第16話「サトの手作りおにぎり」
「サト。これ、もしかして手作り?」
「そうだけど……」
下を向きながら、おにぎりを渡してくれた。
サトの手作りだと思うと、おにぎりを持つ手が震えた。
「カズ。食べないの?」
なかなか食べない俺を見て、サトは少ししょんぼりとした顔を見せた。
一体どうしてそんな顔をするのかな?とサトを見ていると、サトの目が俺の持っているのおにぎりに目が言ってることに気付いた。
早く食べてくれないのが嫌なのかな?
「だって、せっかくのサトの手作りだよ?何かもったいない気がして……」
その言葉に安心したのかサトは嬉しそう。
「大丈夫。まだいっぱいあるから……」
サトは沢山のおにぎりを俺の前に出してくれる。
「そうだね。いただきまーす」
「どうぞ」
おにぎりを食べようとするのだが、とても鋭いサトの視線があってどうも食べにくい。
どうしたんだ?サト。
じーっと怖い顔で、俺を見ている。
「なっ何?」
「えぇっとぉ……早く食べて感想聞かせて?」
「あっうん。分かった」
どうやら感想を待っていたようだ。
ササッとおにぎりを食べようとしたら、一口で口の中に入ってしまって……
「ぐほっ!!!」
「えっ何?不味い?不味かった??」
サトは血相を変えて俺の顔を覗き込む。俺は違う意味で血相を変えた。
「むふっっ!!」
「えっっ?何?不味い?」
俺は違うと、必死に首を振る。
「みずっっ」
「えっ水?」
そう。俺は喉におにぎりを詰まらせたのだ。急いで、サトはカバンの中にある水筒をだし、水を飲ませてくれた。
「はぁ〜〜〜。生き返った…ぐはっ」
いきなり空気を吸ったから、勢いよく空気が肺に回ったのだろう。
咳こんだ。
「大丈夫?そんなに一気に食べたら、詰まらせて当たり前……」
優しく背中を撫でてくれる。
「うぅ…ありがとう。サト」
「うん。どういたしまして」
サトがにっこりと笑っている。
それの笑みに俺は悪寒を感じた。なぜか、今のサトの笑みが悪魔の笑みに見えたのは……やはり気のせいではなかった。
「俺、もうお腹いっぱいだから、あと全部食べて……」
ドサッッドサッッッ
俺の目の前には、推定30個以上のおにぎりが……。
あれ……?さっきまでは、たしか…確か…いや絶対っっ10個しかなかった。なのに、なんでっっ!!
こんなに食べられそうもない大量のおにぎりがあるんですかっっ!!
「実は……カズのおばあちゃんにいっぱい漬物貰ったんだ。だから作り過ぎて」
さっきは喉に詰まらせて、味は分からなかったが。
もしかすると……もしかしなくても。
「全部、漬物のおにぎり?」
「違うよ」
違うんかーいっっ。
今ので何かどっと疲れた気がするのですが、気のせいなのでしょうか?
「半分は、山菜が入ってる」
「山菜?」
「俺がとってきた山菜。初めて味付けしたから心配でさ……」
「そっか……」
俺のために作れってくれたと思うと嬉しい……。
ジーンとしていると、サトは少し変わったことを言い始めた。
「だから初めて繋がりで、俺がカズに食べさせてあげる」
「……えぇ?」
ちょっと話の方向が違う。ちょっとどころじゃない、激しく違う。
「はーい。あーんして」
小さい子に食べさせるように、俺の口元におにぎりを持ってくる。
えぇっちょっ、ちょっと待ってぇっ!!
「あ……ん?」
口を大きく開ける。サトのがゆっくりと俺の口の中におにぎりを入れる。
緊張して、なかなかおにぎりに噛むことができずに、固まってしまう。そんな俺を見てサトは、頭を撫でてくれた。
「はい、よくできました」
「………っ」
ものすごく恥ずかしい……。あ〜んなんて、何年振りだろうか……?
今サトの顔が見れない。
こうゆうの恋人としかしないんじゃないのかな?勝手にそう想像して、俺だけ心の中で盛り上がっている。
俺的に「恋人」という響が綺麗で好きだ。
「早く食べてクローバーを探しに行こう?……頑張ってカズ。おにぎり食べてっっ」
上目遣いに俺を見上げるサトの目は可愛くて……。
幸せなんだけど……幸せなんだけど…やっぱり幸せですっっ。
でも、そんなに幸せの時間は
長く続かない。
心のどこかで、
俺は気付いていた……。