秘密の習いごと (妖精編)
僕の彼女は『妖精』なんだって。
誤解される前に言っておくけど、そう宣言したのは彼女の方だ。
付き合い始めて3ヶ月が過ぎたころ、僕は体育館裏に呼び出された。
このシチュエーションから思いつく理由は、一般的に3つ。
①いじめ。
②愛の告白。
③別れ話。
僕の立場で選ぶ事が出来るのは1つしかなく、相当な覚悟を持って彼女の前に立った。
だからこそ、
「私、妖精になっちゃったの」
という彼女を前にして、ただ口を開け続けている。
「黙っていてごめんなさい」
涙する彼女がどうして妖精になってしまったのかと言うと、1カ月ほど前に“3回連続でくしゃみをした時に、お大事にと言ってもらえなかったから”だってさ。
そんな理由で妖精になってしまった彼女だけど、羽が生える等の特別な変化がなかったため、彼女はいつもと変わらぬ生活をしていた。
しかし、そんな日常はある男の登場で一変する。
くしゃみから3日後、いきなり上から下まで黒ずくめの男がやって来て、
「あなたは妖精になってしまったのです」
と告げ、彼女を車に押し込んだ。
大暴れする彼女を乗せた車は、見たこともない花が咲いているお花畑に停車し、彼女はその中央に建っている教会へ通された。
中には、同じような不安顔の女の子が2人座っていたらしい。
彼女たちは、教会で3つの事を教えてもらった。
①妖精になったという事実。
②妖精になっても、人間の頃の自分とほぼ変わらないこと。
③これから、妖精についての勉強をしないといけないこと。
それだけ伝え終わると、彼女たちは別々の車で元の街へ帰された。
得体の知れない事態に巻き込まれた恐怖と、僕に隠し事をしたくないという気持ちから、彼女はこの話を僕にしてくれたらしい。
その気持ちに応えるため、僕は彼女をギュッと抱きしめて耳元でささやいた。
『怖いことなんて何もなかったよ。僕が行った勉強会は・・・・・・』