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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
127/706

127 出会いの裏側

暇なら読んでみて下さい。


( ^-^)_旦~

 クローセの魔物騒動が落ち着いて、フクーベに戻ったオーレンとアニカは数日静養することに決めた。


 オーレンは思案する。今回の帰省でウォルトさんから休むことも重要だと教わって身に染みた。とはいえ、ギルドにしばらく顔を出してない。クエストの状況確認や挨拶くらいはしておきたいから、早朝からギルドに向かうことにした。


 声をかけるつもりだったけど、アニカはぐっすり眠っているので1人で向かう。玄関のドアを開けて外へ出ると、まだ街は静かで空気も澄んでいるように感じる。

 フクーベに帰ってきたことを実感していると、目の前に俺達の家を見つめる獣人の女性がいることに気付いた。


 髪をアップにして軽装に身を包んだ女性は、艶のある毛皮と抜群のスタイルに加えて美しい顔立ちの獣人の美女。思わずドキッとしてしまったけど、平静を装って話しかける。


「おはようございます。なにか?」


 間違いなく我が家に用だと思うけど、違ったら恥ずかしいな。そのまま返事を待つ。


「おはよう。私はアニカの知り合いで、ちょっと通りかかったものだから」


 美女は笑顔で応えてくれた。素敵な笑みにドキドキする。アニカに美女の知り合いがいるとは知らなかった。

 寝坊助(アニカ)は爆睡中だけど、来客なら起こしても文句を言わないだろうと思って尋ねてみる。


「アニカを呼んできましょうか?」

「また日を改めて来るね。今日はこれから行くところがあるから」

「わかりました。いつでもいらして下さい」


 ふわりと手を振る美女に慌てて礼を返す。歩き出した背中を見送りながら、残念な気持ちを抱いた。ゆっくり話してみたかったなぁ…。


 気を取り直して足早にギルドに向かった。




 ギルドに着いて受付にいるエミリーさんに挨拶に向かうと笑顔で対応してくれる。


「オーレン君。しばらく見なかったけど大丈夫だったの?」

「はい。ちょっと故郷の村で事件が起こって、アニカと帰省してました」

「大変だったね」


 簡単に事情を説明すると逆にエミリーさんも教えてくれた。


 俺達は毎日のように朝からギルドに来てクエストのチェックをするのが日課になってる。ここ数日見かけなかったので、知り合いの冒険者達は『何事かあったのでは?』と心配していたことを。


「そうなんですね。ありがたいです」

「君達は皆に可愛がられてるから。会ったら事情を話してあげて」

「わかりました」


 クエストも一応チェックしたけど、クローセに向かう前と違うモノはなかった。ただ、充分休養をとったら少しずつこなしていくことに変わりはない。エミリーさんに軽く挨拶して帰路についた。



 住み家に帰ると、アニカは目を覚ましていた。気怠そうに居間のテーブルで突っ伏している。


「ただいま。ギルドに行ってきたぞ」

「なにか変わったことあった~?」


 顔を上げることなくアニカが聞き返してきた。


「特になかったけど、どうした?ダルいのか?」

「違うよ。気になったことがあってね。大したことじゃないんだけど」

「なんだよ?」

「クローセでエッゾさんと共闘して思ったんだけど、獣人の男性って……実は漏れなく怖いのかな?」

「どうだろうな」


 あの時のエッゾさんは凄まじい殺気を放ってた。ウォルトさんは平然としてたけど、俺は喉元に牙を立てられたように感じて、震えが止まらなかった。

 いつかギルドで見たマードックさんも凄い威圧感を放ってて、近寄ることもできない雰囲気だった。獣人にとっては普通のことなのか?俺達はウォルトさんとしか交流がないからよく知らない。

 

「ウォルトさんも普段はすごく優しいけど、一皮剥いたら同じなのかも…って思ってさ」

「そりゃそうだろ。聞いた話じゃ獣人はとにかく負けず嫌いらしいしウォルトさんも一緒だろ」


 アニカは、はぁ…と嘆息しながら顔を上げる。


「怖いウォルトさんなんて想像できないけど、もしそんな場面に遭遇したら…」

「そうなったら…?」


 さすがのアニカでもウォルトさんを見る目が変わってしまうのか…?


「すごく……格好よさそうじゃない?」

「お前は…………………ホントに平和なバカだなぁ」


 溜めに溜めて心からの言葉を浴びせる。


「なんでよ!ウォルトさんに野性味が加わったら無敵でしょうがっ!」

「知らん」


 色惚け娘に付き合ってられない。部屋に戻って付与魔法を修練しようと考えたところで、ふと思い出す。



 ★



「そういえば、朝早くにアニカの知り合いが来てたぞ」

「なんて人?」


 誰とも約束してないけど?


「名前は聞いてない。濃紺の毛皮で凄い美人の獣人だった。三角の耳が可愛かったな」

「…わかった!サ……」

「サ…?」


「サマラさん」と言いかけたけど、慌てて口を噤む。オーレンが名前を聞きたそうにしているのに気付いたから。

 目の前にいる『すぐ惚れ男』『エローレン』に名前を知られると、サマラさんに迷惑がかかるかもしれない。異性が絡むと、無駄に行動力を見せることがあるのを知ってる。基本ヘタレなのでまずないと思うけど万が一もありうる。


 実際、オーレンの顔には『教えてくれ!できれば話したい!』という感情が滲み出ていて、見てると段々腹が立ってきた。

 このエロ兄貴分は、そのうち魔法で眠らせて『私は危険人物です』と顔に刺青でも入れてやろうか…。ちょっとは箔が付くだろう。

 


「さ……ぁて、魔法の練習でもしようかな」

「…おぅ」

「ところで、その人なにか言ってた?」

「たまたま通りがかったんだと。行くところがあるからまた来るってさ」

「了解。ありがと」


 なんとか誤魔化せたかな。内心ガッカリしているであろうオーレンを尻目に、きっと食事の誘いだ!と私は喜んだ。


 そうなれば、サマラさんから獣人のことを詳しく聞くこともできる。再会が待ち遠しいなぁ。

読んで頂きありがとうございます。

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