表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

終 『好きではないけど、嫌いでもないよ。』


「起きてたか、母さん。」


「羽羅に話をしていたの。

 おかえり、エレシュ。」


「……ただいま、母さん。」



 羽羅に話し終わり、彼を寝室へ送った後。

 寝るにしても、母親役をしている身としては少々微妙な時間。


 一人帰ってきたようだ。

 銀色に近い淡い金髪を肩にかからない程度にした無造作な髪に、セピアな風合いの暗い銀色の瞳。

 母親に似たのか、体温があるのかすら疑わしい白い肌、黒い服着た現実味の薄いミステリアスな青年。

 彼には不似合いな銀色のロザリオが、胸元で揺れていた。

 名前を表向き、オルクス=ローゼンクランツと言うジュリの数少ない実子である。


 多少老化が鈍くなっているが、それでも二百年以内には母親を置いていく子。

 そのせいか、ジュリに対するしぐさはとても優しい。


「…………母さんは、話したのか?」


「羽羅に、禁酒法時代のあれ?」


「結末の後日談以外は、話したとは思うが。」


「そうね、ラスイルをああしたのとスポンサーのは話してないわ。」


「まだ、生きてるからな、そいつら。」


「あれを生きてるというのなら生きてるんだろうね。」


 あの事件から80年ほど。

 ラスイルを改造した科学者と術者が一番の若手で二十代半ば。

 スポンサーのアメリカ政府関係者は、一番下でも四十代だった。

 若いほうでも、100歳を大きく超えている。


 肉塊になっても、意識を残したまま、どうあっても死なないのは不幸なのかもしれない。

 少なくとも、一定以上傷つけば、周りの肉を自動吸収して修復するのは、死ねない要因だ。


 中立のホワイトカメリアの見立てでは、ジュリが死ぬまで終わらないようだ。



「だってねぇ、死ぬのは怖いのは分かるけど、死ぬからこそ人は人なのにねぇ?」


「そうだな。」


「まぁ、いいわ。

 エレシュ、軽く何か食べてから寝る?」


「そうする。」


「リクあるかしら?」


「母さんに任せた。」


「そーね、簡単にサンドイッチでもしましょうか。」


 なんでもない。

 そう、なんでもない日常の会話を交わす2人。


 お互いを親子であると知らなかった2人のそんな会話。



 もしも、ラスイルが改造されてなければ、生まれなかった子でもあるのだ、エレシュは。

 だから、犯人を恨みもしないという部分も無いわけではないのだろう。







これにて終幕。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ