第四部6 『連携』
MI6の上海支部宛に、霧絵から送られてきた透明人間の報告が挙がっていた。
霧絵からの連絡で、夏目あきらおよびクロエ・ディズレーリも捕らえられたとの内容だった。最悪な報告を聞いたモーズレー局長は頭を抱えた。彼女の悪癖で髪の毛をいじり回していた。
「局長?」
ハーディ主任が、次の内容を確認したい様子だった。モーズレー局長は
落ち着いた様子で答えるようにした。
「クロエが無事なのかも分からないの?」
モーズレー局長の質問にハーディ主任が答える。
「そのようです。透明人間との衝突で現場にいたのは伊里谷だけのようです」
モーズレー局長は頷く。最悪がさらに重なるような状況だった。
「彼と話すことは出来ますか?」
モーズレー局長の命令に表情を崩さないハーディ主任は「彼女に連絡してみます」と一言答えて、通信に使っているパソコンの電源をいれ始める。ハーディ主任は、その場で日本にいる霧絵に連絡した。すぐに向こうから連絡が繋がった様子だった。
「私だ。現場に居合わせた諜報員と変わって欲しい」
画面越しから沈黙が感じられた。モーズレー局長は、霧絵職員からの報告は聞き取れなかったが、ハーディ主任は、霧絵からの報告を聞いて話を進めていた。
「分かった、ではその時に改めて連絡をくれ」
ハーディ主任は簡潔に答え、そのまま通話の電源を切った。
「諜報員が負傷して話せる状態ではないとのことです。意識が戻ったら、また連絡をするようにしてます」
「なら大丈夫です。無理にとは言いません。私も協力を募ります」
「以前、話していた?」
念を押すように確認をするハーディ主任。
「やむ得ません。ハーディさん少しの間、指揮をお願いします。MI6から連絡があったら、後でかけ直すと伝えておいて」
「承知しました」
そう言って、モーズレー局長が立ち上がって部屋から出て行く。後ろを姿を見ると、少し緊張している様子にも見えた。彼女が誰に連絡をするかまでハーディ主任は問わなかった。
MI6から協力が募えない以上、彼女に残された選択肢としてはMI6に対して良くない感情を持っている人間に協力を依頼することに変わりなかった。モーズレー局長は、その協力者に対して、改めて日本での作戦いついて話をするのだろう。