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ぷち魔王編 5.






 現地につくと、第一騎士団はすぐに天幕を張る組と森の中に入る組とに分かれて動き始める。

 さすが、精鋭の第一。

 動きが違う。



 私はその中にロディを見つける。

「ロディ!」

「お姫、転移は大丈夫だった?体調は?」

「私は大丈夫だよ。魔力も前より増えてる感じだし。---それよりちょっとお願いがあるの」


 そう言ってグレイシア様の状態と、ユニコーンがいれば捕獲、または角だけでも確保してもらうようお願いする。


「グレイシア様が----?!」

「そうなの。最近調子悪いのは知ってたでしょう?」

「ああ、知ってる。陛下がそれでお悩みだったことも----団長!」



 ロディがすぐに騎士団長へ報告してくれる。

 とりあえずこの森にユニコーンがいれば、これで何とかなるんだろうけど……



「だけどお姫、ユニコーンってすごく少ないんだ。あんまり期待はしない方が良いかもしれない」

「うん分かった。でも、出来るだけ」

「分かってる。お姫今日は?」

「ん?ロディと一緒に森に入る気できたけど」


 ………。


「---------分かりました。一緒に行きましょう」

「昨日の谷底へ行ってみたいんだけどな」 

「でも… あそこは結構距離があるよ。とりあえず今日は村の近辺の安全を確保しようって、森の浅いところを重点的に狩る予定だったんだけど…」

「私とロディ―― だけじゃダメか。昨日のメンバーだったら?」

「うん… どうだろう。ちょっと相談してくるよ」


 ロディはまた団長の所に行く。

 あそこには何かあると思うんだけどな。



「----ごめんお姫。今日だけで良いからこの辺で待機してほしいって---」

「そっか。分かった」

 わがままはダメだよね。

 ユニコーンも探さないといけないし。

 

 あ。

 待機ならユニコーンの探査---  とか。出来るのか?


 ディーンさんとセシル様の所へ行く。

 何故かクラりス様も一緒だった。

「殿下、そんなに急いでどうされたんですか?」

 とセシル様が不思議そうに聞いてくる。そうだよね、朝あったばっかりだもんね。


 私は一から事情を説明して、ディーン様にユニコーンの探査が出来るか聞いてみる。

「ユニコーンですか---- 正直難しいと思います。探査自体と言うより捕獲の方が難しいでしょう」

「いるのなら何としても捕獲します。この辺りの地形を変えてしまっても捕まえます」

 いると分かっているのなら、その範囲を岩壁で覆ってしまっても良い。

 やると言ったらやる。


「じゃ、探してみますね」

「お願いします」


 -----さがせるんだ、ユニコーン。 


 お願いしておいて何だけど、まさか探せるとは。


「魔物の数が多いですね、識別が難しい----すみません殿下。少なくとも近くにはいません。明日、森の深い所へ行くのならまた探してみます。何しろ数が多くて---」

「そんなに---- グリフォンクラスですか?」

「いえ、そこまでの大物は少ないですが、小物と比較して少ない、と言うことです。数的には考えられない程います」

「そんなに----」

「リディアルナ様。治癒魔法陣の準備をしておきますね」

「そうね、魔術塔にも治癒魔術師の数を確認して---」


 

 そう言った時、後ろの森が爆発した。



 使ったのか。

 エクスプロージョンの矢。

 使うと思ったけど。

 まーこれで私だけ怒られなくて済むかなー



「早速当たったみたいですね」

「またグリフォンですかね?」

「それは当たった部隊に聞いてみないと」


 その日は森の浅いところしか入らないはずだったのに、エクスプロージョンの爆発は7回響き渡った。

 幸い騎士団のけが人はいなかった。

 しかし、魔物の方はグリフォンを始め、ケルベロスやサイクロプスまで出たと言うのだ。

 有り得ない。


 そんなに魔物がいるんなら、冒険者職があるはずじゃん!!


 いやいや、そんな話じゃない。


 とにかく、この魔物の異常繁殖(?)の理由を調べないと。


 Gのつく家庭内害虫は、元から断たないといけないのです。

 ん? 私グリフォンは怖くないけど、Gの方が怖いんですけど。

 変だな。



 とにかく、その日は予定通り村の近くに陣を張って休むことになった。

 私は例によってセシル様とクラリス様と一緒です。

 でもその前にエド兄様と話をしてこなきゃ。



 夕食も終わり、みんなが思い思いに過ごしている。

 火の番をしながら剣の手入れをしていたり、横になって休んでいたり。




 そんな中、ロディと一緒にいるエド兄様を見つけた。


「兄様、今いいですか?」

「ああ、大丈夫だ。俺たちは今日は大物にはあたらなかったしな」

「それは良かったです。明日は私も連れて行ってくださいね。----それで兄様。お話があります」


「どうした。何かあったか----グレイシア様の事なら聞いた。ユニコーンはなるべく探そう」

「あ、いえ、その、ユニコーンもお願いしたいのですが、今日は別件です」

「別件?」

「そうです。---クラリス様の事です」


「-----リディア、クラリスが何か言っていたのか----?」

「はい。----兄様はもう自分が求婚したことなど忘れているだろうから捨て置いてほしいと」


「捨て置けと、言ったのか」

「はい。----御自分は7人兄弟の長子で自分の他は弟ばかり。学生時代から騎士団にいたので女性らしいことも何も知らない、こんな時どうしたらいいか分からないのだと」

「クラリスが--- そんなことを」


「付け加えて言いますと、セシル様が同じことをされたらさっさと捨てているそうです。兄様、まだクラリス様とご結婚するおつもりはあるのでしょうか?」


「当たり前だ!」


「セシル様の言葉ですよ、私が言ったんじゃないですからね。『五・六年前に求婚した。しかしそれ以降何の音沙汰もない。これはもう振られても何の文句も言えないパターンです。求婚しておけば大丈夫という男性の身勝手の象徴みたいなものです。そんなに長い間クラリス様を拘束しておいて、今更愛してる?私なら笑って捨てます』だそうです」


「そ、そんな認識なのだろうか、世間の令嬢は」

「まぁ、セシル様は積極性にあふれた方なので一般的ではない所もありますが、私でもさすがに5年も待たされたら、もう自分には興味は無いんだなって思います」

「お前も---?」

「はい。ロディみたいに身分の障害があって、とかだったら別ですけど…」


「じゃ俺は… どうしたらいいんだ?」

「求婚はしているのですから、順番から言って次は婚儀じゃないですか?」

「そんなにすっとばすのか?!」

「一番最初をすっ飛ばしたのは兄様です」 

「こ……婚儀----」

「とりあえずその前に、『殿下』ではなく『エドガー様』と呼んでもらったらどうでしょう?」

「あ、それ良いですね」


 ロディが話に乗ってくれる。


「少し距離が近くなるんじゃないですか?」

「----そう思うか?」

「思いますけど」

「ロディだって、リディアを名前で呼ばないが仲は良いじゃないか」

「まぁ、名前だけがすべてじゃないでしょうけど」

「でもきっかけにはなると思うんですよ、ねロディ。ロディも私の事、名前で呼んでって言ったら、呼んでくれる――?」

「うーん、慣れるまで少しかかるかもしれませんけど、お姫がそっちが良いなら」

「う、うん--- じゃ、名前で、呼んで?」

「分かりました---リディア?」

「はい------」

 あ、顔が近い---。



「ストップ。お前らここを何処だと思ってんだ」



「良いじゃないですか、少しくらい」

「目の前に5年越しの片思いをこじらせている男がいるんだぞ!」

「それは兄様が悪いと思うけどなぁ」

「ど、努力はしてみる」

 兄様はそう言って天幕へ帰って行った。



「ありがとロディ、話に乗ってくれて」

「いいえ、俺も気になっていたんです。上手くいくと良いですね」

「ホントに。クラリス様、もう20歳だもんね… これで兄様クラリス様と婚約破棄とか言い出したら爆裂魔法の的にしてやる」

「お姫、程ほどにね---- それで、名前呼びの件はエド殿下を焚きつけただけ? それとも本気?」

「------ほ、本気----」

「分かった。じゃぁおやすみ----リディア」

「-----おやすみなさい」



 名前呼び効果、すごいわ。







 その夜も、例の「うめき声」は夜半から始まった。

 騎士団のみんなが天幕から出てくる。


 やっぱり私には「声」に聞こえる。


「セシル様、この音?何に聞こえます?「音」ですか「声」ですか?」

「-----何でしょう。----でも、悲しい音です。泣いてる---?」

「セシル様!私もそう思ったのです。----何かが、泣いている様だと」

「でも、---泣き声だとすると、ものすごく大きな何かですよね」

「それは確かに----」


 でも、確かに声に聞こえるんだ。

 まるで----そう。ばーちゃんが大きくなったらこんな声で------- !!


 まさか、ドラゴン?

 成体の?



「セシル様、ちょっと転移で城に戻ってきます。待ってて下さい」

「え?殿下?!」


 ちょっと離れた所から屋敷に転移。

 屋敷の私の布団で一人で寝ていてくれたばーちゃんを無理やり起こしてもう一回転移。



「リディアルナ様、どうされたんですか?ばーちゃんを連れてきたりして」

 セシル様が駆け寄ってくる。


「ね。この声、ばーちゃんが大人になったら、こんな声で鳴くような気がしない?」

「え…   ----確かに、言われてみれば---」


「ね、ばーちゃん。この声、何て言ってるか分かる?」


 ばーちゃんはしばらくこの声をじっと聞いていたけど、ふわっと飛び立とうとした。

「ちょっと待って!ばーちゃん一人で行ったら危ないよ」

「みゅ――――」

 慌てて抱きしめると、ばーちゃんも悲しそうな声で空に向かって鳴きはじめた。



「みゅ――――――――――――――」




「お姫?--リディア?」

「ロディ。ね、この声ばーちゃんが大人になったらこんな声で鳴くような感じじゃない?」

「それでばーちゃんを連れて来たの?」

「うん。そしたらやっぱり、あの谷の方へ飛ぼうとしたの」

「で、止めたらそんな声で鳴きはじめたのか」



「みゅ――――…」





 ばーちゃんの悲しそうな声は止まらない。

「ロディ、明日、あそこへ行こう」


 魔王(仮)はそこにいるはず。





おかしいな、まだ終わらない… 2-3話だったはずなのに。

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