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012.ハウル(3)

 肩で息をしながらも、何とか上下左右を捉えれるようになってきた。

 俺はそれまで無重力下にも関わらず平然とベッドに座っていた穂南ほなみに声をかける。


「悪い、待たせたな」

「ううん、面白かったから全然飽きなかったわよ! 笑い過ぎてあたし、喉カラカラ!」

「ん、そういや水も復活するんだっけか?」

『是、宇宙空間にある水素を還元する装置に異常は見当たりません』


 本当、この人工知能ハウルは何でも出来るな。これは強制イベントか? いや、それにしては現実で拾った香織アイツの母親から送られてきた機能ツールだし、ううん。


「ほら、行こ!」

「おっと、引っ張るなよ」


 バランスを崩しそうになりつつも、何とか姿勢を保つことに成功する。


「ん、にしても無重力ってやけに体が動かしにくいんだな」


 泳ぐように移動してみせようとするも、体がきしむように重さを感じる。そもそも、ローグライフのデバイスでどうやって無重力体験をさせているのだろうか。謎である。


「そお? 私は無重力の方が楽で好きよ。中央層フロントエリアに居る時は重力ありが基本だったけどね」

中央層フロントエリア?」

「うん。今いる下層ストラテジーエリアの上にある中央層フロントエリアは主に私生活をするスペースよ? 水を多く使う部屋が多いわ。こっちは逆に戦闘や索敵とか、戦い、身を守るための部屋が多いわ。後は上層コンバットエリアは兵器を放つ場所ね」

「あれ、まだ上があるのか?」

「あるわよ? ショウは直接この部屋にろーぐらいふでばいす? で転移して来た感じかしら?」

「いや、中央層と下層だけ悪いが散策させてもらったよ」

「そう」


 別に気にしてないとばかりに、再び俺の手を引く。


「それじゃあ後で案内してあげる。それよりも先に水よ水!」

「お、おう」


 重い体を必死に動かし下層へ降りた穴を見上げた。


「なるほど、な」

「ほらね?」


 思わず呟いてしまうが、しっかりと俺の独り言を拾ってくる穂南を無視しつつ感心してしまう。

 見上げた縦穴は、下へとつながっているだけでなく上へも繋がっていた。


「あの時見上げておけば、上層ルートも発見出来てたのか」

「あんなにわかりやすいのに、わからなかったんだ? ショウって年上のくせにどんくさいのね!」

「むっ」

「いだいだい」


 どんくさいと言われ思わず頬をつねってしまった。


「痛いでしょう! もう、そういう事はママがパパにすることでしょうがっ!」


 腰に手を当てお説教モードになった穂南ほなみの顔は痛がっている割に嬉しそうである。


「もぅ。ハウル、重力制御お願いね、後キンキンッに冷えたのお願い」

『承。水道を開放しました』

「ありがとっ、ほら、ショウも喉乾いているでしょう? 乾杯しましょう!」

「あ、ああ」


 食堂に辿り着いた俺達は、水がたっぷり入ったコップ片手に乾杯をしてみせた。ゴクリ、と口に含んだ瞬間口の中から胃へと流れ落ちていく水の流れを感じ、思わずマジか? とコップの中の水をみつめてしまった。


 ゴキュ、ゴキュっと一心不乱に水を飲んで見せてた穂南が声をかけてくる。


「ショウも喉乾いてたわよね……ごめんなさい、貴方の水分を奪うような真似して」

「い、や。気にしてないって言っただろ? それより水、美味いな」

「そうね!」


 水が美味い、喉が潤う。これは本当に仮想での体験なのか? 現実の渇きまで潤っているなんてことは無い、よな?


「ハウルが居れば食料も手に入りそうね!」

「ん、それはどういう意味だ?」

「勿論、強奪ごうだつよ!」


 無邪気な顔で、物騒な発言をする穂南は得意げにそう言い切った。

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