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閑話 ―魔術師たち―

 トライベン王国の城に常時張られている結界は、実はものすごく高度な技術で、この国の魔術師たちのレベルの高さがそこからも窺い知れる。

 魔法陣や魔法薬を研究開発する彼らは、常に新しい研究対象を求める仕事中毒者の集まりだ。

 そんな彼らが心血を注いで取り組んだ『聖獣様召喚魔方陣開発プロジェクト』はこれ以上ない成功を収め、当然彼らには一生かかっても使い切れないほどの褒賞が与えられた。

 しかし、彼らの真に求める物は褒賞などではない。

 彼らはジリジリと焦れつつ、何度も何度も上に掛け合い、聖獣様お披露目から数日たったある日、ようやく許可をもぎとった。


 聖獣様のお散歩に従う、侍従や侍女や護衛に混じる、あやしげな黒いローブ姿の彼ら。中には魔術師たちの頂点に位置するロスベール魔術師長が混ざっていたりするが、日ごろ冷静沈着な彼にとっても今日のこれは重要なイベントで興奮から息が荒くなっている。

 聖獣様の抜け毛や欠伸をしたときにこぼれた涙を採取し、聖獣様がトゲを踏んで滲んだ血(軟弱すぎる)に異常に興奮し、それを採取した彼らは皆一様にホクホクした顔で帰って行った。

 後日ただのゴミだと判明しようとも、それを研究できることが彼らの喜びなのだ。








 ベスが最近覚えた技、それは生活魔法。

 基礎の基礎だと言われフォルから叩き込まれたが、基礎とはいえなかなかすごいことができるのだ。

 まずは火、種火程度の火だが侮ることなかれ、アウトドアでの料理などで重宝すること間違いない。前世も今も料理なんて作れないがそこは深く考えたら負けだ。

 次に水、いざという時水さえあれば生き延びられるし、朝、顔を洗うことも可能だ。毎朝、侍従たちの手で綺麗にしてもらっているが、それはそれ、これはこれだ。

 次に風、微風程度ではあるが、温度調節してドライヤーがわりなんて高度な使い方も可能だ。毎日侍女たちにそれはそれは念入りに乾かされているが、しつこいようだがそれはそれ、これはこれなのだ。

 最後にクリーン魔法、一瞬で全身の汚れが取れる超便利なこの魔法。毎晩、お風呂で指一本動かすことなく隅々まで綺麗にされているが、大きな声で言いたい。それはそれこれはこれなのだっ。



 うふふふふ、魔法だ、魔法だぁ。

 庭の片隅で上に向けた手のひらに種火を出しては消す行為を、得意気に繰り返すベス。

 気分はまさに大魔法使い。

 木の葉を燃やしてみたりと、その行為はだんだんエスカレートしていく。

 子供が一人で火遊びしてはいけません、と優秀な侍従に取り囲まれて、やんわり注意されるまであと少し。


 ちなみに叱られてシュンとする大魔法使いの背後で、燃えカスをいそいそと拾い集める魔術師たちがいたとか……。









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