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〈閑話〉 グレイシア




 私はグレイシア・ソフィアローズ公爵令嬢。この国、ブルーローゼスの有力貴族です。

 私は文官の父と、隣国銀嶺の第二王女の母の間に第一子として生まれました。


 しかし、一見幸せな公爵家の令嬢として生まれた私ですが、一点だけ普通ではない事がありました。

 

 私には前世の記憶があったのです。


 これは私が成長するのに、邪魔になることもあれば役に立つこともありました。

 最初のうちは、某小学生探偵の様な状況でしたが、次第に大きくなるにつけ「聡明」で「上品」で「学習能力の高い」と言われるようになります。

 ですが、目立ち過ぎないように、やりすぎないように慎重に生きてきたのですが、その評判は王家に伝わるまでになったようで、まだ5歳だっだにも関わらず社交界デビューとなったのです。


 とても緊張した社交界でしたが、当時10歳の第一王子殿下が大変お優しくエスコートして下さり、とても楽しく過ごすことが出来ました。


 でもここで私は大きな既視感を覚えたのです。


 まず、この王宮に見覚えがありました。

 第一王子様も、記憶より幼い印象でしたが、やはり見覚えがあったのです。

 

 そして、王宮からの帰り道、「ここが将来通う学園だよ」と見せてくれた学園には正門を見ただけなのに中の様子が次々と思いだせました。


 ここで私はやっと、この世界が前世、次女がはまっていた乙女ゲームの世界だと気が付いたのです。

 そうすると、私はゲームの中の重要なキャラクター、メインターゲットの婚約者の悪役令嬢です。

 

 その世界の主役は、王家の血をひかない王女と蔑まれているリディアルナ・ソレイユと言う子供のはず。

 私はその王家の血をひかない王女を苛めることで、王子殿下の御怒りを買い修道院に入れられる事になるはずなのです。


 でも、ここで私は少し考えたのです。

 王子殿下の婚約者にならなきゃいいんじゃないの?





 

 そう思った時期もありました。


 第一王子と、王女の動向を観察するべく、社交界には欠かさず出席してた私は、ものすごい違和感を覚えたのです。

 第一王子は、物語の通り私との距離を縮めてきます。第一王子は私の好みだけの話しなら、どストライクです。若干のシスコンがありますが許容範囲です。


 しかし、問題は主役のはずの第一王女。

 確かに、王家の血をひいていないということで後宮では蔑にされ、満足に食事もとっておられない時期もあったようですが、正妃殿下に引き取られてからは幸せにお暮らしの様子……

 そう、様子だけなのです。

 本人が社交界に出てこないのです。主役の王女は私より一つ下の設定のはず。それが7歳になっても8歳になっても社交界に出てこない。


 もうすでに攻略対象との出合いイベントは始まっているはずなのです。


 変だ変だと思っているうちに、城下に大変便利な魔道具が出回ってきました。大変高価なものだと言うので富裕層向けの魔道具だろう思っていたら、我が公爵家にもそれはやってきました。

 

 ええもう、大変よく見た事のあるデザインのものでした。

 

 それは大型スリードア冷蔵庫でした。

 この時は本当に驚きました。

 それと同時に、この冷蔵庫の製作者は自分と同じ転生者だと確信したのです。

 でなければ、このチルドルームまでついた冷蔵庫の説明が付きません。


 私はこの冷蔵庫の製作者を探すことにしました。

 しかし魔道具ギルドに、公爵家の紋章入りの手紙を送っても製作者の名前は明かせません、の一点張り。作成している魔道具職人に聞いても、製作者までは分からないと言う。

 おかしい。


 そう思っている時だった。

 首都オンディーナの城壁に守護魔法陣が刻印されていると言う。

 この守護魔法陣、索敵・防御・迎撃の作用があると言う、今まで考えられなかったほどの高性能だというもの。

 私はここでもひっかかった。索敵・防御・迎撃。

 それは前世、日本の誇る艦艇の---


 そこまで考えていた時、魔法陣の刻印をしている技術者が言った。



「本当に王女殿下の魔法の才は素晴らしい。この『イージス』の様な魔法陣を作るんだからな」



 この一言で全てが分かった。

 あの冷蔵庫も王女の作成に違いない。

 しかも、この魔法陣に『イージス』って-----

 社交界に出てこないのも、こんなの創っているからだ。


 もう少し調べたら、「ステルス」と言う気配や姿を消す魔法なども作っているらしい。

 何やってるんだ主役!

 転生者ならゲームを進めないとどうなるか分かっているでしょうに!


 しかし。

 その後の王女は、社交界デビューはしたものの、王宮主催の最低限の社交しか出てこない。


 その代り、治癒魔法陣と言って、本来治癒魔術師しか使えない魔術を、魔術師ならだれもが使えるよう魔法陣化して、庶民でも気軽に使える価格で提供し、命の女神などと言う中二臭い名前で呼ばれている。


 もうはっきりした。

 転生者は、この乙女ゲームを知らないのだ。

 だから、のうのうと出来ることをしているに違いない。


 このままでは、王都を守護し、治癒魔法陣を作成した優しい転生者は奴隷落ち確実だ。


 ゲームを知っている者の手助けが必要だ。

 私は第一王子との婚約を受けることに決めた。

 


 そして私は王女殿下---リディアルナ様のサポートについたのだが。

 この乙女ゲーム『薔薇の王国 薔薇色の恋』は難しい乙女ゲームではなかったはずだ。そのはずなのだ。

 しかし、出会いイベントを逃しても、いくらでも挽回のチャンスはあったはずなのに。

 どんなにけしかけても、会話の方向性まで指導しても、恋愛好感度が上がって来ないのだ。


 攻略対象とは良好な関係を作っているが、それは研究者としての関係だ。全く色恋の話が入って来ない。

 しかも、何故か魔術チートを持っていて、悪役令嬢の意地悪が全く効いていない。

 私の代わりに悪役令嬢役をやっているセシル嬢を見ていたら気の毒で、自分じゃなくて良かったと心から思ってしまいました。

 しかし、これでは断罪イベントは起こりようがありません。


 しかも、授業を抜け出してデートをして来いと言ったら、何故か学園内に薬草園を作る話になっており、花の咲く丘でピクニックをして来いと言ったらミスリルやらオリハルコンやら掘り当ててくる始末。

 果てはドラゴンをピ○チュウのように肩や頭に乗せて歩く。


 何処の世界の乙女ゲームの主役がドラゴンを連れて歩くんだ!!

 私は心から叫びたい。乙女ゲームにドラゴンは不要だと。

 

 日々がそんな感じで過ぎてゆき、変だ変だと持っていたら。




 -------本人が干物であることが発覚した。




 何と本人は享年35歳、彼氏いない歴=就職歴と言う干物。

 自宅ではジャージ一択生活者だったということだ。


 なんと言うことだ。

 まず干物の矯正から始めなければ乙女ゲームのクリアなどできないのではないだろうか。


 間に合うのか?

 それに本人にやる気がないのも大問題だ。


 何処かに魔王が湧かないかと本気で思っている節がある。




 一応実験はした。

 ゲーム補正はあったのだ。


 この、ゲームから激しく脱線した王女に対する修正は、いったいどんな形でかかるのか全く分からない。

 ……本人は「私最強を目指します」とか、ほざいているので余計に腹が立つ。

 私の心配を返せ。





 ああ、本当に、誰かこの干物を何とかして下さい。 

 確認したが王女も、転生時、神などには会っていないということ。


 では誰に文句を言ったらいいんですか。






 本当に、本当に干物に乙女ゲームの主役が出来るんですか?!



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