閑話 -串焼き屋のおじさん-
今日は記念すべき串焼き屋チェーン店一号店の開店日である。
「へい、いらっしゃいっ!」
「串焼き五本ちょうだい」
「毎度ありー!!」
威勢のいい雇われ店長の声とお客さんの声が響き渡る。
今後怒涛の勢いで五号店まで近日オープン予定の、串焼きチェーン店のトップに立つ男は、感慨深く賑わう店頭を見つめていた。
露店で一日一万も売り上げがあればいいほうの、その日暮らしだった男に転機が訪れたのは、聖獣様お披露目のあの日だった。
あの日は物凄い人出で、掻き入れ時を逃すまいと、男は必死に串焼きを焼きまくっていた。
それでも聖獣様の馬車が近くを通った時、その姿を一目見ようと身体を乗り出した男は、真っ白な美しい毛並みの聖獣様を見た。
そして聖獣様と目があったと思った瞬間、目の前に立ち塞がった偉い騎士様が、串焼きを十本注文したのだ。
大慌てで串焼きを包んで騎士に渡した男はその後、押し寄せてくる血走った目の客達によって暴動の中心にいるかのような、恐ろしさを味わった。
後から聞いた話だが、騎士の買っていった串焼きは、聖獣様の口に入ったとかで、ただの串焼きは『幸運の串焼き』と言われ、売り上げは数倍に膨れ上がり、串焼きチェーン店の話がトントン拍子に進んだ。
あの時、聖獣様と目があったお陰で加護を得られたのだ、と男は信じている。
今日も男は聖獣様に祈りを捧げる。
「聖獣様、ありがとうございます。あなた様のおかげで今があります。ところでうちの串焼きを食べると好きな人と両想いになれるという噂話は本当でしょうか……。最近お客様方の顔が怖い気が……あ、いえいえ、文句など一切申し上げるつもりはございませんです。ありがとうございますありがとうございます……」
一日に三食と二回のおやつ、ベスはそれ以外にもたくさんの食べ物を食べる。
「ベス様、これは今王都で一番人気の食べ物ですよ。食べたら好きな人と両想いになれる幸運の串焼きだそうです。」
(へえー、それってすごいね。あ、これ、めちゃうまぁ)
それが根も葉もない噂であろうと皆が安く幸せを感じることが出来る幸運の串焼きはやっぱりすごいのだ。




