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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
113/714

113 意外な事実

暇なら読んでみて下さい。


( ^-^)_旦~

 オーレン達がクローセを離れて、数週間が過ぎた。


 クローセには平穏な日々が戻り穏やかな時間が流れている。そんな平和な村の外れで魔法の修練に精を出す者が2人。


「どうしたの?ホーマおじさん」

「ふぅ…。今日はこのくらいにしておこう」

「私はまだ大丈夫だよ?」

「俺の魔力が限界だ。勘弁してくれ」

「そっか。今日もありがとね」


 ウォルト君達が村を去ったあと、俺とウイカは暇を見つけて魔法の修練をこなしていた。

 身体を動かせるようになってから、ウイカは毎日の修練と身体の鍛錬を欠かしてない。その甲斐あってか、着々と動ける時間も伸びて若さゆえか既に俺の体力を追い越した気さえする。


「あとは自分で修練しておくね」

「あぁ」


 ウイカは足早に家に帰っていく。後ろ姿を見送りながら苦笑いを浮かべた。


 もう、俺が教えることはほとんどないんだよ。アニカといいウイカといい、姉妹で魔法の才がある。飲み込みが早くて初めから魔力操作も上手い。あとは自分で修練を重ねるだけで問題ない。

 しかも、ウイカは魔力の体内生成が並外れて早く、覚えたての生活魔法では魔力が枯渇しない。いくらでも修練出来る。

 魔導師の中には、多彩な魔法を操れるのに魔力生成量が少ない足りないために詠唱することができず、悔しい思いをする者も少なくない。

 使える魔法に向き不向きはあるだろうが、アニカとともに凄い魔導師になる可能性が充分にある。

 魔導師になるつもりがあるのなら、早い段階でウォルト君に預けた方がいいな。本人とアーネス達に聞いてみるか。


 アニカの急成長を見ればウォルト君が素晴らしい指導者なのは一目瞭然。魔法の技量も信じらいレベルだったが、指導者としても優秀なのは疑う余地もない。

 アニカ本人の努力と才能によるところが大きいだろうが、魔法を独学で学ぶのに限界があることは俺が一番理解している。


 だから、いい師匠に巡り会えるかが魔導師にとって最重要事項といっても過言じゃない。

 いつの世も名のある魔導師は人格に問題がある者が多い。『自分は世界でも特別な存在』だと勘違いしている者が多いからだ。

 俺の師匠も例に漏れず傲慢で、自分以外の魔導師の実力を素直に認めず、他人を蹴落としてでも自分の地位や立場を守るような魔導師だった。

 人間関係に嫌気がさして師事することをやめ、独学で修練を重ねたが能力が伸びることはなかった。直ぐに独学の限界が訪れた。


 後悔はしてない。あのまま師事していても今と大して変わらない実力だったと思う。他の魔導師に師事する選択もあったが、似たり寄ったりな魔導師ばかり。

 もし諦めず魔導師を目指していても、俺の才能では小間使いのように扱われて一生を終えていた可能性が高い。自分の実力はよく知っている。それに比べれば今の生活は幸せだ。


 ウォルト君のような魔導師には初めて出会った。卓越した魔法を操るのに、鼻にかけることなく人を楽しませたり守るために存分に魔法を使う。俺が憧れ目指した魔導師の姿。


 少し関わっただけでわかる。彼は尊敬に値する魔導師。アニカが彼に師事できたのは、本当に幸運だと思う。女性を軽んじる傾向が強い魔導師業界では、一歩間違えると非人道的な扱いを受けることも多い。魔法は一切教えてもらえず、体よく愛人として囲われていた者もいた。

 そんな被害を受けた者を山ほど見てきたからこそ、アニカが旅立つときいい出会いに恵まれることだけを願っていた。


『火炎』


 周りに人がいないことを確認して詠唱すると、人の頭部ほどの炎が発現した。


 矯正してもらったあと、毎日のように欠かさず修練して炎の大きさも着々と増してる。少しずつだが、魔法使いとして成長しているのが実感できてる。

 この歳になって魔法の修練を行うなんて思ってもみなかったが、嫌な気持ちはまったくない。結局のところ昔から今も変わらず魔法が好きだ。


 彼には本当に感謝しかない。本当に俺も師事したいくらいだ。彼が子供達に見せた魔法を目にしたときの衝撃は忘れられない。見たことも聞いたこともない、まさに神業だと思った。

 今の魔導師業界には疎いが、俺が学んでいた頃から大きく変化しているとは思えない。なぜなら、ここ数百年で魔法に大きな革命が起こったことはない。つまり、単純に彼の魔法技術が凄いということ。

 繊細な魔力操作。不可能と云われる多重発動や複合魔法。創造性豊かな魔法構築。それらをいとも簡単にやってのけたのが、魔法を使えないと云われてきた獣人。正直、どこに驚いていいかわからない。

 特に、石から花を咲かせた魔法。あの魔法に関してはいくら考えても原理すら見当もつかない。魔法に関する知識だけは人並みという自信があるが完全にお手上げだ。

 なにより彼の放つ魔法は洗練されていて美しい。魔法を美しいと初めて思った。過去に見たこともない。

 感動を覚えて心が震えた。きっと絶えず磨き上げられた魔法。俺が魔法の修練を再開したのは、ウォルト君の魔法を目にしたから。魔法を操りたいという気持ちが胸の奥から自然に湧き上がってくる。


 抱えていた長年の悩みすらすんなり解決した彼に教えてもらえば、この歳で新たな魔法の修得も可能だろうか?是非見解を聞いてみたい。


「お~い。ホーマ」


 遠くから名を呼んできたのはアーネス。視線を向けると近づいてくる。


「どうした?なにか用か?」

「ちょっとお前の意見が聞きたくてな。ウイカには魔法の才能があるのか?」

「なんだ、そんなことか。あるぞ。俺の何十倍もな。アニカといいお前の娘達はどうなってんだ」


 魔法の才能は親から受け継がれる能力であることが多いけれど、アーネスとウィーはどちらも魔法を使えない。珍しいケースだと思う。


「俺にもわからん。そうなると、早めにウォルトに預けようと思うんだがお前はどう思う?」

「ちょうど俺も考えてた。フクーベで魔法を学ぶなら彼の元がいい。これは絶対だ。あとはウイカの意思次第だな」

「やっぱりそうだよな…。よし!ウイカと話してみるわ」


 身を翻して帰ろうとするアーネスに問いかける。


「アーネス。お前はそれでいいのか?」

「なにがだ?」

「ウイカも冒険者になりたいと言い出すかもしれないぞ」

「その時はその時だ。アニカはよくてウイカはダメな理由がない。もしそうだとしても才能があるなら伸ばしてやりたいしな。まぁ、なるようになるだろ」


 あっけらかんと語るアーネス。さっぱりした性格はアニカと似ている。俺はそれ以上言うことはない。



 ★



 アーネス家では、夕食ついでに突然の家族会議が開かれることになった。議題はウイカの今後について。


「ウイカ。お前、魔法の勉強をするつもりはあるか?」

「当然あるよ。今も勉強してる最中だし… もぐもぐ……おかわり!」


 魔力酔いが改善されてウイカはかなり食欲旺盛になった。俺とウィーとからすれば嬉しい限り。


「だったら、早いうちにウォルトに頼んでお前の魔法の師匠になってもらおうと思ってな。ホーマもそれがいいと言ってた」

「それは願ったり叶ったりだけど……もぐもぐ…」

「なら早いほうがいい。ある程度体力がついたらフクーベに行ってこい。時期はお前に任せる。向こうでアニカ達と暮らせばいい」

「うん、ありがとう。…もぐもぐ…」

「ちょっと、お2人さん。アタシの存在を忘れちゃいないかい?」


 話を黙って聞いていたウィーが話に割って入る。


「お母さんは反対?」


 不安げにウイカが問う。


「いや、賛成。若いんだからやりたいことをやってみればいい。でさ、ウイカは魔法を覚えてその後はどうしたいの?」

「治癒魔法を覚えて、治療師(ヒーラー)になって村に戻ってこれたらいいなぁ…と思ってるけど」

「へぇ。治療師かぁ。いいんじゃない」

「アニカやホーマおじさんが言うには、魔法には向き不向きがあるらしいから、私が修得できるかわからないけど覚えてみたいの。魔法を使って村の皆の怪我や疲れを癒してあげたい。恩返しになるかわからないけど、そうしたいと思った」

「それはウイカの意志なんだね?村に縛られてない?」

「ないよ。私がやりたいの」

「じゃあ、まずはそれを目指しなさい。あとはなるようになるさ!私からはそれだけ!」

「ありがとう、お母さん」


 とりあえず家族会議は終了した。お腹を膨らませたウイカは、もう食べれないという顔で部屋へ戻っていく。やっぱり姉妹だな。


 夫婦水入らずで話をする。


「アーネス。寂しくない?もしかしたらもう帰ってこないかもよ?」

「ホーマにも言われたよ。冒険者になるかもってな。けど、そうなった時に考える。俺はそんなことより…」

「好きなことをやってほしいよね~。特にウイカには」

「あの子は今まで色々なことを我慢してきた。あんなに元気な姿を見れるなんて夢にも思わなかった」


 少しだけ遠い目をして、ウイカ達の小さかった頃を回顧する。しばらくして、ふと思い出した。


「ホーマも言ってたけど、うちの娘達の魔法の才能は凄いらしい。なんでだろうな?両親が魔法を使えないってのは珍しいみたいだし」

「アタシは魔法使えるよ」

「は…?」


 ウィーの突然の告白に目を丸くする。あまりの驚きに固まってしまった。魔法を使える…?


「言ってなかったっけ?結婚するときに言ったと思ったけどな~」

「知らない。初めて聞いたぞ」

「じゃあ言い忘れてた。テヘッ♪」


 結婚して20年近いが、ウィーが魔法を使っているのを見たことがない。にわかに信じ難い。


「ウィー…。お前の魔法を見せてもらってもいいか?」

「いいけど、大したことないから期待しないでよ?じゃあ、ちょっと立ってくれる?」


 言われるまま立ち上がる。向かい合うようにウィーが立つ。頭1つ以上身長が違うし体重も軽く倍近く違う。なにをするつもりだ?


「じゃあ、いくよ」


 ウィーは、おもむろに俺の両脇を掴むと、そのまま軽々と身体を持ち上げた。


「うぉぉぉぉっ!??」


 持ち上げたままウィーは笑う。


「コレがアタシの使える魔法。少しの間、力が強くなる。こんなこともできるよ」

「うぉぉぉっ…?!」


 俺を上に放り投げては受け止めるを繰り返す。大の大人を赤ん坊のように軽々と放り投げる。何度か繰り返して床に下ろされた。


「ね?使えるでしょ?」

「あぁ…。信じる」


 信じない理由がない。思えば、夫婦ゲンカしたときに時折ウィーが凄い力を見せるのは、無意識に魔法を発動していたんじゃないか。いや…意図的かもしれない。

 いつから?とか、誰に習った?とか、色々と訊きたいことはあるが、驚き過ぎて今は声にならなかった。

読んで頂きありがとうございます。


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