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ぷち魔王編 3





「グリフォンはさすがに無いな」

「ああ、第三騎士団でも相手にできるかどうか――」


 ロディとエド兄様が二人で悩んでいます。

 アレはそんなに強い魔物だったのでしょうか。

 エクスプロージョン一発だったので、あまり実感がないのですが。



 後ろにいたクラリス嬢に聞いてみたら、「村に出たら全滅するクラス」だと言う。


 うう、証拠が残る程度に加減すれば良かった。

 加減した攻撃魔術ってどんなのかな?

 風魔法でスパッと切っちゃう?

 それなら水でもいいな。

 

 うん、森の中で爆裂魔法は無かったよね。


 反省。




 すぐに帰るのかと思ったら、とりあえず「うめき声」の確認だけでもして帰るとか。

 まぁ、せっかくテント張ったしね。




 夕食の時も騎士団組は魔物の対策会議に熱中です。

 消化に悪いよ?


 何でも今、第三騎士団がシェルト地方の軍港に駐留しているらしい。

 なので呼ぶのなら第三騎士団だと言うんだけど…

 騎士団の人が多くなると、守る対象が増えるしなぁ。

 とりあえずこのメンバーで何とかなりそうな気がするんですけどねー。


 とにかく、今晩ここで声を確認したら朝に一度帰ると言うこと。


 私は一度帰った時に「村が全滅クラス」の魔物が降りてくるのが怖いので、村全体に守護結界を張っておく。

 四方に魔石を置いての簡易結界だけど、二三日なら大丈夫。


 もちろんテントの四方にも守護結界を張って、アイテムボックスの寝具を出してもぐりこみます。

 あ、クラリス様が引いてる。

 ちゃんと男性陣にもお布団持って来たよ?


「魔物討伐用の天幕で寝具が出てくるとは思いませんでした」

 そう言って支柱に寄りかかって剣を抱いて据わる。

 昔、よくロディが私の宿屋の部屋とかの不寝番をする時にしていたポーズだ。


「クラリス様、とりあえず横になりませんか?身体が休まりませんよ?」

「ありがとうございます、リディアルナ様。自分はこのままで大丈夫です」

「------クラリス様----」




「クラリス様は、エドガー殿下をどう思っていらっしゃるのですか?」




 おお、直球!

 さすがだ、さすが意識の無い上司に彼シャツをさせる人だ。



「どう、…とは?」

「もう婚約期間も長いとお聞きしました。御結婚は考えていらっしゃらないのですか?」


「-----殿下はきっと、私に求婚したことはもう忘れておいでです。このままお捨置き下さい」




 はぁっ?!

 エド兄様、あれから何も言ってないの?!


 あ。隣でセシル様が拳を握っている。


 ヤバい兄様。逃げるんだ。



「じゃ、じゃぁクラリス様はエド兄様が嫌いって訳じゃ……」


「----嫌いと言うか… どうしたらいいのか、分からないのです。自分の家、ブランシュフルール家は代々武官の家系です。何故か娘の生まれることが少なくて、自分は7人兄弟の長子なのですが、下の6人は全て弟です。母はまだ下の弟に手がかかるためあまり相談もできずにここまで来ました。セシル様のように料理などの女性らしいことは何一つ習ってこずに…」


「だ、大丈夫ですクラリス様!私も同じようなモノです。何にもできません!」


「リディアルナ様は、その魔術のお力だけで他に何も出来なくとも構わないのではないですか。現に先程のグリフォンも、自分たちには手も足も出ませんでした。リディアルナ様がいらっしゃらなかったら、全員ここにはいなかったかもしれません」


「そ、そんなことは---」

「それ程に強力な魔物なのです。グリフォンと言う魔物は。----通常でしたらゴブリンや、せいぜいオーガとか、その変位種くらいだったはずなのです。この森の魔物は。それがあんな----」


「じゃぁやっぱり国の騎士団が対処しなきゃいけないレベルの異変が起こっている?」

「間違い無いと思います」


「じゃぁ早く帰って、この村に駐留する騎士団を派遣しないといけないんだ」

「そうですね。早い方が良いでしょう。あのグリフォンは比較的森の浅い所にいました。アレが一体とは限りません」

「騎士団の鎧にはイージスの刻印は済んでるよね」

「はい。間違い無く」

「剣の方も---」

「大剣の方は済んでいます」


「そうか、片手剣に入れる魔法陣を考えてなかったか----」

「いえ、リディアルナ様には常に守っていただいております。こんなに心強いことはありません」

「いえ、軍備の強化は魔術塔の仕事です。帰ったら早急に---  …ん?」


 布団の中のセシル様が、私の服を引っ張る。

 さすがに夜着ではない。


「軍備の話はいいのですが、リディアルナ様。エド様のお話を!」

 そ、そうか。ここは私が頑張らねば。



「えーと、話は戻るのですがクラリス様はエド兄様を。嫌いだとか、顔も見るのも嫌だとかそんな風に思っている訳ではないのですね?」

「はい。----そうですね。お慕いしてるかと聞かれると返答に困るかと思いますが、尊敬はしています」


 ここで、セシル様の布団にもぐりこんで作戦会議だ。



 【以下。小声でお送りします】


「セシル様、セシル様どう思いますか、何だか脈がありそうじゃないですか?!」

「殿下、落ち着いてください。エド殿下は五・六年前に求婚した。しかしそれ以降何の音沙汰もない。これはもう振られても何の文句も言えないパターンです。求婚しておけば大丈夫という男性の身勝手の象徴みたいなものです。そんなに長い間クラリス様を拘束しておいて、今更愛してる?私なら笑って捨てます。冗談じゃなく」


 うん、貴女ならやるでしょうセシル様。

 しかしこの国に貴女ほど強い令嬢はいないと思うのですよ。


「そう言わずに何とかして下さい。エド兄様も私にとっては恩人なのです。すごいヘタレかもしれませんが、エド兄様はエド兄様で精一杯頑張っておいでなのです。クラリス様を見る悲しいお顔が、お気の毒で---」


「----仕方ないですね。殿下がそこまで言うなら… とにかくヘタレを治さなければクラリス様には伝わりません。このままではクラリス様は御婚約を破棄されてしまうかもしれません」

「---でもクラリス様は男爵家です。簡単に王家との婚儀を破棄するでしょうか---」

「あの方の気持ちの強さをなめてはいけません。やると言ったらやるでしょう。----なのでその前にヘタレを治し、再度求婚するのです!」


「うう、あの、鈍感大王にそこまでできるものか---」

「出来なければ捨てられるだけです」


「分かりました、明日から、私がエド兄様のサポートにつきます。セシル様はクラリス様の相談に乗ってあげて下さい。----ちゃんと相談事を吐かせるのですよ」


「殿下--- 私に尋問でもしろと?」

「そんなことは言ってません。あくまで恋愛相談です!」

「まぁ頑張ってはみますが、今回の主役はエド殿下ですからね」


 分かっております。

 この遠征中に何とかして、エド兄様にもう一度求婚させるのです!


 そうでなけれな、婚約破棄をしてクラリス様を自由にしなければならないのですが---

 クラリス様は既に20歳。御結婚するには遅い位です。

 これは何としてもエド兄様に責任を取っていだたかなければ。



 私がそう決心した時。

 大地が震えるような「声」がした。


「------これが、例の?」

「おそらく間違いないでしょう---」


 三人でそろそろと天幕の外に出る。

 男性陣は既に外であちこちを向いて声の出所を探っている。


「ディーン様、声の主の探査なら出来るのでは?」

「ああなる程。やってみます」

 私の案に乗ってくれて、声の主を探し始めるディーン様。



 ------この声、何だろう。何処かで------



「お姫、一度結界を解いて」

「あ、うん。無理しないでね」


「ロディ、何だと思う?」

「今の段階では何とも。---でもこれ、ほんとに山全体が----」

「鳴いてるよね。----何だろう。威嚇?」

「え?鳴き声ですか、これ?」

「え?鳴いてるよね?」

「俺には地鳴りとか、風が狭いところを通るような音に聞こえます」

「------? や、これ鳴いてるよ」


 ふわっと浮遊魔術で身体を浮かばせる。

「お姫!一人じゃダメだ!!」


「----あ、うん。」

 一旦戻って、ロディと手をつないでもう一度飛ぶ。


「----やっぱり山全体が振動しているようだ」

「違う----鳴いてる。泣いてる。--------向こう?」

 と山麓の一か所を指す。

 そこは際だった谷の底だった。


「殿下!その方向で間違いなさそうです!!」

 下でディーン様が声のする位置の確定に成功したようだ。



「行ってみる?」

「ダメだ。夜間入っていい森じゃない」

「飛んでくとか?」

「グリフォンだけだとしても、奴は飛べる。ダメです」




 結局その晩は諦めるしかなかった。

 

 でも、聞く人によって聞こえる音が違うって何?

 私には鳴いてる声にしか、聞こえなかったよ。

 悲しい声だったよ。



 


 その夜はそれ以上の事は起こらなかった。


 私達は村の人にグリフォンがいたと言うこと、結界が張っているのでなるべく外には出ない方が安全だと言うことを説明して、一旦王都に帰るしかなかった。


 私的には不満なんですけどね。






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