これがわたしが逆ハー主人公をぷぎゃあする理由 3
http://ncode.syosetu.com/n7285dt/
前作です
わたしの名前はレイラ=ハーケン。
自己紹介をするのなら、テンプレに乙女げーの悪徳令嬢に転生していた少女だ。
そのシナリオ上の敵対者、乙女ゲーの主人公もまた現実世界からの転生者。
彼女はこの世界がいづれ滅ぶと予言した。
シナリオライターの変更という天上の神であっても抗い得ない世界法則の転換が起こり、この世界は争いの止むことの無い修羅の世に変わると。
それを引き起こさ無い為のたった一つのさえたやり方こそ、ご都合主義で優しいハッピーな世界に繋がる様に主人公ちゃんが逆ハー失敗の修羅場エンドを迎える事。
「デートしていたつもりだったのですか?」
そしてそのために開かれる悪徳令嬢と主人公ちゃんの話し合い。正直、攻略自体は殆ど終わっているからやる意味自体は無くなっているのだが。こうして毎日行われるのだ。今日の議題は昨日の一件について。
というのも、この主人公ちゃんは攻略対象の不良系後輩君にデートに誘われていたのだった。全ステータスをカンストまで鍛えた最強系の主人公ちゃんは天然の悪女だから、正直放置していてもいいのだが、彼女には唯一つ、どうしようもない欠点が存在していて。
「正直彼が不憫で見て居られなかったのですが」
「デートだったでしょう、あれは誰がどう見ても」
「わたしとしましては子供だけを熱い目で見つめていた貴女が良く警察にに捕まらなかったと。その事を喜べばいいのか、幼子を身内に持つ人間として警察の怠慢を嘆けばいいのか」
「またまたー。あたしと同じ趣味嗜好を持つレイラ様にとっても良い事ですって」
「誰がショタコンですか、誰がヘンタイですか!わたしは違います!貴女とは違います⁉」
主人公ちゃんは真正のショタ好きだったのです。
ゲームにおける勇敢度、ネタじみた選択肢を選べるこの値もカンストしている主人公ちゃんは社会的に死ぬかもしれないという恐怖を乗り越え、ショタっ子を社会の目を気にせず愛でている。
まあ彼女にとっては幸いで、周囲にとっては不幸な事に、ショタコンである事を知らなければ違和感を抱くだけで終わるのだ。
人を見る目が優れていると言う自負の有るわたしであっても、主人公ちゃんの本性は本人からカミングアウトされるまで分からなかったくらいなのだ。
それは彼女がデートに誘われた時も同じで。
デート当日に、映画館で、どういう映画を見るのかを悩んだ攻略対象の後輩君。
彼女を喜ばせたかったら児童向けのヒーロー物や戦隊物、アニメ―ション作品、つまり子供連れが行くような選択を選ぶべきなのだが。
年頃の女の子が其れを好むなんてトラップが有るとは知らない攻略済みの不良系後輩君は無難な恋愛物を選択。
ショタ好きを決して表に出さない社会潜伏型のサイコパスじみた主人公ちゃんはにこやかに笑って、暗に不機嫌を示すけど、不良系後輩君は気が付かないでシアタールームに入っちゃった。
というか、割とそこらの機敏に鋭いうえに、彼女の本性を知っていると言うアドバンテージが有るわたしならともかく、良くも悪くも他者の機敏に疎い鈍感主人公じみた攻略対象達にそれを察せと言うのは無理がある。
付き合うつもりも無いのに二人っきりであって希望を持たせるなんて酷い。趣味じゃないならデートに行くなよとか思われるかもしれないが、彼女がそうやって五股失敗修羅場エンドを迎えないとこの世界の秩序が失われ、異世界からの侵略者は現れ、子供の笑顔が失われてしまうのだ。
称えられることも称賛される事も無く、きっと誰にも理解されない、唯世に残るは悪評だけの、孤独な主人公ちゃんと、わたしの二人ぼっちの世界を救う為の闘いはまだまだ続く。
そうして始まったデートの終着点は実は孤児院出身の後輩君の育った孤児院。真っ赤な頬は赤い夕焼けに隠されて、そっと近づく二人の影はというゲームでは実に印象に残る一枚絵の場面であるが、フヒヒと笑う主人公ちゃんのせいで台無しだった。
だって誰がどう見ても不審人物でしかないのだから。
というのも此処は孤児院だから幼子が実に多く、そんな彼らとひたすら遊び続ける主人公ちゃんの表情は一言で言えば『ヤバい』。
「ふひひ!此処が良いのか?此処が良いのか!ふひ、ふひ」
「お姉ちゃん、くすぐったーい」
「君の笑顔は慈母のそれだな」
「ふひひひ。ほーら上着は脱いじゃおうねー。はいバンザーイ」
まあよくもそういうふうに解釈できると素直に尊敬する。あばたもえくぼとはよく言ったものだが、『ふひひ』と、ヤバい笑みを浮かべショタっ子の群れに突撃する主人公ちゃん。
そんな彼女は、傍目では完全に通報待った無しのあかん奴だったというのに、『子供に慈愛を向ける聖母の如き微笑み』とかすらすら口説き文句を述べるのは凄い。
まあ主人公ちゃんはひたすらにショタっ子のお腹を撫でまわしてて全く聞いていませんでしたけどね。おもわず攻略対象のを応援しちゃいますよ。
向こうはこっちを嫌っているようだけど、彼があんまりに不憫すぎて。
だって真っ赤な顔で告げた言葉が届いていないんだもの。
って下はまずい、ズボンを下ろすのは犯罪ですよ!ガード、ガード!
結局、その孤児院は、うちの実家が後援していたものであったらしく、慌てて飛び出して、子供を救助したわたしはそこそこ接待されたのだった。
「いいですよね、レイラ様はあたしを悪者にしてショタっ子ハーレムを作っていらっしゃったもの」
「悪者も何も変質者から子供を庇っただけですよ。悪い事言いませんから、貴女の魂の洗濯はわりと本当に警察沙汰になりますから」
「大丈夫です、絶対に手を出したりはしません。それに警察の人からの評判もいいんです。しっかりボランティア活動を頑張ったり、子供の安全を守る偉大な人たちに敬意を表して、日頃の感謝の言葉と共に差し入れ入れたりしてたら仲良くなりまして」
「……貴方って借りに捕まったとしても、そんな事をする人じゃないって方々から庇われますよね」
何が酷いって、彼女は攻略している気が一切ない所だ。ショタが絡まなければ完璧な美少女が、口煩くあれこれ言う為、職務上嫌われやすい自身の職種に理解を示した上で甲斐甲斐しくお世話をして、かけて欲しい言葉をしっかりかけてくれるとか。
惚れるよなぁ、うん惚れちゃう。
それと別にわたしは犯罪と思われる行為をしていた訳では無い。一人一人に声を掛けた上で頭をよしよししただけだ。彼女の行き過ぎた愛のせいで、子供が大人の女の人を怖く思わない様にフォローを入れていただけだと言うのに。
でも流石手馴れているだけあって、特に恐怖を覚えたような子はいなかったのは流石だった。……よくよく考えれば服を脱がしたり、積極的にスキンシップを取る行為を手馴れてるってやばいですけどね。
別にわたしはショタコンと言う訳では無いが、……ショタコンと言う訳では無いが子どもが好きだ。そもそも子供を守り慈しみ愛するのは大人の義務ですから。
子供を理不尽に泣かせるような大人?実家の権力を使っても抹殺しますが何か?
「わたしが思うに、子供の一番いいのは天真爛漫な笑顔だと思う。あの笑顔を見ているとがんばる気力が湧くっていうか」
「ですよねですよね。ちなみに此処にそういう子供の映り込んだ私秘蔵の写真集が有りますよ」
「べ、別に、これは貴女が通報される様な物を持ち込んでないかチェックする為だけですから」
「はいはい、わかりました、わかりました。流石にそういう奴は子供の健康で健やかな成長に害が有るのでやりませんよ。あたしがやるのはあくまでスキンシップ。だからレイラ様が同じことを遣っても問題ないんですよ、唯のじゃれあいなんですから」
「じゃれあい……ですか」
「そうそう、だからレイラ様も今度一緒にボランティア活動しましょう、ね」
「流石にズボンを下ろすのは駄目だと思うのですけど」
セーフ、思わず悪魔のささやきに乗りかけた。でも大丈夫、わたしはまだ冥府魔導に堕ちたりしないんだからと強く自分に言い聞かせる。でも確かに、彼女を一人にするよりはストッパー役のわたしもいった方が良いかもしれない、いや、行くべきだろうから。
「今度の休みは予定を開けときますね」
「ええ、レイラ様も一緒に行きましょう。後、その写真集は友情の証として差し上げます。なーに大丈夫です、家にはまだデータが残ってますから現像は幾らでもできます」
こうして実に有意義な情報交換は今日も夜徹し行われるのであった。