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1.どうやら転生したようです





 目が覚めたら見知らぬ所に寝ていた。



 こんな経験はなかなかできるものでなない… 事もないかな?

 酷く酔って帰って来て玄関で寝てたことはあったな。


 しかしこれはレベルが違う。


 何だこれは。


「見知らぬ天井だ」とでも呟けばいいのか?!

 いや、この時点では「見知らぬ天蓋」だろう。


 今いる場所は天蓋付きのベット。シーツはサラサラの極上品だ。

 いたるとこに繊細な刺繍とレース。

 いくら考えてっも自分がこんなところに寝ている理由が分からない。



 夢か。

 夢落ちか。


 私の知識的にこれはファンタジーの貴族の屋敷や王城だ。


 私はファンタジーは大好きだ。

 小説はもちろんゲームはほとんどがRPG。しかもファンタジー系。



 これはもしや異世界トリップって奴か?



 などと荒唐無稽なことも考えてみる。

 いやいや、あれは中高生の十八番(おはこ)のはずだ。

 三十路も過ぎた干物がするものではない。



 しかし変だな。

 そう思って起き上がろうと身体を起こす。

 と言うか、起こそうとした。

 その瞬間感じる違和感。

 何これ―― 身体が小さい!!

 慌てて身体を起こしてシーツを取る。


 身体を起こした時、盛大にめまいがしたけど、この状況にも派手にめまいがする。



 私は某小学生探偵か―――?!



 その位には、小さな体になっていた。

 しかも、さらりと流れる銀色の髪――― なによこれ!!







 落ち着け。

 落ち着け私。

 こう言う時はまず状況の整理だ。


 私は水樹 花菜(みずきかな)。35歳の救急外来の看護師である。今日はいつも通り仕事をして…

 えーっと、それからどうしたっけ? その辺が記憶があいまいだな。

 これはトリップって奴じゃなくて転生か?

 何かのはずみで前世の記憶が――って奴か?


 と言うことは。

 と言うことはだ。


 ――――――私は一度死んだのか。




 両親は数年前に他界した。

 特に未練といえるほどのものはない。

 ……ない……はず。


 うーん、でも。……チームワークの良かった職場の仲間たち。

 たった一人の妹とその家族。

 未練がなかったと言えば嘘になる。

 でもこれだけは仕方ない。自分の力ではどうしようもない事態だ。



 とりあえず考えることを放棄してベットに戻る。

 身体が熱っぽい。と言うか、熱があるなこれは。

 

 あ― よくあるタイプ?

 高熱と共に記憶が――て奴。


 うわ、いよいよ異世界かよ。

 うーん、私は正統派ファンタジーも好きだがラノベも好きだ。

 

 こう言う転生物って、普通冒険者になるんじゃないのかなぁ?

 何でこんな豪華なお部屋に寝てるんだ?


 ――――しかも私、女神様会ってないんですけど。

 なんか雰囲気違くない?

 私のチートは?






 だけど。


 どこの世界に行っても私は救急外来の看護師だ。

 どんな事態にも対応するのが救急外来。この世界の医学にだって、きっと対応できる。もし魔法のある世界なら目標は治癒魔法だな。


 …まぁ、その仕事が面白くってこんな年になるまで浮いた話の一つもなく…

 所謂『ひもの女』って奴だったな~


 実際職場は楽しかった。どんな重症の患者が来たって、みんなで「よし行くぜ!」って感じで頑張ってた。


 事実、救急外来の知識は日本の世界でだってチートクラスだったと思う。どの科にだって、どんな救急にだって対応できる知識と技術。


 うん、魔王だって倒してやろうじゃないか! と、こぶしを握って世その時。

 



 カチャ。


 部屋の扉が開いた。

 第一異世界人との接触である。



「お姫!良かった目が覚めたんだ!」


 そう言ってイケメンが近づいてきた。イケメンとはいってもおそらく幼稚園児くらいであろうか。将来有望である。

 お日さまに透ける金色かかった明るい色の髪、髪とよく似た色素の薄い瞳。

 そんなイケメンがお日様の様な笑顔で近づいてくる。そして私の小さな手をとった。


「ああ良かった… 本当に良かった… 高い熱が続いてもう5日なんだ。城の治癒魔術師たちもこれ以上この状態が続けば危険だろうって… 本当に良かった」

 そう言ってもう一度笑う。

 

「すぐに正妃さま方に知らせてくる」

 そう言って軽い足取りでドアを出て行った。あっという間である。


「あ、はぁ…」

 私が返した言葉はこれだけである。





 …………何だか、方向性が違う気がするのは気のせいだろうか。





 熱っぽいせいかそのままベットに沈み込む。

 いろいろ考えがまとまらない。


 どうやらそのまま眠ってしまったようだ。

 短いような長い夢を見た。



 夢の中で私はさっきのイケメンくん―――名をロディと言うらしい。

 そのロディの後をいつもついて回って、一緒に遊んで一緒に生活していた。


 その中で私は自分の姿を知った。

 銀色の髪に海の色の瞳。

 完全に別人だ。


 異世界転生決定。


 両親の記憶は無かった。

 私を育ててくれたのは乳母のマリア。ロディのお母さんだ。

 つまりロディは私の乳兄弟になるんだ。


 マリアが教えてくれた事によると。

 私の両親については、父はこの国の騎士で、母はこの国の正妃様付きの侍女だった。

 しかし母の懐妊後、父が急死する。

 その後、母は私を身籠っているにもかかわらず後宮に上げられたと言う。

 所謂「お手がついた」って奴だな。確かに母は美人だったらしい。はかなげな感じの、いつもさみしそうに笑う人だったと聞いた。

 その母も、後宮入りして数ヵ月後に私を産んで、1年も経たないうちに亡くなった。病気だったと言われた。



 つまり私は王家の血をひいてはいない。



 そのためか、いろんな嫌がらせを受けた。

 一番力のある側室のダリア様。


 大好きなマリアやロディと引き離され、ダリア様の宮の下働きをさせられたこともあった。

 食事も満足に貰えない時期もあった。

 そのせいで、まだ私の体は平均的な同じ年の子たちよりもずっと小さい。


 それを助けてくれたのもロディだった。

 ロディが私を連れて正妃様の所に行ってくれた。


 正妃さまは私の実情を知って、正妃宮に引き取って下さったのだ。

 母が正妃さま付きの侍女だったというだけで。

 なので私は今、王太子殿下たちと共に正妃宮にいる。


 正妃さまは優しい方だ。

 側室の娘、しかも王家と血の繋がってもいない娘を育てるなんて。

 自分の侍女だったために後宮にあげられたって、それに責任を感じていらっしゃるのかなぁ?

 それにしてもいい人すぎる。

 私は、正妃さまが大好きだった。



 現在の私は正妃宮で正妃様、第一王子で王太子のラインハルト兄様、第三王子エドガー兄様、私の乳兄弟兼護衛のロディ、乳母のマリア、それに正妃さま方の侍女や護衛の騎士様方など結構な大家族で暮らしている。


 通常、護衛は住居までは正妃宮に置いたりしないものだが、特殊事情により、女性騎士様のみで構成された護衛隊が一緒に住んでくれている。



 その特殊事情と言うのが、暗殺への警戒である。



 第一ターゲットはおそらくラインハルト兄様。第二に正妃さまだろう。もしかしたら逆かもしれない。



 犯人は隣国から嫁いできた王女。ダリア・レオニダス様。

 ラインハルト兄様より半年遅れて王子をお産みになっている。ダリア様のお子様は第二王子のリシャール殿下のみだ。

 さぞかしラインハルト兄様が憎いんだろう。暗殺未遂の回数は優に二桁に上る。おかげでラインハルト兄様の危機回避スキルが上がる上がる。剣の腕も騎士団長に鍛えてもらっているらしいし。

 

 ありがたくはないけどね。




 そして。

 ロディの言う5日前。

 正妃さまに手を引いていただきながら王宮の廊下を歩いている時、すれ違った侍女が頭を下げ礼をとったその手にナイフが握られているのが見えたんだ。

 背の低い子供の目線だから見えたのだろう、護衛は反応できなかった。


 多分体の方が先に動いた。


 声が出なかったのかもしれない。

 私の身長では正妃さまの盾にはなれない。

 私はナイフの方に飛びついたんだ。

 ナイフごと侍女の手に全身の力でしがみついた。



 『私』の記憶はそこで途切れている。












 …あれ?? 何か全然RPG要素が出てこないんですけど。

 女神様~~ 何か忘れてませんか~~?!


7/23加筆修正 

初投稿作品だったので、一章を中心に修正しています。

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