第22話「夢の事実」
「復讐心って、どうゆうこと?サト?」
「そのままの意味だよ。俺はこの世界に復讐をする」
ホッとしたのは一瞬だけ、復讐と言う言葉が抜けない限り、安心なんかできない。
「駄目だよっっ。そんなことしたら。具体的になにするか分からないけど、復讐なんて……」
俺はサトの腕を強く握って、止めようとするがサトは汚いものを触ったかのように、俺の手をはらう。
「止めないで。俺は絶対、この世界を許さない」
鋭い目。引きしまった唇。復讐しようとするオーラ。
サトは決心を固まっていた。それでも俺は反対をする。
「駄目。そんな復讐なんてことつかちゃ駄目だってっ」
「カズがどういおうと俺はやる。いつどこでこの力を使えばいいわけ?それは今じゃないの?」
分かんない。
今の状況は何?
サトは一体どうしたの?どうしてこの世界に復讐をしようとしているの?
分かんない。
サトの気持ちも、この状況も、俺自身のことも分かんない。
「サト。今から使おうとしているのは何の力?」
「緑の神の力」
「それはこの世界の緑を守るために、授けられた力じゃないの?」
「それが俺だったってことは俺のものだ。誰にも俺を止める権利はない」
「サト?」
いつもみないサトの表情に俺は何も言えなくなってしまった。
優しく笑うサトの笑顔の欠片もない。
「使う」
サトは、小さな声でブツブツと何かを言い出した。
それはなんかの呪文なのか、サトは険しい顔で唱える。
「ねぇ?サト」
もう俺がサトの名前を呼んでも届かない。
サトの周りにはいつの間にか黒い霧のようなものがまとっていた。これは紛れもなく悪いもの。
「お願いサト。やめてっっ」
サトの体をゆすりながら、やめるように言うがやっぱり俺の言葉は届かない。
「サトーーーーーーーーーーー」
* * *
「和幸っっ!!」
突然母さんの声が聞こえた。
「和ちゃん」
ばーちゃんの声も聞こえる。
ゆっくりと目を開けると、そこには心配そうな目をした母さん、ばーちゃん。そして父さんがいた。
「ここは?」
周りを見渡すと、此処はばーちゃんの部屋だった。
「あんた。お風呂で寝てたからのぼせたのよっっ」
お風呂………。
そっか俺はお風呂に入って眠くなって……。
「あれ?サトは?」
両親では禁句だった言葉を言ってしまった。
でも、混乱している俺はそんな余裕はなかった。
「何を言ってるの和幸?」
母さんの顔はさっき見たサトと同じくらい険しい。
あれは夢?
「和ちゃん。さっきからずっと惺くんの名前呼んでいたよ」
「サトの名前?」
じゃあやっぱりあれは夢だったのかぁ……。
「はぁ……」
安堵の溜息が出た。
本当にサトが復讐なんて言うはずがないと思ってけど、あんなにもリアルな夢を見たからサトを疑いそうになった。
「夢でよかった……サトが復讐なんてするはずがない」
安心しすぎてポロット言わなくてもいいことを言ってしまった。
俺の言葉にみんなが唖然とする。
「復讐?」
母さんは目を大きく広げる。ばーちゃんと父さんは口をポカーンと開けている。
「夢を見たんだ。サトがこの世界を復讐する夢を……」
───そう。あれは夢。
───本当に夢?
誰かが俺の頭の中に語りかけてくる。
「何?」
夢だって言う証拠はどこにあるの?
今が現実だって言う証拠はどこにあるの?
分からない。分からない。なにもかも分からない。
俺は頭を抱えるようにして下を向いた。
「和幸?」
俺の様子がおかしいて思った両親たちは、俺の顔を覗く。
「分からない……」
疑問符が俺の頭の中を支配する。何者かに取りつかれたかのように頭は、ギンギンと響くばかりで……。
「和幸っ」
大声で呼ばれているのは分かるが、答えることができない。
だんだん音が、耳が遠くなるように、遠い世界に吸い込まれるように、俺はまた意識を手放した。
四日目終了。