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002.スペース(2)

 モニターが暗転すると同時に、目の前の空間が揺らぐ。


『あぁ、勝手に押さないで! もぅ! ……始まっちゃってるわよね?』

『全く、うちの娘は誰に似たんだか』

『私達に似た、でしょう?』

『『ふふ』』


 な、何だ何だ? いきなり3D映像が浮かび上がったかと思えば、俺よりも若い二人の男女の姿と、一瞬だけドアップで顔が映し出されたかと思えば、その男女の二人を駆けるように走り回りそのまま姿を消していく幼女が投影されていた。


 まさか惚気話のろけばなしが延々と続くんじゃないだろうな? と別の意味でヘルモードに陥りそうになった俺だが、男女の声色トーンが下がりいよいよ本題が始まるのか、と身構えた。


『このメッセージを聞いてくれている貴方へ、一縷の望みを託させてください。私たちは今、遭難状態にあります。燃料は十分に残っているのに、食料が残り一日分。私たちの明日は既に閉ざされたも当然の状態なのです。一食を争い二人で喧嘩をしそうになりましたが、あの娘に怒られちゃいました……だから……』

『だから、俺達はあの子にはまだ未来があると信じ延命装置へと希望を託すつもりだ。君だけが俺達の望みとなるんだ。俺はあの子に生きて欲しいと強く願っている』

『貴方ッ! 願っちゃダメ!』

『ッッ……すまない、でも信じて欲しい』

『私たちはあの子に生きて欲しいという願いは同じ。でも、一縷の望みとして貴方へ全てを委ねるしか道はありません』

『どうか、娘の事を幸せにしてやって欲しい……』


 何だよこの設定は、つまりここのクリア目的はあの一瞬うつった幼女を助け出せって事なのか? しかし自分の娘に生きて欲しいと願ったらダメなのに、望みを託すとか意味の分からない設定である。

 出てこいシナリオライター! と、一瞬ぷんすかとしようとするも、掲示板のあるネタを思い出す。


『NPCは死んだら生き返らない。アレは人間といっても過言じゃない』

『あれは未来の俺達なんじゃないか?ってぐらい親近感が沸くぞ。しかし、願い事が何でも叶う世界設定はやり過ぎだと思う』


 そう、願い事が何でも叶う世界、という部分がひっかかったのだ。

 何でも願い事が叶うとか、滅茶苦茶良い世界設定じゃないか……と思う反面、何かリスクがあるんじゃないかと疑う辺り、現代社会に生きる心の弊害かもしれない。


「食料は一食分しかなくて、娘さんをもし延命装置から助け出しても食糧難でゲームオーバーか……」


 顎に手をあてると、逡巡して次なる行動を考え抜く。


「とりあえずここを拠点にマッピングをするか」


 おおよその予想は出来ているが、ここはスペースシャトルか何かの乗り物に違いない。

 操縦桿そうじゅうかんがあり、宇宙空間が広がり、そして食料やら燃料やらキーワードが出れば、それくらいの予想はつく。

 問題はヘルダンジョンとして潜っている訳だから、モンスターや何か罠があるかもしれない。

 注意深く、俺はスポーン地点の部屋まで戻るともう一つの扉へと近づいた。

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