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幕間夜話/安酒でも良い、慎ましく与太って欲しい。/または焼き鳥編。

 思う念力岩をも徹す(史記)

 オクラホマ スティーブ・W スタンピード(偉大なるレスラーを讃えて)




 空が薄暮に染まり行く頃、秋の気配を含んだ風に押し流され歩く疲れた顔の人々を、調子の悪い街灯が照らし始める。


  バス停から降りた私は家路に急ぐか又はいつもの店で──と言っても主に焼き鳥を扱う全国展開のチェーン店ではあるがカウンター席もあり、お一人様にも優しい優良店舗──一杯引っかけようかと迷ったが、給料日前の懐事情には季節問わず肌寒い風が吹いている。


 その焼き鳥屋「辻鳥」は道路に面した入り口側がガラス張りで焼き場や店の様子が分かるようになっている。給料日には多忙を極める店だが、今は席も空いており、お腹も空いている。

 

 それとなく店を覗き、思考を巡らす。

 懐は寒いが、明日は休みだ。一時の安堵と一杯の安酒。このまま帰れば懐は痛まないが、待つのは寒々とした部屋だけ。目の前には次々と焼かれる肉、旨味を含んだ煙。


  ──家か、鳥か。

 くたびれた三十路過ぎに、この「辻鳥」は何と辛い選択を迫るのだろう。給料日まであと五日、例えここで一杯引っかけようと乗り切れない訳ではない。だが──


 

 さようなら、鳥精肉。また会う日まで。


 

 心の中で「辻鳥」に別れを告げ、家路に向かう。

 キンキンに冷えたビール、あの肉厚でジューシーな鳥精肉やパリパリの鶏皮、そして一本だけで充分な程に脂身が多い豚トロに若干の未練を残しながら。

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