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〈小噺〉俺の娘が可愛すぎる ロディ

単なる惚気話で終わってしまいました……



「----そうか無事に生まれたか!!」



 俺が、陛下の執務室に報告に行くと、ラインハルト陛下は立ち上がって喜んだ。


「それで、どっちだ」

 何だかすっごくわくわくしているような気がするのは気のでいでしょうか陛下。


「------------姫です」


「そうか!やったなリディア!! リーンハルトの王子妃の第一候補だ、いやもう決定でもいい!!ついでに立太子の儀を一緒にやるぞ、そこで婚約発表だ!!王太子妃だ!!」



 言うと思ったんだ。言うとは思ったんだけどここまで言うとは。




「うちの姫はどこにも嫁にはやりません」





「ロディ?! お前何を考えている?姫を出さずにどうするつもりだ!」

「どうもこうも、絶対嫁に出しません。誰かの妻になるなんて考えられない」

「ふざけるな! リディアの姫だぞ! 絶対にリーンハルトと(めあ)わせ、ゆくゆくはこの国の正妃にだな、」

「正妃なんて重責、可愛い可愛い俺の姫には負わせられません。お断りします」

「重責も何も、グレイシアにはそんな堅苦しい思いはさせていない!」

「リーンハルト殿下の御性格もまだ5歳では分かりません」





「いい加減になさい二人とも」

 俺が陛下と不毛な言い争いをしていたら、当の正妃様――グレイシア様が止めてくださった。



「リディアルナ様は無事に姫をお産みとの事、まずはお祝いを申し上げますスノーライン公爵」

「光栄です。正妃様」


「リディアルナ様は大丈夫だったのですか?」

「はい。セシル様が付きっきりで回復魔術を時々かけてくださったのですが、お産に長く時間がかかってしまって。今、姫は乳母に任せてリディアは休んでおります」

「そうでしたか。大変だったのですね」


「でもリディアは頑張ってくれました。姫がもう可愛くて可愛くて…」

「髪の色とかはもう分かったのですか?」

「はい。リディアそっくりの美しい銀色でした」

 きっと今の俺の顔はでろでろだろう。




「リーンハルトと娶わせようと思うのだが、グレイシアも良縁だと思わないか」

 グレイシア様は一つため息をついた。



「陛下もロディも、いい加減になさい。まだ姫の名前も付いていないのに婚約者だなんて。それにロディ。いくら可愛くとも姫はいつか嫁に出さねばならぬもの。スノーライン家に男児がいないなら婿取りは許されるかもしれませんが、既にディートハルトがいるではありませんか。後継ぎをお産みになられて、次に姫をお産みになられたリディアルナ様を、まずは労うのが先ではありませんか」



「はい… そうですねグレイシア様」



「陛下もです。あれだけリディアルナ様の結婚相手はリディアルナ様が愛した人をと言いながら、今更何を言っているのですか。----それにこんなに近くにいて、一緒に育つのです。私達は黙って見ていればいいだけだと思いますよ」



 その通り、うちの屋敷は正妃宮のすぐ裏手にあり、リディア作成の裏門のおかげで3歳になったディートハルトは毎日正妃宮へ遊びに来ている。----護衛も付けずに。まぁ正妃宮に入れば正妃宮の護衛騎士団がいるのだが。そしてそのディートハルトは、同じ年の第一王女クラウディア様と大変仲が良い。-----グレイシア様の言うことは正しい。



「う… そうだな。確かにクラウディアとディートハルトを見ていればそのうち…」

「黙って、見ているのですよ陛下」

「わ、分かった」


 うちと同様、陛下も妻には頭が上がらないのか----

 まあ、仕方ない。

 愛した方が負けだなんて誰が言ったんだろう。

 俺はもう負けっぱなし人生だ。





 俺はグレイシア様に許可をいただいて正妃宮に入る----普通は男性が正妃宮に入るなんて処刑モノだが陛下はそれを許して下さっている。

 俺は自分がいかに特別待遇であるのかは自覚しなくてはいけない。


 正妃宮に入って、中庭で遊んでいるディートハルトを回収して庭の奥にある裏門を通って屋敷に帰る。


 便利な物だ。


 ディートハルトは3歳。俺によく似たくすんだ金髪にリディアの瞳の深い蒼を持っている。第一子が男児であった事をリディアはことのほか喜んだ。


 子供のできない期間が長かったからか、俺の腕の中で声をあげて泣く程喜んでいた。

 ディートハルトを産んでから、またしばらく子供が出来なかった。


 それまでの間、セシル様は4人の姫をお産みになっている。そして今年も妊娠中だった。

 そしてつい一月ほど前、セシル様は念願の男児をお産みになった。

 そんな事情もあってリディアは自分が子供を身籠りにくい体質ではないかと危惧していたのだ。

 既に後継ぎは生んでいるのだ。そんなに気にする必要は無いのに。


 ちなみに陛下には3人のお子様がおられる。第一王子のリーンハルト様5歳、第一王女クラウディア様3歳、第二王子のアルフォンス様2歳。

 グレイシア様は、例の水竜の卵の一件以来大変お元気に過ごされている。






 屋敷の戻り乳母に聞くとリディアはもう起きているらしい。

 そっと部屋に入る。

 リディアはまだベットに横になっていて、姫はリディアの隣に寝かされていた。


「ロディ!」

「リディア、もう大丈夫なの? 無理はしないでよね」

 すぐに無理をやらかす性格は変わっていない。


「もう大丈夫ですよー ね―お姫」

「…お姫、なの?」

「ちょっと前までロディがそう呼んでくれてたじゃん」

「まぁそうだけど」

「ねぇ、早く名前つけて? 姫が生まれたらロディが名前つける約束だったでしょ」



 そうなのだ。

 第一子の時から、男児の場合リディアが。姫の場合俺が名前をつけると約束した。


 第一子は男児だったためリディアは俺と陛下の名前を少しずつ貰ってディートハルトとつけた。



「名前… 全然考えてなかった訳じゃないけど… いざ本人を前にすると迷うなぁ」


 そう言いながら姫の前まで行く。

 幸せそうにすやすや眠っている。


 可愛い。

 可愛い。

 可愛い。


 何度も言うが可愛い。


 そっと手を持つと、俺の親指をぎゅっと握った。



「あ――― ダメだ。リディア、俺もうだめ。この子がお嫁に行くなんて考えられない」

「はぁっ 今から何言ってるの?!」

「でもリディア、陛下がリーンハルト様の婚約者に決定するなんて言ってるんだよ!」

「ハルト兄様…… 兄様の方はグレイシア様が何とかしてくれるわよ。とにかくロディは変なことまで考えなくていいから、まず名前! いつまでもお姫じゃダメだわ」

「ダメなの?」

「ダメよ!-----ロディがお姫って呼ぶのは私だけなの!」


「お姫----」

 俺は我慢できなくなって、横になっているリディアを半分抱き起こし抱きしめる。


「ロ、ロディ…」


「リディア… リディア。元気な姫を生んでくれてありがとう。----愛してる---」

 俺の可愛いリディアは、また顔を赤くする。

 何年たっても急にこんな言葉をかけると赤くなる。

 姫も可愛いけど。リディアはもう最高だ。


 リディアは赤くなりながらも、起き上がって俺にしっかり抱かれてくれる。


「私だって---」

 そう言って俺の胸に顔を埋めるリディア。

 ああもう、俺どうしたらいいんだろう。


 しばらくそうやってリディアを抱きしめていたら姫がむずがり出した。


「あ、お腹すいてるのかな…? ごめんロディ、エルナを呼んで来てもらっていいかな?」

「分かった」

 エルナとは姫の乳母だ。

 幾人かの候補は上がっていたが、一番最近に子を産んでいて若い娘が選ばれた。乳兄弟が女の子なのも良かったと思っている。俺のように乳兄弟に恋をする場合もあるからな。



 エルナに姫をあずけて、授乳をしてもらう。

 リディアはまた疲れたように横になった。



「まだきつい?」

「うん、今回は時間かかったしね」

「-----こんな時男は情けないよな。何にもできない」

「そんなことないよ。ロディ、ギリギリまで一緒にいてくれた」

「ホントは痛いのを代わってあげたかったんだけどね---」



 そう言ってリディアの額にキスを落とす。



「姫の名前ね。グレイシア様に相談して、お姫の元の世界で『守護』とか『命の女神』の意味を持つ名前は無いかって聞いたんだ。そしたら、守護の方でアレクサンドラはどうかって…」



「…守護… イージス?」

「うん。リディアの代名詞じゃん。青薔薇の守護神。で、長いかな?って思ったら、『サーシャ』って言うのが愛称なんだって。だから俺、サーシャが良いなぁって思ったんだけど、リディアはどう?」


「サーシャ… 可愛いね。…可愛い。とっても良いと思う」

「じゃ、決めちゃっていい?」

「うん」


「じゃ決定だ。この子はサーシャ、きっとこの国を守護してくれるよ」

「いや、普通に、幸せに生きてくれればいいよ」

「うーん、リディアの娘だからなぁ……」

「何が言いたいのかな?口喧嘩なら買うわよ」

「すみません俺が悪かったです」



 二人で顔を見合わせて笑う。




「リディアが元気になったら、陛下にサーシャを連れて挨拶に行こう」

「うんそうだね、一緒が良いね」

「その時には絶対に婚約の話には触れないこと。もし陛下が持ちかけてきたら断ること」

「確かにまだ早すぎだよ。だって今朝だよ、生まれたの」

「でもさっき報告に行ったら、将来の王子妃だ王太子妃だって大騒ぎを…」

「だからそれはグレイシア様が何とかしてくれるって。ロディも今から変なこと考えないの!」

「だってこんなに可愛いんだよ。きっとすぐに求婚者がわらわらと…--」


「いい加減しになよ。親バカなんだから----私だけじゃ足りないの?」


 とリディアは触れるだけのキスをくれた。




「------足りました」

「よし」



「大丈夫、私の子だもん。どんな人生でも力強く生きてくれるよ」

「説得力あるなぁ」



 ああ、俺はきっと一生リディアには敵わない。


 だけどそれが、俺の幸せなんだろう。








ホラ―の方が書き終わったのでまたちらほら番外書こうかなーと。

良かったらホラ―の方も読んでいただけたら嬉しいです。…と言ってもなんちゃってホラーですけど。


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