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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
104/705

104 いざダンジョンへ

暇なら読んでみて下さい。


( ^-^)_旦~

 いよいよダンジョンに向かう日を迎えた。


 俺とアニカ、そしてウォルトさんは準備を終えて村長に挨拶することに。


「村長。しばらく留守にするからあとは頼む」

「うむ。全員無事に戻るんじゃぞ」

「テムズさん。村のことは昨日お伝えした通りです。よろしくお願いします」

「わかっとるよ。既に皆には伝えてある。心配いらんぞい」

「ダンジョンで長寿の秘薬とか毛生え薬を拾ったら村長にあげるからね!」

「ないと思うがの…。気持ちだけで充分じゃ」

「じゃあ行ってくる!」


 村長に見送られながら調査に向かう。村の入口には、来たときとは違って立派な木製の門扉が取り付けられてる。

 ウォルトさんが、空いた時間に村人の協力を得て『同化接着』で作ってくれた。前衛的なデザインで俺は格好いいと思う。

 村人達の評価は、「いいじゃん」「かっこいい!」「芸術は爆発だ!」と概ね好評だったらしい。ちなみに、魔物に壊された柵もウォルトさんと村人達が仲良く修繕してる。とにかく器用な人だ。


「村の門扉まで作ってもらってありがとうございます」

「楽しかったよ。子供達が一緒に材料を集めてくれたから早く終わったしね」

「ウォルトさんは村の子供達に大人気ですね!住み家に帰れなくなるかもしれませんよ♪」

「獣人が珍しいだけじゃないかな。帰るときはボクの方が寂しいかもしれない」


 村長に教わった方角へと歩みを進めながら、気になっていたことを訊いてみる。


「ウォルトさんが言ってた『やること』ってなんだったんですか?」

「ボクらが村にいない間に魔物に襲撃されても大丈夫なよう魔法を準備してたんだ」

「魔法を準備…ですか?」

「グリーズベアぐらいなら侵入を阻止できると思う」

「ホントですか?!」


 魔法を準備した、とはどういう意味だろう?わからないけど、あの凶悪な魔物を止められるような魔法なんて……あるだろうなと納得した。なぜならウォルトさんだから。



 

 所在が不明ということで、探すのに少々骨が折れるかも…という俺達の予想を裏切り呆気なくダンジョンは姿を現した。

 入口は植物が生い茂って認識し辛くなっていたけど、近づくと数匹の魔物が飛び出してきたからダンジョンの入口で間違いない。


「魔物が外に出てきてるな」

「発生源かもしれない!」

「早速中に入ろうか」

  

 アニカは緊張感がないな。ウォルトさんがいるからだろうけど。


「2人とも準備はいいかい?」

「「大丈夫です!」」

「じゃあ行ってみよう」


 調査に向かうべく内部へと足を踏み入れた。一歩踏み込むと仄暗い洞窟のよう。アニカが『夜目』をかけてくれた。


「使いこなしてるね。さすがアニカだ」

「えヘヘ♪ウォルトさんを驚かせたくて、ギルド所属の魔導師の方に色々習ってるんです」


 バカっ…!そんなことをウォルトさんに言ったら…。


「そっか。魔法の師匠に恵まれてよかったね。ボクはお役御免だ」

「えっ!?」


 やっぱりな…。元々師匠じゃないって言われてるのに、そんなことを言ったらこうなるのは目に見えてた。アニカに師匠ができたらウォルトさんの性格だと師匠に気を使って一切魔法を教えてくれなくなる。間違いない。


 アホな妹分アニカはあんぐりしたまま目を見開いて、二の句を継げないでいる。心の中で溜息を吐いて助け船を出す。


「アニカは、ウォルトさんを驚かせるために無理を言って忙しい魔導師に習っただけなんです。だから師匠にはなってもらえてないんですよ」

「そうだったんだね。充分驚いたけど残念だったね」

「い、いえっ!まだまだウォルトさんから教わりたいです!師匠にはその内巡り会えたらいいなぁ~、くらいに思ってます!」


 アニカは申し訳なさげに『ありがとう』と小声で告げてきた。世話の焼ける妹分だけど、こういうとこは素直だ。



 先へ進むと、1階層から強弱様々な魔物が入り乱れて襲いかかってくる。

 村長から聞いた話では浅層に強い魔物は出現しなかったらしいけど、明らかに他のダンジョンであれば中層以上の魔物が出現してる。

 2階層、3階層と進んでも同様だった。今のところ俺達を脅かすような魔物は出現してないけど…。


「他のダンジョンとは傾向が違うな。元々こういうダンジョンなのか?」

「ダンジョンに潜った回数は多くないから、階層が進む毎に魔物が強くなっていくっていうのは思い込みかも!あってもおかしくないよ!」


 通常階層を追う毎に魔物が強くなるのがダンジョンの性質。魔物が強弱入り乱れて共存できないらしい。


「アニカの言う通りだね。でも、そうだとしたらボクも初めてだ」

「ウォルトさんは結構ダンジョンに潜ってるんですか?」

「修練でね。一時期は毎日のように潜ったし泊まったこともあるよ」

「ダンジョンの中にですか?」

「うん。気が休まらないからやめたほうがいいけど」


 その後も順調に攻略して4階層に進む通路を探すけど見当たらない。思案していたら、壁際を調べていたアニカがなにかを発見した。


「オーレン!ウォルトさん!ボタンみたいなモノがあります!」

「ボタン?そんなところにか?」

「怪しいね」


 訝しがる俺とウォルトさん。ところが…。

 

「とりあえず押してみましたよぉ~!」

「「え?」」


 あっけらかんと告げるアニカ。


 ゴゴゴ…と地鳴りのような音がして壁の一部が開いた。魔物が大量に雪崩れ込んでくる。初めてだけど、どうやら『魔物部屋』の罠。あっという間に囲まれてしまった。ざっと50匹はいる。


「ひぇぇぇ~!!」

「罠だと思うだろ!アホかっ!」

「ウォルトさんがいるから、なにが来ても大丈夫だと思って!」

「あははは。信用してくれて嬉しいよ。じゃあ、合図をしたら一瞬だけ跳んでくれるかい?」

「「はい?」」


 ウォルトさんはスッと片膝をついた。地面に掌を付けると大きな魔法陣が浮かび上がる。


「いいよ」


 言われた通りに跳び上がると、ウォルトさんがすかさず詠唱した。


波雷(チラック)


 ウォルトさんを中心に魔力の波が広がる。全方位に広がって魔物達の足元に到達すると、電撃が身体を駆け抜けた。声を上げる間もなく倒れた魔物達。数秒後に姿が消え始める。

 地上で魔物を倒すとほぼ亡骸が残るけど、ダンジョンの中では地上と同じく残る場合とそうでない場合がある。その違いについては判明してない。


「期待に添えたかな?」


 何事もなかったような笑顔を見せられて俺達はコクコクと頷いた。軽々と魔物を一掃したウォルトさんとなら、どんなダンジョンでも攻略できるとさえ思える。

 結果、アニカの押したボタンは罠の起動と同時に通路を出現させる仕掛けだったみたいなで、「いい仕事をしたね」とウォルトさんに褒めてもらっていた。


「実はそうだと思ったんです♪」

「噓つくなよ!」

「オーレンにはわからないだろうね~!鈍いから~!」

「納得いかねぇ!」



 ★



 その頃、クローセでは皆が仕事に精を出していた。


 農作業に勤しむホーマが何事もなく平和だと思っていたところに、見張り櫓の鐘が鳴り響く。鐘は魔物襲撃の合図。先日のベア襲撃で必要だと感じて何年ぶりかに設置した。

 すぐさま女性や子供、老人は家に避難する。共に駆けつけたミルコが下から見張りに声をかけた。


「どんな魔物だっ!?数はっ!?」

「フォレストウルフが何匹か…。それと、この間の熊みたいな魔物もいる!ヤバいぞ!」


 俺の出番だ。運動不足の身体に鞭打って一目散にある場所へと向かう。目的地は、村のほぼ中心に位置するテムズ村長の家。

 辿り着き息を荒げながら玄関のドアに手を添えると、生活魔法『乾燥』を詠唱した。コレがウォルト君から頼まれたこと。


「…な、なんだぁ?!」


 急に魔法陣が現れ、足元から蜘蛛の巣を張るように魔力が走り始める。まるで導火線に火を付けたかのような勢い。

 やがて村の外柵に達したかと思うと、柵を補強するように内側に魔力の壁が発現した。


「コレは『強化盾』か…。遠隔の魔力を引き金に発動するように仕掛けたのか…?そんなことが…可能なのか…」


 呆然としてる間に魔物は村のすぐ傍まで迫っていた。ムーンリングベアは勢いを落とすことなく突進してくる。


「突っ込んでくるぞ!!」


 男衆は突破に備えて身構える。村長からおおよその話は聞いているがやはり不安は拭えない。


 緊張の中、魔物は柵に衝突した。


「グルァァァ…!!」

「ガルルル…!」


 全速力で衝突しても柵はビクともせず、直ぐに魔物の身体が燃え上がった。苦しそうに転げ回るがなぜか動きが鈍く一向に火が消える気配はない。様子を見ていると、やがてピクリとも動かなくなった。見事に丸焦げだ。


「死んだのか…?」

「わからん…」

「ウォルト君の言った通りだったな」

 

 皆に告げる。


「彼が言ってたんだ。「魔法で侵入を防ぎます。夜までは持続するので心配いりません」ってな。嘘はないと思う。柵には近づかないようにしてくれ」


 その後も、次々に魔物が柵に飛びついてくるが、全ての魔物が等しく燃え尽きた。様子を目の当たりにした村人が呟く。


「魔導師ってのは凄いな。信じられないことをする」

「彼は魔導師の中でも別格だよ。俺が知る限りでは、こんなことができる魔導師はいない」


 かなり高位の、それこそ大魔導師と呼ばれる者なら可能だろうか?俺はそれでも難しいと思う。


「その割にウォルトは全然偉ぶってないよな?魔導師って奴はどいつもこいつも偉そうだ。変な奴が多いし」

「そうなんだが、ウォルト君は違う」

「娘の婿さんになって村に残ってもらいたいぐらいだな。俺はあんな獣人なら大歓迎だぞ」

「アニカに怒られるからやめとけ。一生恨まれるぞ」

「違いねぇな」

「そうだな」

「おぉ、こわ!」


 父親のアーネスを含めた男達が豪快に笑う。アニカは昔から思考が読みやすいので、アーネスにもウォルトへの好意はバレバレだ。ウィーとウイカが隠そうとしても隠しきれない素直さ。

 アニカのことを娘のように思っているが、あの優しくて強い獣人が相手なら心配いらなさそうだと笑い飛ばす。


「油断は禁物だけど、また仕事に戻ろうぜ」

「あぁ。そうしよう」


 3人の無事を祈りつつ、村は落ち着きを取り戻して長閑な時間を過ごしていく。



 ★



 一方、ウォルト一行は順調にダンジョンを下層へと進んでいた。


 まだ最下層に辿り着く気配はないけど、グリーズベアのような魔物が現れる気配もない。このダンジョンが原因ではないかもしれないと考え始めたとき、ちょっとした変化が訪れる。

 下の階層への通路と覚しき場所から、魔物が次々飛び出してくるようになった。魔物を倒しながら話し合う。


「なんか…怪しくなってきたな」

「なにかから逃げてるみたいな動きだね…。オーレンみたい」

「俺はなにからも逃げてねぇよ!」


 ウォルトさんは苦笑いだ。


「強い魔物がいるのかもしれない。気を抜かずに行こう」


 そんな言葉を交わしながら、更に下層へと足を踏み入れていく。

読んで頂きありがとうございます。

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