167 冒険者になったよ
暇なら読んでみて下さい。
( ^-^)_旦~
ウイカが冒険者になることが決まったあと、修練を重ねた4人。昼食をとってからウォルトに笑顔で見送られながら早めに帰路についた。
ウイカの足取りは軽い。2人が認めてくれて嬉しいなぁ。足を引っ張らないように頑張ろう。ウォルトさんにもまた直ぐに会いに来たいなぁ。
今後の行動について会話しながら森を歩く。
「とりあえずウイカの冒険者登録に行くか」
「ギルドに行こう!」
「ありがとう。色々教えてね」
「任せて!私達以外の冒険者も親切な人が多いから色々教えてくれるよ!中には変な人もいるけど…」
「変な人はそんなにいないぞ……って、俺かよ!」
アニカはオーレンを見つめてる。
「まぁ冗談として…まずはFランクから始まるから薬草採取から始めよう!」
「そうだな。初心忘るべからずだ」
「2人は自分達の依頼をこなしていいよ。1人でゆっくりやるから」
「ダメだ!」
「ダメだよ!」
オーレンとアニカは口を揃える。
「俺達は初めての薬草採取で魔物に襲われて死にかけたんだぞ。油断は絶対禁物だ。危険なのはクエストの内容じゃない。運が悪いってだけで直ぐに命を落とすんだ」
「その通り!まずは慣れるまで一緒に行こう!その後はまた考えよう!」
そうだよね。2人は「生きてるのは運がよかっただけ」っていつも言ってる。大先輩のアドバイスは聞かないと。
「ありがとう。お願いします」
「気にしないで!お姉ちゃんも【森の白猫】の一員になるんだから!」
「もう家族みたいなもんだ!そうなると…俺が家長だな!」
ドヤ顔を見せるオーレン。
「それは違うと思う」
「じゃあ、ウイカか?」
「ウォルトさんに決まってんじゃん!家長の椅子は空けておかなきゃ!ちなみにオーレンは…」
「俺は…?」
「手のかかる弟だよ!」
「お前より年上なのにっ!?おかしくないか!?」
「私からしたら弟だからいいんじゃないかな」
この中では私が1番年上。それぞれ1歳違い。
「納得いかねぇ…」
「決まりだね!森の白猫の【愚弟】オーレン!予期せず異名もできたし響きも格好いいから満足でしょ?!」
「勝手に二つ名を作んなよ!誰が愚かだ!」
「ふふっ。似合ってるかも」
「ウイカもひでぇ!」
その後も、クローセに住んでいた頃のように騒ぎながらフクーベに戻った。
★
フクーベに着いた俺達は冒険者ギルドへ向かう。
予想通りウイカは街ゆく男達の視線を一身に集める。でも、本人は気にする様子もない。ウイカの容姿は1万人を超えるフクーベにもなかなかいないレベルだ。クローセが生んだ奇跡で男なら声をかけたくなる。
ただ…アニカが狂犬のように周囲を警戒していて声をかけてくる者はいないな。「いつでも噛んでやる!」って顔したヤバい奴にしか見えない。
「今のところ…お姉ちゃんにちょっかい出す輩はいないね…」
「大袈裟だってば。私なんか気にされてないよ」
「いやっ!油断は禁物だよ!お姉ちゃんは私が守るっ!」
「俺もいるぞ」
「実際はアンタが1番危ないんだよ!今は黙って泳がせてるけど!」
「泳がされてたのか!?危ねぇ!」
下らないことを言い合いながら、ギルドに到着した。中に入ると沢山の冒険者が集まっている。今日はクエストをこなした冒険者も多いみたいだ。
真っ直ぐ受付に向かうと、今日も癒し系のエミリーさんが受付業務に勤しんでいる。俺達に気付いたエミリーさんが先に声をかけてくれた。
「今日は休むんじゃなかったの?」
「そうなんですけど、ウチのパーティーが増員したので冒険者登録にきました」
「じゃあ張り切って登録しなきゃね」
後ろにいたウイカが前に出る。いきなり目の前に現れた美女にエミリーさんは驚いてるな。
「初めまして。アニカの姉のウイカです。冒険者になりたくて登録にきました。よろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしく」
ペコリと頭を下げたウイカに負けじと、エミリーさんも頭を下げる。
「驚いたぁ~!アニカちゃんのお姉さんなんだ~!」
「そうなんです!美人でしょ!」
「アニカ!そんなことないから!恥ずかしいから言わないで!」
ドヤ顔の妹と慌てて否定する姉。仲のよさそうな姉妹の姿にエミリーさんはほっこりしてる。
「早速手続きを始めようか。オーレン君とアニカちゃんは後ろの待合所で待ってて」
「はい」
言われた通りに冒険者の待合所で待機していると、知り合い冒険者の質問攻めにあう。
「彼女は誰だっ!?」
「凄い美人だね!」
「いい……」
「恋人はいるのかっ!?いるよな?!」
「オーレンが1番危ないな…」
「とてもいい……」
矢継ぎ早に答える俺達の元に、手続きを終えたウイカが戻ってくる。周囲の冒険者……特に男性冒険者に緊張が走った。
「無事に手続き終わったよ。こちらの皆さんは?」
「私達の知り合いの冒険者の皆さんだよ!お姉ちゃんのことを聞かれたから教えてたの!」
「そうなんだ」
ウイカは集まった冒険者に頭を下げる。
「アニカの姉のウイカといいます。今日から冒険者になりました。色々教えて頂けると助かります。よろしくお願いします」
顔を上げたウイカのフワリとした笑顔に、ズキュン!と心臓を撃ち抜かれる男性冒険者達。女性冒険者も思わず軽く赤面してしまうほどの破壊力。
その後、すぐに冒険者達に囲まれたウイカは、皆の質問に丁寧に答える。男性達はもれなく鼻の下が伸びていた。少し離れたところで見守る俺とアニカは楽しそうに話すウイカの姿に笑みが溢れる。
「まだまだこれからだけど、楽しみだな」
「お姉ちゃんに冒険の楽しさを知ってもらえるように頑張らなきゃ!もちろん安全第一でね!」
「それが大事だよな。出来る限り慎重に冒険するぞ」
一通り面通しを終えたウイカが戻ってきた。
「優しい人ばかりだね。初顔の私なんかに興味を持ってくれて嬉しいなぁ。気を使って色々なことを聞いてくれたの」
ウイカの台詞を聞いた俺達は警戒を強めて小声で話す。
「…半分以上は不純な動機だけどな」
「…知り合いでも油断できないからね。…いつ変な虫に脱皮するかわからない。…なにかあったら協力して排除するよ。いい…?」
「当然だ…。いつでも準備はできてる…」
アニかと初めてかもしれない熱い握手を交わす。目的一致で共闘を誓い、ウイカは笑顔で首を傾げた。
その後、住居に戻ってウイカが冒険者になったお祝いを俺の手料理で開催した…ものの、ウイカの反応が微妙だったのは家長の料理が美味しすぎたせいだと少しだけウォルトさんを嫉んだ。
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