第9話「遊ぼうっか?」
「サーーートーーー」
昨日と同じ場所に、分厚い本を読んでいるサトがいた。
「カズ。おはよう」
「サト。おはよう」
まだ会って一週間もたってない。それなのに親友の様に仲良くなっていた。
サトは読んでいる本を閉じて、俺に訊いてきた。
「じゃあ、何して遊ぼうか?」
「えぇ?」
聞き覚えのある言葉に俺は、耳を疑った。
その言葉は昨日の夢で彼が言っていた言葉と真そっくりだ。
「どうかした?」
「えぇ?ううんっ!!何でもない。何して遊ぼうっかな?」
「カズの住んでいたところではどんな遊びをしていたの?」
俺ははっとした。
そうだった。サトは俺が初めての友達なんだ。大人数の遊びをしたことがないのかもしれない。というか多分ない。
「そうだなぁ……例えば、キックベースとか野球とかサッカーとか……」
サトはどれも知らないらしく、首を傾げてる。
「ジャングルジムとか、テレビゲームとか」
ってここにモノがないとできないかっともっと簡単遊びを考えてみる。
「よくするっていったら、遊びというか分からないけどじゃんけんとか?」
「あっそれ知ってる!!」
「そっそう?」
俺はじゃんけんは日本中のだれもが知っている遊びだと思っていたけど、サトにとっては貴重な遊びなのかも知れない。
少しじゃんけんにやる気がでてきた。
「じゃあじゃんけんしよう!!」
「おぉーーー!!」
「それでは行きます!!じゃんっけんっぽんっっ!!」
「おぉ……勝ったっ」
目を見開いて、サトは自分の手をじっと見ている。
それほど嬉しかったのだろうか?
「何回かやったことあるけど、あんまり勝ったことなかったから少し嬉しい」
その言葉に安堵した。
「それじゃ、他の人とやったことがあるんだな」
そうだよ。家族とかと遊んだこと位あるはず。俺は少し勘違いしていた。
友達がいないからってだれとも遊んだことがないなんて……どうしてそんな風に転換してしまったのだろう?
「じゃあ他に何か知ってる?この度はサトから遊びを教えて?」
「う……ん」
5分経過。
「あっち向いてホイ?」
「あっち向いてホイ……」
あぁ……よく小さい頃やったな…。
まさかこの年になってやるとは思わなかったけど、サトが一生懸命考えてくれたんだから、やらないわけにいかない。
「ではまたまた始めますっっ。じゃんけんぽん。あっち向いてホイ。じゃんけんぽん。あっち向いてホイ………」
10分経過。
「疲れました……」
あっち向いてホイでこんなに疲れたことはないです……連続10分は結構きつい。
首が痛いし……声出し過ぎて喉が痛い……。
「どうする?まだ時間はあるけど?」
まだまだ元気なサトは、次の遊び、次の遊びと急かす。
「いったん休憩……つっ疲れたぁ」
俺はそこに寝転がった。草が沢山あってふさふさしていて気持ちいい。
気持ちいい風が、優しく流れてくる。冷たすぎず、ふんわりと温かな風。俺に眠気を誘う。
うっとりして、つい寝てしまいそうだ。
里も俺の隣に寝転がった。
「カズ。あと何日こっちにいられるんだっけ?」
「あと2日。明日はおじいちゃんのお墓参りだから、あんまりサトの所にこれないと思うけど……」
「じゃあと一緒にいられるの最後の日だけ……かぁ」
寂しい。
たった3日。実質的には昨日からだから2日しか一緒にいないのに、別れの時を考えるとこんなにも寂しい。
サトも俺と同じように思ってくれるのだろうか?
「サト、クローバー畑に行こう?」
突然、クローバー畑に行きたくなった。
───あの落ち着く、俺達だけの緑の世界に……。