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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
222/715

222 緊張の初参加

暇なら読んでみて下さい。


( ^-^)_旦~

 オーレンとアニカが、ウォルトに出会って1年が過ぎた頃。


 集まって昼食をとろうと、フクーベの人気料理店イーハトーブに集合することになった白猫同盟の面々。

 チャチャが加入して初の集会。チャチャには門限があるので昼に集まることになった。初参加のチャチャはやはり緊張の面持ち。



「あとどのくらいで着きますか?」

「もうすぐだよ」

「楽しみだね~!」


 アニカさん、ウイカさんと合流して一緒に店に向かってるけど、サマラさんとは初対面ということもあって人見知り全開で緊張している。緊張に気付かれてるのか2人が声をかけてくれる。


「心配しなくても大丈夫!サマラさんはめっちゃ負けず嫌いってことだけ知ってたら心配いらないから!凄くいい人だよ!」

「そうだね。あと、凄い美人なの」


 私はウイカさんとアニカさんも美人だと思う。そんな姉妹が美人だと言うのなら相当だろう。


「余計緊張してきました…」

「大丈夫!チャチャは私達の大師匠だから!」

「大師匠?」


 どういう意味だろう?


「ウォルトさんは私達の魔法の師匠だけど、チャチャはウォルトさんの狩りの師匠だから私達からすれば大師匠なの」

「とんでもない理屈です。私はそんな大層な者じゃないです」

「いや!ウォルトさんはチャチャを尊敬してるって言ってた!器用でなんでもできるって!」


 そんなこと思ってくれてたなんて意外だ。


「兄ちゃんに言われてもピンとこないです。勘違いが激しいから」

「そうだよね」

「謙虚すぎて言っても無駄なことって多いよね!」

「ほとんどです。「大したことない」「誰でもできる」が口癖ですから」

「ウォルトさんのやることが誰にでもできたら、世界がガラッと変わっちゃう」


 緊張をほぐすように会話していると、店に到着した。店に入って見渡すと、つまらなそうな顔で外を眺めている綺麗な獣人が目に入った。


「もしかして…あの人ですか?」


 可愛くもあり美人でもある。さらにスタイルもいい。非の打ち所がない獣人の女性。


「そう。狼の獣人でウォルトさんの幼なじみのサマラさんだよ」


 アニカさんとウイカさんの後をついて歩く。サマラさんが私達に気付いて微笑みかけてきた。


「サマラさん、お久しぶりです!」

「お久しぶりです」

「初めまして…。チャチャと言います…」

「うん。久しぶり。チャチャも初めまして。私はサマラだよ。よろしくね」


 よかった…。喋ると優しそう。


「よろしくお願いします」

「よし!注文しよう!すいませ~ん!」


 4人掛けのテーブルに座って、まず口を開いたのはサマラさんだった。


「ウイカ、アニカ……これはでかしたね!」

「ですよね」

「いい仕事したと思ってます!」


 なにが『でかした』のだろう?


「チャチャ!同盟に加入してくれてありがとう!私は嬉しいよ!」


 サマラさんは眩しい笑顔。


「こちらこそ誘ってもらって嬉しいです」

「くぅ~!すごく可愛い妹だ!」

「ですよね!」

「そうなんですよ」

「あの…どういう…?」


 私の言葉を遮るようにサマラさんが告げた。


「私のことはお姉ちゃんと思ってくれていいよ!勝負は負けないけどね!」

「は、はい。私も負けません!!…あっ、ごめんなさい…」


 条件反射のようについ勢いで言い返してしまった。少し落ち込んでしまう。でも、サマラさんは気にする様子もない。


「気にしないで!むしろ私は嬉しい!ライバルが増えて気持ちを理解してくれる友達も増えて…最高の気分なんだ♪」


 屈託ない笑顔のサマラさんを見て嬉しく感じた。やっぱり嫌な感じを受けない。本当に恋敵なのか怪しいくらいに…。


「私にも…兄ちゃんのことを教えて下さい」

「うん。チャチャもなにか情報があったら教えてね!」

「もちろん私達も教えるよ!」

「心配しないでね」


 その後、運ばれてきた料理を食べながら情報を交換する。


「最近、なにかあった?」


 サマラさんが聞くと、姉妹は嬉しそうに笑った。


「ちょっと前に私達の家に泊まりに来てくれて…一緒に寝ました!」

「えっ!?ウォルトが?」

「ホントですか?」


 あの兄ちゃんが…。信じ難いけど…。


「…と言っても、同じ部屋で寝ただけですけど!寝顔をしっかり見ました!」


 アニカさんとウイカさんは嬉しそうに語る。それくらいなら納得。


「そっか。やるね!お酒飲ませちゃった?」


 サマラさんは、ニシシと笑う。


「はい。普通だったらウォルトさんは絶対同じ部屋で寝てくれないです。前に断られてます」

「だよねぇ~!獣人なのにバカがつくほど真面目だからね~♪」

「「だからまだまだです!」」


 私は驚いた。そのくらいが皆にとって普通なの?


「チャチャはウォルトと普段どんなことしてるの?」

「私は…」


 一緒に狩りをしたり、修練したり、料理をしたりといつもの様子を伝える。3人は興味深そうに耳を傾けてくれた。聞き終えたサマラさんが微笑む。


「そっかぁ。チャチャは私達とちょっと違うんだね」

「違う?」

「ウォルトは、若いのにしっかりしてるチャチャを頼りにしてるんだよ。聞くだけでわかる」

「確かに!狩りの師匠でもあるし、お酒を飲めるようになったのもチャチャのおかげって言ってました!」

「そういえば、大寒波を凌げたのもチャチャのおかげだって笑ってました」

「大寒波って、亜季節にちょっと寒かったときだよね?チャチャ、なにしたの?」

「防寒着を編んであげました。もの凄い厚手の服を。獣人にあげるって言ったら、家族には『本気か?』って顔で見られましたけど」

「あははははっ!大して寒くないのに絶望してたでしょ?私も心配はしてたんだけど」


 サマラさんは兄ちゃんが寒がりなのを知ってるんだ。幼なじみだから当然か。


「この世の終わりみたいな顔してました」

「そんなに寒がりなんだ!?知らなかった~!」

「勉強になるね」


 アニカさんとウイカさんは初耳なのかな?感心しきりな様子。


「兄ちゃんに防寒着をあげるなら、想像より倍くらい厚手にしていいと思います」

「「なるほど!」」

「チャチャは凄いね。ウォルトのことがわかってる」


 ウンウンと頷きながら感心してくれてるけど…。


「大袈裟ですよ。たまたまです」

「「「出たっ!」」」

「えっ!?」

「言いたくなるよね。ウォルトの伝家の宝刀『大袈裟だよ』」

「ホントのことを言ってるのに、いつもそれで微笑んで終わりですからね!でも、微笑みが可愛いから許しちゃいます♪」

「大袈裟じゃないんですって言いたいけど、言っても無駄なんですよね。どうやったら伝えられるんでしょう?」


 皆が言っていることに心底共感できて嬉しくなる。


「私も思います。でも、兄ちゃんにも苦手なことはあるんですよね」 

「苦手なこと…。狩り以外にあったかな?」


 サマラさんは首を傾げてる。幼馴染みならきっと知ってるはず。


「絵を描くのとか」

「あぁぁ~!!ウォルトの描いた絵を見ちゃったの!?」


 半笑いでコクリと頷く。アニカさんとウイカさんが食いついてきた。


「ウォルトさんて絵も描くんですか?!上手そうですね!」


 アニカさんの言葉に、私とサマラさんは顔を見合わせて苦笑する。


「アニカ達もウォルトが器用なの知ってるよね?」

「もちろんです!」

「でもね……ウォルトの描いた絵は……あははははっ!」

「そうなんです…。兄ちゃんの絵は…あはははっ!」


 思い出し笑いが止まらない。


「ごめん!ちょっと昔を思い出しちゃった。ふぅ…。ウォルトはね…ふふっ!凄く個性的な絵を描くの…。ねっ!」


 全面的に同意しかない。


「はい。この間、花の絵を描いてもらったんですけど……んふっ!…凄く子供受けするというか…意外すぎて…あははは!笑ったら凄く怒ってました」

「『もう描かニャい!』って顔でしょ?全然怖くないんだよね!」

「そうです!可愛かったです!」

「「いいなぁ~。見たかったぁ」」

「頼んだら描いてくれるよ」

「絶対笑わないって約束しなきゃダメですよね」

「そうそう」

「お姉ちゃん!今度お願いしなきゃ!」

「だね!楽しみだなぁ!」

「私は…ウォルトの絵を見て笑わなかったら2人を尊敬する!」

「私もです。アニカさんとウイカさんが笑う方に賭けます」

「「そんなに!?」」



 その後は、楽しい話がしばらく続いた。初めて聞く話ばかりで新鮮で凄く楽しい。料理を食べ終えたところでサマラさんが口を開く。


「チャチャに言っておかなくちゃいけないことがあるんだ」


 アニカさんとウイカさんの表情が引き締まる。直ぐに真面目な話だとわかった。


「なんでしょうか?」

「ウォルトの…昔のことをね。今から話すことは内緒にしてほしいんだけど、いい?」

「はい」


 サマラさんは、兄ちゃんの過去について語り始めた。他の獣人からどんな扱いを受けてきたか。なぜ森に住んでいるのか教えてくれる。驚きながらも真剣に耳を傾けた。



「そんなことって…」


 話を聞き終えて唇を噛み締めた。過去にそんなことがあったなんて…。涙が溢れそうになる。

 よく考えたらあり得る話。私は優しい兄ちゃんが好きだけど、強さを求める獣人男性の習性は知ってる。

 けれど、弱いから酷い仕打ちを受けていたなんて知らなかった。私は強い兄ちゃんしか知らない。それなのに人に優しくできることを愛しく思える。


「チャチャ。ウォルトは知ってほしくないと思ってて嫌かもしれない。でも、私はウォルトと付き合っていくうえで知っておいた方がいいと思うの。今があの頃と違っても、ずっと忘れないはず」


 サマラさんの言葉に大きく頷いて決意を告げる。


「私は………いずれソイツらの脳天に矢を突き刺してやります…」

「そして私の『火炎』で燃やします…」

「やってやりましょう…アニカさん…」

「お姉ちゃんに任せなさい…!」


 黒い瞳で会話する。


「気持ちはわかるけども!」

「2人とも物騒すぎるよ」


 サマラさんとウイカさんは苦笑した。





「今日はありがとうございました!凄く楽しかったです!」


 店を出てペコリと頭を下げる。


「こっちこそ楽しかったよ」

「また集まるときは呼ぶから!」

「ドキドキ作戦の時にも呼ぶね」

「ドキドキ作戦?」


 ウイカさんの言葉に反応する。


「今度、皆でウォルトをドキドキさせたいって言ってたの。チャチャも参加してくれる?」

「もちろんです!私は…まだ子供ですけどやります!」

「そうこなくっちゃ!みんな違っていいんだからね!」

「各々作戦を考えときましょ~!」

「楽しみですね。負けません」

「私も楽しみです!あと、皆さん…」

「「「どうしたの?」」」


 言っていいのかな…。でも確かめておきたい。


「…本当にお姉ちゃんと思っていいんですか?」


 顔が熱い…。でも、3人は赤面した私に笑顔で抱きついてきた。


「もちろんだよ!もうっ!チャチャは可愛いなぁっ!」

「嬉しい。妹が増えちゃった」

「妹よっ!おぉ、妹よっ!」


 美人に囲まれて照れ臭いやら嬉しいやらだけど、コレも言っておかなきゃ。


「皆さん。私は末の妹かもしれないけど…」

「「「負けないよ!」」」

「負けません!」


 顔を見合わせて笑った。

読んで頂きありがとうございます。

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