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004.スペース(4)

「ここは……食堂?」


 縦長の机が二つと、足元に固定された椅子が5個ずつ等間隔に並んでいる。

 試しにその一つに座ってみると、見た目の無機質感とはうってかわりふわりと体重を沈み込ませるジェルのような感触におお、と思わず感嘆の声が漏れ出る。


 調理スペースのような場所が見えるも、人気ひとけのないその場所はただただ静観を保っていた。


 閉店後の居酒屋に取り残された時のような気持ちなり、少し上がっていたテンションがシュンとさがった。それでもなお、現状のテンションが俺を突き動かした。


「見事に何も残ってないなぁ。残り一食というのも、既に消費済なのかもな……」


 米粒どころか、小麦粉の粉すら見当たらない。蛇口を捻るも、水も枯れているのか何も出てこない。

 しかし、空の調理器具やガスコンロらしき加熱スペースがあったりと、やけに現実思考な空間である。


「もっと固形燃料とか、SFっぽい感じじゃないのな。よしっ! 次だ次!」


 独り身が長いだけあって、このような寂しい空間だろうと独り言で華麗に回避している自分を鼓舞しつつ、通路へと戻る。食堂の正面の部屋は何があるのか、いざ。


 フィン、と音を立て開いた先はひんやりと冷気を吐き出す。

 ぶるり、と身を震わせながらも中を覗くと何も無いただただ広い空間があった。


 ろくに光源も無く、暗い部屋の中を目をこらすと、小さな箱が一つ無造作に置かれていることに気が付いた。肌をさすりながら、ゆっくりと箱がある位置まで移動すると、ソレを手に取ってみた。


 見た目の小ささ通りの軽さの箱を勝手に開封してみる。


「あぁ……」


 箱の中には大玉の飴玉が一粒と、クラッカーが一枚透明な圧縮袋に包まれた状態で保管されていた。

 これをみて、すぐさま残り一食分というのがコレっぽっちを指していたと察してしまった。

 飴とクラッカー一枚が一食? それじゃ何か、あの三人は一食をコレっぽっちでずっと生き続けたというのか? いやまさか。シナリオライターが深く考えずに適当に作ったシナリオに、マップ製作者が適当なアイテム配置でもしたのだろう。


 いやはや全く、こういう細かいとこだよ? 製作者さんたち!


 思わず勝手に妄想して、勝手に涙腺をやられて自滅をするところだった。

 アイテムボックスへ収納せず、そっと箱を元の場所に戻した俺は再び通路へと戻る。


 次は通路の奥、分岐点まで進もう。


 特に罠などがある訳でもなく、すぐにそこへは辿り着いた。


「んー、左はまた部屋があるのか。んで右側は……こりゃまた」


 右側の通路はすぐさま突き当りとなり、ルートを閉ざしていた。

 だが、足元にカッポリと空いた正方形の穴に、あれは罠か? 何なんだと気になり穴の手前まで近づくと下を覗き込む。


「んー下にも道がある、よなぁ。次の階層? いや、ここが2Fだとしたら、この穴の下が1Fという感じかな? んんん、先に左側の部屋もみておくか」


 下の階層も気になりつつも、登って戻ってこれる気がしなかった為先にこのフロアの探索を終えるべく、更に左のコースを選択する。


 フィン、と扉の開く音。

 開閉音にも慣れてきたが、再び視界へ入った場所は嫌に現実思考な空間だった。


「トレーニングルームに……こっちはシャワールーム? 水は、ん、やっぱ出ないか。ランニングマシンにダンベル、ベンチプレスに(名前も知らない)機械アレだろぉ? ほーらほら、俺の筋肉が唸るぞぉ! 、、、はい」


 何かこれらの器具を使ったらキャラクターがパワーアップでもするかと期待してみたが、ローグライフの世界にはレベルの概念がない。つまるところ、装備依存な訳でトレーニングをしても全く意味が無かった。


 何が悲しくて、現実でだらしない体系をしているのにVR世界で体を鍛えなきゃならんのだね。


「ふぅ、シャワールームも、浴槽もあるみたいだけど水がでなきゃ何もイベントはないわな」


 ここで博識な友人でもいれば、聞いたことがあるぞ! 宇宙空間では筋肉がなんたらとうんちくを垂れてくれるのだろうが、生憎一人なのでそんな解説が入る訳も無く。意味のない妄想を止め、無難に考察を続けていく事にする。


「さって、あの高さを飛び降りて無事にすむかな?」


 先ほど覗き込んだ穴の下まで、たぶん4、5メートルはあるだろうか? リアルだと絶対に飛び降りたくない高さとだけハッキリと言える。


 しかし、このフロアの探索は今ので全てだろう。ならば、ええいママヨ!


 意を決し、俺はブワッと身を投げ出した。

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