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39.めでたしめでたし



 結婚式まであと二日。

 私もロディも当然もう休みに入っている。


 何かしなくてはと思うのだが、何をしたらいいのか分からない。

 ただ周りは式の行われる聖堂の飾りつけやパレードの準備、その後の夜会の準備や、そろそろ到着し始めている各国の重鎮方の対応など忙しげに動いているのだ。



「ホントは外国の要人警護は俺の仕事なんですけどねー」

 と、ロディ。

 騎士団長に追い出されたらしい。


「私もセシル様に追い出された…」

 ギリギリまで治療院で働こうと思っていたのだが「殿下はお支度があるでしょう」と返されたのだ。

 しかしお支度も何も、周りは忙しそうで相手もしてくれない。


「ねぇロディ。荷物とかまとめた?」

「ええ、それは一応」

「私はそれもさせてもらえなかったのよ。---何時ここに帰ってきても良いようにこの部屋は残しておくんだって」


「お姫? それは俺がお姫を蔑にして、お姫が実家に帰ります!のパターンですか?」


「私は兄様の『会いに来い』が頻繁になるとか、魔術塔へ泊まり込むくらいならこっちに帰れって意味だと思っているけど」

「は--- 良かったです。俺、結婚前から離婚前提で話が進んでいるのかと---」

「さすがにそれはないと思うけど---」




 現在の正妃宮は、今後グレイシア様の宮になるため、もと正妃さま、現皇太后殿下は離宮の方に移られた。私もそれと同時に移動するのかと思ったが、正妃宮の今の部屋をそのまま使っていいと言うこと。

 グレイシア様の意向と言うよりハルト兄様の意向かもなー。


 離宮には元国王陛下も一緒に移動された。

 私も時々様子を見に行っているが、大きな変化はない。


 エド兄様も、城下町の貴族街に屋敷を構えた。

 これで後は、あの難攻不落の令嬢を、どうやって結婚式まで持って行くかである。

 頑張れエド兄様。


 私達の「屋敷」というのは、まだ誰も教えてくれない。

 式が終わってから案内すると言うのだ。

 確かにサプライズかもしれないけど、それはそれで困ったことになりはしないのだろうか。

 式が終わって、屋敷に着いたらすぐに生活用品を買いに町に走らなきゃいけないとか…

 まぁ、式の日は疲れてるだろうし、寝るだけだから次の日でも良いけど。


 でもその屋敷には侍女のマリアが先に入っている。

 ロディの母親なのだから、もう侍女の仕事はしなくても良いと私もロディもさんざん説得したのだが、彼女は譲らなかった。

 私の世話は、身体が動く限り自分がするのだと言いきった。

 マリアも、ダリアの命令で私を一人にしたことを未だに気にしているのかもしれない。

 -----単に干物の世話が普通の侍女に出来るかが心配だとか言う理由かもしれないけど。


 

 

「ここでボーっとしていると、ホントに明日式が出来るのか不安になってきたわ」

「今更嫌だなんて言わないでくさいね」

「-----嫌な訳、ないでしょ」

「良かった---」


 そう言ったロディの顔がまた近づく。

 そう思っただけで顔が赤くなるが逃げようとは思わなかった。

 あんまり近いから目を閉じる-----



「そこまでだ」



 目を閉じた所で誰かの手で口をふさがれた。------ハルト兄様しか、そんなことをする人いない。


 

「陛下---」

 ロディはいたずらが見つかったみたいに苦笑い。


「そう言うことは式が済んでからだ」

「えええ! 兄様がグレイシア様としてるの何度も見ましたよ!」

「私は良いんだ!」

「いい加減にされてください陛下。三人ともこんなところにいては準備の者の邪魔ですわよ」


 兄様の理不尽な説教を聞かずに済んでほっとした。さすがに兄様もグレイシア様にはかなわない。



「でもグレイシア様、中の方がすごいことになってて追い出されたんです」


 そう、ここは正妃宮の廊下だったりする。

 中があまりにも忙しそうで、うかつに入ると「紅茶入れておくのでそこにいてくださいね」とか「今日は魔術塔に行ってて下さい」とか言われて邪険にされる。

 ここは私は部屋のはずなのに。

 

「まぁ、仕方ありませんね。中を大きく模様変えしていますから。せめてこんな廊下に座り込んでいないでサロンなり庭園なりに行けばよろしいのに」

「二人きりになれる場所はやめておけ」

「陛下。この二人は二日後には結婚するんですよ。何時までそんなことを言ってるんですか」

「いや、グレイシア。ここは兄として」

「いいえ。普通の兄はそこまで干渉しません」


 この二人、絶対グレイシア様の方が強い。

 さすがだ。


「さ、陛下の準備に入りますわよ。ロディ、リディア様お暇なら先ほど銀嶺の海殿下がお付きですので、御挨拶にでも行ってきてくださいね。ロディは殴られるなら顔は避けること。いいですか?」


「「ハイ……」」


 殴られるの前提なんだ---



「仕方ない、殴られに行きますか」

「へ?私一人で行ってくるよ。別に二人そろって行かなきゃいけない訳じゃないし」

「や、お姫。ここは俺が殴られないといけないんです。お姫は気にせず見てたらいいですよ」

「いやいやちょっと。何納得してるの?」


 

 二人で来賓間の方へ歩いていると、ちょうどカイ殿下にばったり会ってしまった。

「カイ殿下----」

「殿下、殿下のせいではありませんよ。殿下は最初から私を断ってくださっていた。----ただ、ちょっと彼に一言言いたくてね」

「殿下?」

 カイ殿下は殴ったりはしなかった。

 しなかったが、ロディの胸ぐらをつかむと、

「姫を泣かせたら承知しない!最悪国交問題になると思ってくれ」

「大丈夫ですよ殿下。俺はお姫を泣かせません。万が一にでもそんなことになったら国交問題になる前にラインハルト陛下から処刑されます」

「ロ、ロディ、そんな物騒な---」

「殿下は認識が甘いな。ラインハルト陛下はやると言ったらやるお方だ」

「俺もそう思います」


「なるほど、覚悟はできている訳か」


 カイ殿下はそう言って来賓間の方に帰って行った。


「何だったんだ……」

「まぁ、けじめの問題ですかね」


 結局その日は正妃宮には入れず、客間で寝ることになった。





 翌日。

 結婚式の前日である。

 昼前まで惰眠をむさぼっていたら、侍女団に拉致された。

 ちなみにこの侍女団も新しい屋敷に来てくれるらしい。


 そこで全身を磨かれる。


 髪は綺麗に洗い切り揃え香油で仕上げをされる。

 爪も磨かれ、ジェルネイルの様な装飾がなされた。

 こんなものがあったんだ。


「ちょ、ちょっと待って。式は明日よね!」

 

 そう抗議はしたが、侍女団の手は止まらない。

 

「明日からじゃ間にあわないから今やってるんです!」


 まぁ確かに明日は朝一番から教会へ行かなければいけない。

 結局一日かけて磨きあげられ、夕方ぐったりして寝て、起きたらもう準備の時間だった。

 




 まだ外は暗い。

 こんな時間に起こされるなんて。

「さぁ、本格的に仕上げをしますよ!」

 ---助けてロディ。



 その後、急いで朝食を食べて、すぐに本番の支度だ。

 


 そして午前の早い時間から、教会での挙式だ。

 うう。緊張する。

 でも何をするにも兄様が一緒だ。心強いが少し心配だ。

 ----グレイシア様に捨てられる前に考え直した方が良いぞ兄様。


 

 白いドレスやレース、白いベール。ブーケは青い薔薇だ。髪にも青いバラが飾られた。

 良かった―― 思ったよりシンプルだ。




 式は兄様達の後だ。

 なのでしばらく待ち時間。

 家族席にベールだけ脱いで座っています。

 兄様も正装です。やっぱりかっこいいなぁ。

 そしてグレイシア様は、ソフィアローズ公爵のエスコートで入室。私と同じドレスだ。ただ違うのは薔薇の色だけ。グレイシア様は赤いバラ--- 似合いますねー。


 誓いの言葉、誓いのキス。

 うわー なんだか感動的。




 そこまで終わったら、二人は家族席に移動。

 今度は私達です。


 入口からロディが入ってくる。

 今日は騎士の正装じゃなく、公爵の正装だ--- かっこいいなぁ


 そしてハルト兄様が私の前まで来て手を差し出す。

 私はハルト兄様のエスコートでロディの所までの短い距離を歩いた。

 こんな短い距離なのに、足が震える。


 二人で、ロディの前まで来る。

 ハルト兄様が手を話す時、私はきゅっと抱きしめられた。


 -----兄様。


「何かあったらいつでも帰ってこい---- お前は何時までの私の大切な妹だ」


 兄様。兄様。兄様。

 血のつながらない私が、そこまで言って貰うなんて----


「泣くのはまだ早いぞ--- ロディ。後は頼むからな」

「はい」


 返事をするロディの顔は真剣だった。

 私の手はロディの手の中に渡される。


 ロディに涙を拭いてもらいながら、式は進行した。


「汝、ロディ・スノーライン。妻となるリディアルナを永遠に愛することを誓いますか?」

「はい、誓います」

「汝、リディアルナ・スノーライン。夫となるロディを永遠に愛することを誓いますか?」

「はい。-----はい。誓います----」



 ああう泣く。泣きそう。


 思い出すのはいつも側にいてくれたお日様色の笑顔。


 ボロボロの私を見つけてくれたロディ。


 私のわがままにつき合わせて 困った顔のロディ。


 よく熱を出す私を心配してくれる顔。


 朝起こしに来てくれる笑顔。


 


 ここで私の涙腺が決壊。

 もう少しで声を上げて泣き出しそう…



「では誓いのキスを----」


 空気読め神父!!

 ここで誓いのキスなんてしたら----




「お姫」

 と、隣でロディが笑っていた。

 何だかそれだけで、すとんと気持ちが落ち着く。

「大丈夫だから」



 そう言ってベールを上げる。

 ロディの顔がはっきり見える。

 お日様色の髪、お日様色の瞳。----私の大好きな----



 ロディは私の頬を何時ものしぐさで拭って、そしてその優しい顔が近づく---

 私は目を閉じてロディの手に捕まっていただけだった。


 次に目を空けた時は、この上ない位優しい顔で微笑まれた。

 うう、また顔が赤くなっちゃうよ。






「列席者の皆様、ここに、国王夫妻、並びに王女殿下・スノーライン公爵夫妻が主の御前において夫婦となったことを宣言致します。」





 神父様の宣誓で式は終了だ。



 この後はパレードになっている。


 先頭は6頭立てのパレード使用の馬車。その前後に騎馬隊が護衛につく。


 そしてその後ろにつくのはばーちゃんに乗った私とロディだ。



 -------目立っている。

 どう考えても兄様より目立っている。




 兄様の馬車とは出来るだけ距離は明けてもらった。それでも目立つ。

 だってばーちゃんがどうしても参加するって聞かないんだもん。


 ばーちゃんは大層誇らしげに私達を乗せて、しかも沿道に向かって翼を振って声援に答えるようにしながら歩いた。

 うん。むしろばーちゃんが目立ってくれて私達は目だ立たなくて良かったかもしれない。

 それでも沿道からは「命の女神様おめでとうございます!」「紅竜の主様ー!」と幾重にも声がかかる。

 これはもう諦めるしかないのだろうか。

 


 ちなみに式の間はばーちゃんは教会の屋根の上で翼を広げてカッコつけていたはずである。

 兄様の戴冠式ですっかり味をしめたようだ。


 パレードは教会から王宮までだ。

 そんなに長い距離ではない。

 その間、ばーちゃんの上でロディに堂々とくっついていられるのは、それはそれで幸せだった。





 王宮に着いたら少し休憩だ。

 さすがに疲れた。

 しかしまだ、本番とも言うべき夜のパーティがある。


 しかしここは国王夫妻が主役だ。

 隅っこで目立たなようにしていよう。



 そんなことを考えつつサロンでぐったりしていたら、兄様がいらっしゃった。

 ロディは今側にはいない。


「どうしたんですか兄様。今日は来賓の方々との会談が……」

「ああ、どうしても今日中にお前に言っておかなければいけない事があってね。ちょっと抜けてきた」


 こんな日に大事なお話ですか?

 私は背筋を伸ばした。


「ああ、そんなに緊張ししなくてもいい。長い話じゃない。----お前が作った魔法陣。沢山あるな。」

「ええ、ありますけど…」

 ん?何故魔法陣の話が結婚式の日に?



「治癒魔法陣の方は、お前の安価で民に、という願いを知っていたので、特許しか取っていないが、イージスやステルスに関しては特許と共に特許料を取っている。主に国が買い上げた形だ。なのでお前にはかなりの財産がある。後でロディに渡しておく。他にもミスリルやオリハルコンの鉱山発見の報奨金もあるし、お前は一生働かなくても贅沢な暮しが出来るだろう---- と言ってもお前の贅沢はたかが知れているがな」



「-----兄様----- 魔法陣は、私が正妃さまや兄様達を守りたかっただけで…… お金なんて----」

「そう言うだろうと思ったから、いままで言わなかった。しかしこれからお前を守るのは私ではなくなる。せめてこの位はさせてくれ。この金は民からの税金ではない。お前が自分の魔法陣で稼いだお前の財産だ」

「------兄様、兄様ーー」

 思い余ってしがみついた。

 兄様は柔らかく抱きしめてくれた。


 兄様。兄様。正妃宮に来た時にもこうやって抱きしめてくれましたね。


「兄様、私も、私も兄様に何かあったら私の全力でお助けします。体調に何かあればすぐに言ってくださいませ。戦があれば同行します。私にできることは何でも----」


「ああ、リディア。私も何かあれば言うし、お前も何かあったら必ず言うんだよ---」

「兄様---」


 

 そのまま兄様にしがみついてしばらく泣いていたら、侍女団に見つかって化粧を直すと拉致られた。

 あうぅ兄様―







 その夜のパーティは今までになく豪華なものだった。

 私もグレイシア様もドレスをカラフルな物に着替えての出席です。


 光魔術の優しい明りが会場を満たし、立食形式のコーナーには御馳走が並んでいる。


 そして何より豪華なのは参加者だろう。

 隣国銀嶺からは国王夫妻とカイ殿下・リノ王女も来られている。レオダニスからもアシス国王が御臨席だ。主要な上流貴族も揃っている上、前国王陛下夫妻もひっそりと参加してくださっている。


 その中でハルト兄様のあいさつでパーティが始まった。

 私はロディと踊る。

 ロディだけ、という訳にはさすがにいかないのでカイ殿下やアシス国王とも踊った。

 もちろん食事なんてする暇はない。



 そしていい加減倒れるぞという位踊ったら、パーティの終了のあいさつがあった。

 何とロディだ。

 私はあわててその隣に立った。


「-------今日は、国王陛下の御結婚と一緒に妹姫様との挙式を行ってくださった陛下、まず御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 そして御臨席の方々。遠方の重鎮の方々。わざわざのお来し大変ありがとうございます。自分は本来こんな場に立てる身分ではありません。ですが、寛大な陛下は王女殿下の選んだ者に間違いはないと言ってくださいました。その言葉が真実であるよう、誠心誠意王女殿下を大切にしていきたいと思っております--- 今日は本当にありがとうございました」

 ロディが礼をするのに合わせて私も頭を下げる。


 挨拶が始まってからは、ずっと私の右手はロディの手の中だ。

 ロディでも緊張するのかな?



「ロディ・スノーライン公爵。その言葉違えぬ様にするが良い。-----皆も今日の式への参加、感謝する。今後も良い関係を持ち共に国を支えようぞ」


 ハルト兄様のその言葉でパーティはお開きになった。



 はーーーーーーーーーーーー。

 いろいろ疲れた。

 緊張した。









「お姫、帰りましょうか?」

「---何処へ?」

「陛下が馬車を用意してくれています。それに乗れと」

「兄様… 何だか強引だよねー」


 そう思って外に出ると、何故か王家の紋章入りの立派な馬車があった。

 何故? 私はもう王家の人間ではない。


「リディアルナ様、今後も殿下に置いては王家の者と同じ待遇をせよとの陛下のお言葉でございます」

「で、でも…」

 降嫁した王女が王家の扱いをされるような前例はないはずだ。


「とりあえず今日は甘えましょうか。お姫疲れてるでしょう?」

「うん、そりゃぁ……」


 結局、その王家の紋章付きの馬車で「例の御屋敷」まで送ってもらうことになった。


 -------が。


「ここでございます」


 と、御者さんがドアを開けて連れて来てくれたのは----

 城の正門から馬車で5分の王城の裏手、庭園の向こう。

 ってここは後宮の一部じゃん!


 元後宮のあった場所を改装したんだ。兄様、グレイシア様一筋なのを力技で示したんだ。

 後宮を、取り壊したんだ----!


 その取り壊した部分に、きちんと城と壁で分けられていて、一つの屋敷になっている。

 それで、正妃宮もあんなに改装していたんだ。


 

 兄様。いくらなんでも近過ぎじゃないでしょうか?




「ホントにここに住むんですか?」

 ロディもやっぱり不安そうだ。

 だよねー。

 ここ、ほぼ城内だし。

 一応壁はあるとはいえ----


「ああ、お帰りだよみんな!」


 屋敷の中からマリアが出てきた。

 うう、もう引き返せない。

 っていうか、引き返すっていう選択肢は最初から無かったのだ。



「「「「「お帰りなさいませ、旦那様奥様」」」」」



 あー

 デパートの開店の時の奴だ。

 本物を見ることになるとは。



「お姫、とりあえず今日はもう休もうか。いろいろは明日考えよう」

「そうだね。もう今日は疲れたよ」


 侍女に案内された真新しいバスルームでの入浴は気持ち良かった。

 

 そしてまた案内されて寝室へ--- 行ったら、ロディがいた。











 ---------------そうか。結婚したんだ。










 え?

 じゃまだ寝られないの?

 一大イベントがあるってこと!?




「お姫、そんなに真っ赤にならなくても良いから。昔は何時も一緒だったでしょう」

「うん。それはそうなんだけど---」


 私はロディの変わらない笑顔につられてベットに上がってしまった。

 だってロディがあんまり自然だったから。



「お姫--- 今日はすごく綺麗だった----」

 そう言ってロディの顔が近くなる。


 私はなんだか、自分でも意味の分からない涙が出た。



「お姫? どうしたの? 俺がいたらダメ?」

「違う。違うの。----ロディがいるって思って----」

「うん。いるよ。ここにいるよ。-----もう、一人には絶対しないから」



 ロディ。

 ロディ。

 ボロボロの私に気がついてくれた人。

 遠く、南の領地から一人で帰ってきちゃうような人。

 



「ロディ。----私、ロディが好き------」

「うん。----知ってる。俺もね、お姫が世界一大切。-------愛してる」




 ロディの顔が近づいて、キスされた。

 目を閉じる。

 今度は触れるだけのキスじゃなかった。

































「お姫---、お姫起きられますか?」

「んーーー もうちょっと寝たい----」

「初日の朝ですから、二人で起きませんか?」



 初日?---と考えた所で昨日のあれこれがフラッシュバックする。


 うわ-------!!




「お姫、何考えてるのかものすごく分かりますが、朝食になるので起きましょうね」

 そう言って身体を起こされる。

 ……キチンと夜着を着ている。昨日私は訳が分からないまま寝てしまったはずだ。


「侍女を呼びますね」

 そう言ってベットサイドにあった呼び鈴を鳴らす。


 何だかすっかり上級貴族だ。

 着替えさせてもらって、朝食は専属のシェフが作ってくれる。


 何だか思っていた結婚生活と違う気がする。

 私がロディのご飯は作る気だったのに。


「お姫は学園と魔術塔の両方の仕事をしているんだから良いんですよ」


 そうロディは言うけど、うーん。



 朝食後、朝陽のまぶしい庭園を散歩してみることにした。

 多分後宮にあったものだと思うんだけど見事な薔薇が咲いている。

 何となく青い薔薇が多い気がする。



「そう言えばロディは仕事って何時から?」

「一応1週間は休み貰ってます」

「私もそんな感じ」

「じゃぁゆっくりできますね」


 そう言ってロディが笑う。

 私はその笑顔で、また幸せになる。



「お姫?」


 あれ? 何だか私の涙腺は故障中ですか?


「お姫---」

 

「うん、何だか変なの---- ロディの笑顔が幸せで---」

「俺も、お姫が笑うと幸せですよ」


 ロディの方に手を伸ばすと、自然な動作で抱きしめてくれる。







「ロディ。---愛してるね」

 















◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 



 その後、ラインハルト・ブルーローゼスの治世は安寧と繁栄を極め、ブルーローゼスの賢王と言えばラインハルトの名が挙がる。

 その隣には騎士団長ロディ・スノーラインと魔術師団長を務めた妹のリディアルナ・スノ―ライン、その二人を守護したと言われる紅竜が存在し、ラインハルトは紅竜の王とも言われた。

 ラインハルトは側室を設けず、正妃グレイシアとの間に3人の子を儲け、その後もブルーローゼスは繁栄を続けた。


 その妹のリディアルナ姫に関しては、魔法金属を簡単に発見したなど真実が確認できない事が多く記載されているため真実の彼女がどのような人物だったのかはっきりはしていないが、夫の騎士団長との間に二人に子どもを儲けている。










干物でも、ハッピーエンドはつかめました!!


一か月、お付き合い本当にありがとうございました。

ここまで書いてこられたのは、読んでくださっている方がいるからだと思っています。

本当にありがとうございました。




本当にありがとうございました。

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