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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
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281 プレゼント

暇なら読んでみて下さい。


( ^-^)_旦~

 ある日のこと。


 フクーベの【注文の多い料理店】に集まった白猫同盟の面々。


 今回はサマラが招集した。再会を喜びつつ食事することに。差し支えない程度に軽くお酒も飲む。


「今日も料理が美味しいです!ビスコさんはさすがウォルトさんの友達です!」

「その褒め方は違う気がするよ」


 笑顔のアニカにツッコむと、チャチャとウイカは苦笑い。いつも適当な私にツッコませるとはやるね!


「そんなことより、今日みんなに集まってもらったのは、やりたいことがあるからなの」

「ついにドキドキ作戦決行ですか!?」

「ふっふっふ…!今回は違うよ。そろそろ来るんだよね!年に一度の……誕生日が!」


 3人の頭上には?が飛んでる。


「いきなりで意味わからないよね。そろそろウォルトの誕生日が来るんだよ」

「「「えっ!?」」」


 知らなかったかな。…というか聞いたことがなかったと思う。ウォルトは自分の誕生日とか気にしないタイプだから。


「ウォルトさんの」

「誕生日!」

「知らなかったです」

「でしょ?だから、皆でプレゼントをあげれないかと思って!」

「いい考えですね」

「日頃お世話になってる恩返しもできます!」

「私もあげたいです…けど、兄ちゃんが欲しいモノを皆は知ってるんですか?」

「私は聞いたことないよ」

「私もない!訊いてない自分に腹が立ってきた!」

「あははっ。ウォルトは昔からモノを欲しがらないの。子供の頃から変わってない。でもね、幾つか好きなモノがある。フィガロ関連とか」

「「フィガロ?」」


 アニカとウイカは揃って首を傾げた。


「フィガロを知らないんですか?!めちゃくちゃ有名ですよ?!」

 

 チャチャは驚いてる。でも、フィガロを知らない人は意外に多い。ウイカとアニカは人間だしね。


「知らないの」

「ウォルトさんが好きってことは…有名な料理人とかかな?!」

「腕利きの職人かも」

「あり得るね!私達は知らない高名な魔導師とか!」


 いい機会だから2人に教えておこう!


「フィガロは1対1で負けたことがないって云われてる伝説の獣人だよ」

「獣人の男にとって憧れの存在です。ウチの弟達もフィガロが大好きで」

「「へぇ~!知らなかった!」」

「ウォルトも昔からフィガロが好きなんだよ。多分、魔法の次くらいじゃないかな?凄く詳しいし関連するモノも欲しいはず」

「「なるほど~」」

「でも、今回は皆で協力してなにかあげたくて。フィガロの遺品は競売でしか買えないから、手に入れるのが難しい。出品されてないことも多いし幾らかかるかもわからないからね」


 競売は開催も価格も定まらない。事前に入手できていれば別だけど。


「だから意見を聞きたくて集まってもらったんだけど…賛成してもらえる?」

「「「もちろんです!」」」

「ありがとう!嬉しいよ!」

「誕生日は、サマラさんが黙っていれば気付かなかったと思います。絶好の機会を独り占めすることもできたのに、優しいですね」


 おろ?ウイカに褒められちゃった。


「しかも、余裕から来る発言じゃなくて、純粋に皆で喜びを共有しようという心意気を言葉の節々や表情から感じてますよ!」


 あれ?アニカも?


「皆で祝いたいって軽く言ってのけたサマラさんは、尊敬できる強力なライバルです」


 チャチャ…。嬉しすぎる評価でしょうが!


 まぁ、妹達からの高評価はとりあえず置いといて。


「誰かいい案ある?」

「はい!」

「はい。アニカ、どうぞ」

「私は…美味しいお酒と強力な媚薬がいいと思います!」

「却下!露骨すぎるし己の欲望に忠実すぎるでしょ!しかも強力て!」


 てへっ!と舌を出すアニカ。可愛いけども!


「はい!」

「はい。ウイカ、どうぞ」

「最近、モノづくりにはまってるみたいなので、工作とか魔道具作りの本がいいと思います」

「いいね。凄く喜びそう」

「さすがお姉ちゃん!」

「いいと思います」


 ウイカは真面目でウォルトのことをよく見てる。安定のチョイスに納得しかない。


「はい!」

「はい。チャチャ、どうぞ」

「私は、最近ぽろっと言ったモノがいいんじゃないかと。皆で協力してあげられそうです」

「ほほぅ…」

「どういうことか」

「詳しく教えてもらおうかな♪」

「ウイカさんの話と被るんですけど、魔道具作りをやりたいらしくて、「素材があればね」って言ってました。やることが多すぎて採りに行く暇がないみたいです。皆で採りに行くのはどうかと」


 ありだね!


「仕事もしてないのに忙しいなんて、これいかにって感じだよね」

「ウォルトさんらしいです。いつだって働いてる人より忙しそうなので」

「常識外れですからね!ちなみに、チャチャは欲しい素材を知ってるの?」

「アンバーグリスって言ってました」

「ウイカとアニカは知ってる?」

「聞いたことないです」

「ギルドで訊けばわかると思います!」

「あと、危険じゃないけど兄ちゃんが採りに行くには気合いを入れる必要があるらしいです」


 ウォルトが気合いを入れる必要…。相当危ないダンジョンってこと?


「よくわからないけど、ウイカとアニカに調べてもらって、皆で採りに行くのはありだね!」

「無理だとわかったら路線変更してもいいですね」

「私達が無理して怪我でもしたら、自分を責めちゃう優しい師匠ですから!会えなくなったら困るし!」

「いいんですか?私の案で」

「私はいいよ。ウイカとアニカは?」

「賛成です。高価なモノをあげても困らせる気がします」

「私も賛成!皆で探して採ったって言ったら喜んでくれるよ!」

「よかったぁ。ありがとうございます」

「一応無理だった場合も考えとく?第2案を」

「そうですね。皆でなにか作ったりしますか?」

「兄ちゃんは器用過ぎる獣人だから手作りは怖いですよね。服をあげたときもドキドキでしたよ」

「だよねぇ。手先の器用さが半端じゃないから」


 絹の貫頭衣の仕上がりを思い出して身震いする。縫い目のない服を作るような獣人になにをあげればいいのか思いつかない。


「なにをあげても喜んでくれるはずです!だから、心を込めて選んだり作ったりするのが大事です!」


 私達はアニカの意見に頷いた。その後も色々と意見を出しあって、あぁじゃないこうじゃないとはしゃぐ。


「やっぱり、なかなか決まらないね~」

「でも、皆で話し合うのは楽しいです」

「相手が兄ちゃんだから難しいんですよね」

「よし!…やっぱり媚薬で!」

「「「それはない」」」

「むぅ~!皆は強引に迫ってくるウォルトさんを見たくないの!?」


 アニカは頬を膨らませる。


「アニカのは、ウォルトじゃなくて自分へのご褒美でしょ?」

「ぐはっ…!」

「見たくないとは言わないけど、媚薬で迫られても素直に喜べないんじゃないかな?」

「がはっ…!」

「兄ちゃんが飲んだら、冷静になってから頭を抱えて悶絶しそうです。それこそしばらく会ってくれなくなるかも」

「ぬぅっ…!」


 真っ当な意見にアニカはぐうの音も出ない。面白いとは思うけど、ウォルトが喜ぶことは絶対にない。


「お酒と媚薬は、こっそり混ぜても匂いで直ぐバレるよ」

「ですよねぇ~。でも、いつかやってみたいな~!」

「とりあえず、私とアニカがギルドで情報収集します。わかったら知らせますね。チャチャの家を教えてもらっていい?」

「ちょっと遠いですけど大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ」


 話は纏まったかな。


「そうと決まればあとはやるだけだね!楽しみだ!」

「それはそうと、サマラさん」

「なに?アニカ、どうかした?」


 なんかニヤけてるけど。


「ウォルトさんの誕生日を教えてもらったお礼と言ってはなんですけど、見てもらいたいモノがあって」

「お礼なんかいらないけど……なに?」


 バッグから1枚の紙を取り出して手渡される。開いて見た瞬間、おもいきり吹き出した。


「ぶっふぉっ!?ぶふっ…!あはははっ…!コレは…いきなり見せちゃダメなヤツ!はははっ!」


 アニカが見せてくれたのはウォルトが描いた絵だ。一目で誰が描いたのかわかる衝撃作。なにを描いてるのか全然わかんないのに面白い。

 何年も作品を世に送り出してなかったのに、突然新作を見せられて腹を抱えて笑ってしまう。アニカ達がさほど笑ってないのは、もう充分笑ったからだ!


「お礼になりましたか!」

「腹筋がっ…ぶふっ…!ヤバいっ…!やってくれたねっ!ぶっふ…!完全に油断してたっ…!ふっ…はははっ!くっそぉ~!怒りたいのに怒れない~っ!」

「予想通りです!賭けはサマラさんとチャチャの勝ちでしたよ!」


 その後、チャチャが極めた絵のポーズを披露してくれて、最終的に私の腹筋は崩壊した。

 誰も抵抗できない破壊力。人を笑顔にする絵を描く才能の塊。国王の葬儀でも全員が爆笑すると思う。


 あまりに騒ぎすぎた私達は、店員の女性に厳重注意されてしまった。



 ★



 明くる日。


 姉妹は情報を仕入れるタメにギルドに向かう。ウイカが受付で確認したところ、どうやらさほど珍しい素材ではないことが判明した。


 ただ、私達だけで採取に行くのは厳しいかもしれないとのことで、エミリーさんに詳しく確認しておこう。


「なぜ厳しいんですか?」

「アンバーグリスはダンジョンで採掘できるんだけど、難易度は中級だから危険かも。カネルラではそこ以外で採れた話は聞いたことないわ」

「中級ならバランスのいいパーティーなら進めそうですね」

「深いダンジョンではないけど、安全に攻略するならCランク4人以上がギルドの推奨。他のパーティーに手伝ってもらうといいよ。一応場所の地図を渡しておくね」

「ありがとうございます」

「貴女達は心配ないと思うけど、絶対に無理しないで」

「「はい」」


 エミリーさんにお礼を伝えてギルドを出ると、チャチャとサマラさんに伝えに向かう。サマラさんは仕事中なのか留守だった。郵便受けに手紙を入れておいた。

 ダイホウのチャチャの家に向かうと、チャチャも狩りに行ってて、ナナさんと弟達が手紙を渡してくれることに。


「カズ達、可愛かったね」

「クローセを思い出した!今度一緒に遊びたいね!」

「あと、マックさん達とかから情報を聞いておきたいね」

「そうしよう!『カボチャの馬車』は攻略してるんじゃないかな!」


 後日、サマラさんとチャチャから返事が来て、採取に行く日取りが決まった。




 それから数日後。


 アンバーグリス採取日を迎えた。フクーベの出口に近いの私達の家に集合して目的地であるダンジョンを目指す。

 

「準備はできてる?」

「バッチリです」

「楽しみでよく眠れました!」

「私もです」


 ウイカの目に映るのは、サマラさんとチャチャのしっかりした服装。しかも、チャチャは弓が入っているであろう長い布袋を背負ってる。


「サマラさんとチャチャは、もしかして…」

「一緒にダンジョン攻略するよね!」

「協力して採取したいです」


 2人が強いのは知ってるけど伝えておこう。


「無理そうだと判断したら直ぐ引き返します。いいですか?」

「わかってるよ。その辺はウイカとアニカに任せる!冒険者の方が詳しいと思うからね!」

「私もお任せします」

「よぉ~し!出発しましょう!」

「「「おぉ~!」」」


 アニカの号令で気合いの入った私達は、一路ダンジョンを目指す。目的地のダンジョンはフクーベから歩いて2時間くらい。体力がある私達にとっては大した距離じゃない。笑顔で会話しながら歩みを進める。


「オーレン君は誘わなくてよかったの?」

「ウォルトさんの住み家に修練に行くみたいです」

「今日は譲ってやりました!」

「私もオーレンさんに会ってみたいです」

「チャチャ!やめた方がいいよ!とんでもなくエロいから!視線で全身舐め回されて、鳥肌が止まらなくなる!」


 オーレンがちょっとエッチなのは確かだけど、力説するほどではないような気もする。男の人の普通がわからないから。


「大袈裟ですよ。私はまだ子供ですし」

「い~や!チャチャは可愛いから惚れやすいバカ兄貴分に会わせたくない!サマラさんにも惚れてたんだから!」

「そんな感じしなかったけどなぁ」

「甘いです!紳士ぶってるけど、いつだって裸を覗こうとしてくるド変態で、ゲスの極み剣士なんですから!」

「男だから仕方ないんじゃない?」

「ウチの弟達も覗こうとしてきますよ」


 アニカはオーレンを貶めるつもりで話してるけど、サマラさんとチャチャは結構冷静だ。男なんてそんなモノだと思ってるっぽい。実はアニカって厳しい方なのかな?


「カズ達は可愛いで済まされるけど、オーレンは大人だし、殴りたいくらいいやらしい顔するんだよ!」

「大丈夫、大丈夫!私の場合、覗かれたら気付くし絶対に許さないからね!記憶がなくなるまでボッコボコにする!」

「私もです。家族以外はさすがに嫌なので、眉間を矢で撃ち抜きます」

「ならいっか!その時はご愁傷様だ!安心しました!」


 帰ったら一応オーレンに伝えておこうかなぁ。


「ウイカ。今日行くのはどんなダンジョン?」

「私達も初めて行くんですけど、【忘却の海原(ラウトマール)】っていう名前のダンジョンです」


 結構特徴的なダンジョンらしい。


「冒険者でいうと、Cランク以上での攻略が推奨されてるみたいです!私達の実力じゃ無理っぽいんですけど、今後のタメにも行ってみたいんです!」

「私はダンジョン初めてなんで、役に立てればいいんですけど…」


 チャチャは自信なさげ。冒険者になりたての頃の私と同じ気持ちだろう。


「気負わないでいこう!皆で助け合うのが冒険の基本だからね!無理なら帰ればいいし!」

「私もまだFランクだし、チャチャと変わらないよ」

「そう言ってもらえると気が楽になります。やれることをやって…皆で兄ちゃんにプレゼントしましょう!」


 その通り。ウォルトさんに喜んでもらえるよう…チャチャの言う通りになるように頑張ろう。

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