閑話 ―酔っ払いベス―
青空の下、芝生でゴロゴロ日向ぼっこしていたベスの目に大きな木の赤い実がうつった。
おいしそう……。
真っ赤なその実は美味しそうに熟していて、その上ベスがジッとみつめていたらポトリと落ちた。
まるで食べてくださいと言っているように。
迷いなくそれを拾ったベスはいそいそと皮をむく。
中身は白っぽく芳醇な甘い香りが漂う。
いただきまーす
口にいれたその実は、香りから想像したとおり甘くおいしく、ベスはペロリとたいらげた。
なんだか楽しい気分になってきて体がフワフワして気持ちいい。
うふふふ、なんだこるぇー、気持ちいいぞぉー。
喉をゴロゴロ鳴らしながら、ご機嫌で芝生の上を転がりまわり、周辺に頭をグリグリ押し付けまわるベス。
その尋常ではない様子に、周囲の者達が医師を呼びカルトへ報告に走る騒ぎになり、医師とカルトが大慌てで駆けつけた。
固唾をのんで見守る周囲へ診断結果が告げられる。
「聖獣様はこのトワイの実を食べた為に、酩酊されているようです。きっと聖獣様の体質的なものかと思われます。時間がたてば元通りになられるでしょう」
医師の言葉に、ホッと安堵する周囲。
あ、ご主人様だっ。
あはははは、捕まえたぁー。
ベスはカルトを見つけると、喉をゴロゴロさせながらその体に頭を擦り付け、芝生の上をバタバタと転がりまくる。
力加減できない陽気な酔っ払いベスとあっという間に全身ボロボロにされたカルト。
周囲から羨望の眼差しを集めつつ、カルトは幸せそうな笑みを浮かべたまま意識を失った。
あれぇ?
ご主人様プラーンてなった。
あははははっ、どうしたのぉー?
その後のカルトの診断結果、全治一週間。
その数日後、魔術師たちによりトワイの研究結果が報告された。
聖獣や精霊、特殊な種族に限ってだが、酩酊作用のあるトワイの実は時たま食べる分には無害だが大量に摂取すれば中毒の心配があること。
実ほどではないが木の幹にも多少の効果がみられ、そちらは程よくご機嫌になれて安心無害と判明した為、早速その幹で木彫りの人形やおもちゃが製作された。
「ベス、新しいおもちゃだよ」
「ガォゥッ(ふぉぉっ、これいい匂いっ)」
カルトから渡されたたくさんのおもちゃに大興奮のベス。
爪とぎしたり、ゴロゴロと転がしたり、ベッドの下に大事に隠したり、それらはすっかりベスの宝物となった。
ただ、遊びすぎると、フニャフニャになるベス。
酔ってなんてないぞぉ。
ないったらないぞぉー。
うへへへへ。




