最終日 それぞれの、セカイ
次の日、彼が向かったのは、山の入り口にあるコンビニエンスストアだった。
彼女はあそこにいるはずだ。
彼女が殺された場所、彼女を殺した場所。
目指す場所はただ一つ。
彼の推測は正しかった。
彼女は、そのコンビニの前にいた。
「あ……」
彼に気付き、彼女は声を上げて驚いた。
「やっぱり、ここにいたんだな……」
彼女と目が合う。
彼女の眼は、今までのどんな時よりも寂しそうだった。
「……」
彼女は気まずそうに目を逸らし、何も言わない。
「楽園は、どこにあるのかな……」
ぽつり、と彼女の口から漏れる。
「……ずっと前から、向こうの世界で君に出会ったときから聞きたかったんだが、君は、なんであの世界にいたんだい?」
わかるはずのない、答えのない質問。
それでも、彼はそれを聞きたかった。
「……私は、秩序が欲しかったの」
ゆっくりと彼女は語る。
「誰もいない世界で一人、決められたとおりに生きる。誰にも邪魔されないで、レールの上を歩いていく……、そんな世界に憬れたのよ」
誰もいないということは、誰も制限をしないし、誰もはみ出すこともない。
自由の中では、決められた道を歩くのも自由だ。
誰もそれをはやし立てもしないし、破ろうともしない。
「そこにあなたが現れて、私の世界は崩壊した。だから私は、もう元の世界に戻りたかった。人が一人でもいるなら、それはもう私の望んだ世界じゃないから……」
彼女の言葉に、彼は自分の夢の世界を思い出す。
同じだ。
考えは正反対なのに、理想とその崩壊は全く同じ。
「一緒だな、結局、僕も君も……」
どこか遠くを見たまま、彼はそうつぶやいた。
「人が嫌で、自分を守りたくて、あの世界に引き籠もった。でも、同じような理想を持っていたから、僕達は出会ってしまった……」
あの世界を思い出す。
「……君に言わなければならないことがあるんだ。だから、だからずっとあんたを探していた」
その言葉に、彼女は彼を見る。
彼の目は照れくさそうに、申し訳なさそうに、悲しそうに真っ直ぐだった。
「こんな事で許してもらえるとは思わない。でも、これを伝えないと何も始まらない」
静かに彼は言った。
「すまなかった」




