序 『気付くなんて、中々に、ねぇ?』
タイトルさえ、仮。
とりあえず、突っ走る。
ある日のこと。
園児の双子が“調整”でいない一週間ほどいない日の事だった。
「ジュリさん。
一つ、聞いていい。」
「なぁに。」
「193×のニューヨークでの連続殺人って、何か知ってる?」
「どれ?」
「犯人が、吸血鬼だって噂がある奴。」
「よく突き止めれたね。」
銀髪赤眼の高校生ぐらいの外見ではあるが、戸籍上成人しているジュリが、十歳と園児の双子を引き取ってから数年後。
十歳の方、赤い髪の負けん気の強い少年・羽羅に能力以外のスキルを身につけさせる為、請われるままにCを含めたハッキングを仕込んだ。
まだまだ、ひよっこではあるが公になっていない情報にたどり着ける程度には腕を身につけたようだ。
ちなみに、吸血鬼などの連中の情報にたどり着けるか否かが、一流かそれ以下の分かれ目である。
一般には、そう言うことは秘されている。
それこそ、CIAやMI6なんかの世界レベルのお話だ。
双子がいては聞きにくいのだろう、いない日に、羽羅がジュリに質問したのだ。
1930年前後、禁酒法華やかなりし頃のとある連続殺人事件。
それ関係に残されていた写真が、養い親であるジュリに似ていたから。
懐かしげに、その事件に関わっていたことを肯定するジュリ。
元より、千年は生きていると明言しているのだ。
そこからでもある程度は突き止められる。
だけど、認めるには、とてもとても哀しい事件だと、羽羅は思ったのだ。