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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
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28 アニカの恋心

暇なら読んでみて下さい。


( ^-^)_旦~

 フクーベ唯一の冒険者ギルドの受付で、オーレンとアニカが依頼(クエスト)の完了報告を行っていた。



 最近の私達は、こつこつクエストをこなして、ギルドから真面目さと安定感を評価してもらってる。まだまだ新人冒険者だけど、少しずつ板についてきた気がする!


「今日もクエスト達成だな。最近、俺らも調子いいよな。その内ランクも上がっちゃったりして」


 ギルドで討伐部位を鑑定してもらっている間に調子に乗った発言をするオーレン。まったく懲りてない。


「なに言ってんの?ほとんどウォルトさんのおかげじゃん。調子に乗ってまた死にかけるとか嫌だからね!」


 調子に乗らないよう釘を刺しておかないと。昔からお調子者なところがあるから。


「言ってみただけだろ。俺らはやれることをしっかりやるだけだよな」

「その通り」


 私達は初クエストで凶暴な魔物に襲われて命を失いかけた。不可抗力のトラブルだったけど、冒険の怖さを身体に刻むには充分な出来事だった。

 背伸びして危険なことはしないことを2人で話し合って決めた。身の丈に合うことをやって、それでも同じ状況に陥ったのなら諦めはつく。

 初クエストはトラウマ級の出来事だったけど、そのおかげでウォルトさんに出会えた。そのことだけは不幸中の幸い。



「…二カ ……アニカ!」

「ひゃっ!な、なによ?」

「なにぼ~っとしてんだ?報酬貰ったぞ…って、ははぁ~ん?」

「なによ…?」


 オーレンの態度が、なんかムカつく。


「明日は冒険も休みの予定だし、行ってきていいんだぞ?」

「どこに?」

「決まってるだろ?ウォルトさんの住み家だよ」

「なんで!?」

「理由はお前が1番よくわかってるんじゃないのか?」


 勝ち誇ったようにオーレンが言う。ドヤ顔がもの凄く癪に障る。


「どういう意味よ…?」


 訊き返すとヘラヘラしながら口を開いた。


「わからないのか?そうかぁ~。まさかアニカが自分の気持ちに気付いてないとはなぁ~。じゃあ教えてやる。アニカはウォルトさんのことが好きになっちゃ……ぐはぁっ…!」

「わかったから言うな!バカ!」


 余計なことを言う兄貴分を黙らせるタメに、レバーブローをいい角度で打ち込んでやった。油断して腹筋が緩んでたのか見事に拳が突き刺さり、身体をくの字に曲げて悶絶してる。


「おおぉ…!」


 ギルドの中に私の怒声が響き渡ったせいで一斉に注目を浴びる。急に恥ずかしさがこみ上げてきて、オーレンの首根っこを掴んで引きずりながらギルドを後にした。

 


 ★



 お騒がせしてしまったギルドから真っ直ぐ家に帰って、テーブルを挟んで向かい合わせに座っている。


「まだ殴られたとこが痛てぇ…。魔導師になるのやめて武闘家になったほうがいいんじゃないか?」


 脇腹を擦りながら皮肉を言うオーレンの胸倉を掴んだ。


「な、なんだよっ?!」

「いつから…」

「えっ??」

「いつから気付いてたのよ!私がウォルトさんのこと好きって!!」


 顔を真っ赤にしながら尋問する。ハッキリ言ってしまったけど、バレてるなら開き直るしかない。


「なんだ、そんなことか…。そうだな…。頭を撫でられて気持ちよさそうにしてるの見たときかな?」

「ぐはっ!」


 私は10ダメージを受けた。悔しいけどその通り…。陽だまりのように温かい手で優しく頭を撫でられたとき、とても安心して優しい大人の男性だと意識してしまったのだ。


「魔法を教えてもらってるときとか、普通に恋する女の目になってるし」

「がはっ!」


 50ダメージを受けた。それも当たっている…。普段の優しいウォルトさんもいいけど、魔法を教えるときの真剣な表情とのギャップにやられて、表情に見蕩れていたりする。


「あとは…そうだなぁ~…」

「もういい!恥ずかしいわ!いい加減にしろ!」

「お前が聞いたのに?!」


 アホのオーレンにバレてるということは…もしかして、ウォルトさんには既にバレバレってこと!?次にどんな顔して会えば…。


 頭を抱えているとオーレンが口を開く。


「ウォルトさんは絶対気付いてない。そういうことに鈍感そうだ」


 よく考えたらそうなんだよね…。出会ったときから、私に対する接し方に一切変化がない。ウォルトさんが私の気持ちに気付いたりしたら、よそよそしくなりそうな気がする。


「迷惑じゃないかな…?弟子だって言っといて、こんな感情持たれて…」

「師匠と弟子がそういう関係になることなんて幾らでもあるだろ?気にすんなよ」

「アンタはお気楽でいいよね…。男同士だし」

「難しいことはわかんないけど、お前が頑張るなら応援するぞ」

「余計なことしないでよ?」

「するか!俺をなんだと思ってんだ。大体、お前はどうしたいんだ?」

「どうって?」

「ウォルトさんと付き合いたいと思ってんのか?別に人間と獣人の恋愛も珍しくないしな」


 巷は様々な種族の恋人達であふれてる。同種同士が一番多いけど、異種族も全然普通だ。獣人と人間のカップルも街でよく見かける。


「わかんない。私はウォルトさんから見たら子供だろうし。ただ…」

「ただ?」

「たまにでいいから女として見てもらいたい…とはちょっと思う…かな」

「だったら少しずつアピールすればいいだろ。別に今すぐどうこうなりたいって焦ってないなら」


 コクリと頷く。


 悔しいけどオーレンの言う通りだ。少しずつ行動で示せばウォルトさんに好意を持ってもらえるかも…。いや…!持ってもらうよう頑張る!


「かわいい妹分の恋の悩みに答える俺っていい奴だよな」

「自分で言うな!もう1回言うけど、余計なことしないでよね」

「わかったって。あと、俺にも協力してくれよ?」


 ニヤけるオーレンを見て、そっちが本線かと思ったけど…いい機会だ。ハッキリ伝えておこう。


「ギルドの受付のエミリーさんでしょ。この間、彼氏と路地裏でキスしてるの見たよ」

「ぐはぁっ…!!」


 オーレンはダメージを受けて倒れた。


 話しかけても返事がない。ただの屍のようだ。

読んで頂きありがとうございます。

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