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013.ハウル(4)

 突然の世紀末な台詞に、思わずギョッとしてしまう俺だったが平然を装って口を開いた。


「なぁ、強奪ってーとアレか、誰かの物を奪い取るって事だよな?」

「そうよ? パルスレーザーで船を壊して、物資の回収をするのよ! ショウは世間知らずなのね」


 ドヤ顔で強奪ローグライクする事を是とする意志を確認して、頭を悩ます。確かに、何処かから物資を手に入れなければいけないのだが、それにしても有無も言わず他の宇宙船を打ち落とそうとする行動はいかがなものか。


「な、何よ黙り込んじゃって。その、世間知らずなんか言っちゃって悪かったわよ」


 いや、俺が悩んでいるのはソコじゃないんだけどね? まぁここはゲームの性質上のシナリオとして割り切って考えるしかないか。


「んや、気にしてない。でも、出来る限り最初は交渉から入ろうぜ?」

「んー、あまり気は進まないけどわかったわ!」


 案外素直に受け入れてくれた? と思ったのもつかの間。


「さっ、ハウル! レーダー室に行きましょう!」


 と、俺の中に居るだろうハウルへ語り掛けると同時にギュルルルル、と盛大に腹の音が鳴り響く。一秒でも早く何か口に入れなければ、本当にヤバいんじゃないだろうか? そう思った瞬間、たった一つだけアイテムが残っている事を思い出す。


「そ、そうだ」

「わっ、何よ突然大きな声を出して」


 お前の腹の音より小さい声だわい、とか心の底で突っ込みつつ無駄なカロリーを使わせないように俺は口に出す。


「正面にある部屋にクラッカーと飴の入った小箱が」

「な、なんですってぇ!」


 バッと駆け出した穂南ほなみは真っ暗な部屋の中に駆け込むと、目当ての小箱を手に取り瞳に涙を浮かべながらピョンピョンと跳ねるように戻ってきた。


「見て! 見てよショウ、コレがあれば一月、いいえ二人だから15日はもつわ!」


 手に持った小箱はクラッカーと飴玉しか入っていない。とてもじゃないが一日もつ量ですら無い。にも関わらず、穂南は満面の笑みでソレを抱きしめて見せた。


「ね、ねぇショウ、私から食べても良いかしら!?」

「お、おう」


 あまりにもキラキラした表情で言うものだから、思わずそんな返答をしていた。


「クラッカーは最後にするとして、飴玉からいくわよ。はむっ! うにゅ、うにゅ……むにゅ、むにゅ」


 両頬にせわしなく飴玉を移動させてみせ、その甘味を堪能していたかと思うと思わぬ行動に出る。


「うにゅぅ……ペッ」


 吐きだした!?


栄養エネルギーが体中を巡るわぁ。ごめんねショウ、ちょっと長い時間舐めすぎちゃった……」

「あっ、いや、俺は別に良いから」


 何とか応えれたのはそれだけだった。


「そ、そう? それじゃ、続きは明日の同じ時間に舐めるから、それまで冷蔵庫で保管しとくね」


 意気揚々と少し舐めただけの飴玉を大切そうに冷蔵庫の中に閉まってしまった。

 そこでやっと俺は声を出せた。


「なぁ? 美味しくなかったのか?」


 違う、そういう事が聞きたいんじゃない。


「やっぱりショウも欲しかったんでしょう? でも閉まっちゃったから、続きは明日よ!」

「いや、そうじゃなくて、今ので終わりなのか!?」

「終わりって? あんなに栄養エネルギー取れたし続きは明日よ、今日の分は終わり!」


 ギュルルルルル、とお腹の音を響かせながら力説する穂南。

 恥じらいもなければ、栄養が取れたから問題が無いと言い張る始末。

 思わず俺は目頭を押さえ天を仰いでしまった。


『クソライターめ! くそっ、やってやるよ! 強奪ローグライクすれば 良いんだろう!? 良いよ、俺はもぅ目の前にいるこの子の為に俺の価値観は捨ててやるっ!』


「わかった。わかったよ! 早く物資を得る為に、行動に出ようぜ!」

「うんっ! レーダー室へ行きましょう」


 レーダー室の中へ移動すると、相変わらず意味不明なレーダーの数々が視界に入る。

 その光景を見て、穂南は室内を一巡する。


制宇宙権せいちゅうけんをまずは調べましょう、ハウル、起動お願い!」

「是」


 瞬間、俺の体がガチンッ、と全身筋肉痛な状態で加圧シャツをきて動けない時のような、要するに動けなくなってしまった。


「なっ、ん、だこれ……」


 呼吸がしにくい、視界がボヤケる。体が自由に動かせない、ピンアウトでメニュー表示を! なっ、ダメだ、指すら動かせない。何だこれ、一体俺の体に何が!?


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