005.スペース(5)
スタッ、と思いのほか上手く着地が決まり思わずにんまりしたつもりだったが、頬肉はどうやらピクリとも動いていないようだった。
「さて、やっぱりモンスターもいないしいよいよ宇宙船探索って感じかね」
下の階層に降りたが、ダンジョンの次の階層に移動したさいのロードらしき感覚もなかったため、ここが宇宙船という認識で間違いないだろう。つまり、この宇宙船内のどこかに延命装置とやらがあるはずである。
幼女を救って幼女ライフ、ふむ、ワルクナイ。
ミッションをそう認識すると、手当たり次第に扉を開けていく。
グォォォン、と音が鳴り続いている巨大タービン。原動力は一体何なのだろうか? ここで120%! とか言いながら限界ギリギリの調整を行い、必殺の一撃を放つとかできちゃうのだろうか? くっ、気になるがコレは後回しだ。
フィン、と扉が開いた先は様々なレーダーらしきものが備え付けられた一室だ。
サーモグラフィか? そしてこっちはソナーに、パルスレーダーか? 色、点、波形までは何となくレーダーっぽく見えるが、他にある5種のあれらは何だろうか?
3D映像化された大きな球体の周囲をグルグルと小球体がせわしなく動いて見せるものや、立方体の中にザッと雨のような線が垂直に落ちては消えていくものや。何も映し出していない青白い半透明の水晶に、碁石のようなものが置かれた机。後は巨大な筒が外へ向かって設置されているが、覗き込んでも何も見えないし、望遠鏡などの類では無いようだ。
思わず全種類、一通り手にしてみてから気づく。
今はコレじゃない!
フィン。うん、保健室。
フィン。あぁ、書庫。
フィン。おぅ、カラオケルーム。
フィン……何だろう? 他の部屋より空気が澄んでいるような、そんな気がする何も無い謎空間。
フィン。わからん、けど燃料系か? 巨大電池っぽいのが並んでいて、その横のゲージはまだ半分をきっていない状態だ。
フィン。二段ベッドが二つ……。
何だろう、この生活空間と宇宙船要素空間とが入り混じるフロアは。
いや、そもそも最初のフロアもそうだったか。
そしてついに最後の部屋。
案外、部屋数は多くなかった。
だが、ここに延命中の幼女が居るに違いない。
シナリオが動き出す! そう、確信して俺は扉へと歩み寄った。