第8話「異変、遠い日の夢」
明日は何をしよっかな……。
布団の上でゴロゴロしながら、明日のことを考えていた。
今日の夜は寝れそうもない。
いや、でも今日しっかり寝ないと明日も疲れるかもしれないな。今日は結構、歩いたし……。
何か遠足気分だ。小学6年生になっても、眠れそうないものは眠れそうもない。
「ねぇ、凌くん……」
どこからだろうか?母さんの声が聞こえた。
「何?美代子さん」
父さんの声も聞こえるということは、隣の両親の寝室からだろうか?壁が薄いから隣の部屋の声も聞こえるみたいだ。
「どうしよ…。昨日から和幸、……と仲良く毎日遊んでいるのよ?」
「どうしようと言われてもな。惺くんを此処から……しなければいいこと…ろ?」
言葉が途切れ途切れしか聞こえない。でも、俺とサトの話をしていると言うことは大体把握できた。
もっと話を聞きたいと思って、両親の寝室側の壁に耳をピタリとくっつけた。
今度はしっかり言葉を鮮明に聞くことができた。
「そんなに心配なら、美代子さんが和幸に惺くんに会うなと言えばいいじゃないか」
えぇ?
「言えないわよ。だって……、和幸があんなに楽しそうに笑っているの初めて見るのよ?今日なんてぇ…幸せそのものっ!!て顔で帰ってきたじゃない…。っくぅ…そんな息子の笑顔を消す親どこにいるのよぉっっ」
母さんは泣いているのか、つっかえながら話している。
「でも、和幸自身も心配なんだろ?」
「………」
母さんは無言だから、首を縦か横に振ったのだろう。
「今日はこの辺にしておこう。ここに来たのは義父さんのお墓参りが目的なんだから。俺に用事ができたからって言って早く変える方法ならある」
どうゆうことなのだろうか?
サトと俺が会ってはいけない?会わせないようにする?
母さんも父さんも何を言っているの?
疑問ばかりが頭に浮かぶ。
そういえば、前ばーちゃんがこんなこと言ってた気がする。
『本当はあの子を、この町から出してやりたいんだけどねぇ……』
それとこれは関係しているのかな?
もう少し両親の話を聞きたいと思ったが、今日は歩き疲れたため、俺に眠気が……。
モヤモヤとした気分で、寝てしまった。
2日目終了。
* * *
『カーズー!!』
俺は彼に向ってカズと叫んでいる。遠い向こうにいる彼に手を振っているのだ。
クローバー畑の中を走って、彼のもとへ行った。
『カズっ遊ぼうよ』
息を弾ませて、彼を誘っている。
彼の表情は見えないが、コクコクと頷いているのが分かる。
『じゃあ何して遊ぼうっか?』
彼は楽しそうに、俺に手を差し出した。
だけど俺は、その手を取ることができなかった。自分から誘ったのに……。
落胆思想の俺に彼は小さな声で教え諭すようにゆっくりとゆっくりと話し始めた。
「今、君はちょっと俺を信じることができないんだよね?でも、初めてできた同い年の子供と遊びたい。いろいろな気持ちがごちゃまぜになってるから、怖がっているのかもね。でも大丈夫」
友達になったのに、彼の手を取るのが怖い。
───なんで?
そう問われたら答えることができない。だって自分自身も分からないんだから……。
でも、今確かのことはこの手を取ることが怖い、それだけだ。
彼が言ってることが正しいのかさえ分からないほど、俺は恐怖に怯えていた。
『大丈夫だよ。俺は約束を破らない』
彼は俺の耳元で囁いた。
なぜかその言葉は俺を安心させた。この手を取っても裏切らないと信じられる気がしたから。
躊躇いながらも手を取ると、彼はとても喜んだ。
『友達』
その言葉の響がとても綺麗でとても感動的だった。お礼というかなんというか嬉しかったので、俺は彼のためにクローバーの指輪を作った。
『ありがとう』
彼は恥ずかしそうにお礼を言った。
その笑顔がとても可愛くて……ずっと彼の笑顔を見ていたと思った。