表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/56

14.今日は入学式です




 翌年。私は13歳になった。


 入学までは何事もなく過ぎた。

 突然矢が飛んでくることも無く、守護魔法(イージス)が毒物検知で発光することも無く。気が抜けるほどに平和だった。


 レオン様と薬草と治癒魔術の理論の討論をしたり、シーザー様と武器に入れる魔法陣をいろいろ考えたり、ディーン様からは逃げ隠れしたり。

 うん。特に何事もなく順調だ。


 国王陛下はいよい容体がおもわしくない。城の治癒魔術団が必死でやってるみたいだけど、肝硬変の病態を知らないので、改善は見込めないだろう。ダリア様がべったりしているのだけが気になる。あの人がお酒を勧めているんじゃないだろうか。

 兄様の成人まで持つかなぁ?


 ロディも持ち前の運動神経でダンスは難なく覚えた。グレイシア様の情け容赦のない指導のおかげだ。マナーについては、生まれた時から城にいるので教えられなくとも何となくわかるということ。相変わらずのハイスペックだよね。


 しかし不思議なもので、平和過ぎても何となく不安になる。

 ホントにこのままで大丈夫なのかなぁ?


 や、もちろん魔王が湧いてくればいいなんて、ちょっとしか思ってませんよ?


 グレイシア様の「本編は入学してから」と言う言葉を信じて、好感度上げをさぼってしまっているのでちょっと心配。

 や、上げろと言われても上げられないんだけどさ。







 で。入学式がやってきました。


 エド兄様とグレイシア様、ロディと私で馬車で登校です。

 これから毎日そうなるのかな?

 学園に行けばレオン様もいらっしゃるはず。

 エド兄様は一学年上にクラリス様がいらっしゃるので楽しみで仕方なさそうだ。


 ちなみに入学試験と言うのは一応ありました。

 ……一応、ね。

 ものすごく簡単な読み書き計算くらいで、授業があれなら学園辞めて魔術塔に籠ろうと思う。

 だけど、上級貴族も入学する学園なので、不合格を出すわけにはいかないから入試はああなるそうだ。

 実際の授業は面白いとクラリス様は話してくれた。


 ちなみにクラリス様は、昼は学園で授業を受けて、帰られてから騎士団の訓練に参加。その後夜番などもこなされるそうだ。ご両親とも騎士団のご出身でお祖父さまも騎士だったという騎士団のサラブレットだ。母君は今は剣を置いて、軍属の事務方をやっているとか。……貴族家なんだけどね。




 そして入学式。

 分かってたけど豪華ですね、この学園。きちんと馬車乗り場がロータリーのようになっているのはさすがだ。

 しかも広い広い。確かに授業サボって散策したくなるかもね。


 新入生代表はエド兄様が挨拶をする。新入生は120名位って言ってたかな?貴族家は大体この学園を選ぶ。セキュリティの問題とかもあるし。それと豪商など町の有力者の子供もステイタスになるとここを選ぶそうだ。学費の安い普通の学校もあるんだけどね。しかし今年の入学生はエド兄様やレオン様が入っているので入学年齢に達していない令嬢方が多いらしい。……授業についてこられるといいけど。

 

 ……しかし普通挨拶って主席がするんじゃないのかな? まぁ、王子殿下がいるのに他の人を選べないのか。

 あ、と言うことは私が来年入学してたら、来年は私が挨拶させられることになってたかもしれないんだ!エド兄様ありがとう!

 ええ、私は目立たずひっそりと学園生活を送りたいんです。


 入学式なので、父兄の参加は自由だったんだけど、さすがに正妃さまやハルト兄様が来ると警備も尋常じゃなくなるし、生徒も混乱するだろうということで今日は不参加です。


 でも、制服は朝、エド兄様と一緒に正妃さまとハルト兄様に披露してきました。50人弱のアイドルグループが着て歌ってた服に似ているのは気のせいだろうか……

 ハルト兄様は「そんなに可愛い恰好をして外に出るなんて」とばかなことを言い始めたので正妃さまが止めてくれました。その後ハルト兄様とロディが長々と話しをしていたのが少し気になります。



 それと。

 入学にあたり、私は晴れて魔力制御装置の魔法石から解放されました!


 や、別に負担だったわけじゃないけど、やっぱりね。なんか一人前じゃないって言われてる感じで。

 そして、せっかくの高価な魔法石なので、リサイクルしました。中の魔力制御の魔法陣をイージスに書き換えてロディに持ってもらいました。

 最初は私が持てって言いあいになるほどだったんだけど、私の魔力は結構膨大で、イージスの常時展開なんて簡単にできるのですよ。元々イージスは大きな魔力のいる術じゃないし。

 なので守護石はロディの首にかかっています。



 入学式も無事終わり、各教室へ移動です。

 クラス分けも学校側の配慮か、私たち4人は同じクラス。と言うか、上流貴族はひとクラスにまとめられる。私から言えば隔離である。どうやら身分差がありすぎると問題が生じるらしい。そう言うのを鼻にかける貴族もいるのは知ってる。だからって隔離はひどいよね。

 

 そして、みんなで雑談をしながら教室に入った。

 私達はSクラス。私的には隔離クラスである。人数は20名ほどとか。お願いだからそんな配慮しないで―!


 と。


 内心文句を言っていたのが、新入生が次々入室してきて、その一人が視界に入ったとたん声をあげそうになった。

 ディーン様?! 

 咄嗟に隣にいるロディの手をつかむ。


「お姫……? え!?」


 ロディも気がついた。遅れてグレイシア様も振り返る。


 アレか、あの豪雨の日、確かに私は来年入学って言っちゃった。

 なんて不用心だったんだろう。これは確実に私のミスだ。


 ロディが体の位置を入れ替えて私がディーン様の視界に入らない様にしてくれる。

 ……それでも…… これから4年間、一緒のクラスなんて……

 根本解決をしなければ、安心して通えない。うっわぁ……最悪。

 

 ……ん?ディーン様にくっついている小柄なご令嬢は……?


「ジャスミン伯セシル嬢ですわね。……セシル嬢の方はディーン様をお気に入りのご様子……どうされますか?」

「……こっちに実害が無さそうなら静観。ありそうなら実力行使で」

「了解。お姫、離れないでね」

「うん」


 うーん、ゲーム補正かもしれないけど、あのキモオタに惚れる令嬢がいようとは……

 これは、補正をちょっとなめてたかな?

 でも、補正があるということは、私がディーン様ルートに入らない限りセシル嬢と婚約するはず。多分、静観で間違いはない……はず。




「リディアルナ様」

 と、グレイシア様が視線で向こうを見ろと促す。

「ラングハイム伯爵令嬢ソニア様。レオン様の婚約者設定の方です」

「レオン様の……」

「もちろんまだそんな話は出ていないと思います。でも……すごいですね、偶然というか成り行きと言うか…… 攻略対象4人と悪役令嬢3人がそろってますよ」


「悪役令嬢……ですか?」

 私が、少し笑ってそう言うと、

「リディアルナ様。私以外は本気であなたを排除しにくると思ってください。特にセシル嬢はディーン様が貴女に固執しているのに気付いているでしょう。ロディか私の傍を離れてはいけませんよ」

「わ、分かった……」

 実力行使なら私が負けることはきっとない。でも、校内で攻撃魔法をぶっ放すわけにはいかないもんね。

 しかも私は立場が微妙。王族と言えば王族だけど、平民と言えば平民だ。伯爵令嬢に手を上げるわけにはいかない。


  


 いろいろと面倒な学園生活になりそうです。

 しかも、これからが本番だって言ってたよね?

 授業を抜け出してデート? ないない。結構面白そうな科目多いもんね。



 ……………なんて、最初は思ったんだ。

 それが。


 初日の説明では、選択科目がとれるのは入学後半年以降からで、それまでは基礎科目を必修と言うこと。

 今更私に魔法理論の基礎を聞いてろってか?!

 しかも算術って、小学校レベルじゃないのこれ。

 いやまぁ、日本レベルの教育課程が出て来てもビックリだが、これは無いな。


 デートは無いとしても、授業は抜け出そう。

 暇すぎて寝ちゃうわこれ。



 とりあえず入学式が終わって、各教室で自己紹介。

 この辺はどの世界の学校も変わらないのかな?

 で、私が自己紹介をすると、セシル嬢がすっごい目で睨んでた。

 あー これはダメな感じだ。平和的にお話が出来る感じじゃないね。逃げ隠れしましょう。


 で、教科書が配られて、今日は終わりらしい。

 ……多いね、教科書。

 私は4人分の教科書をアイテムボックスに入れて帰宅の準備をしようとした。あ、空間魔法は普通に使えます。かわいいポーチのアイテムボックスです。

 ……最初は魔王が湧いた時用に魔物をホイホイ入れられるような普通の袋だったんだけど、それを使っているのをハルト兄様に見られたら、翌日には魔法陣のところ以外は綺麗に刺繍がされ、スワロ○スキーですか?というようなキラキラした飾り石がふんだんに縫い込まれていた。これでは魔物を入れるわけにはいかなくなりました……







 その後、みんなで帰ろうとしたんだけど、やっぱりこのまま帰してはくれなさそうな雰囲気。

 御令嬢がそんな眼付をしたらいけませんよ。


「リディアルナ様……」

「うん、気がついた。どうしようね」


「なにやってんだ、帰るぞ」

 鈍感大王健在。さすがです。


 でもセシル嬢に、なぜかソニア嬢も一緒にこっちを睨んでる気がする。

 あれ?レオン様との婚約って話はまだ全然出てないはず…… いや、修正の件もある。決めつけない方が良いだろう。

 でも、この段階で私が文句を言われる筋合いはないんだよね。


「ええ、兄様帰りましょう」

 エド兄様と一緒の時に何か言ってくるほど無謀ではないはず……

 ロディはディーン様の警戒でピリピリしてるし、なんかいろいろ大変。


 4人で教室を出ると、特に何も言ってはこなかった。

 あ、レオン様に挨拶できなかったなぁ。シーザー様もいたのに。


 や、レオン様に関しては先に御婚約の有無を確認した方が良いかもしれません。波風が立つ前に。



 ん?セシル嬢とソニア嬢は私と同じ年だったはず。

 わざわざ飛び級(スキップ)で入ったの?

 ディーン様を追いかけて? ソニア嬢は?

 ちょっと、調べておかないといけない事が出来ましたね。











 う――ん。

 前途多難。


 ……分かってはいたけどね。分かってたんですけどね。

 難易度上がってませんかー!?


7/23加筆修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ