台風の日
台風の日はなぜか、気持ちが高ぶってしまう。特に子供や動物のみんなは、みんなそわそわしてるんじゃないかな。でも、それは君たちだけじゃない。草も木も、街灯も、信号機も、家も、バス停も、みんな一緒なんだ。
あるところに、二人のバス停がいました。二人のバス停は近くにいるのに、ずっと話したことがありません。片方のバス停は、二本の足でしっかりと立っています。もう片方は小さくて、石のステージの上に一本足で立っています。
この日は、朝から風が強く吹いていました。夏の暑い時期によく来る「台風」というものみたいです。台風が近づいてくる日は、バスも全然来なくなってしまう事があります。毎日毎日、バスの見送りをしているバス停としては、非日常的というか、不思議な感じがするのです。
小さいほうのバス停がつぶやきました
「このままだと誰も見送ることができないわ」
大きいほうのバス停の方をちらっと見ましたが、無言で立っています。
実は、小さいバス停はさみしがり屋なのです。なので、毎日毎日、まったく言葉を発さない彼に対して、話し相手になってほしいと思いつつも、絶望していました。だからこそ、毎日のバスの送り迎えを大切に感じていたのです。
風が強くなってきました。いつもならばバスがやってくる時間ですが、今日は来ていません。
「あの、今日は運休ですかね」
小さなバス停は上目遣いで話しかけます。
「……」
やはり反応はありません。ため息をつきたくなってきます。
雨も降ってきました。風の強さにも磨きがかかってきます。風さん、これ以上頑張らなくってもいいよ。。
雨が板に打ち付けて、だんだんと痛いくらいになってきます。
「だれもこない。さみしい。さみしい」
小さいバス停は、悲しくなってきます。自分だけが取り残されたように感じるのです。たまにバス停の前を歩いていく人はいるのですが、立ち止まる人は一人もいないのです。
「ひとり、ふたり。さんにん。
いつもなら、みんなでわいわい
今日は、だれもいないの。
いっそ、歩行者のいるところに倒れて
あわよくば、怪我でもさせちゃえば、
動けなくなる。バス停といっしょだ。その人は動けなくなる。
そしたら、救急車、警察、野次馬ども。。。にぎやかになるグヘヘ」
そのとき、ひと際強い風が、小さなバス停の背中を押しました。
地面が、だんだんと、近づいて、きま、す。。。
「だいじょうぶか」
小さいバス停は、大きなバス停に寄りかかるかたちで、地面に頭を打ち付けるのを回避しました。
「シャァベッタァァァァァァァ!!!」
それからしばらく、夜に人間の手で元に戻されるまで、二人は抱き合ったままでいたのでした。
小さいバス停は、バスの見送りがないときも、さみしさを感じることが減ったみたいです。彼は、ほとんどしゃべったりしないのだけどね。




