」
丁寧に礼をして、孤児院をあとにする。
次の日。俺達は子供達の前で練習してきた人形劇を披露した。
ウォルトさんが劇を披露した後だから心配したけど、いざ始まると子供達は楽しんでくれてるみたいで笑顔を浮かべてる。
特に子供達に好評だったのは…。
「ゲッヘヘへッ!勇者ぁぁっ!かかってこいっ!クソ雑魚人間がっ!貴様など儂が指1本でひねくり回してやるわっ!」
「勇者…!こんな魔王に負けないで!」
「姫様!…なんて汚い言葉を使う魔王だっ…!負けられん!」
魔王役は、なぜか「やりたいです!」と熱望したアニカが演じていて、姫役のウイカとのギャップと大袈裟な演技の面白さが子供達のツボにハマった。
あるときは…。
「ぐっはぁぁ!や~ら~れ~た~……とみせかけて、くらえぃぃっ!」
「なんて姑息な奴だっ!」
またあるときは…。
「ふはははっ!そんなへなちょこ攻撃など効かんわ!いや…?ん…?…くぅ~!コレはきっくぅぅ~!」
「よしっ!今が好機っ!」
百面相のおもしろ魔王は、マックさんが操る勇者を完全に食ってしまっている。とにかく騒がしくて、行動が予想できない。
「あはははははっ!」
「まおう、おもしろい!」
「ゆうしゃもこまってる!」
「わるいやつじゃないかも!」
アニカの熱演が子供達に爆笑を巻き起こして、『勇者と囚われの姫と愉快な魔王』は大盛況の内に幕を閉じた。




