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5 『人も私達も、同じだよ。』



 後々知ったことを先に話す。

 そういう意味では、白椿は戦犯だろう。


 まぁ、占者が関わっているのなら仕方の無いこととは思うのだけれど。


「占者って?」


「100%当たる占い師。

 と言うより、異能者で言う災厄級以上の予知能力者(プレコグ)なんだろうね。」


「う、そっだー、人間じゃないにしても、“揺らぎ”はどうなんだよ。」


「それも含めて、だね。

 私も、あいつに比べて弱いが持っているが、あいつの場合、ありとあらゆる可能性が見える。

 その上で、こうなるという概算を出した上で、言葉に出して確定させているという点が突出している点だね。」


 必ず、当たる占いというのは、当人にとって不幸なことだろう。

 占者の場合、自分が決して、死ぬことも転生することもなく、数が少ないとは言え兄も、生き残っている《御伽噺の幽霊》も、それらを生まれて死ぬのを分かっていて、止められないのだ。

 反動が凄まじいからだ。

 そうであっても死ねないのが、彼なのだけれど。


 だから、何で教えてくれなかったという怒りはあれど、責める気は無い。

 それにってわけでもないけれど、羽羅達にたどり着く情報をもたらしたのも、そいつだし。


「で、ラスイルを殺すに至ったお話に行こうか。」


「うん。」






 1929年の冬、年の瀬だね。

 その時に、一人の若い子が幹部に昇格するのが決まったんだ。

 うちの慣習で、ボス以外の上級幹部が贈り物をするって言うのがあってね。

 それで、その時のシャルって子に送るのは私だった。


 迷ったけどね、その子の親がそこそこいい生まれだったせいか、ちょっといい懐中時計を持っていてね。

 その鎖にした。

 うん、親御さんは移民でね、苦労しても鎖は売っても、その時計だけは売らなかったから、そのまた親からもらったんじゃないのかな。


 で、まぁ、「親であっても、ボスに仇なすなら、ぶっ殺す」って主旨の儀式を経て幹部になった。

 その親御さんも、幼い頃に死んでるし、せいぜい、同じアパートの別ファミリーの三姉弟が辛うじて、家族なぐらいだった。

 だからね、ボスが親代わりみたいなところあったの、マフィアとしてのファミリーの意味を引いてもね。


 まぁ、その後、しばらくは平穏だったよ。

 一ヵ月後ぐらいかな、初めて一人でミカジメ料を取りに行くシャルが行方不明になって、懐中時計だけが届けられるまではね。

 ちょっと、調子に乗った若造が暴れたぐらいで、まぁ、普通の平穏な日常だった。


 更に数日後に、何度も見た筈のアパートの部屋にシャルは“あった”。


 詳しい話は、抜くけど、上級幹部と恋仲の女の子だったの、シャルは。

 子宮の状況からして、妊娠数ヵ月。

 お腹も目立ち始める頃だったから、そのミカジメ料の徴収が終わったら、しばらくは回す予定だったんだ。

 シャルの相手の上級幹部が、生成りと純血のハーフで、その血を引くシャルの子、性別もわからないぐらいに八つ裂きにされてた。

 あれだ、切り裂きジャックの再来か?なんて言われそうな有様だった。

 実際、あれも最後の女を殺す為のカモフラージュだったらしいしな。

 うん?あぁ、古馴染みの当時の恋人が、その犯人に仕立て上げられたらしくて怒り狂って当時のイギリス王室周りを殺戮祭りしたらしい。

 それは、さておき。

 基本的に、マフィアは会社だ。

 非合法の商いは、それこそ下のギャングに任せるのが通常だ。

 儲からないからな。

 しかし、誓いが血よりも濃いんだ。

 どこぞのラノベで、家賊を傷つけられたら相手を塵殺しなんてやってたが、それを地でいくところあるからな。

 事実は小説よりも奇妙なり、だね。

 眼には眼を歯には歯をじゃないが。

 血を流させたなら、血で報いさせるのが通常だ。

 一応、他の下っ端もそれを境に襲われるようになってたからそれも含めて、だね。

 ボスに許可を貰ってね、私が担当した。

 面倒を見た上級幹部が後見人と言うか、直轄の上司と言うか、そうなるからね。


 知り合いのホワイトカメリアを名乗ってる奴。

 うん、外見的にはお前と変わりないぐらいの奴だな。

 あれでも、私の倍以上生きてる奴で、情報通だ。

 魔女狩りの時は、情報に通じてないと死ぬだけだからな、私やカメリアのような年齢が永く変わらないのは。

 そういう意味では、隠せるなら、異能者は楽だね。

 少なくとも、百年も生きれないから。

 ああ、うん、そうだね。

 異能者が本格的に恐れられるようになったのも、あの頃だ。

 《氷結のメリッサ》だの《極焔のバルト》だのそう言う恐れられる異能者が多く出た時代だからな、魔女狩り時代は。

 でもねぇ、羽羅。

 生きたいと願うのが、それを捨てきれないのが人ならば、私達のようなのと人間は変わらないものだよ。

 世界に生まれた以上は、それを願わないのは、罪だと思うから。



 ホワイトカメリアの情報もあって、シャルが死んで数ヵ月後、日本で言うなら、関東で桜が咲く頃だったかな。

 ニューヨーク近郊の荷物の集積地。

 そう、だね、あの謎の爆発事件は私とラスイルの戦闘後の表向きの理由だ。

 列車の集積地でもあったしね、戦闘をするには悪くない場所だ。

 あまり、目立つわけには行かない。

 ……やり過ぎたとは思うが、あこで止めれなかったら、もっと増えてたよ。

 それだけは断言する。

 と言うかね、兵器の運用に阿片を使ってる時点で使い潰し前提だよね。

 某ロボットアニメの前期型を例に取らないでも。



 その集積地のうちのファミリーが借りている倉庫があってね、そこにおびき寄せた。

 何度か、邪魔をして、私だと解らせた上でね。

 恋?最初に言ったが私には可愛い弟分だったよ。

 相手?私ではないから解らん。

 やってきた奴は、茶銀とでも言うのかな、アッシュグレーに茶色を溶かしたようなそういう銀髪に、朱金の瞳が変わらない、だけど年の頃を最後に覚えているより十歳ほど重ねた青年だった。

 うん、ちゃんと顔を合わせたの魔女狩りの最盛期前ぐらいだからね。

 八百年とかそれくらいぶりの再会だった。

 でもね、ガリガリではないけれど、荒んでた。

 身なりを気にするタイプだったけどね、見る影も無い。


 詳しくは割愛するけどね。

 自分を実験台にして、兵器運用をしようとしていること。

 戦闘用の人格と変わっている時間も、自制も段々効かなくなっていること。

 シャルやファミリーの面子を殺したことへの謝罪。

 そして、私に止めて欲しいということ。


 詳しく語ると一日経っても終わらないから簡単に言うと。

 吸血鬼を傀儡にするのって、本当に面倒でね。

 ロボトミー系統に帰結するぐらいに、融通の利かないんだわ。

 うんそうだね、出来るのは、出来の悪い人形だ。

 ロボトミー+戦闘用(製作者の都合のいい)人格の転写かな、その時の。

 今ほど、科学面のみアプローチじゃなくて、科学と魔術の融合

 後、軍事転用を前提としていることからわかると思うけど、アメリカ政府が首謀者と言うかスポンサーだよ。

 ?まぁ、順々に話す。

 ラスイル本人としては、首を差し出す勢いなんだけども、その戦闘人格が、抵抗してね。

 1930年春ごろの謎の爆発事件は、そのせいでやっちゃった。

 

 その当時、政府上層部にいた知り合いが、無理矢理な理由で人を遠ざけたから、人間の被害はないけれどね。

 うん?集団っていうのは、宗教であっても、一枚岩って言うのはないね。

 それこそ、キリスト原理主義過激派みたいに、原罪を犯してる女は死ねって言う派閥から、女教皇はありえないけれど、同じキリスト教の元ですし、女枢機卿ぐらいは認めてもいいのでは?って派閥まであるしねぇ。

 一応、あの件もあって、表向きは認めない代わりに兵器運用もしなくはなったはね、裏では相変わらずだけれど。


 んで、一昼夜。

 集積地が、瓦礫の山になった頃。

 疲労管理が出来ない、と言うか、本来と戦闘の人格達の拮抗もあって、長命種としては異常なぐらいに早く終わった。

 あ、うん、一応、戦うだけなら一週間は出来る。

 途中途中、受け手に回って体力と魔力の回復しつつ、とかできるし。


 体力が尽きてできた隙でラスイルの胸を手刀で貫いた。

 心臓ではないけど、制御し切れてないけど、制御システムの筐体?が肺の上にあったわけだ。

 一種堰き止めるようなもんだから、底だけ流れが微妙に悪かったしね。

 手刀で貫いて、魔力を流し込んで狂わせて壊した。

 うん、長命種の生命力は強靭だけどね、それまでの傷とその傷、と言うか、他人の魔力を流し込まれたことによるショックで致命傷になった。

 あくまでも、意味合いが強いという意味なら、違う血液型の血を流し込んだことによるショック死に近いかな。

 即死はしないけど、流し込む魔力を度外視しての殺害方法だから、裏技だね。

 2Lペットなら同量以上の魔力がいるって時点で察して欲しいわ。


 どっからか解らないけど、白い花びらが舞っていてね。

 多分、占者か翁か、猶予期間のクルトかが、飛ばしてきてたんだろうけど。

 完全に戦闘人格から自由になったラスイルを膝枕にしてた私と彼の周りをひらひらと、綺麗だったなぁ。

 

「ごめん、ジュリねぇ。」


「何を?」


「殺して欲しい、って言うのも、あったけど、ジュリ、ねぇのいるファミリー、に嫉妬してた。」


 幼い頃の口調でね。

 それだけでも、もう時間がないってわかった。

 でも、結局、その時の会話は本当、なんでもない会話でね。

 シャル達を殺されたのは、憎んだけれど、でも、ラスイルを恨めなかった。


 本当に最期に、掠めるだけのキスをされたね。

 それまで殺しあってたから、血の味だったけど、力尽きて最期に。


 「おやす、み、じゅ、り、ねぇ」


 「ええ、おやすみなさい、ラスイル。」


 それで、死んだわ。

 一応、ボスには報告だけして、ラスイルをニュ-ヨークのデカい教会の墓地に埋葬した。

 種族的なものかもしれないけれどね、夜の民でもあの国に流れを持つのは、割と肉体は残るからね。

 うん、そう、毎年春ぐらいにアメリカに行ってるのはそれの墓参りだね。


 同時期の軍部の上位者なんかの不審死?

 そこは、秘密だ。

 まぁ、私も今よりは若かったんだよ。


 少なくとも、私が表に出ないのは抑止の部分も無いわけじゃない。





 

一応、次回で〆。


一人称だとホラーに成らなかった。

サイコホラーっぽくはあるんだけど。

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